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Q. SPAC上場CircleのステーブルコインUSDC、取引量はVisaの何分の1?

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A. Visaの約16分の1の規模。ただ、CAGR1,569%と急成長しており、世界最大の決済企業であるVisaの取引規模を超える日もそう遠くないかもしれない。

この記事は、hikoさんとの共同制作です。

今回は、SPACでの上場が目前とされるCircle社と、ステーブルコインのUSDコイン(USDC)について解説していきたいと思います。

ステーブルコインは、ビットコインのような価格変動をする暗号資産を、決済に使いやすく設計したものです。USDCはその中でも、Visaと組んで法人決済に使われるなど、今注目の暗号資産です。

記事の前半では、SPACで上場するCircle社とUSDCについて。後半では、ステーブルコインが注目されている理由を、利用用途や安全性を担保する仕組み、またCircle社の事業の決算書の数字から深堀していきます。

暗号資産やステーブルコインに馴染みの無い方でも、最後まで読むとイメージを掴んで頂けると思うので、是非最後まで読んでみて下さい。

この記事では、1ドル=100円($1 = 100円)として、日本円も併せて記載しています。


Circleとは?

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Circle社はステーブルコインの1つであるUSDCを、Coinbase社と共同で設立したコンソーシアム、CENTREによって発行している会社です。

ステーブルコインとは、ビットコインとは違い、価格が変動せず常に特定の法定通貨に対して一定の価値を持つ暗号資産です。1USDCはいつでもUS$1.00に交換出来ます。

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USDCの流通量は急速に拡大しており、2021年初めから8月までに1,600%以上成長しています。現在はさらに成長を続け、2022年1月現在で、流通量は455億ドル(約4.5兆円)となり、ステーブルコインとして世界で第2位の規模です。ちなみに、世界第1位はTether Limited社が運営する「USDT(テザー)」で流通量は783億ドル(約7.8兆円)です。

続いて、Circle社の市場からの評価を見ていきましょう。

4.5兆円もの暗号資産を発行し、分散型金融(Defi:Decentralized Finance)で存在感が増している同社ですが、評価額は去年7月にSPACでの上場を発表した段階では45億ドル(約4,500億円)でした。

Circle社の上場は、単なる上場という以上に、ステーブルコインが既存金融から信頼を獲得するきっかけにもなり得ます。これが、業界が大きく変わるトリガーとなるのか、今後が注目です。

一方で、SEC(証券取引委員会)の調査を受けるなど、規制当局側の動向も注視が必要です。


直近の動きとして、2022年1月13日には、アメリカ大手ヘッジファンドのARK Invest社がConcord社からCircle社の株を7,060万ドル(約70.6億円)分取得しました。

ARK Invest社は、技術プラットフォーム毎に専門知識を持ったアナリストを配置し、破壊的イノベーションを起こす企業へ投資することで、大きなリターンを得ることで知られています。

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( NGBレポートより 2021年8月26日)

上記は米国における2020年の上場投資信託(ETF)のリターントップ10です。トップ10にARK Invest社の投資信託が3本入っており、ARK Invest社の目利き力の高さが伺えます。

このことからもCircle社の市場評価の高さと今後の大きな成長が期待できます。


Circle社の事業内容

Circle社の事業内容を確認していきましょう。事業内容は大きく分けて3つあります。

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1つ目は、USDCの運営事業です。

USDCの発行と運営を推進しています。USDCの発行はCircle社単体で実施しているのではなく、暗号資産取引所のCoinbaseと共同で設立したコンソーシアム、CENTREによって発行しています。
またVisaの決済ネットワークに加入しており、ここを起点に決済手段や送金手段として一般に普及していく可能性が高いです。

2つ目は、決済、財務サービス事業です。

Circle社は4つのAPIサービスを保有しています。1.アカウントAPI  2.ペイメントAPI  3.送金API 4.暗号資産融資の4つです。
VisaはAPIサービスを利用して、コーポレートカードにおけるUSDCを利用した支払いを提供しています。

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3つ目は、シード事業への投資事業です。
投資の中核となるSeedInvest社は、2019年3月にCircle社が買収した会社です。
SeedInvest社は非公開株に対するクラウドファンディングプラットフォームです。

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(S-4より)

次に損益計算書を見ていきます。

2021年1月-9月までの9ヶ月間の売上ですが、1.USDCの運営事業は2.9億ドル(約290億円)、2.決済財務サービス事業は2.1億ドル(約210億円)、3.シード投資事業は0.6億ドル(約60億円)で、合計約5.7億ドル(約570億円)となっています。

一方、全体のオペレーションコストが約7.2億ドル(720億円)であり、しばらくは赤字を補填する投資が必要となる事業となっています。


なぜステーブルコインが注目されるのか?

ステーブルコインがなぜ注目されているのか、2つの切り口で整理します。

1つ目は、法定通貨と価値が連動する暗号通貨での決済ニーズが増大しているため。2つ目は、第三者機関から裏付け資産の監査を受けている、信頼性の高いステーブルコインが出て来ているためです。

1.ステーブルコインのニーズの増大

まず、おさらいすると、ステーブルコインとは、価格の安定性を実現するように設計された暗号資産のことです。

価格変動の激しいビットコインでは、決済手段として活用が進みにくかった為、法定通貨に価値を連動させて値動きをステーブル(安定した)にしたコイン(暗号通貨)がステーブルコインです。

ステーブルコインの特徴として、従来の国際送金の仕組みと比べて迅速かつ低コストで、いつでもどこでも送金出来ることにあります。

これは国際金融での取引に使えるだけで無く、世界に17億人存在すると言われる銀行口座を持たない人にとって、スマホ一つで自由に送金出来るようになり、大きなインパクトがあります。またWeb3.0やNFT市場の拡大と共に、その取引通貨としての可能性が期待されています。

一方で、ステーブルコインは政府によって保証されていないので、その価値が下がるリスクが存在します。

2.ステーブルコインの安全性

ステーブルコインの価値を担保するために、発行時価総額と同じ金額の裏付け資産を発行企業が保有し、第三者機関によって監査で保証している発行体も出て来ています。USDCの事例を見てみましょう。

CENTREが管理するUSDCでは、1USDCが1ドルとなるように発行されていることから、USDCの発行総額と同額の裏付け資産をCircle社が管理している必要があります。どんな種類の資産を管理しているのか、またどう監査されているでしょうか。

以下は2021年5月28日時点の開示情報で、当時のUSDC発行総額は約220億ドル(約2.2兆円)でした。

・現金および現金同等物:61%、134億ドル(約1.3兆円)
・国外の銀行が発行するCD(Certificates of Deposit):13%、29億ドル(約2,900億円)
・米国債:12%、27億ドル(約2,700億円)
・コマーシャルペーパー:9%、20億ドル(約2,000億円)
・社債:5%、11億ドル(約1,100億円)
・地方債と米エージェンシー債:0.2%、1億ドル(約100億円)

合計金額が222億ドル(約2.2兆円)になっており、安全資産でUSDCの発行額を上回る米ドルをCircle社が管理していることが分かります。これらの裏付け資産は大手監査法人によって毎月監査されています。


ステーブルコインの現在地

ここでは、ステーブルコインを取り巻く環境を見ていきます。

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サトシナカモトのBitcoinの論文(WP = Whitepaper)が世の中に出たのが2008年でした。テクノロジーハイプ・サイクルは10年ほど経過したタイミングが基盤レイヤーの構築の好機となると言われており、ブロックチェーンやステーブルコインはまさにそのタイミングです。

どんな技術もハイプ・サイクルに従って、過度な期待から幻滅期を経て、実用化フェーズに向かってきます。ブロックチェーンやステーブルコインも、例外ではなく、同様の流れを踏んでいくものと思われます。

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(ビジネス+ITより 2012年9月)

今から10年前の2012年のテクノロジハイプサイクルを見てみましょう。今では生活に浸透して来ている、3Dスキャナやインターネット・オブ・シングス、自然言語による質疑応答システム等、10年前にはテクノロジの聡明期に分類されていました。


Visa/Mastercard/JCBと取引規模を比べると?

USDCの流通規模をVisaやMastercard、JCBと比べるとどの程度になるのでしょうか。

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上記は、2021年7月〜9月期の各社のGMV(Gross Merchandise Volume:総決済取引額)と年平均成長率を比較したものです。Circle社のUSDCでのGMVは送金等も含まれるため、純粋な比較にはなりませんが、規模感は掴むことができます。

まず注目すべきは、年平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)が1,569%と驚異的な成長率を出している点です。

これは、GMVが低いから成長率が高いのではありません。その理由として、Circle社のGMVは、皆さんがお馴染みの「JCB」や飲食店等でスマホやタブレットでの決済でよく見かける「Squre」を既に凌駕しています。また、3億人以上が利用している「PayPal」にも迫る勢いです。


ステーブルコインの中で比較すると?

ステーブルコインの中でのUSDCの位置付けについて見てみましょう。

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上図の通り、元祖ステーブルコインのUSDT(Tether社が発行)が、圧倒的なシェアを誇っています。USDCは第2位のシェアですが、近年高い成長率でUSDTを追っています。

USDTは裏付け資産に対する訴訟があった(既に和解済み)一方、USDCは信頼性の根拠となる裏付け資産を毎月大手会計事務所から監査を受け、結果を公表することによって、信用性を担保しています。


ステーブルコインの今後の展望

Web3.0の潮流が来る中で、ステーブルコインによる決済ニーズはさらに高まっていくことが期待されます。また、各国の中央銀行がデジタル通貨を発行する事例も出てきており、CircleのUSDCのような民間発行のトークンとどのような棲み分けになるかが注目です。

中央銀行のデジタル通貨(CBDC)の事例としては、カンボジアの中銀デジタル通貨、そして日銀も、現時点でCBDCを発行する計画は無いと公表していますが、実証実験と並行して制度設計の検討を推進しています。

民間企業では、MetaやPayPalも独自のステーブルコインを検討するなどWeb3.0時代を見据えて、脱中央集権化に投資する動きがあります。

一方で、各国でのステーブルコインに対する規制が進んでいるのも事実です。金融庁は2021年12月7日に法定通貨連動型ステーブルコインに規制をかけ、発行体を銀行と資金移動業者に限定し、仲介業者も新たに監督対象とする方針であることを示しました。

ステーブルコインを活用することは、お金のやり取りや回転速度が上昇することで、経済の活性化に繋がります。一方で、金融・決済システムへの悪影響やマネー・ロンダリング等の懸念もあり、Circle社はSPACによる上場の発表後、アメリカSEC(証券取引委員会)から調査を受けています。

今後政府と民間がどのようにバランスを取って発展していくのか、またそれが私達の生活やビジネスにどう影響するか、引き続き見ていきたいと思います。


まとめ

この記事では、急速に発展しているステーブルコインUSDCとその発行体であるCircle社を軸に、ステーブルコインの現状と可能性を整理しました。

ポイントをまとめます。

USDCとは
・Circle社とCoinbase社が共同で設立したコンソーシアム、CENTREによって発行された暗号資産。米ドルに1:1で連動しており、1USDCはいつでもUS$1.00に交換出来る。

Circle社とはどのような会社か
・SPACによって上場準備をしている会社。暗号資産取引所としてはCoinbase社に続き2例目の上場となる。ステーブルコインが既存金融からの信頼を獲得できるか注目される。

ステーブルコインを取り巻く環境
・サトシナカモトのBitcoinの論文発表から10年経過し、テクノロジーパイプ・サイクルとしては基盤構築の好機のタイミング。

CSDCのGMV
・CSDCのGMVは既にJCBやSqureを凌駕しており、年率約1,500%の成長をしている。

ステーブルコインはWeb3.0やNFTとも関連するテーマなので、引き続き追っていきたいと思います。

Web3.0に関しては、皆様の関心も特に高いと思いますので別の記事で詳しく解説する予定です。


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