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Q. マクアケが、コロナ特需後でも売上成長率YoY+60%の予想を出せる3つの勝因とは?

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ヒント:メディア掲載月間1万件以上の露出。大企業のオープンイノベーションにMakuakeが活用。

この記事はゆべしさんとの共同制作です。

新型コロナウイルスにより、追い風を受けている業界の1つに「クラウドファンディング」があります。

飲食店や観光業、エンターテインメント事業者など、新型コロナウイルスにより大きく影響を受けた事業者がクラウドファンディングを活用している様子を見たことがある人も少なくないでしょう。

クラウドファンディング協会によると、購入型クラウドファンディングの支援金額は2020年上半期で223億円にのぼり、2019年上半期の77億円から約2.9倍と、市場が大きく成長していることが分かります。

引用:購入型クラウドファンディング市場規模に関する上半期比較結果の公表

今回は、拡大しているクラウドファンディング市場において、業界を牽引しているサイバーエージェントのグループ会社であるマクアケに注目していきます。

マクアケの2020年9月期の売上は、コロナウイルスによる外部環境変化の追い風を受けて、売上成長率YoY+139.9%と大きく成長しました。しかしながら、コロナ特需後の2021年9月期においても売上成長率YoY+60%と、大幅増収の業績予想を出しています。

この大幅増収を見込む理由とはどのようなものなのでしょうか。この記事では大幅増収を見込む3つの勝因を考察していきます。


マクアケのビジネス全体像

マクアケ 2021年9月期 第2四半期決算説明資料(2021年4月20日)

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まずはマクアケの事業展開を見ていきます。マクアケは新商品・新サービスのプロジェクト段階を中心にサポートするクラウドファンディング事業を軸に、新商品・新サービスのデビュー後の売上拡大をサポートする各種関連サービスを展開しています。

具体的には、スタートアップや中小企業によるクラウドファンディングだけでなく、大企業の新商品開発(MIS:Makuake Incubation Studio)のサポートやクラウドファンディング掲載案件の広告配信代行、商品化後のグロースを目的としたECサイトやリアル店舗での販売や販路紹介を行っています。


獲得可能なマーケット規模

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マクアケがターゲットとしている市場は、新商品・新サービスのデビュー前をサポートする「0次流通市場」です。

従来は新商品・新サービスを生み出す場合、作り手は市場に提供して初めて消費者の反応が分かり、消費者が新商品・新サービスを利用することでお金を得ることができました。

しかし、マクアケを利用することで、市場に新商品・新サービスを生み出す前に消費者の反応を知ることができ、消費者が新商品・新サービスを利用する前にお金を得ることができるため、従来と比較してコストとリスクを大きく軽減することができます。

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この0次流通市場の中でも、特にオンラインの領域が、マクアケが獲得できる最大市場規模となります。仮に20%のEC化率とした場合、マクアケが獲得できる最大市場規模は約1兆円と試算しています。

これは、2020年におけるスマホゲームの国内市場規模が1.2兆円であることから、オンライン領域における0次流通市場はスマホゲームの国内市場規模と同程度と想定されます。

引用:スマホゲームが1兆円市場に 「巣ごもり」取り込む、仕掛けも多彩


独自のポジション

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一般的にクラウドファンディングは、寄付型・購入型・金銭型という種類に分かれています。マクアケが注力している購入型は寄付型と異なり、「応援購入」となることで支援した消費者はプロジェクト実行者からリターンを得ることができます。

この特徴があることから、マクアケは自社サービスを、「新商品・新サービスのデビューに際して、消費者がいち早く応援購入できるマーケットプレイス」として定義しており、0次流通市場に特化した先行販売モデルを確立していることから、他の競合サービスと異なるポジションを築いています。

また、ユーザーにとっては「応援購入」という消費体験そのものの新鮮さも、マクアケの独自のポジションの確立に一役買っているのかもしれません。


マクアケの業績(GMV)

ここからは、マクアケの決算情報を見ていきます。

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まずGMV(流通総額)ですが、2021年9月期2Qで53.0億円(YoY+104.1%)と、過去最高を記録しました。前四半期では品質保証体制の強化で一時的に減少するも、コロナによる追い風が生じた2020年9月期3Qから、GMVは好調に推移しています。


売上及びテイクレート推移

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次に、売上とテイクレートの推移を見ていきます。マクアケの売上はGMV×テイクレートで算出されるため、2021年9月期2Qの売上はGMVの成長に伴い11.1億円(YoY+83.8%)と、大きく成長しています。

続いてテイクレートですが、2021年9月期2Qは23.0%と、前年と比較して微減しています。こちらは、原則20%のテイクレートであるクラウドファンディング事業の売上構成比が増加したことが主な要因です。


GMV、テイクレートの比較

次に、マクアケと競合企業のGMVとテイクレートを比較することで、その特徴を見ていきましょう。

2021年5月現在、国内でクラウドファンディングを主要事業として展開している上場会社がマクアケのみのため、同様のビジネスモデルであるCtoC型のマーケットプレイスを展開しているBASEおよびCreemaを競合企業として比較していきます。

BASE 2020年12月期 第4四半期決算説明資料(2021年2月10日)

株式会社クリーマ 2021年2月期 第4四半期決算説明資料(2021年4月14日)

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上図は、いずれも3ヶ月間のGMVおよびテイクレートであり、マクアケは2021年1-3月、BASEは2020年10-12月、Creemaは2020年12月-2021年2月の決算情報から引用しています。

3社とも、新型コロナウイルスによる外部環境変化の追い風等により、GMVは大きく成長しています。中でもマクアケやBASEはYoY+100%以上の急成長を達成しています。この3社の急成長の背景は、単純なオーガニック成長だけでなく、積極的なTVCM出稿等のマーケティング投資も功を奏していると言えるでしょう。

次にテイクレートですが、こちらはマクアケが23.0%と、他2社と比較してかなり高いことが分かります。

マクアケを利用することで、新商品・新サービスを作成する際の作り手のコストやリスクを軽減できるという強い魅力があるからこそ、このテイクレートでも利用する作り手が多く、それに加えて広告戦略によりユーザー獲得に対する信頼感もある、といった事が、結果としてGMVの急成長に繋がっていると思われます。


高い粗利率

2020年9月期 株式会社マクアケ有価証券報告書(2020年12月15日)

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次に売上総利益ですが、売上の増加に伴い2021年9月期2Qでは9.23億円(YoY+93.3%)と、大きく成長しています。また、売上総利益率は80%前後を安定的に推移しており、2021年9月期2Qでは84.3%です。

2020年9月期の売上原価内訳
・広告媒体費:3.88億円
・ソフトウェア減価償却費:0.57億円
・サーバー利用料:0.4億円
・業務委託費:1.25億円
2020年9月期株式会社マクアケ有価証券報告書(2020年12月15日)から引用

2020年9月期から2021年9月期2Qにかけて、展開している事業に大きな変更がないため、売上原価の内訳や構成比は2021年9月期2Qも同様であると思われます。

一般的に、広告配信は売上総利益率15-20%程度が一般的なため、広告配信代行を除いた純粋なクラウドファンディング事業の売上総利益率は90%に近いと想定されます。


積極的な広告投資により、営業利益はマイナス

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次に営業利益を見ていきます。前年と比較して売上は急成長しているものの、2021年9月期2Qの営業利益は▲0.88億円で赤字に転落しています。

これは今後の成長を目的に、認知拡大のためのTVCMを中心とした広告宣伝や積極的な採用強化といった先行投資を行ったことで、販管費が大きく増加した為です。

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この積極投資により、アクセスUU数はピーク時と同水準の1,125万人、会員数は右肩上がりに増加して157万人と、順調に推移していることが分かります。

ここまで、マクアケの事業内容や決算情報を競合他社との比較も交えて見てきました。記事の後半では、マクアケがコロナ特需後にも関わらず売上成長率YoY+60%の業績予想を出すことができている3つの勝因について、詳しく考察していきます。

この記事は、クラウドファンディングに関心がある方、マーケットプレイス型のECコマースビジネスに関心がある方、toCサービスに興味のある方に特におすすめな内容になっています。


Q. マクアケが、コロナ特需後でも売上成長率YoY+60%の予想を出せる3つの勝因、の答え

A. 理由は3つ
・理由1:サイト・アプリへの集客力
・理由2:クロスセルサービスの拡充
・理由3:プロジェクト獲得力


理由1:サイト・アプリへの集客力

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マクアケの競合優位性の1つに「集客力」があります。

マクアケは新商品・新サービスが生まれるマーケットプレイスとしてもメディアに認知されている傾向があり、メディアの掲載件数が月間平均で1万件を超えるような仕組みが確立されています。これによりアクセスUU数は1,000万人以上を超えており、より多くのユーザー、プロジェクトが集まっています。

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マクアケは2021年9月期の成長戦略として、集客したユーザーをアプリへ誘導することで資産化する取り組みを進めています。具体的には、アプリユーザーはブラウザ経由のユーザーよりも利用頻度や応援購入頻度が高いため、ブラウザ経由のユーザーをアプリへ誘導することで、ユーザー全体の利用頻度を上げて、ユーザーの定着を進めています。


理由2:クロスセルサービスの拡充

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マクアケは前述した通り、大企業向けに、新商品のプロデュース段階からサポートするMISの提供をしています。具体的には、新商品・新サービスを立ち上げたい顧客企業に対して、その顧客企業の優れた研究開発技術を元に、売上を立てるところまでのインキュベーション支援を行っています。

この取り組みにより、通常のクラウドファンディングにおける20%のテイクレートに加えて、追加でコンサルティングフィーを獲得できるようになります。

MISの開始から2019年3月までに実施されたプロジェクトは約30件に対して、2020年11月時点では114件と、約1年8カ月の間に84件のプロジェクトが実施されていることから、着実に実績が積み上がっていることが分かります。

引用:アタラシイが日本一生まれるサービス 「Makuake」のさらなる挑戦

引用:MIS サービスサイト

この他にも、マクアケは主要事業であるクラウドファンディングを中心に、新商品・新サービスのデビュー後の売上拡大をサポートする関連サービスを展開しています。これにより、0次流通から1次流通までを一気通貫でサポートすることで、クロスセルによる売上増加が期待できます。


理由3:プロジェクト獲得力

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マクアケは全国の100以上の金融機関と連携しており、金融機関と取引のある企業の紹介を受けています。また、前述したMISによる大企業との取引が増加していることで、多くの企業にリーチすることが可能です。

このリーチ力を活かして、良質なプロジェクトを獲得することで、多くのユーザーによる応援購入が期待でき、ユーザーの満足度向上やプロジェクトの成功事例創出につなげることができます。その結果、成功事例が多くなることで、プラットフォームとしての魅力が高まり、次のプロジェクトの獲得が行いやすくなるネットワーク効果も期待できます。

また、良質なプロジェクトを獲得することで、メディアに取り上げられやすくなり集客力が高まることから、上述の強みはそれぞれ独立しているわけではなく、相互に影響し合っていると言えるでしょう。


まとめ

今回の記事では、前半でマクアケの事業内容や決算情報を中心に解説し、類似のビジネスモデルを展開する競合企業とGMVやテイクレートの比較を行いました。記事の後半では、本記事のタイトルにもなっている「コロナ特需後でも売上成長率YoY+60%の予想を出せる3つの勝因」を考察しました。

3つの勝因を簡単におさらいすると、次のようになります。

1つ目は、マクアケに掲載されるプロジェクトが多くのメディアで定常的に取り上げられる仕組みが確立されていることで、アクセスUUが増加、そのユーザーをアプリへ誘導することで資産化し、ユーザー全体の利用頻度向上に繋げている点です。

2つ目は、MISを中心とした主要事業であるクラウドファンディングの関連サービスによるクロスセルです。顧客企業の研究開発技術を活用した新商品・新サービスのプロジェクト段階からのサポートや、新商品・新サービスのデビュー後の売上拡大を目的とした各種サービスを展開することでクロスセルを進めています。

3つ目は、全国100以上の金融機関や大企業との連携によるプロジェクト獲得力です。マクアケの利用者にとって興味関心の高いプロジェクトがマクアケに掲載されることで、より多くの応援購入やネットワーク効果が見込まれます。

また、これら3つの理由がそれぞれ影響し合うことで、大きなネットワーク効果を生み出し、プラットフォームとしての価値が向上した結果、コロナ特需後でも売上成長率YoY+60%といった大幅成長の業績予想を出せているわけです。

昨年は多くのEC系サービスが急速に成長しましたが、コロナ発生から1年が経過した今期において、昨対比で各社がどのような業績を出してくるのかを見ていくことで、コロナ禍でいかにプラットフォームとしての力を蓄えてきたのかが分かってくるでしょう。

マクアケの今後の成長はもちろんのこと、その他のECサービス・ECマーケットプレイスサービスの動向にも注目していきたいと思います。


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