【web3】Q.Blockchain for GamesのOasysが日本発で世界を制する戦略とは?
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23年6月末に京都で開催された日本最大級のクリプトカンファレンス「IVS Crypto 2023」では京都府の二条城を貸し切ったOasys主催のサイドイベント「Oasys Special Event」が話題を攫いました。
イベントが開催された夜の二条城では「チームラボ」による光のアートの演出が行われ、屋台スペースでは飲食も楽しめました。さらに、音楽家の大沢伸一氏が手掛けたDJブースもあり、とても華やかなイベントが行われました。
そして、メインステージでは国内外ゲーム会社各社からOasysを採用した12のプロジェクト(うち、10はゲームタイトル)が発表されました。主な発表内容は下記の通りです。
double jump tokyo
Oasys特化のシンプルウォレット「Oasys Passport」を発表した。
セガ
「三国志大戦」のブロックチェーンゲーム「Battle of Three Kingdoms」とアートワーク(NFT)を発表した。
DMM.com/DM2C Studio
独自Verseである「DM2 Verse」の構築と「コインムスメ」のリリースを発表。暗号資産をモチーフにした「コインムスメ」のキャラクターたちが紹介された。
Ubisoft
アサシンクリードやウォッチドックスの開発元であり、フランスに拠点を置く同社からは、同社初のブロックチェーンゲーム「Champions Tactics」でOasysを採用することが発表された。
参考:世界遺産・二条城で「Oasys Special Event」開催──「サマナーズウォー:クロニクル」IPのタイトルなどOasys採用10タイトルの新情報公開
特にこれまでは日本のゲーム会社との提携が中心だったのに対して、海外の大手ゲーム会社であるUbisoftとの提携は今後の世界展開を見据える上で重要な発表の一つでした。(詳細は後述します。)
<登壇企業/プロジェクト一覧>
国内のキープレイヤーを巻き込み、順調に成長、拡大を続けているように見えるOasys。今回はOasysがそもそもどういったサービス(仕組み)を提供しているのか、そして今後見据えているであろう世界展開に向けた戦略を紐解きます。
そもそもOasysとは何なのか?(企業として)
Oasysは「Blockchain for Games」を合言葉に、ゲームユーザーに最高のUXを提供するためにデザインされたブロックチェーンであり、またそれを提供する企業の名前です。
Oasysは、初期のブロックチェーンゲームとして取引高・取引量・DAUで当時、世界一を記録した「My Crypto Heroes」の制作に携わった國光氏が創業者の一人です。彼が既存のDefiの仕組みに対して感じた課題を元に、ゲームユーザーに最適なUXを提供するための仕組み(Gamifi)としてのOasysを構想したと言われています。
「My Crypto Heroes」がリリースされた2018年ごろにDApps(分散型アプリケーション)のプラットフォームとしてほぼデファクトであったイーサリアムを採用して「My Crypto Heroes」は構築されていましたが、トランザクション処理に時間がかかるために、どうしてもロード時間が長く、アイテム購入等のアクションの度に利用料(ガスフィー)が発生してしまう、現在に比べてフラストレーションが溜まる仕様でした。
この課題は、そもそも相対的にゲームよりトランザクションが少ない他分野(金融やDAOなど)での利用を念頭にデザインされたイーサリアムや将来登場するであろう他ブロックチェーンでは解決が難しいため、自らゲーム専用のブロックチェーンである「Oasys」を開発するに至ったと言われています。
(実際、「My Crypto Heroes」のNFTは、後にOasysへと切り替えられています。)
またOasysの創業メンバーにはWeb3ゲームだけでなく、日本ゲーム業界のキーマンが名を連ね、初期バリデータにも錚々たる日本企業が名を連ねます。
※バリデータとはブロックチェーンに接続し、チェーン上の取引の検証を行うノード(コンピューター端末)またはその運営者を指します。Oasysの初期バリデータはある種のOasysの共同運営者と考えられます。
Oasysのバリデータ企業一覧(25社)
また国内のWeb3ゲーム開発を行うほぼすべての主要ゲーム会社と提携をしていることと合わせて考えると、Oasysはまさに日本発、チーム日本で世界を目指す陣容を揃えた会社であると言えます。
そもそもOasysとは何なのか?(仕組み・サービスとして)
通常のDefiプロトコルとゲームに最適なブロックチェーンのプロトコルを比較すると、最も大きな違いはトランザクションボリュームにあります。
ゲームではユーザーの多くのアクションがブロックチェーンを介したトランザクション処理を必要とするため、通常のDefiの処理速度と手数料だと相当にストレスフルなUXとなってしまいます。
よって、「Blackchain for Games」を謳うOasysにおいてはゲームユーザーのUXを最大化する下記のコアな仕組み(ストラクチャー)を有しています。
・ゼロガスフィー(手数料ゼロ)
・高速トランザクション処理
ゼロガスフィーを実現する仕組み:2レイヤー構造(Verse-Layer / Hab-layer)
Oasysの特徴の一つが2-Layer構造です。Verse-LayerとHub-Layerに分かれており、ガスフィーはHub-LayerのVerse Builder(独自Verseの開発・運営者)が負担します。
Verse上にはゲームディベロッパーとゲームをプレイするエンドユーザーがいますが、ガスフィーをVerse Builderが負担するためゲームディベロッパーとエンドユーザーはガスフィーを負担する必要がありません。(ただし、別の形で直接、または間接的に費用を払うことになると考えられます。)
高速トランザクションを実現する仕組み:High-Speed Optimistic Rollups
まず「ロールアップ」とは何かというと、メインのブロックチェーンのセキュリティを活用しながら、オフチェーンでトランザクションを処理し、ネットワークの混雑を解消するためのソリューションです。主に、「オプティミスティック・ロールアップ(Optimistic Rollups)」と「ZKロールアップ」という2つの方法があります。
Oasysが現在、対応している採用されているオプティミスティック・ロールアップはL2(オフチェーン)でトランザクションを実行し、L2上で実行されたデータを圧縮してL1(メインチェーン)に提出する方法です。(なお、ZKロールアップは2024年に対応予定)
つまり、オプティミスティック・ロールアップでは、トランザクションのほとんどをL2で処理し、L1では正当性検証などの一部の処理のみ担うようにすることで、セキュリティを維持しながらチェーンのトランザクション処理速度の向上を実現します。
通常、このオプティミスティック・ロールアップは不特定多数のノードを巻き込んで実施すのに対し、Oasysのオプティミスティック・ロールアップはVerse-Layer(レイヤー2)を運営するVerse Builderと、Appointed Verifierによる2つの要素によって行われます。これによって他チェーンと比較して、超高速でトランザクションを処理することを実現しています。
参考:スケーリング問題の打開策「ロールアップ」とは|仕組みや注目点を詳しく解説
なぜ日本のゲームディベロッパーはOasysを採用するのか?
新規ゲームがOasysを採用する理由は、これまで述べたゲームユーザーにとって最適なUX(ゼロガスフィーと高速トランザクション)を提供していること以外にもう一つあります。
それは、Oasysを採用しているゲーム間に発生するネットワーク外部性です。
Oasysでは下記の3種類のFT(例:ゲーム内通貨)/NFT(例:ゲームアイテム等の知的財産)を提供する仕組みを提供しています。
※FT(Fungible Token:代替性トークン)
NFT(Non-Fungible Token)の対義語で、ビットコインを代表とする代替性がある暗号資産(仮想通貨)の総称です。この場合の”代替性”とは、すべての1ビットコインの価値が同じで、1ビットコイン同士は交換可能であることを意味します。
重要なのは各Verse上、またはゲーム上で発行されたこれらのトークンをOasysが提供するブリッジ機能を通じてVerse間またはゲーム間で交換することができる点です。
つまり、Oasysを採用しているゲームであれば新しいゲームタイトルであっても、これまでプレイしていたゲームで溜めた資産(ゲーム内通貨やアイテム等の財産)を持ち込むことができます。
これによりOasysを採用するゲームタイトルが多くなれば多くなる程、Oasysにネットワーク外部性が生まれるようになります。
国内の新規ブロックチェーンゲームの大半がOasysを採用しており、すでにOasysがデファクト化しつつある現状においては、国内のブロックチェーンゲーム市場においてはすでに十分なネットワーク外部性が生まれています。
そのため、多くのゲームディベロッパーにとっては、Oasys以外のブロックチェーンを採用するインセンティブがない状態になってきていると言えます。
Oasysが世界を制するための戦略
OasysがGamiFiの領域で世界を制するためには、前項で解説した通りユーザーのUXの観点からも、ビジネス的な観点(後発の競合に対する差別化)からも、ネットワーク外部性は重要となります。
「ネットワーク・エフェクト」アンドリュー・チェン著によれば、ネットワーク外部性を伴うサービスが最初に直面するのは「コールド・スタート」の問題であり、その問題を解決する鍵は「アトミック・ネットワーク(自立する複数のネットワーク)」を作ることにあります。
Oasysが日本のブロックチェーンゲームのデファクトになっている現状においては、すでに国内ではアトミック・ネットワークが確立できたと言えます。
よって、Oasysのロードマップにて23年6月以降に定義されているEcosystem GrowthやMass-Adaptionを達成していくためには、次のアㇳミックネットワークをいかに構築するかが重要になります。
Oasysが次にどこでアトミックネットワークの構築を計画するのかを判断する材料は「パートナーシップ」です。
現在は東南アジアに強いネットワークを持つYield Games Guildや韓国の大手ゲームディベロッパーであるNetmarble、フランスのUbisoftとパートナーシップがあります。
ロードマップによればEcosystem Growth期(2023.6 - 2034.6)に入るこれからのタイミングでは、より多くの海外ゲームディベロッパーとパートナーシップを発表することが予測されますが、どこの地域のどのディベロッパーと提携を結ぶのか、そして特に市場が大きいと考えられる北米と中国を誰とどのように攻略していくのかに注目です。
皆さんからのフィードバックを沢山お待ちしています。コメント欄やTwitter等でコメントをお待ちしています。
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