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Q. ChatGPTをリリースしたOpenAI、なぜ4兆円もの超高額な評価額がつくのか?

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A. Generative AI(文章、画像、音楽等のオリジナルなアウトプットを生み出すAI)が投資のトレンドであり、検索ビジネス、ナレッジワーカーのリプレイスする期待があるから

この記事はhikoさん(企画・リサーチ担当)との共同制作です。

ChatGPTは、ユーザーからの問いかけに対して、まるで対話をしているような表現で回答してくれるサービスで、各種SNSを中心に非常に話題になっています。

そんなChatGPTをリリースしたOpenAIは、ほとんど売上が無い中で、時価総額4兆円という驚異的な評価額がついています。

本日は、ChatGPTをリリースしたOpenAIに、なぜ時価総額4兆円という驚異的な評価がついたのか、考察していきたいと思います。


ChatGPTは対話に特化した自然言語処理ツール

ご存知の方も多いと思いますが、ChatGPTは、OpenAI社が開発した「対話に特化した自然言語処理ツール」で、人間を相手にしているときと同じような会話ができるチャットボットのようなものです。

ChatGPTは、「GPT-3」という、Web等から収集した膨大なテキストデータの中でも、いくつかの前処理を施した570GBのデータセットという言語モデルに対して、自然な言い回しの質問に回答できるよう改良したことで、あらゆる種類の質問に適切な表現で回答可能となりました。

ChatGPTのユーザー数の成長スピードは、他のサービスを圧倒しています。

ユーザー数100万人を突破するのにInstagramはリリースから75日、Spotifyはリリースから150日かかったのに対して、ChatGPT はリリースからわずか5日で100万人を突破しています。


ChatGPTができること

前述の通り、ChatGPTは対話型のチャットボットのようなものなので、ユーザーのあらゆる質問に対して回答してくれます。具体的にどのようなことができるのか、見てみましょう。

●検索

上図のように、知りたいことについて聞いてみると、Webページのリンクではなく、文章で回答してくれます。また、「文章をもっとまとめて」や、「簡単に説明して」とリクエストすることで、適切な文章量で回答を得ることもできます。

●アイデア出し

上図のような、正解のない難しい質問に対しても回答が返ってきます。

●Google検索では解決できない疑問の解消

上図のように、なかなかGoogle検索等では解決できない疑問点についても、ChatGPTなら回答が返ってきます。

2023年1月22日時点、ChatGPTは無料で使用することもできるので、是非以下のリンクから実際に触ってみてください。


OpenAIとはどんな会社か

前述の通り、このChatGPTを開発しているのは、OpenAIという会社です。OpenAIは、Tesla CEOのイーロン・マスク氏や、LinkedInの共同経営者のリード・ホフマン氏等が設立に関わった人工知能研究所で、Microsoftから10億ドルの出資を受けています。

特徴として、当初OpneAIは非営利組織として設立されたのですが、2019年3月に「利益に上限のある」営利企業OpenAI LPを創設し、営利と非営利のハイブリッド体制に移行しています。そのため、上限を超えた分の利益は非営利部門に還元される仕組みとなっています。

そんなOpenAIの売上は、Bloombergの以下の記事によると、現時点では「ほとんどない」と言われているものの、更にMicrosoftが1.3兆円の出資検討を行っており、その際のOpenAIの時価総額は約4兆円と、驚異的な評価を受けています。

参考:「チャットGPT」のオープンAIが株式売り出しに向け協議、評価額3兆8700億円-報道


時価総額4兆円の理由 #1:「Generative AI」が現在のアメリカのトレンドであるため

なぜ、このような驚異的な評価をが受けることができたのか、考えられる理由を考察してみました。

Generative AIとは、機械学習を用いることで、既存のデータセット(機械学習で使用されるデータ)から新しい画像や動画、テキストなどを生成する技術のことです。

直近、様々な領域でGenerative AIを活用したスタートアップが生まれており、厳しい投資環境が続く中でも、Generative AIに対する投資は2021年以降、非常に盛んです。


時価総額4兆円の理由 #2:あらゆる領域で付加価値を生み出せる可能性があるため

OpenAIの既存株主であるMicrosoftは、OpenAIの技術をWord、PowerPoint、Outlookなどのアプリケーションに導入することを検討しており、既にクラウドサービスであるAzureへの実装を進めています。

人工知能の活用によって、人々の仕事や生活が変わると言われている昨今、OpenAIの技術を活用することで、中長期的に利益の回収ができることを見込んだ上での評価であることは間違いないでしょう。


時価総額4兆円の理由 #3:検索ビジネスのリプレイス、ナレッジワーカーのリプレイスや支援が期待できるため

その2とも一部重複しますが、Generative AIはあらゆる領域で付加価値を生み出す可能性が高く、その領域は検索ビジネスにおいても同様です。

現に、GoogleはChatGPTの登場で「コードレッド」(=事業に対する深刻な脅威への警戒)を宣言し、Googleの検索ビジネスを根底から覆しかねないほどの技術革新が到来したのではないかと危惧しています。

参考:ChatGPTのリリースでGoogleは「コードレッド」を宣言、AIチャットボットが検索ビジネスにもたらす脅威に対応するためにチームを再割り当て

また、ナレッジワーカー(自身の持つ知識を活用して新たな付加価値を生み出す労働者)自体のリプレイスや、ナレッジワーカーへの支援にも発展できる可能性も考えられます。


時価総額4兆円の理由 #4:OpenAIは営利・非営利のハイブリッド組織であるため

前述のように、OpenAIは営利・非営利のハイブリット組織であるため、通常の株式会社に対する投資の前提と異なる可能性があります。

一般的な未上場企業に対する投資の場合、基本的には投資して得た株式を売却することで、差分を得る(キャピタルゲイン)ことになります。

しかし、MicrosoftのOpenAIへの再投資の後、「出資額を回収するまでOpenAIの利益の75%を得る」という条件での検討が進んでいるとのことで、必ずしも株式の売却による収益に限定されなくなっており、通常の投資における条件とは異なっている為、より高い評価でも許容できるのかもしれません。

参考:マイクロソフト、「ChatGPT」のOpenAIに約1.3兆円の出資を検討か


時価総額が4兆円の企業とは

最後に、時価総額4兆円という評価がどれほど驚異的なのか見てみましょう。

日本の場合だと日本郵政で、記事執筆時点では3.97兆円です(参考:日本郵政の売上(経常収益)は2022年3月期で11.3兆円)。

米国の場合だと、ChatGPTの対抗サービスをリリース予定と言われているDeepMindは、かなり前ではあるものの2014年にGoogleが6億ドル(約600億円)で買収しています。

また、時価総額が近いAI企業としては、自動運転車両開発や無人タクシー事業を展開するWaymo(時価総額は約300億ドル(約3兆円))で、推定売上は14億ドル(約1,400億円)と言われています。

参考:Waymo Revenue and Competitors

このように実際の事例を踏まえると、改めてOpenAIがほとんど売上がない中で、時価総額約4兆円という評価を受けたことが驚異的であることが分かると思います。 


まとめ

ここまで、ChatGPTやChatGPTを開発するOpenAIについて見てきました。

・ChatGPTは、OpenAI社が開発した「対話に特化した自然言語処理ツール」で、人間を相手にしているときと同じような会話ができるチャットボットのようなもの

・OpenAIは、Tesla CEOのイーロン・マスク氏や、LinkedInの共同経営者のリード・ホフマン氏等が設立に関わった人工知能研究所で、OpenAIの売上はほとんどないと言われているものの、時価総額は約4兆円と、驚異的な評価を受けている

・驚異的な評価を受けている理由は、以下と考察できる。(1)Generative AIが現在のトレンドであるため(2)あらゆる領域で付加価値を生み出せる可能性があるため(3)検索ビジネスのリプレイス、ナレッジワーカーのリプレイスや支援が期待できるため(4)OpenAIは営利・非営利のハイブリッド組織であるため

今後、ChatGPTがどのような進化を遂げ、どのような領域に付加価値を与えていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

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