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eBayが本気で日本再進出!買収したQoo10に関して知っておくべき4つの事実

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今日の記事ではeBayの決算を取り上げたいと思います。

eBayのグローバルでの決算を取り上げるだけではなく、2018年5月に発表があったQoo10(「キューテン」と読みます)の買収を通じての日本市場への再進出に関して、Qoo10に関して知っておくべきポイントを4つに整理してみます。

Qoo10は、ジオシス合同会社がシンガポール、インドネシア、マレーシア、上海、香港の5拠点で展開しているショッピングモール型のeコマースのサービスです。日本では2008年にサイトをオープンしました。日本から他国のQoo10への出品、いわゆる越境ECが簡単に行えるのが特徴です。eBayは、2010年にジオシス合同会社に投資しています。

イーベイ、ジオシスの日本事業買収が完了

Ebay FORM 10-Q

はじめにeBayの決算説明会資料から、主要な指標である全体の購入者数と取扱高を見ていきましょう。

過去12か月間の購入者数の推移がこちらのグラフになります。YoY+4%で1億7,500万人と緩やかに伸びています。

このスライドに記載されている通り、2018年第2四半期からは買収した日本のQoo10の300万ユーザーも含まれています。

取扱高の推移がこのグラフになります。18年第2四半期の取扱高はアメリカではYoY+5%のUS$9,272M(約9,272億円)。全体で為替の影響を除いても+7%のUS$23,629M(約2兆3,629億円)と一桁成長が続いています。

このようにPayPalを分離した後のeBayは、前年同期比で一桁成長が続く低成長銘柄になってしまっているわけですが、今回日本市場へ再度進出するということでQoo10を買収しました。

eBayは2000年頃日本に進出しようとしたことがあり、その時はヤフーオークションに完膚なきまでに打ちのめされ撤退したという経緯があります。この度新たに再度日本市場へ挑戦するという明確なメッセージが打ち出されています。

読者の方の中にはQoo10というサービスを全く知らない方も多いかもしれないので、Qoo10の特徴を4つの事実という形で整理してみました。


事実1: Qoo10の買収金額はUS$573M(約573億円)

はじめに、Qoo10を買収した際の買収金額を確認しておきましょう。

一部の報道ではUS$700M(約700億円)という噂もありましたが、実際に買収金額として計上されているのはUS$573M(約573億円)であることが明らかになりました。

In May 2018, we completed the acquisition of 100% of Giosis Pte. Ltd.’s (“Giosis”) Japan business, including the Qoo10.jp platform, in exchange for $306 million in cash and the relinquishment of our existing equity method investment in Giosis.

Qoo10を買収するに際してeBayはUS$306M(約300億円)を現金で支払っており、残りはeBayが既に保有していたジオシスグループの日本以外の株式を放棄する形で計上されています。

US$573M(約573億円)の内訳は、US$91M(約91億円)が無形資産、US$532M(約532億円)がのれん代、US$50M分の負債があるため、それらを合計するとUS$573Mという計算になります。

US$573M(約573億円)という買収金額ものれん代も決して小さい額ではないので、eBayの日本への再進出にかける本気度が窺える買収だと言えるのではないでしょうか。

今回の買収に対して現金がUS$306M(約306億円)支払われています。

eBayにとっては十分捻出できる金額であることは間違いありませんが、同じタイミングで以下のような発表がなされています。

The company also announced its intent to sell its holdings in Flipkart, which will represent gross proceeds of approximately $1.1 billion.

eBayが保有しているインドのEコマース企業のフリップカートの株式(時価はUS$1.1B(約1,100億円))を売却する予定があると発表されています。

これは見方によっては、競争が激化しつつあるインドでのEコマース事業を一旦手を緩めてでも、日本にその分の資源を投入するとも言えますので、やはりeBayから見ると日本市場はどうしても獲りたい市場なのだと思います。


事実2: Qoo10の日本での取扱高(2017年)はUS$600M(約600億円)程度

Qoo10の日本での取扱高はどの程度なのでしょうか?

BT reported earlier that Qoo10 targeted US$1.2 billion in GMV last year. Mr Cho said that before the sale, Japan was the largest contributor, providing 50 per cent of GMV, while Singapore was the next largest with 40 per cent.

Qoo10グローバルでの2017年の取扱高はUS$1.2B(約1,200億円)だったとされています。そのうち日本が約50%と推測されるため、2017年1年間でのQoo10の取り扱い方は約US$600M(約600億円)になったと考えられます。

Qoo10 takes e-commerce fight to next level with bulked-up war chest

さらにQoo10を運営するジオシス合同会社から以下のような発表もなされています。

ジオシスは2月8日、運営するネットショッピングモール「Qoo10」の2017年(1~12月)における流通額が前年比40%以上増加したと発表した。

*「Qoo10」の2017年流通総額は4割以上の増加、出店者数は1.1万店舗(インプレス/ネットショップ担当者フォーラム)

日本の主要なeコマースプレイヤーの取扱高を整理すると以下のようになります。

Qoo10       約600億円(YoY +約40%)
楽天(国内EC)   3.4兆円(YoY +13.6%)
ヤフー(EC全体)  2.1兆円(YoY +13.7%)
メルカリ      3,202億円(YoY +54.3%)
ZOZO       2,705億円(YoY +27.6%) 
※楽天は2017年の1年間、ヤフー、メルカリ、ZOZOは、2018年3月期の年間取扱高。

これを見ると、Qoo10はメルカリやZOZOの約1/5程度という規模になります。しかし前年同期比の成長率を見ると多くの既存プレイヤーより早く成長しているのがご理解いただけると思います。

余談になりますが、マーケットプレイス型のEコマースの会社の場合、テイクレートはおよそ10%程度になることが多く、成長率にもよりますが時価総額は取扱高の1倍程度になるのが一般的ではないかと思います。

そういう意味では、YoY+40%というペースで急成長している事業を、取扱高の約1倍で買収できたというのはeBayにとっては決して悪い買収ではないのではと思いました。


事実3: 会員数は960万人、年間購入平均は6,000円強

年間の取扱高が約600億円であるということは分かりましたので、もう少し詳細なKPIも見ておきましょう。

会員数: 960万人 (1年前から210万人増)
会員女性比率: 70%
月間ページビュー数: 3億4,000万PV
出品数: 1,140万点
アクセスデバイスの比率: モバイル・アプリ経由が83%
出店者数: 1万1,000店(1年前から約1000店増、2017年は大手企業の出店が多かった)
フルフィルメントサービス発送件数: 前年同期比2.5倍以上

会員が約1,000万人もいる点と、モバイル比率が80%を超えている点、そして出展店舗が1.1万店あると言う事実を見る限り、モデルとしては楽天やヤフーショッピングに近いBtoBtoC型のマーケットプレイスになっていると言えるでしょう。

また、人気ジャンルに関しては

人気が高いレディースファッションやコスメのカテゴリーに加え、フード(食品)やデジタル(家電、ゲーム、スマホ関連など)、メンズファッションなどのプロモーションを強化したことが流通総額の増加に寄与した。フードカテゴリーの流通額は前年比2倍、デジタルカテゴリーは同1.5倍に増えたとしている。
専門グループを作り、エンタメやベビー・キッズジャンルにも注力。
エンタメジャンルの取扱点数の割合は2017年12月末時点で約5%。

という記載があります。こちらも楽天市場やヤフーショッピングに近いと言うか、直接競合するアプローチになっていると感じます。

簡単にユニットエコノミクスを計算してみます。

960万人の会員から約600億円の取扱高が生まれていることになりますので、年間購入平均は6,000円強という計算です。

1.1万店舗から約600億円の取扱高が生まれていることになりますので、1店舗あたりの年間売上は約540万円という計算になります。

会員あたりの購入額と店舗あたりの売上は、まだまだ楽天市場やヤフーショッピングに比べると小さくも見えますが、逆に言うとまだまだ成長余地があるとも言えます。

参考1: 「Qoo10」の2017年流通総額は4割以上の増加、出店者数は1.1万店舗

参考2: eBayが買収する「ジオシス」「Qoo10」はどんな会社? 事業の規模は?


事実4: eBayは韓国での成功を再現させたいと思っている

最後に、皆さんはeBayがアジアで成功しているイメージがあまりないかもしれませんが、実はeBayは韓国で非常に大きな成功を収めています。

The acquisition is similar to a deal eBay did in Korea in 2001 when it purchased Internet Auction Co and linked the Korean service up to its global network of buyers and sellers. That integration has been successful, and today South Korea is eBay’s fourth largest market based on revenue behind only the U.S., Germany and UK, respectively.

eBayは2001年に韓国でのオークション事業を買収し、eBayのグローバルプラットフォームに接続することで、現時点でeBayのプラットフォームの中でもアメリカ、ドイツ、イギリスに続く4番目に大きな市場となっていると言われています。

参考: EBay paid $573M to buy Japanese e-commerce platform Qoo10, filing reveals

eBayとしては、アジアの中でインドや中国などの急成長国での過当競争は避けつつも、日本という韓国よりも大きなマーケットで存在感を確立したいというのが正直なところなのではないでしょうか。

以上eBayのQoo10買収と、日本市場への再進出に関して現場で分かっている数字を整理してみました。

日本のeコマース市場はまだまだ大きくなると考えられますので、今後も注目していきたいと思います。

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