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住宅版テスラ・HOMMAの作る「夢のスマートホーム」を実際に見せてもらったよ(第2回)

今日は住宅スタートアップのHOMMA Inc.を立ち上げた本間毅さんとの対談第2回目です。2019年1月に完成した実験住宅のHOMMA ZEROにお邪魔しました。第1回をご覧になってない方はこちらからご覧いただけます。

住宅版テスラ・HOMMAの作る「夢のスマートホーム」を実際に見せてもらったよ(第1回)

・実はアメリカの家のクオリティは低いという現実
・アメリカの戸建て建築、販売事情
・日本方式でアメリカの家にイノベーションを起こす
・アメリカの住宅業界で成功する勝算


HOMMA Inc.が手がけるビジネス

シバタ: ではHOMMA Inc.は実際に土地を買って家を建てて、家を売るっていうビジネスをするんですか?

本間: します。

シバタ: わあ。ちなみに普通に1軒ずつやると、土地を買ってから家が建ち終わるまで3年くらいかかるという話だったじゃないですか。ホームビルダーの人たちだとどのくらいの期間がかかるんですか?

本間: 同じくらいかかります。

シバタ: 同じくらいかかる!(笑)。

本間: ただし、100軒建てても300年かかるわけじゃないですよね?

大規模なプロジェクトであるほど1軒あたりの時間を考えると小さくなるので、プロジェクトは一気にやる。そしていくつかのプロジェクトを同時並行的に進めることで、パイプラインはずっと流していくんです。

シバタ: なるほど。しかし3年かかるとスタートアップとしては結構辛くないですか?お金的な意味で。

本間: そこは仕方がない、と言ったらあれですけど笑。ソフトウェアで3年かけるのはないですが、家は3年かかります笑。

とはいえ、スタートアップとして段階を踏んでいるところなのでまずHOMMA ZERO。今、この話をしているこの家です。ここはリモデル(リフォーム)なので半年である程度できました。建築許可が必要になるものをなるべく減らして、内装、中のテクノロジー、建てるプロセス、全て1回で動きました。

シバタ: 以前の改装中の写真を見せていただいたんですけど、結構派手に全部はがしましたよね。半年で普通は終わらなくないですか?

本間:はい、フルリモデルしました。僕らはちゃんと社内に設計士がいて、現場監督者がいて、というふうに自分たちである程度、工事をハンドルしたから半年でできました。

シバタ: なるほど、すごいですね。

本間: HOMMA ZEROはフルリモデルで半年。それから今、HOMMA ONEというのはプロトタイプの住宅で、これは1軒ずつ建てています。カリフォルニアは雨が長いので工期が延びているんですけど... HOMMA ONEはちょうど着工したところで、12月にできる予定なので、建てるのにかかる時間は約8ヶ月ですね。

シバタ: すごいですね。HOMMA ONEはちなみにどの辺に作っているとか言えますか? カリフォルニアというのは言ってもいいですか?

本間: 大丈夫です。1軒目は今、ベニシアというところに作っています。北カリフォルニアです。ヴァレ-ホというところの横なんですけど。ここシリコンバレーから車で1時間くらいのところに作っています。

シバタ: それは、モデルルーム的にするんですか? それとも売るんですか?

本間: 最後は売るんですけど、しばらくはショールームとして使おうと思っています。宿泊できるかたちにして。

シバタ: Airbnbですか!僕、行きたいです。

本間: ご招待します。

シバタ: いやいや、ちゃんと払いますけど(笑)。行きたいです。すごい、すごい!


日本のモノがとこまでアメリカで受け入れられるか

本間: 今回、HOMMA ONEは何を目指しているかというと、サイズ的には若干大きいんですけど...

まずモダンデザインで超かっこよくする。それから建てるやり方も結構工夫します。工場がないのでプレハブはできないんですが、ある程度フレームを作って持って行ったり、なるべく現場外で施工ができるような工夫を取り入れます。

シバタ: それはアツいですね。

本間: 実は大きな話がもう一つあって、Panasonicとサンワカンパニーという2つの上場企業と今回提携をして、彼らの持っているシステムキッチンとか、ドアとかキャビネットとか手洗い台とか、そういう日本製のプロダクトをこのために持ってくるんです。

今はアメリカに工場はないけれど、将来的に作れば効率もよくなるし、日本製のモノは収納力も高いし、品質も高い。ただ、サイズが日本向けで小さめなので、今回はカスタマイズして大きくします。

日本の住宅関連の製品ってまだアメリカのマーケットに参入していないモノが多いんです。だから、日本のモノがどこまでアメリカで受け入れられるかというところを追求したくて。

シバタ: 僕の直感ですけど、それは絶対受け入れられますよ。だって、クオリティは日本の方が絶対良いじゃないですか。サイズの違いとかそういうのはもちろんあるとは思うんですけど、今の話、すごく面白いので掘り下げてもいいですか?

日本のメーカーの物を持ってくるというのは、それは日本のメーカーから見るとすごく良い話だと思います。さっきおっしゃっていたように日本は今人口が増えていないので、新しい家を建てるニーズは長期的に見ると減っていくトレンドですよね。日本のメーカーからすると、当然海外に行かないと売上が減ってしまう状況ですよね。この広大なアメリカの住宅マーケットに参入したい日本の企業のゲートウェイがHOMMA Inc.になると。

本間: そうです。

シバタ: 本間さんとHOMMA Inc.を区別するために、あえてHOMMA Inc.と言うようにしますね。これは結構、日本のメーカーさんから引き合い多いんじゃないですか?

本間: 僕らの存在を知ってくれている会社からはいろいろ引き合いが来ています。だから、日本メーカーの大きなところから小さなところまで、建材、素材、プロダクト、いろいろ使えるものは使いたいと思っています。

シバタ: 上場企業とかPanasonicとかそういう大きい会社が多いんですか? 

本間: いいえ。大きな会社には限りません。例えば僕が日本の地方の方とたまたま知り合って、そこで何か凄い素材、建材、製品を持っていたら全然アリです。ちなみに変わったところだと、アメリカにも来ていますけど、ヤマハ楽器さんはマルチルームオーディオを入れていただくという話になっています。いろいろありますよね。あと、トイレもそうですし。

シバタ: トイレはTOTOさんはアメリカにもありますけどね。

本間: LIXILさんもありますし。

シバタ: なるほど。じゃあ、日本のこれを読んでいただいた方で、ぜひHOMMA Inc.と一緒にアメリカ進出をしたいという方がいれば、ぜひご連絡いただくということを途中で忘れないうちにちゃんと言っておきます。

本間: ありがとうございます。


都市型のプレミアムコンパクト住宅というコンセプト

シバタ: ちなみに、HOMMA ONEは何軒建てる予定なんですか?

本間: 今のところプランに入っているのは2軒です。この2軒で自分たちがやろうとしていることがアメリカの市場に受け入れられるということを、証明したいと思っています。実はHOMMA ONEと同時並行でHOMMA X(ten)を走らせようとしています。HOMMA X(ten)というのは、10軒以上まとまって家を作る、小さなコミュニティ開発みたいなものですね。僕らはミレニアム世代をターゲットにしています。都心の近くで通勤が楽なところに住みたいんだけど、ダウンタウンのど真ん中のコンドミニアムに住みたいわけじゃないとと言う若者向けの住宅を開発しようと思っています。

シバタ: 小さいアパートは嫌だという若者ですね。

本間: そうです。本当は一軒家が欲しいのだけど都心に近ければ近いほど高くなる。なので、僕らが今目指しているのは、「都市型のプレミアムコンパクト住宅」というコンセプトを考えていて、もともと何かがあったところをきれいに更地にして、そこを再分割して小さな家を作る計画です。

「アーバン・インフィル、スモールロット・サブディビジョン」と言うんですけど、都心に近い土地を小さなロットに区切って、コンパクトな家を建てる。そうすると、土地面積が小さいので買いやすいより値付けができますし、都心に近くて便利です。

これが今までのホームビルダーのアプローチだと、デザインがダサい、テクノロジーが入っていないという話になるんですが、そこを僕らが補えばプレミアムがちゃんと付くと思っています。安くて小さな家ということじゃなくて、小さいんだけど日本的な間取りの考え方や収納の考え方を取り入れて、広く感じられて収納がいっぱいで住みやすくて、間取りがすごい考えられていて、すべてビルトインされているスマートホームで、デザインもモダンでかっこいいという家にしようと思っています。

シバタ: ミレニアム向けという意味では、すごくヒットする気がするんですけど、HOMMA ONEとかHOMMA X(ten)の1軒当たりの値段というのは、普通のホームビルダーが作る同じようなサイズで同じようなエリアの家と比べた場合、どのくらいの価格になるんでしょうか?

本間: 基本的には、新築建売住宅は土地の値段でほぼ決まってしまいます。どんなに上げようとしても2倍、3倍になりません。なので、僕らはプレミアムと言っている部分を10%なのか15%なのか上乗せをして、その分、お客さまに良い家を買っていただくというところにチャレンジしようとしています。

シバタ: なるほど。値段はちょっと高めにするけど、家の値段は土地の値段と建物の値段があって、建物のほうに10~15%乗るって感じですか?

本間: そういうことですね。といっても、スマートホームのテクノロジーなんてやればできるのに、今までのホームビルダーが全然やって来なかっただけなので、色々な工夫ができると思います。


スマートホーム HOMMA ZERO

シバタ:今日初めてHOMMA ZEROに来たんですけど最新のスマートホームと呼ばれる機能は全部入っていますよね。普通はスマートホームにデバイスを入れようと思うと、後からくっつけるので、チグハグな感じがするんですが、ここはそういう感じがありません。

本間: 新築すればテクノロジーを表に出さずに、様々な機能を設置することもできるし、メンテナンスのし易さも考えてインストールできます。あとは設定なんですよ。普通に素人の人がやると同じ機械、機材使っても、アプリが全部別になっちゃうんですが、1つのアプリで簡単に使えるようにする。例えば、ちょっとお見せします。

本間: Hey Google.
Google:(ピコン)
本間: I'm leaving.
Google: OK.

本間: これから出かけますよと、Google Homeに伝えました。

シバタ: すごいですね。今、電気が消えましたね。

本間: 「今、家を出ます」と言ったんですけど、そうすると、家の電気が付けるべきところを残して、全部消えて、かつ、家の設定温度を下げてとかって、全部連携プレイなんです。例えば、逆は、

本間: Hey Google.
Google:(ピコン)
本間: I'm Home.
Google: Hi Welcome home.

本間: 「ただいま」っていうと電気が全部ついて、サーモスタットがちゃんと元の設定に戻っている。

シバタ: すごいですね。

本間: これなら誰でも使えるでしょう。これを全部ユーザー任せにしてきたのが今までのビルダーなんです。ただこれはあくまで我々が実現したいことのほんの入口にしかすぎません。まだここではお見せできていないんですけど、こういったものをコントロールするオリジナルのセキュリティの高い通信の仕組みであったり、あるいは制御するソフトウェアだったり。そういったものを今準備しています。

シバタ: すごいですね。これならおばあちゃんでも使えそうですよね。


ユーザーもハッピーになる継続課金型収益モデル

本間: 行く行くは家の販売にサービスモデルを付け加えたいと考えています。

例えば、どの家も必ず芝刈りしなきゃいけないし、クリーニングもしなきゃいけないし、保険にも入らなきゃいけないんですよね。そういうものを全部ひとまとめにして、サブスクリプションで多くの人にみんなに提供するっていうリカーリングビジネス(Recurring=繰り返されるという意味で、一度販売して終わりではなく、電力やガスなどと同じように継続的に収益を上げるビジネス)を考えたモデルを先々、僕らの家がたくさん増えてきたら手がけたいなと思っています。

シバタ: なるほど。それはすごい面白いですね。家を建てて売っておしまいではなくて、その後にちゃんとサービスまで提供できるというモデルですね。

普通ハードウェアというのは買った瞬間からバリューが落ちますよね。バリューが落ちるというのはどういう意味かというと、モノが良くならないんですよ。でも特にTeslaやスマートフォンが典型だと思うんですけど、買った瞬間からどんどんソフトウェアアップデートがきて、モノが良くなっていくじゃないですか。今までできなかったことが、明日急にできるようになったりしますよね。世の中をハードウェアとソフトウェアの二つに分けたとすると、HOMMA Inc.のビジネスはかなりソフトウェア的な考え方ですね。

一度販売したサービス(家)がどんどん良くなっていくっていう、ものすごく継続課金に相性がいいモデルだし、ユーザーもハッピーだと思います。それが家でできるようになったら、これはすごいことですよね。

本間: 例えば、保険なんかだと家のデータを取れるじゃないですか?。お客さまの許可を得たうえで、そのデータを保険会社と共有すると、車の保険も同じですけど、データが取れる車の保険って安くなるじゃないですか。 同じように家の保険も安くなるっていうことですよね。

シバタ: それはすごく面白いですね。車だと僕も使っていますけど、「メトロマイル」という走行データを全部吸い出して、走行距離によって値段が変わるすごくシンプルなモデルになっています。

家の保険もそうなっても別におかしくないですよね。 例えば、暖炉で火を付けない人は当然火事の確率が低いから安くなるとか、そういうデータが全部取れたら面白いですよね。

本間: そうです。


自分が使ったことがないものは、人に売れない

シバタ: 初めてHOMMA ZEROに来てびっくりしたんですけど、本当にこのスマートホームの様々なところに、あらゆるデバイスが自然に埋め込まれているというか、自然に入り込んでいて、普通にデバイスを買ってきて差し込むだけだと、こうならないですよね。

本間: 自然に見えるようにするには苦労が結構あって、実は色々なデバイスを試しているんですよ。例えば、このエアコンをコントロールするデバイスは3種類目です。

シバタ: ここで実験しているんですか?

本間: そうです。 結構デバイスを買い換えたりして、僕が自分でインストールとか設定とかしています。自分たちがこの住宅をオフィスとして使っています。お客さんも来るし、プレゼンもするし、ディスカッションもします。その時に使いにくいなと思ったらダメなんですよね。

シバタ: うーん、面白い。

本間: 自分が使ったことがないものは、人に売れないじゃないですか。 家全体を自分たちで使いながら、このIoTデバイスは良いよとか、これはめちゃくちゃ便利だったよねと、自分たちの体験をベースにして売りたいんです。HOMMA ONEには、ここでの体験がかなり生かされています。余談ですけど、今アメリカではGoogle Nest陣営と、Amazon Ring陣営の二つに割れていて、今これが2強になりつつあるんですね。スマートスピーカーもあるので。

シバタ: スマートホームのいわゆるOSというか、様々なデバイスと連携ができるのはGoogle陣営とAmazon陣営の二つがあると。

本間: もともとはAmazon Echo、Alexaというのと、Googleアシスタントといって、スピーカーが二つ出てきたんですよね。それにいろんなものがつながってきたというか、二つのプラットホームがいろんなものを巻き込んで大きくなってきました。

シバタ: 今、現時点ではどっちがいいんですか?

本間: これは、どちらも一長一短があるんですよ。だからもう決めるしかないです。iOSがいいですか、androidがいいですかっていう話とほとんど変わらないです。なので好みの問題に近いと思います。今現在はGoogle Nest陣営を一旦置いています。

シバタ: なるほど。

本間: ただ、これもさっきシバタさんが言ったみたいに、ソフトウェアがどんどんアップデートされていって、変わったらわからないですよね。

シバタ: なるほど。今のところは、HOMMA Inc.ではGoogle陣営に寄っているということですね。今後変わるかもしれないっていうことですね。

本間: はい。特に、資本関係はございません。


ユーザーエクスペリエンスを豊かにするテクノロジー

本間: Google home hubがよくできているんですよ。日本ではまだ売っていないですけど。

シバタ: そうですか。どの辺がよくできているんですか?

本間: ディスプレイがあるので、単純に「電気切って」って言ったら切るんですが、切ったあとにどうしたいかとか。「テレビ点けて」っていうとテレビが点くだけじゃなくて、テレビを点けたたあとに、その音量コントロールの画面が出てきたりとか。Google home hubのプラットホームは家の中にあるデバイスを勝手に探して入れてくれるんです。

シバタ: すごいですね。面白い!

本間: いろんなものが使えるようになっているので、今ここでやるときりがないですけど。ここから温度設定、それから洗濯機の状態、冷蔵庫の状態、あと消費電力の状態、などなど全部ここに聞けばわかるんです。先ほど言った通り、それらを検知するデバイスが全部繋がっているからできるんです。 今のこの部屋の埃の量がどのくらいかも、基本全部見てくれます。

シバタ: おお。それはすごいですね。さすがGoogleって感じですね。

本間: ただ僕らが目指しているのは、テクノロジーの中に人間が生きているようなことではなくて、人間のユーザーエクスペリエンスを豊かにするために、テクノロジーが使われているという状態にしたいんです。

シバタ: この家に来る前は結どんなハイテクなんだろうと思っていたんですが、さっきから何回も言っていますけど、すごくテクノロジーが家に馴染んでいるというか、入り込んでいるというか、自然な形でありますよね。よく見ると、ここにNESTがあるな、とかわかるんですけど。

本間: 人間が快適に安心に暮らせるっていうことがまずあって、中を見てみると実はこのテクノロジーがありました、みたいな。

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最終回の次回は、HOMMA X(ten)の壮大な計画が明らかに!?

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