Q. マネーフォワードに学ぶ継続的な成長を支える5つの経営戦略とは?
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マネーフォワードは2022年10月17日にFY22 3Q(2022年6月〜8月)の決算説明会を開催し、連結売上高は前年同期比+42%で54.6億円に成長していると発表しました。
併せて、通期の連結最終損益は▲95.4億円で、赤字が拡大することも示されました。自社ビジネスの成長への確信があるからこその投資によるものです。
今日はマネーフォワードの最新決算について、解説します。
マネーフォワードの成長はさらに加速
上図はFY17 Q1〜FY22 3Qの連結売上高の四半期推移です。マネーフォワードは2017年の上場ですが、上場後も継続的に成長していることがわかります。
特に事業者向けバックオフィスSaaSなどの企業向けサービスを含むビジネスドメインの成長が著しいです。
FY22 3Q(2022年6月〜8月)のビジネスドメインの売上高は39億円で、前年同期比+49%となっています。また全ドメインが成長していることもわかります。
冒頭で連結売上高の前年同期比は+42%と紹介しましたが、ビジネスドメインはそれを超えていることから、会社全体の成長を牽引しているといえます。
上図は全セグメントにおけるSaaS ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)の推移で、前年同期比は+43%の150.6億円となっています。
SaaSは「ARR10億円の壁」などとよく言われますが、なぜマネーフォワードは10億円どころか、100億円を超えてもこれだけ継続的かつ急速な成長を成し遂げられているのでしょうか?
5つの要因に分けて解説します。
#1 TAMの段階的な拡大
一つ目は、新たなプロダクトをリリースすることで、対象となる市場規模が広がっていることです。
2012年のマネーフォワード創業時の事業は、PMF(Personal Financial Management:個人金融管理)と言われる個人向けの家計簿・資産管理サービスのみでした。
その後、企業のバックオフィス向けSaaS、FinTech推進・DX支援など、段階的に事業領域を拡大することで、全プロダクトの市場規模は5.4兆円まで拡大しています。
PMFの市場規模が8,000万円であることを考えると、約8倍の市場規模にアプローチすることが可能となっています。
今後も海外進出等により、さらに市場規模の拡大を目指していくものと思われます。
#2 中途に加え新卒採用も拡大、さらにグローバル採用へ
二つ目は、積極的な採用戦略です。企業は人が作ることは言うまでもありません。優秀な人材を採用できてはじめて、事業を成長させることができます。
上図は従業員数の推移で、1,800名規模の会社にまで成長しています。金融ドメインを除く全セグメントで人員増となっています。金融ドメインの減少は、2022年8月のフィナンシャル・アドバイザリーサービスの終了に伴うものと考えられます。
売上高に対する人件費の割合は、FY18以降の直近4年間で最高の水準となっています。開発業務委託が多くを占める外注費も加えると、売上高に対して87%が人材にかけている費用と試算できます。
これだけの人材を採用することは容易ではありません。noteでの情報配信などの採用広報などにも力を入れています。
また、新卒採用も直近ではビジネス、エンジニア、デザイナーの各職種をあわせて年間50人規模で採用を行っています。
マネーフォワードCTOの中出氏が執筆したブログ記事によると、さらに今後はエンジニア組織のグローバル化を掲げており、グローバルでの採用も強化していくと発表しています。すでにホーチミンとインドの2拠点で開発チームを持っており、これらを中心に拡大すると考えられます。
#3 M&Aによる事業と人材の確保
三つ目はM&A戦略です。会社の成長を加速させる手法として、M&Aを活用しない手はありません。
もちろんM&Aと一言に言っても簡単にできることではありませんが、飛躍的成長をしている会社はM&Aに長けています。
マネーフォワードでは、これまで10社のM&Aを実施しています。2017年11月と上場後早いタイミングからビジネス領域を中心にM&Aを活用しています。
主にプロダクトラインナップの拡充をテーマとしたもので、既存クライアント向けのアップセルを狙っています。また商圏と事業領域を拡大することでTAMの拡大に寄与しているM&A事例もあります。
#4 事業間シナジーによる「マーケティングの効率化」
四つ目は、事業間の相乗効果です。
新プロダクトの立ち上げや、M&Aを通じて増やしたプロダクトラインナップをそれぞれで販売していては非効率です。
そこで、マネーフォワードでは、それぞれのプロダクト間でマーケティング支援・連携をしたり、法人向けサービスは機能連携をしたり、法人ユーザーを送客したりすることで、顧客獲得の効率化を図っています。
売上高に対する広告宣伝費比率は30%と高い水準ではありますが、それだけ前のめりに投資をしても、シナジー効果が働いて、全体のLTVで見ると正当化される水準と判断しているのでしょう。
さらに、ビジネスドメインでは様々な機能がある中で、段階的な導入を可能としています。例えばまずは経理ツールから導入し、そのうち連動する給与・勤怠システムも導入するというようにニーズに応じてプロダクトの活用が可能です。
さまざまなプロダクトを揃えて、最終的には全てをマネーフォワードで揃えることが利便性向上に繋がる設計となっているのでしょう。
#5 基盤技術の共通化による「開発の効率化」
最後に、開発面での基盤技術の共有化が挙げられます。
開発においても連携することでプロダクト間のノウハウ共有と効率化を図ることができます。データ分析基盤、データセキュリティ基盤、ID基盤、アカウントアグリケーション基盤など、効率化することはユーザーの利便性向上にも繋がり、一石二鳥です。
一般的に共通化することで、1プロダクトを提供している会社よりも開発コスト、スピードともに優位性を築くことができます。
まとめ
今日はマネーフォワードが継続的に成長を続けられている5つの理由を解説しました。ここまでの内容を簡単にまとめてみます。
マネーフォワードはFintechスタートアップとして注目されましたが、上場後はスタートアップを買収する存在としても目が離せません。今後のマネーフォワードの成長にも注目です。
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