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米著名VCの2022年のトレンド予測を詳しく分類してみた

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この記事は、hikoさんとの共同制作です。

今回はネット企業の分析ではなく、決算資料を読み解く上で重要な業界のトレンドを、大手ベンチャーキャピタル(VC)に所属する2人の著名なベンチャーキャピタリストが発表した「2022年予測」から読み解きます。

2人の予測記事を読み、取り上げるべきトレンドを4つに絞りました。
(1)コロナ禍・コロナ後の働き方、 (2)Web3・暗号通貨、(3)人工知能、(4)ESG(環境・社会・ガバナンス)です。

時代の先を読んでベンチャー企業に投資をしているVCが、それぞれのトレンドに対してどのような考えを持っているのか、どう世界が変わると予測しているのかを知っておくことで、決算書の読み解きや、普段の仕事にも活かせる内容となっておりますので、是非最後までお読み頂けたらと思います。


紹介記事と著名VC2人のバックグラウンド

1人目は、Union Square Ventures 共同創業者パートナーのFred Wilson氏です。

What Is Going To Happen In 2022(2022/1/12)

2003年に創業されたニューヨークの老舗VCであり、Twitter、Twillio、Coinbase、Stripeなどへの初期投資で知られるUnion Square Venturesの共同創業者です。Union Square Venturesの特徴は、アーリーステージ企業への投資と育成に特化している点で、特に近年では暗号資産そのものや暗号資産関連の企業に投資しています。

2人目は、Redpoint VenturesのパートナーのTomasz Tunguz氏です。

Five Predictions for 2022(2021年1月29日)

決算が読めるようになるノートではおなじみのTomasz Tunguz氏は、Redpoint Venturesのパートナーです。Redpoint Venturesは1999年にカリフォルニア州のメンローパークで創業され、北京や上海にも拠点を構えています。特徴は、シードから成長段階に焦点を当てて投資をしており、Netflix、Juniper Networks、twillioなどに初期投資をしています。

それでは4つのトレンドを整理していきましょう。


トレンド#1: コロナ禍・コロナ後の働き方

Fred Wilson氏

companies will reopen their offices and their employees will largely opt to go back to working together in offices.

2022年前半に、「オフィスで他の人と一緒に働くこと」が主流に戻ると予測しています。フル出社では無く、週に1〜2日の在宅をするハイブリット型になるとFred氏は予測します。

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上図はGALLUP社が調査した米国のホワイトカラーの在宅勤務の割合をグラフ化したものです。緑線の完全在宅の割合が減り、ハイブリッド型に移行していることがわかります。

K12 systems around the US (and around the world) faced with teacher shortages and desperate to erase several years of learning shortfalls, will increasingly adopt online learning services in the school building in lieu of and in addition to in-class learning.

さらにFred Wilson氏は、コロナ禍でアメリカではK-12(年長〜高校生まで)の教師不足が深刻となっており、それを埋めるべく校舎内でのオンライン教育が加速するとFred氏は予測しています。

Tomasz Tunguz氏

The spirit of Silicon Valley continues a spread outward.

シリコンバレーの重要性は変わりませんが、リモートワークの増加や旅行の復活により、新しい地域の重要性が高まり、シリコンバレーのベンチャー資金調達が減少するとTomasz氏は予測しています。

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(日本経済新聞2021年10月8日より)

実際に、テスラに加えてオラクルやヒューレッドパッカードもシリコンバレーからテキサス州に本社移転を表明しています。

都心部から郊外への移転の背景には、物価上昇や採用難があります。コロナで働き方が変わったことで、上図のように、カリフォルニアやニューヨークからテキサスなど郊外への人口流入が明確になっています。


トレンド#2: Web3・暗号通貨

Fred Wilson氏

Ethereum’s market cap will surpass Bitcoin’s in 2022.

2017年に予測した「イーサリアムの時価総額はビットコインの時価総額を超える」が現実になるとFred氏は予測しています。その理由は、イーサリアムは利用出来るサービスがビットコインと比較して多いからです。

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上図は、イーサリアムの価格(緑色:左軸)とビットコインとの価格比(黄色:右軸)を示しています。

2022年1月10日の時点の時価総額は、ビットコイン92兆円、イーサリアム44兆円です。
一方で、ビットコインに対するイーサリアムの価格は上昇しています。


Tomasz Tunguz氏 

Web3 consumer products go fully mainstream with more than 35% of Americans, about 100m people, engaging with them by 2023.

2023年までにアメリカ人の35%以上である約1億人がWeb3を利用して、Web3が主流になるとTomasz氏は予測しています。

Web3とは、ブロックチェーン技術を使った分散型のウェブシステムです。GAFAMのように企業が中央集権的にデータを保有するのではなく、暗号通貨のようにユーザーがデータを分散して保持し、透明性のある仕組みによって運営されるサービスを指します。

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イーサリアム系の暗号通貨を管理するMetamaskは既に月間利用者数(MAU)が2021年8月の時点で1,000万人を超え、2021年11月にはMAUは2,100万人を突破しています。2021年4月のMAUが500万人だったので、7ヶ月で4倍以上の成長を遂げています。

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また、Solanaというブロックチェーンに対応している暗号通貨管理のPhantomは、リリースから9ヶ月で180万MAUを超え、凄まじい成長スピードとなっています。


トレンド#3: 人工知能

Tomasz Tunguz氏 

 GPT-3 and BERT infuse software massively reducing repetitive work and unlocking huge productivity gains.

言語AIのGPT-3(マイクロソフトが出資)とBERT(Googleが出資)は、反復作業を激減させ、文章作成の稼働を大幅に削減することで、生産性を大幅に向上させることになるとTomasz氏は予測しています。

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中国科学院のChangchang Zeng氏が2020年に発表した論文によると、「SQuAD」という文章を読み込んで、その文章に関する質問に回答するベンチマークテストにおいて、人間の91.221というスコアに対してBERTは93.2と人間を超える言語理解力を示しています。

日本語では言語特性に依存する技術的な難易度の高さや公開されているデータ量が少ないという問題があり、言語AIの実用化が進んでいませんでした。それに対して、東大の松尾研究室が独自の言語AIを作成してサービス化したのが、文章要約AI 「ELYZA DIGEST」です。
無料で試せますので、是非最新の言語AIを体験して下さい。

ELYZA DIGEST 


Tomasz Tunguz氏 

・Data companies continue to achieve astronomical growth.
・The ML stack folds into the classic data stack.

データ企業は天文学的な成長を続けるでしょう。大多数の機械学習のユーザーは、シンプルですぐに使えるAutoMLのようなサービスをより使うと予測しています。
一方で、GoogleやFacebookのような一部のテックリーダーは特注の機械学習を依然として使い続けるとTomasz氏は予測しています。


トレンド#4: ESG(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance)

Fred Wilson氏

Carbon offsets, effectively a voluntary form of self carbon taxation, will take off in 2022 and by the end of the year, we will have a global market in excess of $10bn.

温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の過不足分を取引する排出量取引は、2022年末には世界市場で100億ドル(1ドル100円換算で約1兆円)規模になると予測しています。分散型金融ツールがこの市場の拡大を加速する大きな鍵になるとFred氏は考えています。

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 (JETRO地域分析レポート)

CO2排出1トン当たりの欧州での市場取引価格は、2020年12月時点が29.24ユーロ(約3,800円)から、2021年9月には、61.29ユーロ(約8,000円)と9ヶ月間で2倍の価格に急騰しています。


その他

Fred Wilson氏

Twitter opens up its APIs and allows anyone to operate Twitter clients that compete with its own.

TwitterがAPIを開放して、競合するTwitterクライアントでも制限なく操作出来るようにすれば、よりエコシステムが開かれることになり、Twitterのエコシステム価値は向上するとFred氏は考えています。

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(Twitter API)

去年末2021年11月に公開された「Twitter API v2」では、新たに「Essential access」というアクセスレベルが追加され、サインアップするだけで「API v2」を利用できるようになりました。サインアップすることで、アプリケーション開発環境が1つ提供され、月間50万ツイートの取得が可能となりました。

Twitter社としても、API v2の開発者ブログの中で、「開発者が簡単に開発できることによりエコシステムに価値をもたらし、開かれたの場での会話に影響を与えることができるようにしていきます。」 とアナウンスしており、v2以降もAPIの開放が進むことが考えられます。

まとめ

この記事では、「2022年のトレンド予測」を2人の著名なベンチャーキャピタリストの予測から読み解き、4つの切り口で整理してきました。ポイントをまとめます。

コロナ禍・コロナ後の働き方
・オフィスへの回帰が始まり、ハイブリッド型の働き方が主流になる
・シリコンバレーへの一極集中は緩和される
・教育現場ではオンライン授業がより加速する

Web3・暗号通貨
・2023年までにアメリカ人の35%以上である約1億人がWeb3を利用し、Web3が主流になる
・イーサリアムの時価総額がビットコインを超える

人工知能
・言語処理の領域で人間を超える性能が出てきており、言語的反復作業を激減させる
・データ会社の成長は今年も続き、AutoMLのようなシンプルなサービスが浸透する

ESG
・排出権取引の市場規模が世界で100億ドル(1兆円)規模になる

Web3に関しては、皆様の関心も特に高いと思いますので別のnoteで詳しく解説する予定です。

市場に影響するトレンドになりうるポイントを知っておくことで、決算書の読み解きや、皆様のお仕事の参考になると考えています。

この予測がどこまで2022年の市場と合致するのか、決算書や業界分析から皆様と見ていきたいと思います。

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