Q. Spotifyの広告売上比率がジワジワと伸びている理由とは?
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A. 広告プラン売上の成長を牽引するのはPodcastによる売上で、Spotify Audience Networkという、Podcastの配信者と広告主をマッチングするプラットフォームのインプレッション数が3桁成長、CPMが2桁成長しており、Podcastの売上成長を牽引している。
この記事はゆべしさんとの共同制作です。
先日、Netflixが月790円の「広告つきベーシックプラン」を11月4日から導入することを発表し、大きな話題となりました。
Netflixがこのような新しい取り組みを行った背景については、こちらの記事で詳しく解説しているので、もしよろしければご覧ください。
本日は、Netflixのように、1つのサービスで月額売上と広告売上の2つのマネタイズ方法を展開しているSpotifyについて分析します。
Spotifyの売上は、依然として有料会員による月額売上が中心です。しかし、実は広告プランを利用しているユーザーによる広告売上は徐々に成長しており、全体売上に占める割合が増加しています。
今回は、その理由について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
Spotifyとは?
Q2 2022 Update(July 27th, 2022)
ご存知の方も多いと思いますが、Spotifyとは世界中のクリエイターによる数千万もの音楽やPodcast、ビデオなどを楽しめるストリーミングサービスで、無料で使用することもできますが、月額料金を支払うことで、より便利で快適に活用することができます。
Spotifyの運営会社のスポティファイ・テクノロジーは、2006年にスウェーデンで設立された企業で、2018年4月にニューヨーク証券取引所に上場しました。
その後も世界各国での事業展開を続けており、2022年7月時点で183の国と地域でSpotifyを使用することができます。
Spotifyの売上構成比
Spotifyのカテゴリー別の四半期売上推移を見ると、全体売上は右肩上がりに成長しており、プレミアム売上(上図緑棒)も着実に成長しています。
広告売上(上図黒棒)は、2020年1-3月からコロナによる影響で縮小するも、2021年4-6月以降は徐々にではありますが成長しています。
また、四半期売上の構成比の推移を見ると、広告売上はコロナ初期の2020年1-3月にかけて一時的に減少するも、その後は徐々に割合が増加して、直近では全体売上の10%超で推移しています。
ただ、一般的に広告売上は顧客の広告予算に応じて変動し、顧客の広告予算は10-12月に集中する傾向があるため、その影響を考慮できるように、LTM(直近12ヶ月間の広告売上)の傾向についても見てみましょう。
上図の緑棒グラフは直近12ヶ月間の広告売上、青線グラフは全体売上に占める広告売上の割合を表しており、2020年3Q(2020年7-9月)以降、全体売上に占める広告売上の割合が大きく増加していることが分かります。
また、2022年2Q(2022年4-6月)のプレミアム売上・広告売上の前年同期比成長率は以下の通りで、プレミアム売上は安定してYoY+20%前後の成長率を誇っており、広告売上は直近6四半期でYoY+30%以上の成長率を維持しています。
・プレミアム売上: YoY+21.8%
・広告売上: YoY+30.91%
広告プランの売上を因数分解しよう
広告プラン売上 = MAU × ARPU
・MAU(Monthly Active Users):月間のアクティブユーザー数
・ARPU(Average Revenue Per User):1ユーザーあたりの平均売上
広告プランの売上を因数分解すると、MAUとARPUに分解できます。それぞれのトレンドを見てみましょう。
広告プランユーザーのARPU(上図黒線)は時期によって変動しているものの、直近はコロナ初期の2020年1-3月と比較して回復傾向が見られ、広告プランのMAU(上図緑棒)は安定して成長していることから、この2つの成長によって広告売上が増加していることが分かります。
ちなみに、広告プランユーザーと比較して有料会員のARPUは約9.7倍高いです。サービスの利用時間や利用頻度を考えると妥当なラインかもしれません。
広告プラン売上の成長を牽引するPodcastプラットフォーム
ここまで、Spotifyの広告売上について見てきましたが、広告売上が成長している要因としては、音楽による売上の安定的な成長をベースとしつつ、Podcast(音楽以外の音声コンテンツ)による売上増が大きいです。
Podcast revenue grew in the strong double-digit range Y/Y, led by the Spotify
Audience Network (where sold impressions grew triple-digits and CPMs grew healthy double-digits).
Q2 2022 Update(July 27th, 2022)
2022年2Qの決算では、Podcastの売上は前年同期比2桁の大幅成長で、そのうちPodcastの売上成長を牽引しているのは、「Spotify Audience Network」です。
参考:Spotifyのポッドキャストでは、2021年10月に「Spotify Audience Network」を開始
Spotify Audience Networkとは、Podcastの配信者と広告主をマッチングするプラットフォームで直近決算では、インプレッション数が3桁成長、CPMが2桁成長しており、Podcastの売上成長を牽引しています。
Spotifyは、2019年にPodcast関連企業のAnchorとGimlet Mediaの買収によってPodcast市場に注力しており、Spotify Audience Networkによってさらなる収益化を進めています。
そのため、今後ARPUの成長やPodcast配信者にとって儲かるプラットフォームとなることで、良質なコンテンツがSpotifyに集まりやすくなるかもしれません。
さらに今後はオーディオブック市場にも
SpotifyはPodcastの他にも、オーディオブック市場にも参入しています。2022年2Q時点で、オーディオブック関連企業である「FINDWAY」の買収が完了しており、様々な形式でのコンテンツ配信を進めています。
日本の「音声」市場も今後さらに盛り上がりが期待される
ここまで、Spotifyについて見てきましたが、日本でも「音声」市場が注目されており、音声プラットフォームを運営するVoicyは2022年7月に27.3億円の大型資金調達を発表しました。
参考:音声プラットフォーム「Voicy」、27.3億円を調達。声で、明るい未来へ変えていく。
また、AmazonのオーディオブックサービスであるAudibleの会員数も25%増と急成長しており、「音声」関連の市場が注目されていることが伺えます。
参考:Amazonの「聴く本」会員数25%増 次なる成長への方策
元々、米国では自動車通勤時にPodcastやオーディオブックを聞く習慣があり、利用するユーザー数は多かったのですが、日本でもその習慣が徐々に広がっているフェーズなのかもしれません。耳からインプットしながら他の作業が出来るというのは、忙しい現代社会において必然的に受け入れられる視聴習慣ともなりそうです。
まとめ
本日は、Spotifyの広告売上が徐々に成長している理由について見てきました。
・Spotifyの広告売上は徐々に成長しており、全体売上に占める広告売上の比率が徐々に増加している
・広告プランのARPUはコロナ初期から直近にかけて回復傾向で、MAUは安定的に右肩上がりに成長している
・広告プラン売上の成長を牽引するのはPodcastによる売上で、Spotify Audience Networkという、Podcastの配信者と広告主をマッチングするプラットフォームのインプレッション数が3桁成長、CPMが2桁成長しており、Podcastの売上成長を牽引している
・SpotifyはPodcast市場やオーディオブック市場への進出を進めており、様々な形式で音声コンテンツの配信を進めている
有料会員による売上も安定的に成長している中で、Podcast市場やオーディオブック市場などの隣接している新しい市場への参入を進めているSpotifyの今後の成長に、引き続き注目していきたいと思います。
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