Q. 米TV市場を大きく変化させたRokuの主要な3つのKPIとは?
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A. ROKUの主要なKPIは、以下の3つです。
1. アカウント数
2. 視聴時間
3. ARPU
今日の記事では、アメリカのテレビ市場で安定的に成長しているROKUのビジネスについて考察していきたいと思います。
私の記事で過去に何度かROKUを取り上げたことがありますし、日本でメディア関係のビジネスをされている方には「一刻も早く日本版のROKUを立ち上げた方が良い」とおすすめをしているのですが、日本でまだまだ立ち上がる気配がありません。
(もしROKUのようなビジネスをこれから始めたいというスタートアップの方がいらしたら、個人的に投資も検討したいと思いますので是非ご連絡ください! )
Q1 2020 Roku Earnings Conference Call (2020/5/7)
ご存知の方も多いかもしれませんが、ROKUのビジネスモデルを簡単にご紹介します。
ROKUの一つ目のビジネスは、テレビに接続するセットトップボックス(外付けのデバイス)を販売するというハードウェアビジネスです。
日本では、AmazonのFire TVや、Apple TVが主流になっていますが、アメリカではROKUが2008年からいち早く外付けのセットトップボックスの販売を開始したこともあり、マーケットシェアを伸ばしました。
Wi-Fiのネットワーク環境があれば、このデバイスをテレビに繋と簡単にストリーミングでコンテンツ視聴が可能になります。以前はアメリカでテレビの主流だったケーブルテレビ視聴者の多くがROKUを利用するようになり、ケーブルカッターとして一躍脚光を浴びました。(参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/Roku)
この写真のようなHDMIケーブルで接続する小さなボックスとリモコンを50ドル程度(約5,000円)〜で販売しています。
ハードウェアを別売りするだけではなく、テレビに内蔵するOSとして搭載されているケースも増えてきています。
いわゆるテレビの入り口であるリモコンとOSを抑えるというのがROKUの一つ目のビジネスになり、二つ目のビジネスはその上でのプラットホームビジネスです。
主な収益源は「課金」と「広告」になります。ユーザーがテレビを見るたびにROKUのホーム画面を経由することになるので、そこから自社コンテンツに誘導し、広告でのマネタイズ機会を増やしていくのが二つ目のプラットフォームビジネスです。
まずはじめに、2020年1月から3月の四半期の売上を見てみると、前年同期比+55%の$320.8M(約321億円)と大変高い成長率を誇っています。
粗利益に相当するTotal Gloss Profitは、前年同期比+40%で$141.1M(約141億円)とこちらも好調です。
グロスマージン(粗利)率は前年の各四半期から40%程度を維持しており、今四半期も44%と高い水準となっています。
営業利益はマイナス$55.2M(約55億円)とまだ赤字の会社ではありますが、成長スピードの速さが最大の売りだと言えるでしょう。
今日の記事ではROKUの3つの主要なKPIを取り上げていきたいと思います。1月-3月の四半期と4月の速報値も決算資料の中で公開されているので、両方を合わせて比較しながら読み取るように進めていきます。
KPIその1: アカウント数
ROKUが重要視する一つ目のKPIは「アカウント数」です。
上の表を見ると、2020年の3月末時点で3,980万人ものアクティブな会員がおり、前年同期の2,910万人から+37%と驚異的なスピードで成長しています。
In Q1 2020, player unit sales continued to be robust, up 25% year-over-year. Roku TV models, produced and sold by our TV OEM partners, account for more than one in three smart TVs sold in the U.S. and more than one in four smart TVs sold in Canada.
2020年の1月から3月にアメリカで販売されたテレビの3分の1以上に相当にするテレビにROKUのOSが内蔵されいます。テレビの入り口とリモコンを押さえるというROKUの戦略がますます加速していることが読み取れます。
The acceleration of growth in new accounts and viewership continued in April.
Active accounts grew roughly 38% versus last year, driven by a year-over-year (YoY) increase in new accounts of more than 70%.
4月以降のアカウント数の成長を見ると、前年同期比+38%と非常に早いペースの成長が続いていることが読み取れます。
KPIその2: 視聴時間
二つ目の重要なKPIは、「視聴時間」です。
上の表によれば2020年の1月から3月の四半期の総視聴時間は132億時間でした。前年同期比+49%となっており、このKPIが売上との相関が最も高いKPIになるのではないでしょうか。
Streaming hours rose by roughly 80% year-over-year, driven by an increase in streaming hours per account of approximately 30%.
4月以降の数字を見ると、総視聴時間は前年同期比でなんと約80%も伸びています。なかでもアカウントあたりの視聴時間が約30%伸びているのが最大の要因だと書かれています。
新規利用者の増加もありますが、既存の利用者がコロナショックで巣ごもりの時間が増えたことで、ストリーミングコンテンツの視聴時間が増えたということではないでしょうか。
KPIその3: ARPU
三つ目の重要なKPIは、アカウント(ユーザー一人)あたりの売上を示す「ARPU」になります。
2020年1月から3月の四半期のARPUは224.35ドル(約2,435円)で前年同期の19ドル(約1,900円)から+28%伸びています。
ARPUにはユーザーからの直接課金の売上も含まれますが、アカウントあたりの視聴時間が伸びるほど広告を閲覧する機会が増えるので、相関して広告売上が増加し、ARPUが伸びていくことになります。
コロナショックでTV視聴行動はどのように変わるのか?
コロナショックでどのようにテレビの視聴行動が変わるのか?という点に関してROKUの決算資料の中に興味深い記述があったので紹介しておきます。
The pandemic associated stay-at-home orders and increased unemployment appear to have accelerated the shift from linear TV viewing to streaming during the past few weeks.
コロナショック(ステイホーム)によって、ケーブルテレビからストリーミング放送へとユーザーの視聴行動の変容が加速していると記載されています。
ケーブルテレビの放送はリアルタイムで視聴しなくてはいけないのですが、ストリーミングはオンデマンドでいつでも好きな時に見れるというのが最大の違いだと思います。
For example, Nielsen data shows that primetime linear viewing among adults 18-34 from March 16 to April 19 was down 18% year-over-year, and nearly half of TV viewing by this important demographic was streamed.
調査会社のニールセンのデータによると、18歳から34歳の視聴者は3月16日〜4月19日の約1ヶ月間でケーブルテレビの視聴時間が前年同期比で約18%で減少しました。
一方で、この世代のテレビ視聴の約半分がすでにストリーミングになっていると書かれています。
ここまでくると、もう不可逆だと思いますが、これからますますストリーミングでのテレビの視聴が当たり前になってくるでしょう。
(ですので、冒頭で書いたように日本でもこのROKUのようなモデルが必ず必要になると思います。)
まとめ
ROKUの主要な3つのKPIをまとめると、以下の表のようになります。1月から3月の四半期と公表されている4月の速報値を比較してみました。
主要KPIの前年同期比成長率(YoY)
2020年 1-3月 4月
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アカウント数 +39.8% +38%
視聴時間 +49% +~80%
ARPU +28% n/a
いずれのKPIも驚異的な成長を示しています。
TechCrunchの記事では、AmazonのFire TVの利用者数がROKUの利用者数を超えたという情報があります。
Amazonは、ステイホームの間にプライム会員を増加させたことで、利用者数を伸ばしたそうです。各社それぞれの戦略で、ストリーミングでのコンテンツ配信の視聴者を獲得しています。
スマホでのストリーミング視聴は当たり前でしたが、長期間のステイホームの影響で、テレビのような大画面でのコンテンツ視聴にもオンデマンドの流れが大きくきています。
ROKUのようなビジネスモデルは、まだまだ成長が加速しそうなサービスなので、今後も注目していきたいと思います。
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