note急成長の舞台裏と.com .jpドメイン取得の経緯を聞いてきたよ(第3回・最終回)
cakes・noteを提供する株式会社ピースオブケイクのCEO加藤貞顕さん、CXO深津貴之さんとの対談の第3回目です。第1回・第2回をご覧になってない方はこちらからご覧いただけます。
note急成長の舞台裏と.com .jpドメイン取得の経緯を聞いてきたよ(第1回)
・「noteは稼げる」を言わないようにする
・深津CXO作「noteの成長モデル」の詳細解説
・シンプルに成長するためのフォーカス
・ピースオブケイクにとって売上はあくまで「結果」
・CXO自ら記事を量産して一番のヘビーユーザーになる
note急成長の舞台裏と.com .jpドメイン取得の経緯を聞いてきたよ(第2回)
・そもそもなぜ「.mu」ドメインでサービス開始した?
・「.com」ドメインが重要な理由
・「.com」ドメインを取得した「守り」の理由と「責め」の理由
・「note.jp」ドメイン取得の経緯詳細
「note.com」ドメイン取得の経緯詳細
シバタ: 「.com」の方はどんな感じだったんですか?
深津: 「.com」の方は、noteに参画した直後からほしいなと思っていたんですけどお金がかかりすぎるので、今からおねだりするのは無理だけど、つばだけはつけておきたいなと思っていました。
加藤: そうそう。あとから聞いたら、深津さん、CXO就任のお願いをされたくらいから独自で動いていて、しばらくしてから「実はちょっと動いていて」って言ってきて、「えっ」となりました(笑)。
深津: 僕のプライベートなメアドでnoteやピースオブケイクとは一切関係なく、「ちょっとこのドメインいいよね。いくらくらい?」みたいなカジュアルなメールをさらっと送ったりしていました。
シバタ: その人は当然、日本の人じゃないですよね。
深津: 海外のドメイン売買カンパニーのバイヤーの人が出てきました。
シバタ: なるほど。プロが出てきたんですね。
深津: 仮に「ボブ」としましょう。「ハイ、ボブ。このドメインちょっと気になるんだけど。100万円くらいで買えたりするかな?」ってメールしてみたんです。
シバタ: 100万円じゃないですよね、「note.com」は。
深津: 「100万円で買える?」ってメールを送ったら、「このドメインは少なくても、6 digit(6桁)。1億5、6,000万円くらいだ。100万円じゃ話にならんわ」みたいな返事が来ました。
シバタ: そうですよね。ドルで6 digitとか7 digitとかですよね。ドルで7桁だと1Millionですよね。
加藤: 「ミリオン(Million)だよ」って言われたんですよね。
深津: その時は、「高いね。500万円くらいだったら出せるんだけど無理?」って聞いたら「無理」と言われ、それでその時は一回眠ったんですけど、数ヶ月後に向こうからまたコンタクトが来て。「このドメイン、もうすぐ売れそうだけど買わない?」って言われたのですが、こっちがまた「欲しいけど、100万円しかないよ」と言ってみたりしていました(笑)。
シバタ: 深津さん、結構ネゴシエーション上手ですね。
深津: カウンターオファーが来て「最初に[●自粛●]万円振り込んで、[●自粛●]万円を年内ローンでどうよ」と言われたりもしました。
深津: 結局まだ高すぎるので流れるのですが、「僕たち、もうすぐ大きなお金が手に入るかもしれないんで、資金調達したらまた声かけるね」という具合に線だけ切らないようにしておきました。
シバタ: 続きが聞きたいです。
深津: 定期的に「そろそろ売れそうなんだけど」とか、「他の人から[●自粛●]ドルでオファー来たけどそれより高いので出せる」という連絡がきていました。
シバタ: ちゃんと連絡は来るんですね。
深津: ちゃんと来てました。ただ、その時はまだ資金調達前だったので、「無理」と言いました。
シバタ: まだドメインにお金を払えるほどはお金が無かったわけですね。
深津: 「無理」って言ってもたくさん連絡がくるので、本当は売れそうにないんじゃないかなっていう気もして、いろいろ雑談しながらやり取りしていたんです。
シバタ: 深津さん、ネゴシエーション楽しんでらっしゃいますね。
深津: つれないことを言っているうちに、「.jp」ドメインが獲得できてしまったんです。
シバタ: なるほど。それで交渉におけるポジションが余計強くなったわけですね。
深津: 加藤さんには「もう「.jp」ドメインへ引っ越しする方向で行きましょうか」っていう話をしていたくらいなのですが、資金調達が終わったあとにもう1回オファーが来たときに、[●自粛●]万円くらいまで落ちていたんですよね。
加藤: 向こうも、多分焦っていたのではないかと思います。
シバタ: でも、4文字ドットコムなので、僕の感覚的には[●自粛●]円で買えたら相当お得な気もするんですよね。
加藤: でも、実際もっと安く買えたんです。
シバタ: 僕の感覚的には[●自粛●]円で買っても全然ペイすると思います。
深津: 僕も[●自粛●]円でも安いと思います。
シバタ: そうですよね。
加藤: お金があったら[●自粛●]円でもほしいなと思っていたんですよ。だから、ちょっと今はまだ高いけど、いつか上場したりしてお金ができたら買いたいねっていう話はしていました。
シバタ: そうですね。安くはないですね。
深津: それで、値切っていたのですが、11月くらいから先方が焦ってきていたのか値下げをしてきました。「今[●自粛●]円のオファーが入って、これより高く入れるなら即買えるけどどうする?」と。「[●自粛●]円でもいらんわ」と蹴っていたら、もっと値段が下がってきました。
シバタ: 面白い!最後の決着はどうなったのですか?
深津: 先方の提示額がいったん[●自粛●]円まで落ちて「よし、これなら行ける」とオファーを出したら、いきなり「貴女の[●自粛●]円に対して、別の購入希望者が[●自粛●]円を出してきたらもっと出せるか」という一悶着がありました。
シバタ: 一応やるんですね。最後の儀式は(笑)。ほんとかどうかわからないですけどね。
加藤: 深津さんの交渉で一番面白かったのが、12月の初旬に先方が焦ってクローズしたがっていたんですよ。おそらく、クリスマス休暇に入るからだったと思います。
加藤: その時noteのオフィスがちょうど引っ越しのタイミングだったんです。事実として会社が引っ越しをしていたので、「会社が引っ越し都合で、しばらく返事ができません」というメールを返信したりもしていました。
シバタ: すげえ。
深津: 結局、先方から提示されたデッドラインを無視していましたね。
深津: 先方が提示したデッドラインを無視したら次の週くらいに「ビッティングの相手が急に契約で揉め始めて、まだ時間がかかっているので、ドメイン所有者はもう少し安くても即時にドメインを売却する意志があるが、興味あるか」みたいなメールが来ました。
加藤: ドメインブローカーは成果報酬なんでしょうね。
深津: 僕もそれに対して「あなたの設定したデッドラインが急すぎたので、そのせいでうちの経営会議が延期になってしまったので、経営会議は来週までないんです」っていう返事をしていました。
シバタ: ちなみに、ボブとメールを合計何通くらいやりとりしているんですか?
深津: 50〜60通くらいはやり取りしていると思います。
加藤: すごいやりとりでしたね。最後に「No, negotiation」と深津さんが完全に売買ディールをクローズしてからは、CFOに引き継いで、彼が淡々とクローズ処理をしました。
シバタ: 最後のプロセスはどうなるんですか。お金を払ったのにドメインをもらえないというのは避けたいですよね。
加藤: それは怖いですよね。だからかなり慎重にすすめてます。
深津: 具体的には、エスクローサービスを使いました。まずは弊社がお金をエスクローサービスに振り込みます。次に、ドメイン保有者がドメインの所有者を弊社に移管します。ドメイン移行が行われたことが確認出来次第、エスクローサービスからドメイン所有者にお金が振り込まれます。
重要ドメイン取得を成功させるためのコツ
シバタ: ちなみに、「.com」取得プロジェクトは、始まってからクローズするまでどのくらいかかっているんですか?
深津: 「.com」は1年以上かかっています。
シバタ: やはりそのくらいかかるんですね。時間の余裕があるほうが勝つ感じですかね。
深津: 多分、そうだと思います。
加藤: 途中の半年くらいはほぼ放置でしたが、そういうのも含めて交渉期間ですよね。
シバタ: さっきの「.jp」ドメインの交渉のときはnoteのミッションやこれからやりたいことを誠心誠意説明して、それがインパクトがあったと思うんですけど、「.com」のときは、そういう話はまったくしていないですよね。
深津: いやあ。ドメインバイヤーにそんなこと言ったら、高くなるに決まっているからしていません(笑)。
シバタ: なるほど。それもまた面白いですね。「.jp」のときは、個人の方が持っていらっしゃったので感情的・エモーショナルに攻めることがすごく効果があった。
深津: 「.jp」ドメインは、所有者の方の人生とって意味のあるドメインだから、ちゃんと大義のあることに使うんだというお話をさせていただきました。「.com」は転売されているやつだから、ビジネスでの交渉に徹したというイメージですね。
シバタ: これは面白い。両側、全然違うストーリーですが、共通しているのは、時間がとてもかかるということですね。この話は他でもドメインを取得したいという思っている会社が多いと思うのですが、一番のアドバイスは「時間をかけて交渉できる状況で、自分たちのペースで交渉せよ」ということですね。
深津: 仲良く合理的に話ができるときは平和に。折り合わないときは、コツコツと時間をかけて、自分たちが焦らずに、相手に焦らせるという交渉しかないのではないかと思います。
「.com」「.jp」ドメインの用途を教えてください!
シバタ: 今回のストーリをお聞きして、ドメインって買えるものなんですね、という印象を持たれた読者の方も多いかと思います。
深津: 意外と行けましたね。ダメ元で始めたのですが...
シバタ: 4文字.comで、しかも「note」ですからね。小学生でも知っている英単語です。
加藤: 確かに、よく考えると、facebookよりメジャーワードですよね。
シバタ: そうですよ。facebookとかGoogleより短いんですよ。凄いことなんです。
加藤: 今回のドメイン取得の目的は3つあります。1つ目は、サイトとしての立ち位置を明確にする。本気でこのクリエイターのためのプラットフォームを取りに行くぞっていう意思表明です。2つ目は、短期的なSEOの部分。3つ目はやっぱりグローバル展開なんですよね。note.comは、medium.comと並べても遜色ないくらいのドメインなのかなと思ったりもしています。
シバタ: ドメイン的には遜色ないと思います。「.com」「.jp」を取得されたわけですが、使い分ける予定があるとしたら、どのように使い分ける予定ですか?言える範囲でいいんですけど...
深津: いくつかプランがあるんですけど、その中からどれにするかということはこれから決めていきます。
シバタ: お二人の口からは言いにくいかもしれないので、僕の方から考えられる案を出すと、1つ目は、「note.com」に今のnoteをまるごと移籍するっていうパターンですね。2つ目は、「note.com」を英語版に割り振って、「note.jp」を日本語に割り振るというパターンですね。
加藤: 「.com」に英語と日本語を同居させるとSEO上問題がある可能性があるっていう話もあります。
シバタ: 一方で、日本語を全て「.jp」に移してしまうと、英語版「.com」を立ち上げるときSEO的に0からのスタートになるというデメリットもありますね。
深津: 今のnoteを全て「.com」へ移管してスタートし、十分に英語圏クリエイターが集まったところで日本語を「.jp」に隔離するという方法もありますね。
シバタ: 何かしらのプレミアムサービスを「.jp」でやるというのもありますね。
シバタ: 今回のドメイン取得、本当、おめでとうございますとしか言えないんですけど、改めておめでとうございます。そしてお忙しい中、お時間ありがとうございました。
加藤・深津: ありがとうございました。
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