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【web3】NOT A HOTEL は普通のホテルと何が違うのか?

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A.「NOT A HOTEL」の正体は「別荘」に近い。宿泊権の売却・譲渡が可能なメンバーシップNFTを発行している。

今回はweb3の具体的な事例として、NFTを活用した新しい宿泊サービスを提供している ”NOT A HOTEL(ノット ア ホテル)” を取り上げます。

21年9月に第1弾で「NOT A HOTEL AOSHIMA」(宮崎市)と「NOT A HOTEL NASU」(那須)を販売開始したところ、わずか24時間で15億円分が売れ、それから2カ月ほどで40億円分がほぼ完売状態になったことで注目を集めました。

参考:販売開始2ヶ月で、売上40億円に迫る。ホテルでも別荘でも、自宅でもある「NOT A HOTEL」とは何か?

さらに、22年10月のシリーズAでは、ファーストクローズで約20億円の資金調達に成功しています。

そんな、NOT A HOTELですが、そもそも、名前の通り”NOT A HOTEL = ホテルではない” としたら、一体どんなサービスなのか皆さんご存じでしょうか。

ホームページや関連記事を眺める限り、ホテルではないと言いつつも、ホテルと同様に宿泊できそうで、さらにホテルが競合となるビジネスのようにも見えます。

本記事では、NOT A HOTELの具体的なサービス内容やビジネスモデル、今後の成長をトラッキングする上での注目ポイントについて解説します。


NOT A HOTELのビジネスモデルとは?

引用:NOT A HOTEL提供資料

まず、NOT A HOTELの設立経緯を見ていきます。

NOT A HOTELは、アラタナ(現ZOZO)創業者でありZOZOテクノロジーズ取締役を務めた濵渦氏が2020年に立ち上げました。

「ホテルではなく、あたらしい暮らしを。」というコンセプトで、住宅のD2C販売にチャレンジしています。

NOT A HOTELという名称の由来には、創業時の資金調達の際に、銀行から従来のホテルビジネスと混同されて出資を断られるという出来事がありました。

そこで、明確に従来のホテルビジネスとは異なることを示すため”NOT A HOTEL(ホテルではない)”をそのまま企業名とサービス名にしたそうです。

では、ここから、NOT A HOTELの提供価値とビジネスモデルを詳しく見ていきます。
NOT A HOTELは、端的に言うと、「超」ラグジュアリーな宿泊体験ができる物件を、自宅・ホテル・別荘にもアプリ一つで柔軟に切り替え利用できる、というサービスです。

ユーザーは「物件のオーナー」として通常の自宅利用ができるだけなく、自宅として利用しない期間は、宿泊権をNFTで販売することでホテルとして収益化できます。

さらに、この宿泊権のNFTは他人と交換したり、ギフトとして譲渡することもできます。

物件利用の予約や、ホテルとしての貸し出しなどは、専用のアプリで操作が完結できるようになっており、UI/UXが洗練されているのもNOT A HOTELの特徴です。

このような提供価値に対して、NOT A HOTELはどうマネタイズしているかというと、以下のようなマネタイズポイントが挙げられます。

1. 物件の初期販売収入(from オーナー)
:NOT A HOTELが所有する物件やメンバーシップNFTの販売

2. 物件の運営収入(from オーナー)
:オーナーが物件をホテルとして貸し出す際の荷物の預かり、清掃、予約受付などの管理料

3. ホテル収入(from 宿泊者)
:「宿泊料の収入」と「オーナーへのホテル収益の支払い」の差額収入

4.付帯サービス収入(from オーナー、宿泊者)
:オーナーや宿泊者滞在時の飲食サービスや電気自動車のテスラレンタルなど

物件のオーナーからすると、「超」がつくようなラグジュアリーな宿泊施設の購入にはとても大きなお金が必要です。

そこで、NOT A HOTELは、30日単位でのシェア購入(12分割)を導入することで、オーナーが手の届く金額で物件を購入できるようにしています(1棟を購入し、年360日利用することも可能)。


宿泊権をNFTにしている理由

ここまでご覧になって、なぜ宿泊権をNFTにしているのか疑問に持たれた方もいるかもしれません。

先ほど、30日単位のシェア購入について紹介しましたが、1棟で数億円かかるため、30日分の購入でも価格にして数千万円はかかってしまいます。

そこで、NOT A HOTELが目をつけたのは「宿泊権」の販売です。シェアの単位を30日以下にさらに細分化、例えば1日単位することで購入価格を抑えることができますが、今後は購入の都度発生する「重要事項説明」や「登記」などの複雑な手続きと労力が見合わなくなります。

これまでのソリューションでは「宿泊権」を売る方法がありませんでしたが、NOT A HOTELが、そこで目をつけたのがNFTです。複雑な手続きが不要で、ブロックチェーンで所有者を証明し、権利を売買することを可能にしています。

また、この「宿泊権」をNFT化して売買するというコンセプトは実は非常にユニークで、海外の不動産関連のNFTの事例とは異なります。

海外の類似事例である”Fractal Property”や”RealT”のようなマーケット上で取引されるNFTはあくまで物件の「所有権」であり、「宿泊権」はありません。

これは日本と海外(特に米国)との不動産に対する認識の違いに起因し、住む場所としてのイメージが強い日本に対して、資産性をより重要視する海外との消費者マインドの違いに起因すると考えられます。

詳しくは、創業者の濵渦氏のnoteをご覧ください。


NOT A HOTELのターゲット

では、実際にNOT A HOTELのユーザー(物件のオーナー)のターゲットはどういう層になるのでしょうか。

まず、シンプルに、ハイエンドのラグジュアリーな宿泊体験というコンセプトに親和性がある層はターゲットになるでしょう。

さらに、NOT A HOTELというスタートアップ特有の事情として、オーナーの物件購入時の住宅ローンを「個人の与信」に頼らざるを得ないという背景もあります。

なぜなら、NOT A HOTELは、物件の販売を図面(パース)の段階で行っているため、建築後の売れ残りリスクは減らせる一方で、銀行の立場からすると物件が実際には建てられない可能性も考慮して、オーナーの他資産を前提に与信をする必要があります。

上記の点から、NOT A HOTELのターゲットは、住宅ローンを組まずとも十分な現金を持ち合わせており、一定期間を海外やリゾート地で過ごすような富裕層が主なターゲットといえるでしょう。

一方、先ほど紹介したように、1日単位での所有など、リーズナブルな価格での購入できる施策も始まっており、NOT A HOTELの「あたらしい暮らし」というコンセプトからしても、富裕層以外にも広げていきたい意向もうかがえます。


競合サービスとの比較した際の利用者メリットは?

NOT A HOTELを、オーナーと宿泊者のそれぞれの目線で、他の選択肢と比較すると以下のように整理できます。

・オーナー目線

※1シェア購入した持分については通常の不動産と同様に資産として減価償却、売却、相続をすることが可能です。
※2 NOT A HOTELの付帯サービスはNOT A HOTEL MANAGEMENTが提供します。
※3 NOT A HOTELのデザインはパートナーである有名建築事務所と連携して作成します。
※4 専用アプリの「リレントの機能」により簡単にホテルとして貸し出しが可能。貸し出しした期間についてはNOT A HOTELによる買い取り保証が付いているため、未使用時の収入は「固定」です。

・ユーザ(宿泊者)目線

単なる借りる側、すなわちユーザーからの目線で言えば、ハイエンドのホテルやAirbnbの宿泊体験とNOT A HOTELへの宿泊体験は比較項目では大きな差がなく、純粋にNOT A HOTELの物件自体の圧倒的なデザイン性が差別化要素となります。

そう考えると、NOT A HOTELは、Airbnbと比較した場合、よりオーナー目線が強いサービスとも言えるかもしれません。


NOT A HOTELの今後の注目ポイントは?

22年10月にシリーズAラウンドのファーストクローズしたことや第一弾プロジェクトである「NOT A HOTEL AOSHIMA」、「NOT A HOTEL NASU」が22年12月1日より予約ゲストの受付を開始したことから、NOT A HOTELは、PMF(Product Market Fit)の前後のタイミングであることが推測されます。

PMFの明確な定義はありませんが、NOT A HOTELのユニットエコノミクスである物件ごとの採算性の達成可否やそのタイミングが注目されます。

また、後続のプロジェクトでの物件の販売状況や、NFTとして売買される宿泊権の価格の推移も、NOT A HOTELが「あたらしい暮らし」として受け入れられるかどうかを判断する上では重要な指標といえるでしょう。

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