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Q. ARR10億ドル超えでも前年比50%以上の米国SaaSはどこ?

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A. ARR10億ドル(約1,000億円)超かつ前年比+50%以上の企業は、CrowdStrike、Snowflake、Datadog、Zscaler、Applovinの5社

この記事はゆべしさんとの共同制作です。

本日は、KPIデータベースを活用して米国主要SaaS企業のARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)を比較します。

多くのSaaS企業はサブスクリプション(継続課金型)のビジネスモデルを採用しており、継続的に発生する年間売上を意味するARRは、事業の成長性を測るための重要指標の1つです。

そんなARRが10億ドル(約1,000億円)超と大きく、前年比+50%以上の高成長を誇るSaaS企業にはどのような特徴があるのでしょうか?

この記事は無料で公開しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

この記事では、1ドル=100円($1 = 100円)として、日本円も併せて記載しています。


米国主要SaaS企業でARR10億ドル超えは30社以上

日本のSaaS企業は「ARR100億円が1つの壁」と言われており、その壁を突破しているのはfreee・ラクス・Sansanなど10社にも満たない状況です。しかし、米国ではその10倍以上であるARR10億ドル(約1,000億円)超のSaaS企業が30社以上あります。

米国市場だけで見ても日本市場と比較してかなり大きく、多くのSaaS企業が米国以外でもグローバルに事業展開しており、高いシェアを獲得できていることから、このような圧倒的な規模の差が生まれています。


ARR10億ドル超えかつ前年同期比+50%以上の高い成長率を誇っている企業も

一般的に、企業は規模の拡大に伴って成長率が逓減する傾向にあります。

しかし、前述したARR10億ドル(約1,000億円)超の企業でもYoY+50%以上の高い成長率を誇っている企業があります。

上図より、ARR10億ドル(約1,000億円)超かつ成長率+50%以上の米国SaaS企業は以下の5社です。

●ARR10億ドル(約1,000億円)超かつ成長率+50%以上の米国SaaS企業
・CrowdStrike
・Snowflake
・Datadog
・Zscaler
・Applovin


この5つの企業のサービス性質上の特徴は?

これら5つの企業の事業領域は、「セキュリティ(CrowdStrike、Zscaler)」、「監視(Datadog)」、「データ分析(Snowflake)」、「アプリプラットフォーム(Applovin)」で、それぞれ以下のサービスを提供しています。

・CrowdStrike:モバイル端末やサーバー、クラウドなど、企業の様々なITインフラを外部の攻撃から保護できる、クラウド上で稼働するセキュリティサービスを提供

・Snowflake:データソースからデータ分析までの様々な企業のデータ活用プロセスをシンプルにするクラウド型のデータウェアハウス(DWH)を提供

・Datadog:インフラやアプリのパフォーマンス監視など、ITシステムのモニタリング・セキュリティサービスを提供

・Zscaler:場所やデバイスを問わず、安全にインターネット接続できる環境を提供するクラウド・セキュリティサービスを提供

・Applovin:ユーザー獲得やマネタイズなど、アプリ開発者のためのモバイルマーケティングプラットフォームを提供

これらの企業の特徴は以下のように整理でき、企業の業務活動において非常に重要となる機能を提供している事が分かります。

・いずれもソフトウェア企業の業務のコアとなる部分を支えているサービスである
・CrowdStrike、Zscaler、Datadogは、セキュリティや監視を担っており、サービスの安定稼働・信頼性向上を実現する上でコアとなるプロダクトである
・Applovinはアプリケーション構築のプラットフォームであり、文字通り、プロダクト提供の基盤となる
・Snowflakeはデータを集約・分析する上でのハブとなる


5つの企業に共通するKPIはあるか?

これら5つの企業に共通するKPIの1つに「NRR(Net Revenue Retention:売上維持率)の高さ」があります。

NRRとは、既存顧客からの売上がどのように変化したかを表す指標で、100%超の場合は既存顧客からの売上が増加したことを意味しており、一般的に120%を超えている場合は優秀と評価されます。

そのため、SnowflakeやApplovinのNRR160%超えはかなり驚異的(仮に新規顧客の獲得が一切なかったとしても成長率がYoY+60%超え)と言えるでしょう。


NRR120〜130%台の企業もそれぞれの強みを持っている

前述の通り、NRR160%超を誇るSnowflakeやApplovinは間違いなく素晴らしいのですが、NRR120%〜130%台のCrowdStrike、Datadog、Zscalerもそれぞれ強みを持っています。

1.CrowdStrikeの強み
CrowdStrikeの強みは、NRR120%超であることに加えて、課金社数は2022年8-10月時点で2.1万社(YoY+44.0%)と、高成長していることにあります。

つまり、CrowdStrikeは既存顧客からの売上増加を実現しながら、新規顧客獲得もかなりのスピードで進めており、既存顧客及び新規顧客からの売上獲得の両立を実現しています。

2.Datadogの強み
Datadogの強みは、2022年7-9月時点でARR10万ドル(約1,000万円)以上の顧客数が2,600社(YoY+44.4%)と大幅に伸びていることです。

この背景には、「クロスセルの成功(複数プロダクト利用の割合が増えている)」があります。

Next, our platform strategy continues to resonate in the market. At the end of Q3, 80% of customers were using 2 or more products,up from 77% a year ago. 40% of customers were using 4 or more products, up from 31% a year ago, and 16% of our customers wereusing 6 or more products, up from 8% a year ago. We continue to be pleased with this continued adoption of multiple products in ourplatform, which indicates the additional value we are bringing to our customers.

引用:Datadog, Inc. NasdaqGS:DDOGFQ3 2022 Earnings Call Transcript

決算発表では、「Datadogの提供する商品の2つ以上を利用している顧客は全体の80%、4つ以上を利用している顧客は全体の40%、6つ以上を利用している顧客は1年前の8%から増加している」と述べており、クロスセルが圧倒的に進んでいる事が分かります。

3.Zscalerの強み
Zscalerの強みは、2022年8-10月のARR100万ドル(約1億円)以上の顧客が2,217社(YoY+55.4%)と驚異的に伸びていることです。

また、提供製品の年間料金モデルの変更を発表しており、ARPU(Average Revenue Per User:ユーザーあたりの平均単価)の向上が期待されます。


まとめ

ここまで、米国主要SaaS企業のうち、ARRが10億ドル(約1,000億円)以上かつ成長率+50%超の企業を見てきました。

・ARR10億ドル(約1,000億円)超かつ前年比+50%以上の企業は、CrowdStrike、Snowflake、Datadog、Zscaler、Applovinの5社

・上記5社は、企業の業務活動において非常に重要となるセキュリティやサービス監視などの機能を提供している

・上記5社はNRRがいずれも120%超であり、既存顧客からの売上が伸びていることが特徴である。

今後、これらの企業がどこまで成長を続けるのか、引き続き注目していきたいと思います。

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