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Web会議の老舗ブイキューブの未来を担うかもしれない電話ボックス型の商品とは?

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私のYouTubeチャンネルでは、決算読み解き実況中継をしています。おかげさまでYouTubeの方も多くの方にご覧いただいているのですが、特に忙しいビジネスパーソンの方たちから「YouTube動画の内容を知りたいが、動画を見る時間が無い」というお声を多数いただいています。

この記事では、上の動画の内容をスクリーンショット付きで文字起こししてあります。動画を見る時間はないけれど、内容を短時間でおさらいしたいという方に最適です。


今回の決算の印象は?

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ーー(伊佐山真里)皆さんこんにちは。今日は、Web会議サービスやオンラインセミナー等、コミュニケーションサービスを提供しているブイキューブの決算書を、シバタさんと一緒に読んでいきたいと思います。シバタさんよろしくお願いします。

今回は2020年12月期の第2四半期の決算書を読んでいきたいと思います。まずブイキューブの事業について簡単に見ていきましょう。

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3つの事業に分かれており、1つ目がビジュアルコミュニケーション事業というWeb会議サービスの全般を扱っている事業です。上のスライドの(1)V-CUBEミーティングやV-CUBEセミナーを主力としていて、その他にも(3)(5)(6)(8)のサービスがビジュアルコミュニケーション事業にあたります。

2つ目がアプライアンス事業という、ビデオ会議やボックスミーティングルーム等ハードの商品を扱う事業です。(4)テレキューブや(2)V-CUBE Boxを主力としていて、他にも(7)がアプライアンス事業にあたります。

3つ目がラーニングマネジメント事業です。(9)の教育系の事業も持っています。

これらの3つのセグメントから成っているのですが、Web会議やビデオ会議は競合も多く、レッドオーシャン化されている状況です。その他(3)~(9)は競合がまだ少ないブルーオーシャンとして紹介されています。さっそく今回の結果を見ていきたいと思います。

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コロナで社会がリモートワークにシフトしてきたという追い風もあり、前年に比べると営業利益が大幅に増え、黒字で着地しているのが印象的でした。シバタさんの今回の印象を教えてください。

(シバタナオキ)やはり一番大きなポイントは、黒字転換している点です。もう1つは業績の上方修正が出ているということで、すごくポジティブなニュースが多いのが印象的です。一方で、Zoom等他の会社の決算と比べると、売上の伸びは少し緩やかな印象もあります。


ブイキューブのユニークポイントは?

ーー営業利益が黒字になったということで、セグメント別に今回の伸びに一番貢献しているところを見ていきましょう。

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Web会議サービスを扱うVC事業(ビジュアルコミュニケーション事業)が一番貢献しているのが分かります。ここはZoomやGoogle Meet等が競合となり、機能面で他社と差別化するのが難しいように思います。ブイキューブは豊富なサービスラインナップも1つの強みだと思いますが、その他ブイキューブならではのユニークポイントはどこでしょうか。

決算資料の25ページを見てください。この図が一番分かりやすいです。左側にSaaS、右側にサービスと分かれています。

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SaaSの分野はZoomやGoogleと思い切り競合するところなので、割と厳しいレッドオーシャンだと思います。ZoomやGoogleはWeb会議のソフトウェアにおそらく恐ろしい数のエンジニアを投入されているので、とても競合したくないところのはずです。

一方で、この会社がすごくユニークなのが、右側のサービスのところをしっかり扱っている点です。インフラとして、あるいはソフトウェアとしてのWeb会議・ビデオ会議システムを売りつつ、その上で何をするかをしっかりとサービスとして提供しているのがユニークだと思います。

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26ページを見るともっと面白いです。真ん中の下に書いてある、新卒や中途の採用説明会・株主総会・講演会・研修等、実はこれらはオンラインで開催しようとすると簡単にはできないんです。

ソフトウェアがあるだけでは不十分で、色々なノウハウや仕組みを組み合わせる必要があります。そういうところをきちんとサービスとして提供するのが面白いですし、ビジネスとしては伸びる可能性があります。

今回の四半期に売上の伸びが緩やかだった理由は、こういうサービスは売るのに少し時間がかかるためです。Zoomやブイキューブのソフトウェアを売るだけなら、今日売れば明日からすぐに使えます。

しかし、こういったイベント系のものは当然何カ月も前から準備があり、さらにその前から営業が入ります。コロナだからといってすぐに短期の売上にならないので、この辺の売上が今年の後半に乗ってくるのではないかと思います。

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例えば、製薬Web講演会の開催回数は、コロナの後爆発的に増えているわけです。今回は残念なことに6月までの決算なので、7月分は決算期に入っていないんです。

そういう意味で、今回の四半期決算には入っていないけれど、もうすでに見えている売上が相当あるのではないかと思います。次の四半期はもっと期待していいでしょう。


ブイキューブがZoomの製品を販売することで得られるメリットは?

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ーー上のスライドで気になったのですが、一見競合に思えるZoomも販売しています。サービスを強みにしているからこそできることだと思いますが、競合でありつつ仲間であるという珍しい関係だと感じました。

ブイキューブがZoomの製品を販売することで得られるメリットとしては、営業先になり得る企業が増えるということ等が挙げられるのでしょうか。

これはおそらく経営側としては相当難しい判断をされたと思います。Zoomという競合のように見える会社の製品を代理販売するのには色々な思いがあると思います。

ただ、これを早いタイミングでできているというのは、すごく強みにもなります。基本的にこのエリアだとサービスで差別化するわけです。つまり、サービスをなるべくたくさん売るために、より広い範囲のソフトウェアに対応しておいた方がいいんです。

「V-CUBEミーティングだけを使っている人」よりも、「V-CUBEミーティングを使っている人、もしくはZoomを使っている人」にした方が、当然マスが大きくなりますよね。経営の意思決定においてはかなり難しい類だと思いますが、この判断は本当にすごいです。


40%ルールに近づけるにはどうしたらいい?

ーーVC事業の中身を見ていきましょう。こちらが結果です。SaaSビジネスを見る際に定番化してきている「40%ルール」に当てはめてみたいと思います。40%ルールというのは、SaaSビジネスの成長を見るときの基準で「売上高前年比+営業利益率が40%以上か」というものです。

計算式に当てはめてみると、売上高前年比は16.4%の伸び、営業利益率は17.6%となっており、合計約34%で基準の40%には少し足りていない現状です。

40%ルールに近づけるには、売上成長率(売上高前年比)と営業利益率どちらかを上げることになると思いますが、今後に関してのポテンシャルが今回の決算から読み取れるかシバタさんに教えていただきたいです。

40%ルールの計算式は今約34%ということで、かなり40%に近いです。おそらくこの事業に関してはかなり営業利益率が安定しているので、営業利益率を維持したまま売上成長率を高める方向に行くのではないかと思っています。


年額と月額の割合をどう読み取る?

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ーー売上の内訳を見てみると、年額と月額のサブスクに分かれています。企業のセミナー等先ほど言っていた強みのサービスにあたるところは年額サブスクに含まれていますが、短期的にコロナの影響で落ち込んでいて、今回は大きく月額サブスクの売上が伸びています。

年額・月額のように契約タイプで項目を分けたグラフはZoomの決算でも使われていました。「年額が増えると安定しやすく売上の質が良い」と読み取れるかと思ったのですが、年額と月額の割合はどういう風に読み取ればいいのでしょうか。

当然年額の方が解約しにくいので、年額の方がいいと思います。だからといって月額が駄目かというと、そんなことはないです。

アメリカの場合、年額・月額というよりも、年間の契約高が$100K(1,000万円)以上のお客さんからの売上がどれくらいあるかを分析している場合が多いです。

ーー月額でも契約年数が多かったり、1年間で使ってくれる単価が高ければ、月額の割合が増えていても問題ないということですか。

そうですね。月額の割合が増えているから駄目ということには決してならないと思います。


売上高と設置台数の伸びは比例しない?

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ーー次に、アプライアンス事業について見ていきます。こちらもとてもユニークな事業で、まさにブルーオーシャンの分野かなと思います。

特に「テレキューブ」は去年CM広告もされており、今年に入ってかなり設置台数が伸びているというのが分かります。2Qはコロナの影響で納品が遅れたため、前期比でみると少し落ち込んでいますが、前年比でみると約3倍近く伸びています。

その一方、約3倍近く伸びている設置台数に対して、売上の伸びはあまり比例していないように思います。これはどうしてでしょうか。

いくつか可能性があると思っています。企業向けの場合、販売モデルがどうなっているのかというのもありますし、あとはアプライアンス事業の中に占めるテレキューブの割合が、そこまでまだ大きくないのかもしれないですね。


テレキューブが今後日本で急増の予感?

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テレキューブのようなものは、アメリカではコロナ以前から、ここ数年間でものすごく設置が増えた気がします。WeWorkのようなシェアードオフィスや、大きい会社でもよく見かけます。要は、ミーティングルームが足りなくなるんです。特にリモートになると皆にミーティングルームが必要になりますが、当然人数分のミーティングルームは無いんです。

ミーティングルームを1人で使うのはスペースの無駄なので、最近アメリカでは会議室の隣等にテレキューブのようなボックスを設置して、リモートの相手と話す時にはそこを利用するという風になっています。

日本もおそらくそうなると思います。コロナの状況が続くと、リモート勤務OKにしている会社では、オフィスに来ている人もリモートにいる同僚と話をする時に会議室に行かなくてはいけないということになり、会議室は絶対に足りなくなります。そうなった場合、1人だったらテレキューブのような所に入って電話できる、という風になると思うんです。

実はこのサービスは、日本ではまだそこまで浸透していませんが、アメリカではもうかなり浸透しています。特にリモート時代に必須のボックスになります。要は電話ボックスですね。オフィスに電話ボックスが何台もあるのをよく見るので、これは今後当たり前になっていくと思います。


アメリカよりも日本で展開が遅い理由は?

ーー日本での展開がアメリカよりも遅くなったのはなぜでしょうか。

アメリカは元々リモート文化が日本よりも強かったのもあると思いますが、コロナの状況下にあるため、もう少し早く売れてもいいのではないかということですね。

この電話ボックスのようなものは「誰でも作れるのではないか」と思うかもしれませんが、実はそんなことはありません。安全に作り、かつ許認可を得ようとすると、それなりに大変なんです。

今回の場合はおそらく消防法が関係しています。この中で火事になったら困りますよね。あるいは、これ自体が火事を起こさないことをしっかり証明しなくてはいけないんです。

決算資料の説明会動画でも社長がおっしゃられていますが、消防法をきちんとクリアすることが意外と大変だったそうです。逆にいうと、他にそこまでできているプロダクトは今のところ無いということなので、これから確実に日本でも普及していくでしょう。

ーーブイキューブが先陣を切ってテレキューブを広めていくということで、今後も期待していきたいと思います。

そうですね。オフィスだけではなく、駅や商業施設等も含めて、テレキューブのようなものがどんどん必要になってくると思います。消防法までクリアしているのは、他の会社よりも先に進んでいるということで間違いないです。


下半期で着目しているポイントは?

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ーー最後に通期の見通しを見ていきます。すでに営業利益を5億円から7億円に上方修正していて、さらに目標は9億円とされています。シバタさんがブイキューブの下半期で着目しているポイントを教えて欲しいです。

おそらく売上的に一番影響が大きいのが、サービス事業がどのくらい浸透していくかです。これは外部環境に影響される部分も大きいと思いますが、採用の説明会や講演会等がどんどんオンラインに置き換わっていくと、ブイキューブが扱っているようなサービスが必要になります。そこがどのくらい売上として立ってくるのか、というのが注目している点です。

あとは、やはりテレキューブが爆発的に伸びる可能性はかなりあると思うので、どれくらいの台数になるのかというのが個人的にはすごく楽しみです。

ーー下半期も引き続き、ブイキューブの成長を追っていきたいと思います。


まとめ

書き起こし記事は以上となります。
以下、重要なポイントをまとめていますので、振り返りにご活用ください。

・第2四半期決算は、黒字転換し業績も上方修正と好調。セグメント別ではWeb会議サービスを扱うVC事業が一番貢献していた。

・ブイキューブの特徴は、ソフトウェアだけでなく、説明会等オンライン化の導入や支援のサービスまで扱っている点。売上が立つまで時間がかかるため、下半期サービス関連の売上にすでに見えているものが相当あるはず。

・テレキューブ(電話ボックスのような会議スペース)はリモート時代に需要が高まる。アメリカでは同様のものが浸透しているため、日本でも今後爆発的に伸びる可能性がある。

※この動画ならびに書き起こしはは株式会社ブイキューブ様の提供の元、シバタナオキの決算実況とのコラボ企画です。

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