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Q. ヤフーのコマース事業に見る緊急事態宣言中と解除後のECの差分は?

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A. 緊急事態宣言中(Q1)と宣言解除後(Q2)の取扱高の前年同期比は以下の通りに推移。
ショッピング事業取扱高: 宣言中YoY+85.9% => 解除後YoY+51.3%
クレジットカード取扱高: 宣言中YoY+31.3% => 解除後YoY+26.6%
O2O事業取扱高: 宣言中YoY-55.7% => 解除後YoY+55.3%
「GoTo」の影響で宣言中に大幅減少したO2O事業が大きく好転。


ヤフーを運営するZホールディングスの2020年6月-9月の第2四半期決算が発表になりました。緊急事態宣言(2020年4月7日〜5月25日)を含む第1四半期の決算と比較して、緊急事態宣言解除後の四半期決算にどのような違いが出ているのか見ていきたいと思います。

以下では、第1四半期を宣言中、第2四半期を解除後として記載していきます。

Z Holdings 2020年度 第2四半期決算 プレゼンテーション資料 (2020年10月30日)

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Zホールディングス全体の連結の第2四半期売上は2,833億円で、YoY+15.4%となりました。第1四半期の売上は2,739億円で、YoY+14.8%でした。第2四半期の営業利益は476億円でYoY+20.5%、第1四半期の営業利益は506億円でYoY+40%でした。

宣言中と宣言後で売上・営業利益には大きな変動は見られませんでしたが、前年同期の売上YoYは+5.3%、営業利益は394億円だったことと比較すると、株式会社ZOZOの子会社化と、コロナ禍の追い風で絶好調な決算だったと言えるのではないでしょうか。


次に事業ごとの決算の内訳を見ていきたいと思います。決算説明会資料の冒頭に「様々なグループ会社、サービス群を持つ強みを活かしたポートフォリオ経営が奏功」と記載されているので、事業ごとに緊急事態宣言中の巣ごもり需要の影響が見て取れそうです。


解除後の広告事業の状況

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最初に広告事業です。広告事業の四半期売上は838億円で、YoY+2.0%と前年と比較して微増していますが、成長率の低さから、コロナによる広告主の出稿減の影響をまだ受けていることがわかります。特にヤフーの代名詞で広告売上の約半分を占める検索広告が大きく影響を受け、YoY-3.1%とマイナス成長となっています。

一方、ディスプレイ広告のうち「運用型広告」と区分されるショッピング関連の広告を扱う分野は四半期売上386億円でYoY+19.6%と順調に成長しています。つまり広告事業の成長は、巣ごもり需要によって増加したeコマースの成長と連動していると言えるのではないでしょうか。


解除後のコマース事業の状況

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次にコマース事業です。四半期のeコマース取扱高は、7,849億円でYoY+29.8%と絶好調な成長を見せています。この成長はZOZOの連結による効果が大きく、ショッピング事業の四半期取扱高は3,203億円でYoY+51.3%と絶好調です。ZOZOを除いてもYoY+12%と成長しています。

リユース事業(主にヤフオク)はYoY+5.0%と苦戦、サービス・デジタル取扱高は、1,849億円でYoY+51.2%と成長しています。クレジットカード取扱高は、5,833億円でYoY+26.6%と、こちらも順調に成長しています。

以下では、コマース事業に含まれる主要な事業を「ショッピング」、「サービス・デジタル」、「Fintech」に分けて一つずつ見ていきます。


主要事業その1: ショッピング事業

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前述の通り、ショッピング事業の取扱高は3,203億円でYoY+51.3%と大きく成長しています。

上図は、ショッピング事業の中でも、ヤフーが以前から展開している「Yahoo!ショッピング」と「PayPayモール」の前年同期比での成長を表しています。

新規購入者数はYoY+38.0%なので、購入単価を計算するとYoY+9.4%となります。新規出店申込み数はYoY+34.0%でした。モノを売りたい出店店舗も、買いたい購入者も同じペース(YoY+30%超)で増加していることが分かります。


主要事業その2: サービス・デジタル事業(主にO2O)

次にサービス・デジタル取扱高を見てみます。この事業の構成するのは、O2O(Online to Offline)と呼ばれる、インターネットから実際の店舗に送客をするマーケティングが主な売上となっています。四半期売上は、1,849億円でYoY+51.2%と大きく成長しています。

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上の取扱高のグラフを見ると一目瞭然ですが、O2Oはコロナによる緊急事態宣言で最もダメージを受けた事業の一つでした。しかし、第2四半期の取扱高は1,754億円でYoY+53.3%と大きく成長しました。「Go To Travelキャンペーン」の追い風もあり、宣言中どころかコロナ前を上回る売上となっています。


主要事業その3: Fintech事業

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コマース事業に含まれる主要事業の三つ目の事業は、「PayPay」のFintech事業です。

PayPayは、

・QRコードアプリPayPayでユーザー獲得(ブランド認知獲得)し、
・他の金融サービスをPayPayブランドへ変更
・クロスセルで売上を伸ばす

という戦略を取っています。

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QRコード決済のPayPayは、四半期の決済回数は4.86億回でYoY5.1倍、加盟店数は256万ヶ所でYoY1.7倍、登録者数は3,246万人でYoY2.2倍と絶好調な成長を見せています。

キャッシュレスの追い風に加え、昨年から度々大規模なキャンペーンを継続して実施している効果が出ていると言えるでしょう。

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前述したPayPayの成長戦略の第2ステップとして、グループの金融サービスをPayPayブランドに名称変更し、他の金融サービスに波及させていく戦略です。「銀行の個人口座 新規開設数」、「個人ローン申し込み件数」、「法人口座 新規開設数」のいずれを見ても、PayPay効果が十分でていると言えます。


宣言中と解除後の比較

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このスライドは説明会資料の中で「事業コンディションの現状認識」として掲出されているグラフです。

ここから読み取れるのは、ショッピング事業は宣言中(YoY+85.9%)から成長率はスローダウンしていますが、未だに高い水準(YoY+51.3%)となっています。ZOZOの連結効果がなくなるタイミングでのYoYに注目したいと思います。

Fintechに含まれるクレジットカード取扱高は、宣言中(YoY+31.3%)と比較すると、若干スローダウン(YoY+26.6%)しています。

スライドにも記載されている通り、今後中期的な成長を実現するために、ショッピング事業やクレジットカードの取扱高・有効会員数を増加させることが不可欠なため、上半期は控えていた投資を下半期は積極的に行っていくようです。


まとめ

今日は、第1四半期の緊急事態宣言中と比較しながら、ヤフーを中心としたZホールディングスの2020年7月-9月の第2四半期決算を取り上げました。

・第2四半期売上は2,833億円でYoY+15.4%(第1四半期売上は2,739億円、YoY+14.8%)
・第2四半期営業利益は476億円でYoY+20.5%(第1四半期営業利益は506億円、YoY+40%)
・広告事業の第2四半期売上は838億円で、YoY+2.0%
・第2四半期のeコマース取扱高は7,849億円で、YoY+29.8%
・ショッピング事業取扱高: 宣言中YoY +85.9% => 解除後YoY +51.3%
・O2O事業取扱高: 宣言中YoY -55.7% => 解除後YoY +55.3%
・PayPayの第2四半期の決済回数は4.86億回でYoY5.1倍
・クレジットカード取扱高: 宣言中YoY +31.3% => 解除後YoY +26.6%

緊急事態宣言中と解除後で一番大きな違いは、O2O事業でした。ショッピング事業の取扱高も巣ごもり需要で大きく増加していたことが分かります。

コロナ禍の緊急事態宣言と解除後のユーザーの動向を把握したヤフーは、中長期的な成長のために特にショッピングとクレジットカードのユーザー増加を目的として投資をしていくことを表明しています。

最後に、今回の決算説明会資料で印象的だったスライドをご紹介します。

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この図を見れば分かる通り、ヤフーが「楽天」化してきていることは明白です。

サイズ的にはまだ楽天の方がずっと大きいので、(今四半期のヤフーのショッピング事業取扱高3,203億円、楽天の国内EC取扱高1.1兆円、ヤフーカード取扱高5,833億円、楽天カード取扱高2.9兆円)これから楽天にどこまで追いつけるかに注目していきたいと思います。


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