進む「売り方革命」中国は車も自販機で売る〜テクノロジーの地政学・全文公開#4

今、政治・経済で中国企業が話題に上る機会が増えています。背景にあるのは、中国のテクノロジー産業が急速に発展し、米国や日本の脅威になりつつあるという事実です。一方で、中国企業はシリコンバレーおよび米西海岸の企業群と密接に絡みながら(影響を受けて)進化を遂げてきたという側面もあります。

私シバタナオキと吉川欣也さんが出版した書籍『テクノロジーの地政学 シリコンバレーvs中国、新時代の覇者たち』は、このシリコンバレーと中国のテクノロジー動向を深掘りしてまとめた一冊です。全6章を毎週1章ずつ、小分けにしてお届けする「全文公開」をご覧いただき、面白そう、役に立ちそうと感じたら、ぜひ書籍をお買い求めください。

本エントリでは、Chapter04:小売りの章を全文公開します。

この記事の目次

・書籍『テクノロジーの地政学』とは?
・全文公開Chapter04:小売りの概要
・小売りのマーケットトレンド
  シリコンバレー編/広まる新業態と大企業の苦戦
  中国編/市場拡大の裏にある、新たな購買体験を追求する努力
・小売りの主要プレーヤー
  シリコンバレー編/オンラインとオフラインの融合を進める注目企業
  中国編/「クルマも自販機で売る」中国企業の販路拡大戦略
・小売り分野の注目スタートアップ
・未来展望
  中国編/「ニューリテール」の未来はどこに行くのか?

書籍『テクノロジーの地政学』とは?

本書は、2018年6月~9月に我々が主催したオンライン講座「テクノロジーの地政学」を書籍化したものです。講座では、以下に記す6分野を中心に、シリコンバレーと中国それぞれのマーケットトレンドや主要プレーヤーを解説しました。

 Chapter01:人工知能(全文
 Chapter02:次世代モビリティ(全文
 Chapter03:フィンテック・仮想通貨(全文
 Chapter04:小売り
 Chapter05:ロボティクス
 Chapter06:農業・食テック

なぜ「シリコンバレーvs中国」の比較形式にしたかというと、この2地域の企業動向が、今後の世界経済を確実に左右すると見ているからです。私たちがそう考える理由は2つあり、詳しくは以下のエントリで説明しています。

話を戻して、本書は上記した6分野ごとにシリコンバレーと中国の現地情報に精通した「ゲスト解説」をお招きして、

 ・マーケットトレンド解説(シリコンバレー編/中国編)
 ・主要プレーヤー解説(シリコンバレー編/中国編)
 ・各分野の注目スタートアップ
 ・未来展望(ゲスト解説と我々による議論)


の4つをまとめています。

今回取り上げるChapter04:小売りの全文も、この構成に則って紹介しています。文章だけを抜粋していますが、書籍では「シリコンバレーvs中国で各分野の動向を見開き比較」している他、「市場調査会社が出している最新データ」や「主要プレーヤーが開発する製品の説明画像」もふんだんに盛り込んでいます(サンプルページは以下です)。ぜひお手に取ってみてください。

全文公開Chapter04:小売りの概要

ここからは、書籍『テクノロジーの地政学』のChapter04:小売りの章を紹介していきます。

産業全体の裾野が広く、歴史も非常に長い小売りの世界。その歴史の大部分で、小売業者の主戦場は「対人で接客する実店舗」でした。近年は、ECサービスの普及などを理由に売り方にも変化が生じていましたが、シリコンバレーや中国の先端企業はさらに先を行っています。オフライン・オンラインの垣根を可能な限り取り払いながら、データとテクノロジーを駆使してビジネスのやり方を大きく変えようとしていルノです。その最先端をここで紹介しましょう。

《この章のポイント》
■ シリコンバレー
ウォルマートも生き残りをかける大手のデジタル活用
アマゾンGoに象徴される「新しい購買体験」の創造

■ 中国
アリババが打ち出す「ニューリテール構想」の行方
QRコード決済&無人コンビニなどモバイルありきの進化

《この章のゲスト解説》
■ シリコンバレー編
J.フロント リテイリング株式会社
経営戦略統括部 経営企画部
田端竜也氏

2011年に大丸松坂屋百貨店(J.フロント リテイリング)に入社。大丸札幌店にてワインアドバイザー/ソムリエとして売場運営に従事した後、2014年よりJ.フロント リテイリングのIT新規事業開発室へ。以降、一貫してIT、スタートアップ周辺の新規事業案件に携わる。2016年には同社の経営戦略統括部・グループデジタル戦略部へ、2017年から経営戦略統括部・経営企画部の所属となり、現在は日米を往復して情報探索ならびに事業開発に従事している。明治大学大学院にて経営学修士、マレーシア工科大学大学院にて経営工学修士を取得。

■ 中国編
株式会社 Linc  営業・マーケ・採用広報・総務
滝沢頼子氏

大学卒業後、株式会社ビービットに入社。Webサービスなどのユーザビリティコンサルタントとしてデジタルマーケティングを中心としたコンサルティングに従事した後、同社の上海オフィス立ち上げのため半年間中国に駐在。2017年には上海にあるデジタルマーケティング会社に転職。その頃から中国の最先端デジタルスポットを巡るようになり、ブログ『たきさんのちゃいなブログ』で情報発信を始める。2018年、日本に帰国し、株式会社Lincというスタートアップで来日外国人材を留学からキャリアまで一気通貫でサポートする事業を推進している。

小売りのマーケットトレンド

■ シリコンバレー
現在の小売業は、「従来の売り方」では生き残ることすら難しくなっている。そこで、顧客接点から販売戦略まですべてを変えるテクノロジーに期待がかかる。

【投資額】
小売り・消費財への投資総額、2017年は世界で約1940億円

米CB Insights調べ(2018年)。19億4000万ドル規模の投資総額は、この分野では過去最高。背景にはテクノロジーを駆使した新たな小売りプレーヤーの台頭がある。

【EC産業】
生産者と消費者が直接つながる新業態D2Cが台頭


D2Cは「Direct to Consumer」の略で、自社製品をインターネット上で直販する、またはネットと直営店だけで売る業態のこと。すでにユニコーン入りしている企業も。

【買収・提携】
スタートアップとの連携が大企業を救う


米国の小売業界では、2015年~2018年3月までの間に40件近くの大型倒産が発生した。そこで既存プレーヤーは集客・販売戦略を刷新する「技術」を求め出している。

【購買体験】
オンラインとオフラインの融合戦略が成長のカギ

実店舗が主戦場だった小売り企業はITを駆使した販売戦略を強化し、ECのようなインター ネット企業は実店舗での購買体験にイノベーションを起こそうとしている。

■ 中国
世界一の人口を誇る中国は、小売業者にとって垂涎の市場だ。規模もさることながら、新しもの好きの国民性もあって先進的な販売手法が広まっている。

【市場規模】
2018年、中国のデジタルマーケットは約76兆円規模に


独『Statista』調べ(2017年)。デジタルマーケットとは「EC」「トラベル」「メディア」を足した市場。2017年まで首位だった米国を抜き、中国が世界一の規模になる見込みだ。

【EC産業】
世界市場で最も稼いでいる中華系EC企業

2018年時点で、越境ECの売上高シェアはトップ3が中国のプレーヤー、CtoCマーケットプレイスの流通総額ではTaobao(タオバオ)が世界1位。世界を席巻している。

【投資額】
2017年の無人店舗企業への投資総額は140億円超


米CB Insights調べ(2018年)。中国では接客やレジ業務を行う店員がいない「無人店舗」が急増しており、この分野にかかわるスタートアップへの投資も盛り上がる。

【購買体験】
小規模な個人商店にもQRコード決済が普及


上記した無人店舗の運営を支える重要なテクノロジーがオンライン決済。中国ではQRコー ド式の決済手段が広く普及しており、どんどんキャッシュレス化が進んでいる。

広まる新業態と大企業の苦戦

~マーケットトレンドの詳細解説 シリコンバレー編 田端竜也氏に聞く〜

新たなテクノロジーが台頭すると、それらを駆使する新興企業が既存のプレーヤーを打ち負かす「ジャイアントキリング」がよく起こります。小売り・消費財の世界も例外ではありません。

特に近年は、関連するスタートアップに注目が集まる一方、老舗と呼ばれる大手企業が苦境に陥るケースが多く見られます。

そんな中、小売りとテクノロジーの融合は業界の何を変え、どう進化しているのか。全体的なトレンドを、大丸や松坂屋、パルコなどを運営するJ.フロント リテイリングでテクノロジースタートアップ周辺の新規事業案件を担当している田端竜也氏に伺いました。

《投資総額が増える一方、老舗の倒産が続く》

小売り・消費財のマーケットトレンドについて、米の調査会社CB Insightsが3つの興味深いデータを公表しているので紹介しましょう。

まずは、世界の小売り・消費財プレーヤーに対する投資額の推移から。2013年までは年間で総額5億ドル(約500億円)以下だったのに、2014年くらいから急に額が増え始め、2017年は年間総額19億4000万ドル(約1940億円)となっています。これは過去最高の投資額で、投資案件も300件近くと非常に増えている。背景には、以降で紹介していくようなテクノロジーを駆使した新たな小売りプレーヤーの台頭があると思われます。

一方で、CB Insightsの別の調査を見ると、米国で2015年~2018年第一四半期までの間に破産してしまった小売り・消費財企業の数は、一定以上の知名度があった企業だけでも40 件近くに上るそうです。

例えば、日本展開もしている玩具量販店の米トイザらスは、2017年9月に米連邦破産法11条の適用を申請し、翌2018年に全米の店舗を閉鎖しています。衣料品メーカーの米アメリカンアパレル(American Apparel)など、各ジャンルを代表していたような有名ブランドも倒産の憂き目に遭っています。

老舗と呼ばれるような小売業者の倒産が増えている原因の一つは、ECやスマートフォンアプリの他、集客~販売に関する各種の最新テクノロジーに対応できなかったことにあるでしょう。CB Insightsは、小売り・消費財企業が「AIや機械学習、画像認識のような最新技術の活用について、自社の決算報告会でいつ言及したか?」を調べて数社分の比較を公開していますが、結果は「EC vs 既存の小売り企業」で明確に分かれていました。

例えばオークションサイトの米イーベイ(eBay)は2015年の第三四半期、ハンドメイドマーケットプレイスの米エッツィ(Etsy)は2016年の第二四半期と、比較的早い段階で言及していた一方、衣料品販売の米ギャップ(GAP)や雑貨チェーンのベッド・バス・アンド・ビヨンド(Bed Bath&Beyond)、事務用品販売のオフィス・デポ(Office Depot)といった大企業は軒並み2017年の下半期以降に言及していたそうです。

これらの調査結果を総合すると、小売り・消費財のマーケットを変えようとしている新興プレーヤーへの投資は増えているけれど、リアルな実店舗が中心の大手企業は最新技術への対応が遅れていて、それすら考えない企業は倒産のリスクが増大しているということでしょう。

《新業態として台頭するD2C》

では、「増えている投資額」の行き先はどこなのか。

いくつか注目ジャンルがある中で、特に近年盛り上がっているのは「D2C」(Direct to Consumer)です。これは自社製品をインターネット上で直販する、またはネットと直営店だけで売る新業態で、SFA(speciality store retailer of private label apparelの略で、商品の企画・製造から販売までを一貫して行う「製造小売り」のこと)が進化したモデルの一つです。量販店のような販売業者を介さないので、高品質なものでも価格を安く抑えられます。

D2Cのプレーヤーはまずオンライン販売限定で始めて、ある程度ブランドが確立された後に直営店を出すというパターンが多い。また、商品の販売方法も、定額制のサブスクリプションモデルを採用していたりと非常にインターネット的なやり方を取り入れています。

詳しくはこの後の主要プレーヤーのところで紹介しますが、瞬く間にユニコーンとなった企業や、大手企業に巨額で買収されたD2Cブランドも出てきています。

《大手企業がスタートアップとの連携を急ぐ理由》

その他の投資先は、大きく括ると「新しい顧客接点」「新しい購買体験」を生み出すテクノロジーを持つスタートアップになります。彼らはベンチャーキャピタル(以下、VC)のような投資を生業とする人たちから注目されているだけでなく、既存の大手小売りプレーヤーから出資を受けることも多くなっています。

大手企業の中には、最新テクノロジーに対応できず、倒産したり苦境に陥っているところもあると前述しました。そこで、大手は有望なスタートアップと協業することで先端テクノロジーを取り入れ、生き残りを図ろうとしているのです。

例えば化粧品などのビューティーブランドを展開している米エスティーローダー(Estee Lauder)は、AIスタートアップの米エイピア(Appier)や米ダイナミックイールド(Dynamic Yield)などと協業して、顧客理解に向けたデータ解析やオンライン販売のパーソナライズを進めています。実は私がJ.フロント リテイリングの社員としてシリコンバレーに来ているのも、有望な協業先を探すのが目的です。

小売業の歴史を少し振り返ると、百貨店やGMS(General merchandise storeの略で「総合スーパー」のこと)の中には、15~20年前まで「IT活用の先進企業」だったところが少なくありません。CRM(顧客関係管理)のシステムやPOSシステムを自前で構築し、資本の少ない企業に対して競争優位性を確保していました。

でも、それらのシステムがむしろ足かせとなり、D2C企業やアマゾンに代表されるEC企業に比べて、近代的なインターネットのエコシステムから取り残されるようになってしまった。そこで、シリコンバレーのスタートアップのような先端テクノロジーを持つ企業と組むことで、IT戦略をアップデートしたいのです。

《これからの小売りは「体験」のイノベーションが重要》

こうした取り組みが進めば、業界全体として「顧客接点」や「売り方」が今まで以上に多様化していくでしょう。かつ、オンラインでもオフラインでも、「体験」というキーワードが今後の小売業にとって非常に重要になっていくと考えています。D2C企業が一定以上の成長を果たした後、実店舗型の直営店を出すのもそれゆえです。後述するアマゾンGoのような店舗そのもののイノベーションも、もっと進んでいくでしょう。

ちなみに、ECをはじめとしたオンラインの小売りでは、すでにこの傾向が顕著に出始めています。Chapter03:フィンテック・仮想通貨の章でも出てきた、メアリー・ミーカーのトレンド予測レポート「Internet Trends Report 2018」には、モバイルアプリのカテゴリー別成長率で「ショッピング」が初めて1位になったとあります。これまでアプリの人気カテゴリーと言えば「メディア」や「ゲーム」だったので、ショッピングアプリがそれらを上回るほど増えているというのは大きな転機です。

そして、先進的な小売り・消費財企業は、もう次の顧客接点を探し始めています。今後、スマートフォンに次ぐ顧客接点は何になるのか。例えばVR(仮想現実)やスマートスピーカーが新たなインターフェースになるかもしれないと、各社が試行錯誤しています。

市場拡大の裏にある、新たな購買体験を追求する努力

~マーケットトレンドの詳細解説 中国編 滝沢頼子氏に聞く~

中国のマーケットトレンドを把握する上で、人口の多さを見逃すわけにはいかないでしょう。世界銀行の調べでは、国内人口が約13億8000万人(2016年時点)となっており、小売り・消費財のプレーヤーにとっては超が付くほど巨大なマーケットです。

この一大市場ではどんな変化が起きているのか、上海を中心に中国のデジタルスポット情報を発信するブログ『たきさんのちゃいなブログ』の執筆で知られる滝沢頼子氏に話を聞きました。

《デジタルマーケット世界一の理由は使い勝手の良さ?》

まずは、小売り・消費財における中国の市場規模を示すデータをいくつかご紹介します。

マーケット調査メディアの独『Statista』は「China Will Be the World's Largest Digital Market by 2018」(2017年4月27日)という記事の中で、BtoC向けデジタルマーケットの売り上げ予測を掲載しています。ここでいうデジタルマーケットとは「EC」「トラベル」「メディア」を足した市場で、2018年には中国市場の売り上げが年間で約7650億ドル(約76 兆5000億円)になると見込まるそうです。

これは主要先進国の中ではトップの額。それまで首位だった米国市場を2017年時点で抜いており、2019年には約9000億ドル(約90兆円)規模まで伸びると予想されています。

当然、この市場規模の背景には人口の多さがありますが、個人的にはそれだけではないと思っています。中国の主要なECサービスは、「購買体験」を非常に重視しているように感じるからです。

例えば、アリババ・グループのCtoCマーケットプレイス(フリマサービス)であるタオバオ(Taobao/淘宝)は、スマートフォンアプリで商品検索をすると、結果一覧ページには同じくアリババ・グループのBtoCマーケットプレイス、ティーモール(Tmall/天猫)の商品も並列で表示されます。日本のサービスに置き換えて説明すると、Yahoo!ショッピングとヤフオク!が両方同時に検索できるような形です。

それに、お問い合わせもチャットですぐにできます。注文した商品の到着を急いでいる時は「いつ届く?」と気軽に聞けますし、「このデバイスはこの端子につなげて使える?」といった製品仕様についてもチャットで確認できます。日本のサービスだと、お問い合わせへの返信に1~3営業日ほどかかる場合もあるので、それが10秒~20秒程度で返信が来るのは非常に便利です。

配送のスピードも速いですし、何でも売っているので、私も上海に住んでいた時はたびたび利用していました。

《越境ECやフリマ市場でも世界トップに》

こうした中華系ECの勢いを推し量る別のデータもあります。同国のモバイルインターネット研究組織であるiiMedia Researchの「Market Share of Cross-border E-commerce Platforms」という調査を見ると、BtoCの「越境EC」でも中国企業が強いという結果が出ています。

越境ECとはいわゆるクロスボーダーECのことで、海外の商品を売り買いするプラットフォームを指します。このジャンルの2017年第4四半期の売上高シェアを見ると、トップ3はすべて中国の企業でした。

1位はティーモールで27.6%、2位はネットイース(NetEase)という中国企業が運営するコアラ(Kaola/网易考拉)で20.5%、3位はJD(京東商城)で 13.8%。同調査によると、世界的に伸びているアマゾンですらシェアが9.1%なので、皆さんが思っている以上に中国の越境ECが強いということです。

続いて、日本でもメルカリの躍進で改めて注目されるようになったCtoCマーケットプレイス(フリマサービス)の動向を見てみましょう。国内外のEC業者を調査・コンサルティングしているエンパワーショップのブログメディア『eコマースコンバージョンラボ』が2018年6月に発表した「2017年EC流通総額ランキング」によると、世界のCtoCマーケットプレイスの流通総額ランキングで断トツ1位なのが、推計で約43兆円のタオバオでした。流通総額第2位のイーベイが約9兆円、日本で最も高い流通総額だったヤフオク!が9346億円だったことを見ても、アリババ・グループがいかにすごいかお分かりになると思います。

こうした情報は、日本だとあまりニュースになっていない印象があります。アマゾンやイーベイの話題はよく記事になっていますが、アリババ・グループがここまで圧倒的だというのはそれほど知られていないのではないでしょうか。小売りの世界では、もはや中国、特にアリババの動向を見逃せなくなっているのです。

《急増した無人店舗への投資》

ここまでオンライン小売りのトレンドを紹介してきましたが、中国では無人コンビニをはじめとした実店舗による小売りも非常に進化しています。CB Insightsの調べでは、中国における無人店舗関連企業への投資総額は2017年に年間1億4000万ドル(約140億円)超となり、過去最高を記録。前年の2016年は500万ドル(約5億円)前後の投資額だったので、1年でいきなり100億円以上も投資額が増えたことになります。

CB Insightsはこの背景として、アマゾンが2018年1月にオープンした無人コンビニ「アマゾンGo」の存在があると分析しています。アマゾンが無人コンビニ構想を発表したのが2015年。同社内に実験用の店舗ができたのが2016年12月ですから、アマゾンに追い付き追い越せと一気に投資が進んだということです。

《QRコード決済で進むキャッシュレス化》

そして、この無人店舗を支えるコアテクノロジーとなっているQRコード決済は、中国の各都市で普及が進んでいます。

私が中国で生活していたのは2017年~2018年初頭までですが、少なくとも上海ではほとんど現金を使わずに生活できるようになっていました。おばあさんが1人でやっているような小さな個人商店にもQRコードが貼ってあり、以前行ったお寺ではお線香を買うのですらQRコード決済でした。

最近は「現金お断り」と書いてあるお店まで出てきて、スマートフォンがあればもう財布はいらないという状態です。スマホの電源が切れたり、盗まれたりしたら困るので、一応100元(約1600円)だけ持って外出する、という生活をしていました。

ちなみに、上海では大体のお店でアリペイ(Alipay)とウィーチャット・ペイ(WeChat Pay)の両方が使えるようになっており、Chapter03:フィンテック・仮想通貨のところで紹介された「二大巨頭の争い」は当面続きそうです。

小売りの主要プレーヤー

■ シリコンバレー
eBayやAmazonなど巨大EC企業を輩出してきた米国の西海岸地域。この地のIT企業は、ついにリアルな小売りの世界にも変革をもたらそうとしている。

・Amazon Goをはじめ続々と新展開を見せるAmazon

日本でも年々その影響力を強めているAmazonは、利益を新たなイノベーション創出につぎ込む会社として知られている。無人コンビニ「Amazon Go」はその象徴と言える。

・D2Cブームに火を付けたWarby Parker(ワービーパーカー)やBonobos(ボノボス)

眼鏡ブランドのWarby ParkerやメンズアパレルブランドのBonobosは、小売業界に新しい売り方を広めた企業としても知られる。

・ラボ設立&異業種連携でデジタル企業に変貌したWalmart(ウォルマート)

苦しい経営状況にある既存の小売業者が多い中、スーパーマーケットチェーンの老舗 Walmartはオンライン施策を強化して生き残りを図る。

・Nike(ナイキ)が新たな購買体験を生む「IT融合型ストア」をオープン

小売り企業のIT活用では、現場で働く社員でも使いこなせるようなシステム設計が問われるが、Nikeはこの課題を上手にクリアしながら「新しい小売り」を体現。

■ 中国
他の分野と同じように、中国企業は小売りの世界でもユニークなビジネスを矢継ぎ早に生み出している。中心にいるのは、BATの一角であるAlibabaだ。

・「ニューリテール構想」を形にし出したAlibaba

EC企業から「オンラインとオフラインを融合させた新しい小売り企業」に変貌を遂げようとしているAlibaba。家電量販店やスーパーマーケットチェーンへの出資を急ぐ。

・Tmall(ティーモール)が上海で「クルマの自動販売機」を開始

Alibaba GroupのTmallは、フィンテック・仮想通貨の章で取り上げた「セサミ・クレジット」をうまく使いながら手軽にクルマを買えるようにした。

・BingoBox(ビンゴボックス)他、増殖する無人コンビニ普及のカギは?

国内5000店もの出店計画を打ち出すほど成長しているBingoBoxなど、国内外の多くの企業がこの分野に進出している。違いは決済手法だ。

・「ライフスタイル提案型」の直営店を増やすXiaomi(シャオミ)

スマートフォンメーカーとして世界的に知られるようになったXiaomi(シャオミ)は、家電企業とは思えないほど販売戦略を重視している。その理由とは?

オンラインとオフラインの融合を進める注目企業

~主要プレーヤーの詳細解説 シリコンバレー編 田端竜也氏に聞く~

顧客接点と販売手法にイノベーションを起こそうと動くプレーヤーが増えているこの業界では、もともと進化を先取りしていたIT企業のみならず、生き残りをかけて既存の大手小売り企業も新たな取り組みを始めています。ここでは、大小交えたリーディング・カンパニーの動きを中心に紹介していきましょう。

《アマゾンが仕掛けた大型買収劇》

最初に取り上げるのは、いまや世界的なEC企業に成長したアマゾンの取り組みです。2018年9月に時価総額で1兆ドル(約100兆円)超えを果たした同社は、オンラインのみならずオフラインでも積極的に次の一手を打っています。中でもこの1~2年で大きなトピックスとなった3つの動きを紹介しましょう。

一つ目は、2017年に高級スーパーマーケットチェーンの米ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)を買収した一件です。買収額は137億ドル(約1兆3700億円)と巨大な額。これによって、米国ではホールフーズの生鮮食品が「アマゾンプライム・ナウ」(Amazon Prime Now)の販売対象となり、プライム会員なら2時間以内にホールフーズの商品を自宅に届けてもらうことが可能になりました。

2つ目は、2018年6月にオンライン薬局のピルパック(PillPack)を10億ドル(約1000億円)で買収した件です。これによってアマゾンは医薬分野への進出も果たすことになり、非常にインパクトの大きな買収となりました。

なぜなら、米国は医療費が非常に高く、日本のように気軽に病院へ行って薬をもらうのが難しいという人もいるからです。そこで市販薬に頼る機会が多くなるわけですが、アマゾンで薬が買えるならとても便利。しかも、1日に複数の薬を飲まなければならない人向けに、1回で飲む分を「小分け」にして配送するサービスも始めています。

《アマゾンGoに見る「店舗販売」の未来》

そして、最後の3つ目が2018年1月にシアトルで1号店を開業した無人コンビニ「アマゾンGo」です。

仕組みを簡単に説明すると、まずお店に入る前に専用アプリをダウンロードし、入口にある「コード読み取りゲート」でQRコードをスキャンして入店します。その後は商品をカバンに入れて帰るだけ。店内の至るところに設置してあるカメラやセンサーが、カバンに入れた人物と商品を検知し、退店時に自動で決済が行われるのです。

私は仲間とともにこの1号店を視察に行きましたが、ものすごく感動しました。商品購入時に「レジを通す必要がない」というのが、こんなに気持ちのいい購買体験なのかと驚いたのを今でも覚えています。

また、視察にご同行いただいたアマゾンの社員は、「何でも好きなように試してください」と言っていました。カメラに写らないように顔を隠して商品を手に取る、手をカバンで隠しながら商品を取る、同じチョコレートを2枚重ねにしてカバンに入れる、そんなことをいろいろ試しながら買い物してみたのですが、退店時にはちゃんと買ったことになっていました。

カメラやセンサーの精度があそこまで高いと、もう万引きはできないでしょう。「人に商品を渡すのはNG」「商品補充をするカートから商品を取るのはNG」という2つのルールさえ守れば、後は完璧だと思います。しかも、店内にあるカメラやセンサーは既製品を使っているとのこと。システム開発・設置コストの面でも配慮がなされています。

とはいえ1号店には数千個のカメラやセンサーが取り付けてあるそうで、一緒に視察した技術に詳しい仲間は、「専用のアルゴリズムを開発するエンジニアの採用費やサーバー代、GPU代なども全部含めたら、アマゾンGoを1店舗作るだけで100億円~1000億円単位の設備投資が必要になるのでは」と予想していました。現状は、アルバイトを雇ったほうが確実に安く上がるでしょう。それでも、アマゾンの高いオペレーション力を考えれば、多店舗展開をする頃にはさらにコストダウンさせる方法を見つけているように思います。

《D2Cプレーヤーの成功例と成長戦略》

次に紹介するのは、マーケットトレンド解説で注目の新業態として挙げたD2Cの主要プレーヤーです。まだ規模の小さい企業も含めれば、非常に多くのD2Cプレーヤーが生まれています。中でも大きな成功を収めているのは、眼鏡ブランドの米ワービー・パーカー(Warby Parker)とメンズアパレルブランドの米ボノボス(Bonobos)です。

2010年、ニューヨークで生まれたワービー・パーカーは、ファッショナブルで低価格の眼鏡を販売して人気を集め、見事にユニコーンの仲間入りを果たしています。他方のボノボスは、スタンフォード大学を卒業した2名の男性が2008年に立ち上げたサンフランシスコのスタートアップです。シンプルかつ上質なズボンを提供しており、クールなブランディング戦略も奏功して急成長しました。同社は2017年、小売り最大手のウォルマートに3億1000万ドル(約310億円)で買収され、イグジットに成功しています。

両社は、D2Cプレーヤーの特徴である「最初にオンライン販売限定で始めて、ある程度ブランドが確立された後に直営店を出す」というパターンでも、先駆者的な立場となりました。ただ、ワービー・パーカーはすでに80近い直営店を展開している反面、実店舗はそれほど賑わっていない印象があります。成長戦略の一つとしてオフラインでも販路を作り、知名度と新たな顧客を獲得するというアプローチは正しいと思いますが、実店舗を増やし過ぎるとコスト面で旧来型の小売業に近づいてしまうという課題もある。ですので、オンラインとオフラインのバランスが重要になります。  

あくまで私見ですが、D2Cプレーヤーがうまくオフライン戦略を進めるには、出店する場所が大事になると考えています。例えばニューヨークのユニオンスクエアやタイムズスクエア、日本だったら銀座のような場所に直営店を出して知名度を上げ、それを生かしてオンラインで世界中に売るといったような戦略が取れれば最高です。

加えて、「試着してみたい」「買う前に試してみたい」と思うような商材かどうかによっても戦略が変わるはずなので、この辺も踏まえたオンラインとオフラインの融合戦略が問われるでしょう。今後の動向を注視しておきたいところです。

《D2Cは小売りに「売り方革命」を起こす》

もう一つ、D2Cプレーヤーの動向を見ていく際は「売り方」にも目を向けるべきでしょう。D2Cの各社は、ユニークな販売戦略を生み出してきたからです。例えばワービー・パーカーは、購入を希望する人に5種類のサンプルフレームを送り、試着後に合わなかったものを返品してもらうというモデルを採用しています。ボノボスは直営店で試着しても購入はEC経由になるというモデルです。そうすることで、服を買った後も手ぶらで帰れるというユーザー体験を提供しているのです。

同じ衣料品でも、米レント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)はデザイナーズブランドを一定期間レンタルするというモデルで、シェアリングエコノミーの要素をアパレルの世界に持ち込んでいます。また、2009年創業のファッションブランドである米リフォメーション(Reformation)は、「マイクローゼット」というコンセプトの下「接客を受けない直営店」を展開。顧客は広い試着室で気軽に試着できて、気に入ったアイテムをインターネットや店頭の専用端末を通じて予約・注文することで買い物を完結できます。

他にも、化粧品サンプルを毎月「定期便」として送る米バーチボックス(Birchbox)はサブスクリプションモデルを採用するなど、さまざまな売り方が生まれています。

《デジタル企業に変貌したウォルマート》

ここからは、マーケットトレンドの解説で「生き残りをかけてスタートアップとの連携を図っている」と書いた既存の大手小売りプレーヤーの取り組みを紹介していきます。米国内ではウォルマートの動きが非常に象徴的なので、同社の取り組みを中心に取り上げます。

ウォルマートは1969年に創業したスーパーマーケットチェーンです。老舗中の老舗ですが、テクノロジーを利用した新しい試みを積極的に行っています。まず、2011年にIT企業を買収して「ウォルマート・ラボ」(Walmart Labs)という研究開発部門を立ち上げます。

そこが中心になってさまざまなオンライン施策を進めており、例えば2018年6月には顧客とオンライン上で会話しながらニーズに合った商品を提案・発送する会話形コマースサービス「ジェットブラック」(Jetblack)を始めました。当然、モバイルオーダーやモバイル決済もすでに始めていて、業界内では非常に注目されています。

また、スタートアップとの協業という点では、2017年に発表した「Delivery Straight Into Your Fridge」という配送サービス構想があります。これは、ウォルマートのWebサイトやスマートフォンアプリから商品を注文すると、宅配員が配送先の鍵を開けて、直接冷蔵庫に商品を納入してくれるという驚きの構想。鍵を開け閉めする仕組みは、スマートロックサービスを提供するスタートアップと連携して開発すると発表しています。

また、最も気になる安全面についても、顧客のスマートフォンに宅配員の訪問を通知しつつ、家の中での行動をリアルタイムに監視できるようにするそうです。

ただし、さまざまなオンライン融合施策を矢継ぎ早に打ち出しているせいか、中には売り上げにつながっていない取り組みもあり、費用対効果がどうなるのかを見ているところです。日本では、ウォルマートのように大きくて歴史のある会社がここまでアグレッシブにチャレンジしている例があまりないので、そういう意味でも参考になります。

《「現場の課題」にも配慮しながら進化するナイキ》

既存の大手企業がこうしてIT戦略を進めていく際、必ずネックになる問題があります。小売りは労働集約的な産業なので、現場の第一線で働く社員でも使いこなせるようなシステム設計をしなければならないという点です。

スタートアップの人たちはもちろん、本社でIT戦略に携わる私のような人間に比べて、どうしても現場社員のITリテラシーは低くなってしまいます。これを気にし過ぎた結果、技術活用が遅れてしまったのも事実ですが、これらは小売業の宿命とも言える課題ですので、うまく解決している同業他社やメーカーの事例も日々重視して追っています。

その「うまく課題を解決している企業」の一例として、シューズメーカーの米ナイキ(Nike)が2018年7月、ロサンゼルスにオープンしたIT融合型コンセプトストアがあります。

他のナイキストアと何が違うかというと、「ナイキプラス」(Nike+)という同社のオリジナル会員に向けたサービスがとにかく充実している。会員は、アプリやWebサイトから商品のフィッティング依頼などができる他、店舗スタッフにチャットで在庫状況などを質問できるサービスも受けられます。オンラインで購入した商品は備え付けのロッカーで受け取ることができ、返品交換もそのロッカーで行えるので、会員はスマートフォンさえあれば営業時間外でも購入・返品ができるわけです。

スタッフ目線で見ても、そこまで高度なITリテラシーは必要ありません。例えばチャットでの顧客対応は、スマートフォンのSMSでやれるようです。今後はシューズの自動販売機なども設置する予定で(開業時点ではソックスの自販機だけ設置してありました)、新しいユーザー体験をいろいろとテストしていくとのことです。

かつて、アップルは「体験型店舗」というコンセプトを打ち出してアップルストアを作りましたがましたが、ナイキも同じく「どれだけナイキを体験できるか?」といった部分を追求している印象です。「体験」というキーワードは、今後の小売業にとって非常に重要なものになるでしょう。

「クルマも自販機で売る」中国企業の販路拡大戦略

~主要プレーヤーの詳細解説 中国編 滝沢頼子氏に聞く~

中国の大企業の動向を紹介する際、何度も名前が出てくるのがIT御三家のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセントの3社の頭文字を取った造語)です。小売りの世界でも、投資や提携、買収などで影響力を増しているのですが、特に積極的なのはECを本業とするアリババ・グループ。ここでは、同社の取り組みを中心に紹介していきます。

《アリババの「ニューリテール構想」でオフラインの小売りが変わる》

2016年末、アリババはEC企業から「オンラインとオフラインを融合させた新しい小売り企業」に変貌を遂げるためのロードマップとして、「ニューリテール構想」を発表しました。

そのための下準備は、発表の前から着々と進んでいました。2015年には中国の大手家電量販店であるスーニン(Suning/蘇寧電器)に約5700億円も出資して、戦略的提携を結びました。他にも2016年にスーパーマーケットチェーンのシャンジャン・ショッピングクラブ(Shanjiang Shopping Club/三江購物倶楽部)に投資し、2017年7月からキャッシュレス店舗のタオ・カフェ(Tao Cafe)を出店したりしています。

これらはすべて、オフラインで販路を広げるための打ち手です。中国のEC産業は非常に巨大化しているとはいえ、国内のEC経由の売り上げはまだ消費全体の15~20%しかありません。オフラインでの消費活動が、まだ80%近くを占めていることになります。そこで、オフラインの小売りプレーヤーに積極的に出資することで、リアルの「面」を獲ろうとしているのです。

《クルマも自販機で売る時代に》

その取り組みの中でもとりわけユニークなのが、2017年12月にアリババ・グループのティーモールが上海で始めた「クルマの自動販売機」です。中国国内ではオープン前から注目され、販売を開始したらわずか75秒で試乗予約がいっぱいになり、ボルボ車288台が完売したというニュースもありました。

簡単に仕組みを説明すると、巨大な立体駐車場のような自販機の前でインターネットから試乗予約を行い、顔認証で鍵を受け取るという流れになります。試乗中にクルマが気に入ったら、そのままスマートフォンで決済して購入できる。しかも購入時はChapter03:フィンテック・仮想通貨で注目スタートアップとして紹介したジーマ・クレジット(Zhima Credit/芝麻信用)によってセサミ・クレジットの「信用スコア」がチェックされ、ローンの支払い条件設定などが行われます。

極端な話、信用スコアが低いとクルマを買えないし、逆にスコアが高ければさまざまな面で優遇される。通常、クルマは買うと決めてから納車されるまでかなり時間がかかりますし、いろいろな書類を準備するのも手間がかかります。「ならば自販機で手軽に買えるようにしよう」という発想に驚かされます。

それだけではなく、アリババはこの自販機の販売データから「どんな層のユーザーがどの車種を買っているか?」といった情報も得られるので、自動車メーカーとの交渉にも使えるわけです。中国では最近規制が変わり、1ディーラーが複数メーカーの自動車を販売できるようになったので、こうしたデータがとても大事になります。

《アリババ以外の大手も追従》

この自販機は新しい購買体験を生み出した好例ですが、他の大手小売りプレーヤーもアリババのようにテクノロジーを使って購買体験を改善しようと奔走しています。

中でもテンセントは、アリババ同様に小売りプレーヤーへの投資を積極的に行うことで、イノベーションに寄与してます。英ロイターの記事「Alibaba, Tencent rally troops amid $10 billion retail battle」(2018年2月19日)によると、アリババとテンセントの2社による小売りプレーヤーへの投資総額は100億ドル(約1兆円)に上るそうで、投資案件の多くが1000億円レベルになっているそうです。

また、国内EC2位のJDは、2018年1月に北京で生鮮スーパーのセブンフレッシュ(7 Fresh)1号店を開業しました。これから3~5年で全国に1000以上の店舗を開設していく計画だそうです。

この取り組みの狙いも、やはり「スマートテクノロジーをオフラインの買い物と融合させる」ことにあります。実際にセブンフレッシュでは、買い物客がスマートフォンの画面を食料品にかざすと栄養素に関する情報を確認できるような機能を提供しています。

他にも、顔認証による商品決済や、購入した商品を30分以内に宅配するサービス、買い物客の後をロボットが付いてくるコンシェルジュ的なサービスなどを展開しているようです。ただし、吉川さんが見学に行った時は、店員さんが「今ロボットは動いていません」と言っていたそうです。中国は「まずやってみて、ダメなら後で直す」という文化なので、ロボットコンシェルジュもいずれ活躍してくれるでしょう。

《急増する無人コンビニ、事業の成否は決済方式にある?》

中国の都市部では今、本当にたくさんの無人コンビニ(無人店舗)が登場しています。有名どころとしては、EC企業のチュウザン・ビンゴボックス・テクノロジー(Zhongshan BingoBox technology/中山市賓哥網絡科技)が始めた無人コンビニのビンゴボックス(BingoBox)があります。2018年1月には約80億円の資金調達に成功しており、今後国内で5000店舗を開設する予定だそうです。

また、オーシャン( Auchan/欧尚)というフランスの会社は、アリペイやウィーチャット・ペイを採用することで商品決済をすべてスマートフォンで行う無人コンビニを展開しています。買い物客はコンテナのようなお店の入口でQRコードをかざして入店し、商品をスマートフォンでスキャンしてオンラインカートに入れ、退店時にオンラインで会計する仕組みです。

なお、中国では無人店舗の決済方式が大きく4つに分かれていて、その一つがオーシャンのような「セルフレジ方式」になります。他にも、アリババ出身の創業者が始めたゴリラコンビニ(猩便利)などがこの形式を採用しており、レジに並んで待つ時間が不要なため出勤前やランチタイムはとても便利です。

2つ目は「RFIDタグ方式」で、商品に貼ってあるRFIDのシールを店舗の出口にある専用機器が読み取って決済するやり方です。イメージとしては、商品を持って駅の自動改札を通ると勝手に決済されるような感じです。事前に顔も登録してあるので、顔情報と会計データがひもづいて決済されます。この形式は、大手家電量販店のスーニンなどが試験的に導入しているところです。

3つ目は「顔認証+画像認証+重量認証方式」で、アマゾンGoに近いやり方です。入店時に顔認証されて、商品を取るとカメラが検知するという形で、加えて正確性を高めるために棚から商品を取った時に重量認証されます。ジエン24(jian24/简24)という無人コンビニがこの方式を採用しており、手ぶらで入って商品を持って出るだけで決済が完了する点を売りにしています。ただ、同社は突然の閉店や故障が多く、まだまだスケールする段階ではないという印象。技術的には非常に高度なシステム構築が必要なのだと思われます。

そして最後の4つ目は「手のひら認証方式」。深センにあるスタートアップがアリババと提携して出店したテイク・ゴー(Take Go)という自販機が、この決済方式を導入していました。事前に自分の手のひらを登録した上で、手のひら認証+電話番号の下4桁を入力すると、商品棚のドアロックが解除される仕組みです。

ただ、棚の中にあるのは一般的な自販機と変わらない品ぞろえだったので、現時点では「手間の多い自販機」でしかない。購買体験の向上を見据えてサービス開発をしているというより、まずは手のひら認証技術を試している段階という印象でした。それでもまず店舗を出して、実験と失敗を繰り返しながら進化させようとするところが中国らしいところ。今後はまた新しい(そしてより便利な)無人コンビニが誕生するかもしれません。

《直営店を通じて「ライフスタイル」を提案するシャオミ》

無人コンビニとは全く異なりますが、実店舗の展開に力を入れている企業として印象的な動きを見せているが、家電メーカーのシャオミ(Xiaomi/小米)です。

スマートフォンメーカーとして世界的に知られる同社は、2017年11月に自社の家電製品を展示販売する「シャオミ旗艦店」をオープンしました。1号店は深センにあり、見た目はほとんどアップルストアと同じ。実際にアップルストアのデザインを手掛けたサンフランシスコのクリエイティブ会社、エイト(eight)が店舗をデザインしたそうです。それくらい本気で、この1号店に投資をしたというわけです。

なぜこの話題を取り上げたかというと、シャオミは今まで築いてきた「シャオミ・エコシステム」の販路として、実店舗展開を重視し始めているからです。

同社は過去5年で100以上のスタートアップに投資をしており、家電製品のみならずサングラスやペンなど多種多様な製品を自社のエコシステムに取り込んでいます。そのラインアップは、米国や日本でも類似するメーカーがないほど豊富です。これからは膨大な商品ラインアップをどう売っていくか? という点が大事になるので、実店舗でライフスタイルを提案しながら、一緒に販売していく戦略を取ろうとしています。

先ほど紹介したシャオミ旗艦店も、フロアの2階はライフスタイルをテーマにした展示を行っており、今後は国内で1000店舗、グローバルでは計2000店舗に増やしていくと発表しています。

北京にあるモールの中にも、シャオミ旗艦店より小規模な「スマートミー」(smartmi)というスマートミー社(シャオミ・エコシステムの1社)の直営店を出していて、シャオミ・グループのスマートなブランドイメージを広めるような店舗デザインになっていました。日本のメーカーで、シャオミのような販売戦略を取っているところはほとんどないので、ぜひ日本の家電メーカーの方々にも知ってほしいです。

小売り分野の注目スタートアップ

この分野のスタートアップは、大きく【店頭体験・店舗】の新しい形を提供する会社、【オンラインマーケットプレイス】の運営会社、【D2C】プレーヤーの3つに分類できます。

中でも、オンラインとオフラインの融合を実現するようなテクノロジー企業には、我々も非常に注目しています。ここで、その一部を紹介しましょう。

《シリコンバレー/店頭体験・店舗》

■ RetailNext(リテールネクスト)
2007年に米Cisco Systems(シスコシステムズ)出身のエンジニアたちによって設立されたRetailNextは、史上初の「小売り専門IoTプラットフォ ーム」として、リアルな実店舗の分析サービスを開発しています。

仕組みとしては、まず大手メーカーが提供する高度なアナログカメラやIPカメラを駆使して店舗内の人の動きを詳細に把握。買い物客の性別や年齢、新規顧客かどうか、リピート頻度、動線、最終的な購入商品などの情報を収集し、収益とどのような関係性があるかを分析しています。2018年1月には、世界で初めてディープラーニングを利用したAI内蔵のIoTセンサー「Aurora v2」を発表し、話題を呼びました。

同社の最終目標は、これまでEC企業がやっていたような顧客分析を、リアルな実店舗でもできるようにすること。そのためには、既存の小売りプレーヤーが構築しているCRMやPOSシステムと、どのように(どこまで)つなげることができるか? が次の課題になるでしょう。とはいえ現時点でも多くの実店舗に導入されており、日本でも有名百貨店や下着メーカー、アウトドア メーカーなどが利用しています(吉川)。

■ Percolata(ペルコラータ)
2011年に設立された「ピープルアナリティクス」の会社で、日本の人材大手であるパーソルホールディングスが出資したことでも知られています。

同社のシステムは、実店舗の顧客の数、商品購入率、商品を見た回数、店員から離れた回数など詳細な顧客データを収集し、それと従業員のシフト情報を組み合わせた分析を行うことができます。店舗の来客数予測や従業員のスケジュール調整など、さまざまなサービスを提供していますが、特に従業員のシフト最適化や店舗内での理想的な配置を分析するシチュエーションで重宝されています。パーソルが出資しているのも、この特徴があるためです (田端氏)。

■ New Store(ニューストア)
モバイル起点の新しいショッピング体験を形にしている会社で、2018年9月時点では「全店舗での在庫共有販売」「在庫・物流周りの統合システム」「電子カルテ」「スマホ決済」の4つのソリューションを提供しています。

これらのソリューションをつなぐと、こんなことが可能になります。あるブランドが好きな女性が、インターネットで見つけた商品を登録しておくと、移動中に「近くに販売店がありますよ」とプッシュ通知が来るようになります。それを見て実際に店舗へ行く際は、お店の販売員にも「○○さんが来ます、在庫を準備しておいてください」というメッセージが飛び、試着の準備などを進めておくことができます。かつ、販売員は、過去の購入履歴などを電子カルテでチェックできるので、別のアイテムを推薦するなどパーソナライズした接客ができるのです。

同社のシステムはAPIを通じて他のシステムにつなぐこともできるため、今後は欲しいアイテムをオンラインで購入したら、在庫のあるお店からUberなどライドシェアサービスのドライバーが商品をピックアップして、指定の場所に配送してくれるようなこともできるかもしれません。さまざまな発展形が考えられるサービスです(田端氏)。

■ Standard Cognition(スタンダード・コグニション)、Aifi(アイファイ)
この2社は、Amazon Goに近い購買体験の実現を目指すスタートアップです。

まず、Standard Cognitionは2017年に設立されたばかりの会社で、2018年7月時点での資金調達額は総額1120万ドル(約11億2000万円)となっています。現在提供しているのは、店舗内で顧客が持っている商品をカメラでリアルタイム追跡し、顧客がレジ前に立つと一瞬で商品の合計額が表示されるシステムです。今後は、顧客の嗜好や購買習慣を把握し、それに応じて店舗の棚に置く商品をカスタマイズするためのマーケティングシステムなども提供していく予定だそうです。

もう一つのAifiも、無人店舗を運営する際に必要となる各種テクノロジーを開発・提供しており、Amazonでキャリアを積んだエンジニアが設立していることでも注目されています。AIを使って店内で顧客が手に取った商品をリアルタイムで追跡し、レジに並ぶことなく決済が行われるという仕組みは、Amazon Goと同じ。ただし、画像のみのアプローチや重量センサーを組み合わせたものなど、細部に違いがあるので非常に興味深いです(田端氏)。

■ Plexure(プレクシュア)
2010年設立のスタートアップで、オンライン決済サービスを提供しながら利用者に対するロイヤリティプログラムを実施。ポイントを貯めるなどのサービスを受けることができる、いわば「アプリ版のTポイント」です。

また、ポイント提供のみならず事前決済でピック&ゴー(アプリ経由で注文と決済を済ませてから店舗に行き、すぐに商品を受け取って帰ること)ができる仕組みづくりにも注力しており、2018年にリリースされた日本マクドナルドの専用アプリも同社の仕組みを利用しているようです(田端氏)。

《シリコンバレー/オンラインマーケットプレイス》

■ Stitch Fix(スティッチ・フィックス)
洋服のファッションコーディネートをサブスクリプションモデルで提供するスタートアップで、日本で言うと「ZOZOおまかせ便」や「エアークローゼット」のようなサービスを提供しています。AIとスタリストをうまく組み合わせ、毎月その人にあったコーディネートを自宅に届けるモデルが、忙しいビジネスパーソンを中心に支持されているようです。

特にAI活用には非常に力を入れており、長く使えば使うほど、自分の体型や好みにあった洋服が届くようになります(ユーザーは送られてきた洋服の中から、気に入ったもの以外を返送する仕組み)。2018年7月からは、子供向けサービスもスタートしています(吉川)。

■ LetGo(レットゴー)
2015年設立のフリマアプリで、日本のメルカリと競合する存在です。もともと米国では、中古市場のマーケットプレイスとしてクラシファイドコミュニティサイトのCraigslist(クレイグズリスト)やeBayなどが知られていました。ただ、サイトのUIが煩雑だったり、探し物を見つけにくいという難点があったため、LetGoのような新サービスが出てきたという流れです。

2018年8月に5億ドル(約500億円)を調達し、合計調達額を9億7500万ドル(約975億円)としています。また、2017年末の時点でアプリが7500万ダウンロードされたと発表しています。この領域にはFacebookも参入するという噂があるので、今後の動向に注目です(吉川)。

《シリコンバレー/D2C》

■ allbirds(オールバーズ)
ニュージーランドの元プロサッカー選手とクリーンテクノロジー起業家の2人が2014年に設立したシューズブランドで、サンフランシスコのD2Cブラ ンドを代表する1社になっています。

自社のスニーカーを、量販店を介さず直接販売しており、これまでの資金調達総額は2750万ドル(約27億5000万円)となっています。私も同社のスニーカーを愛用していて、履き心地が良い上、洗濯機で洗うこともできるので便利です(シバタ)。

■ Rothy's(ロージーズ)
2015年創業、サンフランシスコで今最もホットなD2Cブランドで、廃ペットボトルから作った女性用フラットシューズを販売しています。

品ぞろえは4種類の女性用とキッズ用1種類だけ(2018年10月時点)ですが、ファッション誌『ヴォーグ』のファッションエディターやVCなど幅広い層から支持を得ており、累計2万足が予約待ちになっているほどの人気です。

顧客のエコ意識に訴求しながら、洗練されたスタイルのシューズを売っていくというブランド戦略で、これまでに700万ドル(約7億円)を調達しています(田端氏)。

《中国/店頭体験・店舗》

■ Hema Xiansheng(フーマー・シェンシェン/盒马鲜生)
2016年3月、シリーズAラウンドでAlibabaから1000万ドル(約10億円)の出資を受けたスーパーマーケットで、Alibabaのニューリテール構想を体現したような最新型の店舗となっています。

オンラインで注文された商品を置いておく物流倉庫や、普段アプリから買う人が新しい商品と出合うためのショールームなど、既存のスーパーにはなかったような設備や仕掛けがたくさんあります。食材の良さも売りで、海鮮物をその場ですくってその場で調理してくれるレストランも併設されています。まさに新しい購買体験を提供している好例です(滝沢氏)。

■ Dicos(ディコス/徳克士)未来店
中国で有名なファストフードチェーンが、試験的に始めた無人レストランです。お客さんは机の上に貼ってあるQRコードを読み取ってWeChat経由で注文し、そのままWeChat Payで決済して商品を買うことができます。

ここまでは普通のモバイル決済と大差ないのですが、ユニークなのは商品の受け取り方。商品を買うと暗証番号が発行され、お店に備え付けてあるロッカーのようなボックスに番号を打ち込むと商品を受け取れます。この一風変わった購買体験がウケて売り上げが上がっただけでなく、店舗の人件費もだいぶ削減できたというニュースが出ていました(滝沢氏)。

■ Zhidashudian(ジーダシュディエン/志達書店)天猫未来店
ここは、もともと復旦大学という有名大学近くの一般的な本屋だったのですが、Alibabaがコラボして無人店舗として再出発したお店です。顔認証+RFIDタグで決済が完了する方式で、内装が近未来的かつ秘密基地っぽく楽しい印象を与えてくれます。いずれはビッグデータでその人に合った本をレコメンドすることも構想しているようですが、2018年9月現在ではまだサービス化していないようです(滝沢氏)。

《中国/オンラインマーケットプレイス》

■ Meituan(メイトアン/美団)
同社はライフスタイルにかかわるさまざまなサービスを提供している会社で、例えばDazhong Dianping(ダージョンディエンピン/大衆点評)という日本の食べログのような口コミサイトを運営しています。

他にも、レストラン予約やフードデリバリーサービス、旅行サービスや配車サービスなど多面的に展開しており、2018年4月には自転車シェアリングサービスを展開するMobike(モバイク)を27億ドル(約2700億円)で買収しました。ただ、事業範囲が広い分、各分野に競合がおり、例えばフードデリバリーのMeituan Waimai(メイトアン・ワイマイ)はAlibaba傘下のEle.me(ウーラマ)とシェアを取り合っている状況です(滝沢氏)。

■ yizhibo(イージーボー/一直播)
これは2016年5月にサービスを開始したライブコマースのアプリで、毎日およそ1000万人のユーザーが視聴、生放送1回の視聴者は最大450万人を達成しているそうです。立ち上げの翌月から約300人の有名人が生放送を開始し、一気に知名度を高めました。

ライブをAlibaba傘下のTaobaoなどのECに直結させ、ライブコマースから商品購買をつなげる仕組みづくりを推進しています(滝沢氏)。

「ニューリテール」の未来はどこに行くのか?

~未来展望 中国編 滝沢頼子氏に聞く~

この章の最後は、アリババが仕掛ける「ニューリテール構想」の未来について、シバタと吉川、滝沢氏3人の私見を交えて議論しました。

シバタ アリババが進めるニューリテール構想は、他の小売りプレーヤーにも大きな影響を与えていると感じました。アリババが打つ次の一手はどんなものになると予想していますか?

吉川 今はまだ、これまでECで培ってきた販売~決済~デリバリーの技術と知見をリアルに応用し始めたばかりなので、まずはその動向を見守りたいと思っています。今後については回答が難しいですが、どんな「ジャンル」を押さえにいくか? には非常に興味があります。

順番的に生鮮食品から押さえようとしているのはハッキリしていて、この点はグローバルで競合になるアマゾンの動きをよく見ているという印象です。ここから、今回話題に挙がった自動車などを押さえた後、次はどこを狙うのか。また、そこに保険やオンライン決済がどう絡んでいくのか。業界によっては規制もあるので、それらがどう変わっていくかも合わせて見ていきたいです。

滝沢 私の理解では、「ニューリテール」というのはデータを活用してオンラインとオフラインを融合させていこう、それでユーザー体験をよくしていこうという構想です。

今までは、O2O(オンライン・トゥー・オフライン)のような概念に代表されるように、オンラインとオフラインを「どうつなぐか」という考え方で戦略が立てられることが多かったように思います。しかし、オンラインもオフラインも結局は顧客接点の一つでしかありません。それぞれを分けて「どうつなぐか」を考えるのではなく、オンラインとオフラインを一体のものとして捉え、心地よい購買体験をどれだけ作っていけるかが成否を分けるのではないかと思います。

シバタ ECビジネスで最も大変なのは、購買頻度を上げること。例えば、楽天市場やアマゾンの購買頻度を見ると、普通の会員は月平均1回程度です。年平均にすると12回しか使われていません。そんな中、購売頻度を上げるためにもリアルな小売りに進出したい、それも食料品など毎日買うものを押さえたいという考えは非常によく分かります。ライフタイムバリューを上げるためにも、ニューリテール構想は欠かせない次の一手なのだと思います。

吉川 リアルな購買データを今以上に収集できれば、その時々の売れ筋商品も分かるようになるので、いずれはアリババが自社ブランドを作って販売するようにもなるでしょう。

シバタ そのパターンは、アマゾンが典型的ですね。まずサードパーティーの店舗に商品を売ってもらい、売れ筋が分かってきたら自分たちで仕入れて安く売り、さらに自分たちで作れると思ったらプライベートブランドを立ち上げることもあります。

吉川 アリババがそこまでドラスティックにやるかは分かりませんが、EC企業がメーカーと組んで自社製品を作っていく流れは確実に出てくると思います。データを持っているほうが強いという好例ですね。

アリババは中国国内だけでなく、インドのEC企業や小売りプレーヤーにも積極的に投資をしているので、どんどんデータを蓄積して進化していきそうです。もちろん、データを集めた後にどう解析するかも言うほど簡単ではないので、データ解析のテクノロジーにも今以上の進化が求められます。

滝沢 中国の場合、データを集める前に壊れてしまうパターンもよくありますしね(笑)。

吉川 そうそう。それに、中国の会社は意思決定が非常に早いので、ダメならすぐ撤退します。逆に「動いたらすごいよ」という側面もあるので、大きな投資が得られたらすぐチャレンジする。そういう意味で、中国は楽しいですよ。

小売りの世界は“巨人”が多く、成功するまでに時間的・金銭的に非常に大きな投資が必要です。だから、今勃興しているニューリテールのプレーヤーは、どうやって巨人たちの間をかいくぐって成長していくのか。無人コンビニなどは、決済だけでなく人工知能や行動追跡技術の進化も必要になる分野ですから、それらの進化と合わせて長い目で動向を見ていくのが大事になるでしょう。

これでChapter04:小売りの章は終わりです。ここまで読んでいただくと、別章で取り上げたAIやフィンテックの進化が小売りもに多大な影響を与え、「売り方革命」が起きていることがお分かりになるでしょう。この流れは、いずれ飲食業など異なる産業にも波及していきます。シリコンバレーや中国の先進企業は具体的にどんな取り組みを行っているのか? ぜひ本書で詳細をチェックしてみてください!

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