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Amazonがホールフーズを約1.5兆円で買収した際のM&A舞台裏 - Amazonの交渉力が強すぎた

Amazonが高級食料品スーパーのホールフーズをUS$13.7B(約1.5兆円)で買収するという発表がなされましたが、今日はその舞台裏を詳しく見てみたいと思います。

米国証券取引委員会(SEC)が先週金曜日に公開したM&Aの開示規則(委任状勧誘規制=14A)に詳しくでています。

なぜこんなに交渉の詳細を公開しているのかというと、ホールフーズは上場企業であり、今回の買収に関して臨時の株主総会を開いて株主の承認を得る必要があります。従って「なぜAmazonに対してこの値段で売却をすることが株主の利益につながるのか」と言うことを株主に説明する必要があるわけです。

その説明のための資料の一部に「Background of the Merger」(合併の背景)というセクションがあります。

ここでは買収に至るまでの経緯を詳しく述べるとともに、経営陣が行った交渉にコンプライアンス上の問題がないだけではなくて、株主の利益を最大化するための行動であったということを証明するためのものになります。

「決算が読めるようになるノート」には、過去にもアメリカでの大きなM&Aの交渉の舞台裏を解説した記事が2つありますので、もしよろしければそちらもご覧ください。

・リンクトイン2.6兆円の巨大買収の舞台裏詳細(計5社と交渉していた模様)2016/07/06

・ソフトバンク・ヤフージャパンは、強気な交渉で米ヤフー買収から自ら降りていた件 2016/09/13

ホールフーズが売却を検討せざるをえなかった事情

はじめに今回のM&Aに至る背景を少し詳しく見てみたいと思います。

ホールフーズは食料品スーパーの中では利益率も高く、数年前までは安定的に成長し続けることができてきましたが、ここ数は伸び悩んでいたと言うのも事実です。

株価を見れば一目瞭然で、2013年〜15年と比べて2016年、17年の株価が停滞していたことがよくお分かりいただけると思います。株価の停滞が意味しているのは、つまり株主から見るとホールフーズの成長戦略がいまいちピンときていなかったと言うのが正直なところだと思います。

2016年後半から2017年の第1、第2四半期にかけて取締役会がそのための議論を続けてきたという記載がSECに公開された文書にもあります。

実際、二人いた共同CEOを一人にしたり、新しい取締役を任命したり、取締役会としても一緒にこの状況を打開しようとしていたという意図は十分読み取れます。

ホールフーズの二人の共同CEO

そして2017年の3月に取締役からなる「Ad Hoc Committee」(特定の目的のための特別委員会) というものを結成します。

In order to more effectively discuss and oversee engagement with shareholders between regularly scheduled meetings of the board of directors and topics that could arise from such engagement

このAd Hoc Committeeの目的は、「株主との対話をより円滑にする」といった非常に曖昧な目的ではありますが、株主に対して何かしらきちんと説明をしていく必要を取締役会が強く感じていたことは間違いありません。


アクティビティストが8.8%の株式を取得して、ゲームスタート!

そんな中ついに大きな動きが株式市場で起こりました。

2017年4月10日、JANA Partnersという投資ファンドがホールフーズの発行済株式の約8.8%を取得したという大量保有報告書を提出しました。

JANA Partnersという投資ファンドは、日本で言うところの一昔前にあった村上ファンドの様なアクティビストと考えれば良いかと思います。

つまり投資ファンドから見るとホールフーズの株価は実体に対して安すぎる。そして経営陣が必ずしも素晴らしい仕事をしているとは言えない。という風に見えていた可能性が高いわけです。

2017年4月17日にホールフーズはファイナンシャルアドバイザーと契約をして、そのアクティビストにどのように対応していくかという協議を開始します。

翌日の4月18日には、とある事業会社Xから「戦略的なパートナーシップ」のディスカッションをしたいという内容のレターが届きます。

M&Aを体験したことがある人はよくご理解いただけると思いますが、この「戦略的なパートナーシップ」という言い方はいろいろな意味を含みます。単なる事業提携を示す場合もあれば今回のようにM&Aといった非常に大きなトランザクションに至ることもあります。

4月20日から5月4日の間までに、事業会社Xだけではなく、他の会社や投資ファンドからも、「もしホールフーズがバイアウトを含めた大きな構造転換をするのであればその取引に参加したい」という連絡が複数届きました。

つまり、JANA Partnersというアクティビストが8.8%もの株式を取得した時点で、他の事業会社や投資ファンドもこれからホールフーズ周りで大きな取引が発生する可能性が高いという事を嗅ぎ付けて声をかけてきた訳です。

ここまで来ると会社としてはもう仕方がありませんので正々堂々と一社一社と交渉していくしかありません。

さて、ここからどのように交渉が進んで行くのでしょうか・・・


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・買収の経緯1:ホールフーズ側からAmazonへ打診
・買収の経緯2:X社より具体的な買収提案が届く...
・買収の経緯3:Amazonからは「超強気」の買収提案が届く
・買収の経緯4:1兆円超のM&Aもデューデリジェンスが2週間で終わる!
・個人的な感想

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アメリカ・日本のネット企業(上場企業)を中心に、決算情報から読みとれることを書きます。経営者の方はもちろん、出世したいサラリーマンの方、就職活動・転職活動中の方になるべく分かりやすく書きます。

コメント1件

シバタさん、今回も興味深い記事をありがとうございました。何よりも、この規模の投資の意思決定プロセスがここまで早いことにとても驚きました。日系の大企業に勤める身として、投資決定に至るまでにAt least数か月(この規模で有れば1年でも普通)は掛かることを鑑みると、このスピード感は信じられないです…。上場企業であるが故に、大きな意思決定で失敗した際に投資家から訴えられないよう、幾層なる承認プロセスがあると上司に教わったのですが、同じ上場企業でもこうも違うとなると、Amazonではどんな内部統制をしているのか、日本の大企業と具体的に運用がどのように違うのか、とても気になります。
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