メディアビジネス(広告・課金)の決算の読み方〜New York Timesを例に
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先日、YouTube チャンネルでGoogleの決算の読み方という動画を撮影たところ、思いのほか好評だったので、これから数回に分けてビジネスの種類ごとに決算の読み方を書いていきたいと思います。
Googleの決算でYouTubeともう1つ成長率が高い事業は?(2020年2月5日)
今回のシリーズでは、アメリカの会社の英語の決算資料を取り上げていきたいと思いますが、ニーズがあれば日本の会社も取り上げていくことも検討しますので、この会社の決算の読み方を、あるいはこの業界の決算の読み方を解説してほしい、というご要望があれば、是非、コメント欄に書いて下さい。
英語の決算書を読む際に、英語であるがゆえに毛嫌いする方も多いかと思いますが、ポイントを押さえておけば、全ての英語を読まなくても概要を掴むことが出来ます。
今回のシリーズでは、それぞれのビジネスにおいて注目すべき KPIを明確にした上で、それぞれの KPI をどのように選んでいけばいいのか、というのを詳しく書いてみたいと思います。
分かっている方にとっては当たり前かもしれませんが、どの KPIを探せばいいのか、というのが事前に分かっているだけで、決算資料を読むのがとても速くなりますし、全く苦痛でなくなりますので、是非皆さんもこの記事を読んだ後で決算資料を再度ご自身で見返してください。
よく、一つの決算資料を何分ぐらいで読んでいるのですかという質問を受けるのですが、私の場合だいたい5分から、長くても15分程度で、一つの決算資料を読んでしまいます。慣れないうちは15分では読めないかもしれませんが、ポイントを押さえておくことで、資料の全体をざっと眺めて、どこを詳しく読めばいいか、というのは分かるようになるので、大きな時間の節約になると思っています。
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第3回目はメディアビジネスを取り上げます。その中でも広告と課金の両方がある新聞社に注目し、New York Timesを取り上げて行きたいとます
The New York Times Company Reports 2019 Fourth-Quarter and Full-Year Results
ニューヨークタイムズというのは、日本で言うところの日経新聞に相当すると考えれば良いでしょうか。
元々は紙の新聞を発行していた会社ですが、当然のように今はオンラインのデジタル化が大きく進んで成功している会社でもあります。
ビジネスモデルは、新聞社のビジネスモデルですので、購読者に対する月額課金と、広告が両方存在します。
メディアビジネスとしては典型的なハイブリッド型であり、ビジネスの形を勉強する上ではとても良い例だと思いますので、取り上げてみたいと思います。
売上は四半期当たり¥508M(約508億円)あり、前年同期比がプラス 1.1%で成長しています。
内訳としては課金ビジネスが$275M(約275億円)広告ビジネスが$171M(約171億円)です。
一つ覚えておいていただきたいのは課金ビジネスはYoY+4.5%で成長していますが、広告ビジネスは△10.7%と減少しているという点です。
個人課金ビジネスのKPI #1: 有料課金ユーザー数
はじめに決算資料から、課金ビジネスを詳しく見ていきましょう。
個人課金ビジネスにおいて一番最初にチェックすべきは、有料課金ユーザー数です。
5,251,000 total subscriptions across our print and digital products
印刷とデジタルの両方合わせると、525万人が現在 New York Timesを購読中です。
In Q4, we added a total of 342,000 net new digital only subscriptions, of which 232,000 were to our core news product, the balance to Cooking and Crosswords, with Cooking in particular having a spectacular end to a strong year with 68,000 new subscriptions in the quarter.
2019年の第4四半期において、342,000人のデジタルオンリーの購読者が獲得できました。そのうち232,000人は、ニュースの購読者です。
The 232,000 net new subscriptions to our core digital-only news product were 35 percent more than in Q4 2018, and 134 percent more than in Q4 2017.
この四半期あたりの232,000人という増加数に関しては、1年前と比べると35%、2年前と比べると134%増えていることになります。
新聞社のビジネスはどこも同じだと思いますが、印刷の購読者数が減ってデジタルの購読者数が増えると言うトレンドにあることは間違いありませんが、Digitalの購読者数の増加が大きく進んでいることが読み取れます。
個人課金ビジネスのKPI #2: 課金ARPU
個人課金ビジネスで二つ目にチェックすべきは、1ユーザーあたりの課金額です。
2019年の年末時点で、440万人のデジタル課金ユーザーがいて、四半期当たりの売上が約$122Mですので、ARPUを計算すると以下のようになります。
購読者数: 440万人
課金売上: $122M(約122億円)
課金ARPU: $9.26/月(約926円/月)
日経新聞は月額約4,000円程度かかることになると思いますので、それに比べるとだいぶ割安な値段で新聞が読めると言えるのではないでしょうか。
このように、登録者数と課金売上から課金ARPUを計算するのはとても大事です。
広告ビジネスのKPI #1: 広告売上
続いて広告ビジネスを見てみましょう。
広告ビジネスにおいて一番最初にチェックすべきは、広告売上です。
印刷ビジネスの広告売上は、四半期あたり$79M(約79億円)なので、YoY△10.5%で落ち込んでいます。
デジタルの方は約$92M(約92億円)で、こちらもYoY△10.8%と落ち込んでいます。
アドフラウド(無効なインプレッションやクリックによって、広告費用に対する成約件数や効果を不正に水増しする不正な広告)の問題もあってか、広告ビジネスに関しては印刷もデジタルも両方落ち込んでいるというのが現在のメディアビジネスのトレンドだと言えるのかもしれません。
デジタルの広告も落ち込んでいるというのを意外に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、コンテンツ業界もどんどん課金の流れに方向に向かっているのは、ニューヨークタイムズの例を見ても明らかなのではないでしょうか。
広告ビジネスのKPI #2: 広告ARPU
広告ビジネスのアポ計算してみましょう。
デジタル 紙(印刷)
購読者数 440万人 85.6万人
広告売上 $92M $79M
広告ARPU $7.00/月 $30.79/月
購読者数に関しては、全体の525万人からデジタルオンリーの440万人を引いた人数を印刷ビジネスの購読者数と仮に置いていますが、実際には両方を加入している人もそれなりにいると思いますので、印刷ビジネスの購読者数はこの数字よりも大きくなる可能性もあります。
こうして計算してみると、デジタルの方は1ユーザーあたり月間約$7(約700円)の広告売上、印刷ビジネスの方は月間約$30(約3,000円)の広告売上という計算になります。
印刷ビジネスの購読者数が正確にないとしても、やはり印刷ビジネスの方が広告が大きいというのは一つ覚えておいて良いのではないでしょうか。
今回の記事では、New York Timesの例を通じて、メディアビジネス(その中でも、個人課金と広告ビジネス)の決算の読み方を詳しく見てみましたが、いかがでしたでしょうか。もし興味がある方は是非、この決算資料を詳しく見てみてください。
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