Q. ニューラルポケットが前年比300%超、近年のAI企業の成長ドライバーは?
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この記事はゆべしさんとの共同制作です。
2022年10-12月決算で、AI企業であるニューラルポケットやHEROZの売上の前年同期比成長率がそれぞれ、YoY+338.7%、YoY+199.8%と目を引くものがありました。
一般的に、一定の売上規模に達した会社の成長率は鈍化しやすくなるため、前年比で数倍の成長を遂げるのは非常に難しいです。
そんな中で、これだけの成長率を記録するAI企業の成長の背景には何があるのか、本日は同じくAI領域で注目されるPKSHA Technology・エクサウィザーズと比較しながら解説しました。
この記事は無料で読むことができますので、ぜひ最後までご覧下さい。
国内主要AI企業の決算
PKSHA Technology、HEROZ、ニューラルポケット、エクサウィザーズの4社の2022年10-12月の売上と前年同期比成長率を比較してみましょう。
売上の規模で見るとPKSHA Technologyが31.99億円で圧倒的に高く、成長率で見るとニューラルポケットがYoY+338.7%、HEROZがYoY+199.8%と爆発的な成長を見せています。
ニューラルポケットの決算を深堀り
特に、圧倒的な成長率を誇るニューラルポケットの四半期売上推移を見ると、2022年10-12月(FY2022Q4)だけ大きく成長したわけではなく、FY2022の1年間を通して驚異的な成長を続けています。
同社の事業別の売上内訳を見ると、「デジソリューションサービス」が売上の大半を占めており、成長率はYoY+298.6%です。「ライフスタイル・イノベーションサービス」は売上規模は相対的に小さいですが、YoY+750.0%と大きく成長中です。
ニューラルポケットの強みは、AI解析をカメラ端末内で実行する 「エッジ処理技術」にあり、エッジ処理技術を様々な領域で社会実装してサービス販売することで、エッジAIプラットフォーマーとして独自のポジショニングを確立し、成長を加速させています。
ニューラルポケットの成長の背景にあるのは?
加えて、ニューラルポケットの成長背景には、「M&Aによるサービス領域の強化」も挙げられます。
同社は「マンションサイネージ事業」を今後の成長領域と捉えて、上図の通り2022年の1年間でフォーカスチャネル社及びネットテン社(現在はニューラルマーケティング社に商号変更)の2社のM&Aを実施しました。
特に、ニューラルマーケティングが提供するLEDビジョンの「デジルック」は、2022年2月(FY2022Q1)の買収完了後、急速に設置・導入ユニット数が増加しており、継続的な成長を実現しています。
また、元々ニューラルポケットはテクノロジー企業の印象が強かった方も多いと思いますが、上図の通りエンジニアに加えて営業人員を中心に組織拡大した結果、グループ従業員数は1年間で約3倍超にまで増加しています。
このように、同社は強みであるAIやエッジ実装技術を武器に、それらをAIサービスとして拡販する営業力を強化したことで、急速な成長を実現していることが伺えます。
HEROZの決算を深堀り
次に、HEROZの売上成長の背景を見てみましょう。
これまで、HEROZの四半期売上は約4億円前後で横ばいに推移していたものの、2023年4月期3Q(2022年11-2023年1月)にYoY+199.8%と大きく成長しました。
HEROZの成長の背景にあるのは?
この急速な売上成長の背景は、「SaaS企業のグループ会社化によるリカーリング売上(継続的に発生する売上)の増加」が挙げられます。
上図の通り、2023年4月期3Qに同社のリカーリング売上が増加しているのは、これはSaaS企業であるバリオセキュア社(*1)・ストラテジット社(*2)のグループ会社化によるもので、結果的にHEROZのリカーリング売上比率は63.9%に増加しました。
HEROZの事業セグメントは、(1)AI/DXサービス(BtoCの将棋SaaSやBtoBのAIソリューション・SaaS支援)と、(2)AI Securityサービスの2つに分かれており、特にAI Securityサービスはバリオセキュア社のセキュリティ事業を元にした事業セグメントです。
前述の通り、バリオセキュア社のグループ会社化による影響は2023年4月期3Qから反映されているため、上図に記載されているAI Securityサービスの2022年4月期第3四半期累計売上の6.47億円の大半は2023年4月期3Q単体売上と想定され、全社売上の50%超を占める一大事業です。
エクサウィザーズやPKSHA TechnologyもSaaS事業が成長を牽引
ここまで、急成長しているAI企業のニューラルポケット・HEROZを見てきましたが、エクサウィザーズ及びPKSHA Technologyの成長背景も見てみましょう。
まず、前述の通り、エクサウィザーズの2023年3月期第3四半期(2022年10-12月)の四半期売上成長率はYoY+5.2%でしたが、2023年3月期第3四半期”累計”でみると、(1)AIプラットフォーム事業(大企業向けのオールインワンAI)ではYoY+20.8%、(2)AIプロダクト事業(特定領域特化のAI SaaS)ではYoY+29.1%です。
特に、AIプロダクト事業について、事業譲渡した「その他」のセグメントを除くと、売上成長率は2023年3月期第3四半期”累計”でYoY+46.8%です。
AIプロダクト事業には、(1)DX人材を育てるexaBse DXアセスメント&ラーニングを中心とした「DX AIプロダクト」と、(2)話すだけで介護の仕事をシンプルにするハナストを中心とした「ソーシャルAIプロダクト」があります。
このAIプロダクト事業は全社に占める売上規模は小さいものの、全社の成長率という点で大きく貢献しており、今後の成長に注目の事業です。
次に、PKSHA Technologyの2023年9月期1Q(2022年10-12月)の売上成長率は、前述の通りYoY+20.4%で、事業別に見るとAI Research & Solution事業がYoY+16.8%、AI SaaS事業がYoY+25.3%です。
特に成長しているAI SaaS事業のARR(Annual Recurring Revenue:年次経常収益)を見ると、2023年9月期1Q時点で51.13億円、YoY+22.7%です。
PKSHA TechnologyのAI SaaS事業は、コンタクトセンターの知能化領域や労働力人口不足の業務支援領域において、自然言語処理技術や音声技術を強みとして、AIチャットボットや音声対話エンジンなどの複数のプロダクトを展開しています。
ニューラルポケットやHEROZと比較すると、エクサウィザーズやPKSHA Technologyの成長率は派手ではありませんが、AIを用いたSaaSプロダクトが成長を牽引している事がわかります。
まとめ
ここまで、ニューラルポケットやHEROZ等のAI企業の売上成長の背景について見てきました。
全体としてはAIプロダクトを含む「AI SaaS」事業がAI企業の売上成長を牽引している傾向が見られており、特に成長著しいニューラルポケットやHEROZは、「M&A」を組み合わせることで大きく成長していました。
これらAI企業の成長がどこまで続くのか、またHEROZは今後継続的に事業成長できるのか、引き続き注目していきたいと思います。
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