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Q. 急成長の楽天証券が、業界No.1のSBI証券に勝っている重要な指標とは?

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A. 楽天証券は、SBI証券に対して、口座開設数や預かり資産総額などの指標では負けているが、「投資信託積立設定金額」ではリードしている。今後株式取引の手数料無料化の動きが加速する中で、ストック収入を稼ぐ重要な指標。

この記事は新規上場企業の"目論見書分析note"を書いているWatanabeさんとの共同制作です。

コロナ禍において、一部企業業績が持ち直しつつあり、経済回復への期待が高まっています。日経平均株価は、今年2月に1990年8月以来の3万円台をつけるなど、株式市場は引き続き活況な状況が続いています。

そのような中、個人投資家の株式売買の中心であるオンライン証券各社の業績好調も顕著になってきています。

今回の記事では、ネット証券大手3社の決算資料を俯瞰し、急成長している楽天証券について、深堀して分析していきたいと思います。


SBI証券の業績動向

SBI証券と楽天証券が口座数を大きく伸ばしており、3位以下を大きく引き離しています。

SBIホールディングス

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SBI証券の口座数は2020年11月末で639万口座となり、オンライン証券の中で不動の1位をキープし続けています。2位の楽天証券は、1位のSBI証券とは約200万口座の差があるものの、口座数は大きく伸びています。2020年6月末時点で440.2万口座、そして2020年12月末で508万口座※となりました。
データで見る楽天証券

楽天証券の口座数は、2013年3月末で3位のマネックス証券と口座数にそれほど差がありませんでしたが、現在は200万口座以上、大きく引き離しています。

ここから、大手対面証券との口座数の比較を見ていきます。


SBI証券の口座数推移

オンライン証券1位のSBI証券は、大手対面証券の口座数を上回っています。

2021年3月期 第3四半期 SBIホールディングス株式会社 決算説明会

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大手対面証券トップ野村証券の口座数は、2020年12月末現在で533万口座となっています。口座数の年平均成長率(CAGR)は1.5%と伸び悩んでおり、SBI証券の年平均成長率11.0%と比較して、大きく差は開いています。

SBI証券は、500万口座を達成後、7ヶ月で600万口座を突破しました。1ヶ月あたり14万口座以上のペースで増加しており、トップの座をとってもなお急成長を続けていることがわかります。

また、SBI証券と同じく口座数を大きく伸ばしている楽天証券の口座数が508万口座であり、このままのペースで増加すれば、口座数において楽天証券が野村証券を抜く可能性は高いと思われます。

次にオンライン証券の預かり資産残高を見ていきましょう。


オンライン証券各社の預かり資産残高

オンライン証券の比較に戻りますが、預かり資産残高を見ても、SBI証券がトップになっています。

2021年3月期 第3四半期 SBIホールディングス株式会社 決算説明会

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2020年12月末のSBI証券の預かり資産残高は17.6兆円となり、楽天証券の預かり資産残高の1.7倍です。

口座数で両社を比較すると、SBI証券の口座数は楽天証券の約1.2倍です(SBI639万口座÷楽天証券508万口座=1.25倍)。口座数以上に預かり資産残高の開きが大きく、1口座あたりの預かり資産残高は、SBI証券が高いことがわかります。

楽天証券は、少額の積み立て投資信託やポイント投資など、投資初心者の口座獲得に力を入れています。口座獲得当初は、1口座当りの預かり資産残高が少ないものの、数年後に投資家として育ってきたときの収益化を狙っています。

次に、楽天の決算資料から、SBI証券との比較を見ていきましょう。


楽天証券の口座数推移

楽天証券の新規口座開設数は、増加ペースが早まっています。

楽天(ビデオプレゼンテーションと補足資料)

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楽天の決算資料にも、口座開設数におけるSBI証券との比較が載っています。通常、決算資料に他社比較を載せる場合は、「A社比較」のように社名を出さないケースが多いですが、SBI証券・楽天証券ともに他社比較を実名で載せているあたり、かなり明確にライバル視していることがわかります。

楽天証券の口座数増加ペースが、年々加速してます。グラフを見てわかるとおり、200万口座から300万口座に増加するのに約35ヶ月かかっていましたが、400万口座から500万口座に増加するのに約9ヶ月と、増加ペースが3倍以上になっています。

楽天証券の口座数が大きく伸びている理由は、楽天グループ各社からの流入が最も大きいと思われます。

具体的な流入施策は、口座開設時の楽天ポイント付与、投資信託積立に楽天カードを使うと楽天ポイント付与、さらに、ポイント自体を使った「ポイント投資」ができるなど、楽天エコシステムを活用した口座数増加の取り組みを行っています。

以下では、急成長するSBI証券と楽天証券、そしてオンライン証券3位のマネックス証券の3社を比較しながら、各社の特徴を分析していきます。


口座あたりの取引額トップはどの企業?

口座あたりの取引額トップは、SBI証券となっています。

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取引額(D)を預かり資産(C)で割ることで計算できる「預かり資産に対する取引額」は、楽天証券がトップです。この指標から、預かり資産を積極的に売買するアクティブな投資家の比率が高いと読みる取ることができます。楽天証券が2.37倍、SBI証券が2.06倍、マネックス証券は0.95倍となっています。

また、取引額(D)を証券口座保有者数(A)で割ることで、「口座あたりの取引額」を算出することができます。1口座あたりの預かり資産額が大きい場合、この指標が大きくなります。SBI証券がトップで555.5万円、次いで楽天証券が466.5万円、マネックス証券が232.7万円となっています。

マネックス証券がそれぞれの指標で低い結果となっており、SBI証券と楽天証券が高いのは、アクティブに取引をする投資家が多いということに加えて、新規ユーザーの比率が高いことが背景にあると言えます。


投資信託の積立金額が最も多いのはどの企業?

投資信託の積立金額が最も多いのは、楽天証券です。

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楽天証券の投信積立設定金額は、YoY+144%で314億円となっています。楽天証券は、預かり資産や取引額ではSBI証券を追う立ち位置ですが、投信設定金額では業界トップです。

投信積立は、「投資するタイミングが分からない」「少額からコツコツ投資を始めたい」と考えている投資初心者にお勧めのサービスです。楽天証券は、楽天グループ他社を利用している投資初心者に口座開設を勧めるキャンペーンを行っています。

次に、楽天エコシステムを活用した具体的な施策について解説していきます。


楽天カードを使った投信積立

楽天カードで投信積立を行うことで、積立額の1%楽天ポイントが付与されます。

楽天カードクレジット決済

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楽天証券では、投信積立の引落方法として、銀行口座からの引き落としや証券口座の預かり金からの振替に加えて、楽天カードを使ったクレジットカード決済ができます。

楽天カード決済で投信積立を行うと、毎月1%ポイント還元されます。これは、投資利回り(投資金額に対する収益の割合)に換算すると、年間1%の金利がついているのと同じ意味であり、銀行預金金利がほぼ0%であることを踏まえると、投資家にとっては非常にメリットがあります。

さらに、獲得した楽天ポイントを投資信託や株式の購入代金、他の楽天サービスでポイントを利用することができます。実際、投信積立利用者の62%が楽天カード決済を利用しており、楽天証券の口座保有者にとってはメリットが大きいサービスであると言えます。

これにより楽天証券は、SBI証券を超える投信積立設定金額を記録していると思われます。


テイクレート(手数料率)が低いのはどの企業?

最もテイクレートが低いのは、SBI証券で0.03%となっています。

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楽天証券は委託手数料のデータを開示していないため、SBI証券とマネックス証券を比較すると、テイクレートはSBI証券がマネックス証券の1/4以下の水準で圧倒的に低くなっています。

委託手数料が低いのは投資家にとって非常にメリットが大きいサービスであるため、委託手数料の安さは、新規口座開設数が増えるかどうかに大きく影響を与えていると言えそうです。
また、収益性比較という観点で「預かり資産に対する売上」を比較してみたところ、各社の0.2%代となっており、大きな差はない状態です。

一方、口座あたりの売上(ARPU)は、マネックス証券が6,616円、SBI証券が6,611円に対して、楽天証券だけ3,976円となり低い水準です。これは、楽天証券の新規口座開設数は多いものの、まずは少額の投信積立やポイント投資をやってみようという投資初心者の比率が多いことを表しているのかもしれません。

次に、委託手数料に頼らないビジネスモデルをどのように作るべきか、解説していきます。


「ブローカー型」から「アセマネ型」への移行で起こる変化とは?

株式委託手数料が無料に向かう中、楽天証券が取り組む新たな収益源を解説します。

楽天(ビデオプレゼンテーションと補足資料)

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楽天証券は、株式委託手数料無料化に向けて様々なサービスを提供しています。

株式売買の委託手数料は、1999年10月に完全自由化となって以来、証券各社は競合他社より手数料を値下げすることでサービスの差別化を図ってきました。そして、SBI証券による手数料無料化宣言に端を発し、日本株取引については委託手数料無料化の方向性は明確です。

証券各社にとって、現在は、「ブローカー型=手数料ビジネス」から「アセマネ型=ストックビジネス」への変換期であると言えます。

そのような中で楽天証券は、米国株取引、CFD取引(Contract for Differenceの略で、現物の売買を伴わない差金決済取引)、信用貸株(保有している株式貸すことで収益を得られるサービス)など、多様な取引手法を投資家に提供することで、収益減を確保することを目指しています。

そして重要なことは、顧客の資産残高に対して一定のフィーをもらうモデルです。楽天証券が、投信積立設定額でリードしているのは、アセットが積みあがっているという点で、良い傾向であると言えます。

次に、マネックス証券のアセットモデルへの転換を解説していきます。


アセットモデルへの転換

マネックス証券は日本株手数料に頼らない収益の拡大を目指しています。

マネックスグループ株式会社 2021年3月期 第3四半期決算説明資料

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マネックス証券は、預かり資産の増加に合わせて新たな収益源を確保するために、アセットマネジメントモデルへの転換を目指しています。

具体的には、株式の信用取引(現金等を担保として実際の預かり資産以上の売買が可能になる取引)の手数料固定化による取引促進や、日本市場と同様に株式市場が活況である米国株関連のサービスを充実させるなどの取り組みを行っています。

中でも、米国株関連のサービスは順調に拡大しており、2021年3月期3Qの委託手数料全体に占める米国株の割合は19%。約定件数と取引口座数は前年同期比で5倍以上となっています。


その他に重要となる収益モデルとは?

さらに、新たな収益モデルが続々と登場しています。

アセマネ型モデルの新しい形として、ロボアドバイザー(高度な金融アルゴリズムにより自動で資産運用を行ってくれるサービス)があります。昨年東証マザーズに上場したウェルスナビや、楽天証券の「楽ロボ」というサービス名で提供しています。

ロボアドバイザーの市場が拡大する一方、対面での資産運用や投資商品の仲介を希望する投資家向けサービスである、IFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)ビジネスの拡大も期待されています。

また、トレード収益(証券会社が自己資金を使って自己の判断のもとで運用収益を得ること)も、引き続き証券会社の一定の収益源になることでしょう。

米国では、手数料無料の証券アプリ「Robinhood」を提供するロビンフッドが、株式売買手数料を無料にする代わりにオーダーフロー(注文データ)を証券会社や高頻度取引会社に販売することで稼いでいるという例もあります。

手数料無料化のビジネスモデルについて興味のある方は、2020年2月に公開した以下の記事も合わせてご覧ください。

手数料無料化発表のSBI証券、野村證券・ロビンフッドとの比較から見える次の収益源は?


まとめ

今回の記事では、オンライン証券大手3社の決算資料からビジネスモデルを俯瞰した上で、その中でも新規口座数や投信積立設定金額が急成長している楽天証券について、深堀分析してみました。

楽天証券は、楽天グループ各社からの流入による口座数増加の推進、楽天カードを使った投資信託積立による楽天ポイント付与など、楽天エコシステムを活用した口座数増加の取り組みを効果的に行っていることが実績に現れています。

そして、現在は証券会社にとって、ビジネスモデルの転換期であるといえます。

現在、取引を仲介すること自体の価値は薄れてきており、株式委託手数料で稼いでいた時代は過去のものとなりました。これからは、信用取引、米国株取引、CFD取引やロボアドバイザーなど、投資家の多様なニーズに応えるサービスをラインナップすることが必要です。

さらに、投資家からの預かり資産に対していかに付加価値をつけてサービスを提供できるか、アセットモデル型のビジネスモデルを確立することが、証券各社の収益に大きく影響を与えそうです。

ロビンフッドが上場申請するなど、手数料無料化が市場に認知される動きも活発化しています。

米ロビンフッドが上場申請 株取引「ゲーム化」批判も

今後も、証券各社の収益モデルの変化に注目していきたいと思います。


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アメリカ・日本のネット企業(上場企業)を中心に、決算情報から読みとれることを書きます。経営者の方はもちろん、出世したいサラリーマンの方、就職活動・転職活動中の方になるべく分かりやすく書きます。