Q. テスラの販売台数1台あたりの営業利益は国内自動車メーカーの何倍?
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EV(Electric Vehicle:電気自動車)と言えばテスラを思い浮かべる方も多いでしょう。では、テスラは日本の自動車メーカーと比較してどのような位置にいるか、答えられますでしょうか?
本日は、各社の決算資料を元に、EV販売台数世界1位のテスラと、国内大手自動車メーカーであるトヨタ自動車(以下、トヨタ)、日産自動車(以下、日産)、本田技研工業(以下、ホンダの販売台数や売上、営業利益などの重要KPIを比較していきます。
ご存知の方も多いと思いますが、テスラは2003年に米国で創業され、CEOのイーロン・マスク氏が率いる電気自動車及びクリーンエネルギー関連企業で、世界の時価総額ランキングの上位に君臨しています。
そんな注目度の高いテスラが、国内大手自動車メーカーであるトヨタ、日産、ホンダの販売台数や売上・営業利益にどれほど迫っているのか?あるいは既に抜いているのか?
2022年4月〜2023年3月の決算内容をもとに比較しました。
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販売台数ではトヨタが圧倒的
まずは、トヨタ・日産・ホンダ・テスラの4社の「販売台数(※四輪車に限定)」を見ると、多い順に、トヨタ(961万台)→ホンダ(368.7万台)→日産(330.5万台)→テスラ(142.7万台)と、トヨタが他社を圧倒している事が分かります。
テスラの販売台数は、現時点では他社に劣っているものの、各社の販売台数の成長率が伸び悩む中で、YoY+34.5%と驚異的な成長率を記録しており、販売台数自体も他社と比べ桁違いに少ないというわけではありません。
仮に、各社の成長率がこのまま推移すると、数年後にはテスラは日産やホンダの販売台数を超える可能性も十分にあるでしょう。
EVに絞るとどうなるか?
テスラは四輪車の中でも、EVを販売しているため、四輪車から更に絞ってEVについて比較します。
※2023年5月の記事執筆時点で、EVの販売台数を公開しているのは、テスラを除くとトヨタのみのため、この記事ではトヨタとテスラを比較します。
トヨタの「電動車」の販売台数は、2022年4月〜2023年3月の1年間で284.9万台(YoY+5.4%)です。テスラは前述の通り142.7万台(100%EVを販売)であった為、約2倍の差があります。
しかし、トヨタの電動車の内訳を見ると、95%はHEV(Hybrid Electric Vehicle:ハイブリッド自動車)であり、電気のみで動くBEV(Battery Electric Vehicle)は3.8万台と、まだまだ規模感は小さいが現状です。
ただ、2023年4月〜2024年3月の販売台数の見通しでは、トヨタのBEVは20.2万台(YoY+435.6%)となっており、非常に意欲的な予想値となっています。
トヨタは、2023年5月15日付の組織改正にて、「BEVファクトリー」というBEVの専任組織を新設し、世界をリードする次世代BEVの開発と事業を加速させることを発表しています。トヨタがついに本気のスイッチを入れてきたわけです。
BEVの成長率予想YoY+435.6%という水準は、2022年4月〜2023年3月のテスラを圧倒的に上回る水準ですし、これまでのテスラの成長率を見ても最大でもYoY+200%台でした。
トヨタの生産能力の高さ、本気を出した時の馬力が感じられる数字ではないでしょうか。この成長率がどこまで続いていくのか注目です。
売上・営業利益で肉薄するテスラ
ここで、トヨタ・日産・ホンダ・テスラの4社の売上・営業利益を比較します。
●売上
2022年4月~2023年3月の売上は、多い順に、トヨタ(37.2兆円)→テスラ(11.2兆円)→ホンダ(10.8兆円)→日産(10.6兆円)で、販売台数と同様にトヨタが頭一つ抜きん出ています。
また、テスラは販売台数では、日産やホンダを下回っていたものの、売上では日産・ホンダを上回っており、これは通期決算では初めてのことです。
売上成長率を見ると、トヨタ・日産・ホンダの成長率がやや苦戦する中で、テスラは円安の恩恵もあり、YoY+38.3%と高い成長率を記録しています。
●営業利益
次に、営業利益を見ると、トヨタ(2.8兆円)→テスラ(1.7兆円)→日産(3,771億円)→ホンダ(420億円)の順で、営業利益もトヨタが圧倒していますが、テスラもかなり近い規模に迫っています。
伸び続けるテスラの営業利益率
次に、各社の営業利益率を見ると、テスラ(14.8%)→トヨタ(7.3%)→日産(3.6%)→ホンダ(0.4%)の順で、テスラがトヨタに約2倍の差を付けています。
経産省によると、日本の製造業の企業における営業利益率は、中小企業及び大企業ともに平均4.0%です。単純に比較できるものではありませんが、それでも、テスラの14.8%という営業利益率は驚異的な水準です。
参考:3.売上高営業利益率|商工業実態基本調査 - 経済産業省
また、テスラと自動車産業(Auto Industry)、S&P500銘柄の営業利益率の推移を見ると、2019年度はテスラの営業利益率は0%前後でしたが、それ以降は高い利益率を生み出せる会社へと年々進化・改善してきていることが上図から伺えます。
1台あたりの営業利益はテスラが圧勝
最後に、販売台数あたりの売上と営業利益を比較してみると、おもしろい結果になりました。
テスラの販売台数1台あたりの売上は783.8万円で、トヨタ・日産・ホンダの2倍以上の水準です。また、販売台数1台あたりの営業利益は115.9万円で、トヨタの4倍、日産の10倍、ホンダの100倍に相当します。
※2023年度はホンダの四輪事業の営業利益率が低いためテスラと約100倍という大きな差が生まれていますが、2022年度以前で比較するとテスラとの差は約40倍です。
このように、テスラは販売台数1台あたりで見ると、売上・営業利益が相対的にかなり高い効率の良いビジネスをしていることが一目瞭然です。
テスラの収益源の多様化
ここで、テスラのセグメント別売上の構成比を見ると、Automotive sales(自動車販売)が全体の8割前後を占めており、残り2割が新規の自動車販売以外の収益であることが分かります。
前述の通り、テスラの販売台数は高い成長率を維持しているため、この自動車販売セグメントの売上成長率は高い水準にあります。
その中でも、全体のセグメント別売上の割合が概ね一定で推移していることから、驚異的な成長を遂げる自動車販売と同じペースで、その他セグメントも成長している事が分かります。
自動車販売以外のセグメント別売上推移を見ると、緑色のServices & other(中古車販売、保険、修理等)及び、黄色のEnergy generation & storage(エネルギーストレージや太陽光発電の販売)が高い成長率となっています。
また、テスラは排出権取引による売上があると聞いたことがある方も多いかもしれませんが、Automotive regulatory credits(上図黒)の割合はそこまで高いわけではありません。
簡単にまとめると、テスラは自動車販売以外にも太陽光発電と蓄電池といったエネルギー事業を展開しており、エネルギーを使用する会社からエネルギーを創る会社と言えます。
前述のように、テスラはエネルギーを軸とした垂直統合の事業展開を行っていますが、ホンダも少し似ている事業展開をしているのでご紹介しましょう。
具体的には、ホンダは、パワープロダクツ事業において、ホンダの強みであるモーターを活用して、汎用エンジンから芝刈り機、除雪機などの製造・販売を行っています。
ホンダの場合は、テスラのようなサプライチェーンの垂直統合ではありませんが、主要事業の隣接領域に進出している点は類似していると言えるでしょう。
まとめ
ここまで、EV世界1位のテスラと、国内大手自動車メーカーであるトヨタ、日産、ホンダを比較しました。
今後のテスラやトヨタのBEVの成長がどのように推移するのか、テスラがトヨタの売上に追いつくのはいつになるのか、引き続き注目していきたいと思います。
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