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Facebookの苦悩: 企業による投稿が表示されにくくする理由

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先日、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグが自ら、Facebookのアルゴリズム変更に関して大きなアナウンスをしました。

読者の方の中にも、集客やマーケティングの面でFacebookを活用している方がとても多いかと思いますので、今日はその内容と背景を、詳しく追いかけてみたいと思います。

突然「企業による投稿が表示されにくくなる」旨のアナウンス

マーク・ザッカーバーグは1月11日の投稿で、以下のように述べています。 

But recently we've gotten feedback from our community that public content -- posts from businesses, brands and media -- is crowding out the personal moments that lead us to connect more with each other.

企業やブランドやメディアからの投稿が多くなってきて、Facebookの本来の目的である「人々を繋げる」ことはだんだん難しくなってきている、と述べています。

従って、企業によるポストを以前に比べて表示され難くするように、アルゴリズムを改変する、というわけです。

更に一週間後の1月19日には、以下のように述べています。 

Last week I announced a major change to encourage meaningful social interactions with family and friends over passive consumption. As a result, you'll see less public content, including news, video, and posts from brands. After this change, we expect news to make up roughly 4% of News Feed -- down from roughly 5% today. This is a big change, but news will always be a critical way for people to start conversations on important topics.

今回のアルゴリズム変更によって、企業によるポストが、従来タイムラインの5%程度表示されていたものが、4%まで減ることになると述べています。


背景: Fake Newsが社会問題へ

今回のアルゴリズム変更に関しては、マーク・ザッカーバーグのポストでは述べられていない背景がもう一つあると考えられています。

それは2016年の大統領選挙の際にも問題になった、フェイクニュース問題です。

フェイクニュース問題というのは、ご存知の方も多いかもしれませんが、嘘か本当かわからないような過激なタイトルと画像をFacebookに投稿しクリックを稼ぐ、世論を誘導するようなメディアが多発した問題です。

過激でスキャンダラスなタイトルや画像を付ければ付けるほど、Facebook上でのクリックが増えるため、Facebookの機械学習アルゴリズムは、それらのコンテンツが「非常にユーザーに受け入れられやすい良いコンテンツ」だと判断し、より多く表示されると言う問題でした。

この問題がFacebook以前の、例えばGoogleの検索結果に対するスパム行為と比べて大きな問題になったのは、Facebookのタイムラインというのは一人一人のユーザーに完全にパーソナライズされており、どの記事がどのくらい表示されたかというのはFacebook以外に外から誰も見ることは出来なかったからです。

つまり、Googleの検索結果などがパブリックなインターネットだとすれば、Facebookは完全にプライベートに閉じたインターネットであり、その空間の中でフェイクニュース問題が起こっていた事が、大統領選挙が終わるまで大きく知られることがなかった、という点が、非常に大きな社会問題になりました。

マーク・ザッカーバーグのアナウンスでは直接言及はされていませんが、巨大なインフラになった Facebookとしては、嘘を必要以上に拡散させない防御策をしっかり打つ必要があるというのも、もう一つの大きな動機ではないかと思います。


企業ポストがトラフィックを得にくくなるのは今に始まったことではない

一方で、企業によるポストがトラフィックを得難くなっている、というのは今に始まったことではありません。

「Google is sending more traffic than Facebook to publishers ? again」という記事を見てみましょう。

このグラフを見れば分かる通り、企業のウェブサイトのトラフィック元を見ると、2017年の年初にはFacebookが約40%で、Googleよりも大きなウエイトを占めていましたが、2017年の年末時点では Googleが40%を超え、Facebookは約25%まで落ち込んでいる、という結果になっています。

つまり企業から見ると、Facebookに投稿することで得られるトラフィックは相対的に徐々に落ち込んで来ていた、というトレンドは、2017年一年間を通して続いていたわけです。

また、スマホにおいて企業による記事を高速に表示するための取り組みであるInstant Articlesの表示回数も、2017年の年初には GoogleのAMPに大きく勝っていたものの、年末には追い越されるという具合に落ち込んで来ています。


どのようにアルゴリズムが変わるのか

では今回のアルゴリズム変更では、一体どのように変わるのでしょうか。1月19日のポストから更に詳しく見てみます。

Today I'm sharing our second major update this year: to make sure the news you see, while less overall, is high quality. I've asked our product teams to make sure we prioritize news that is trustworthy, informative, and local. And we're starting next week with trusted sources.

Facebookとしては「品質の高いニュースのみをタイムラインに表示するようにしたい」と考えているようです。品質が高いというのは、信用できて、情報量に富んでいて、ローカルなニュースであるという点を重視すると書いてあります。

では具体的に、どのようにその品質というものをスコア化するのでしょうか。

Here's how this will work. As part of our ongoing quality surveys, we will now ask people whether they're familiar with a news source and, if so, whether they trust that source. The idea is that some news organizations are only trusted by their readers or watchers, and others are broadly trusted across society even by those who don't follow them directly. (We eliminate from the sample those who aren't familiar with a source, so the output is a ratio of those who trust the source to those who are familiar with it.)

簡単にまとめると、まずそれぞれのニュース元に対して、以下のようなデータを収集します。

A: ニュース元を知っているかどうか
B: そのニュース元を信頼しているかどうか

そして、「B ÷ A」が高いほどスコアが上がる仕組みにすると言及されています。

私の知る限り、過去のFacebookのアルゴリズム変更において、CEOから直接ここまで詳しい具体的な方針が示されたことはなかったと思いますので、今回の変更に対する力の入れ具合が良く分かります。


Facebookにとっては一石二鳥か?

一方で今回のアルゴリズム変更は、Facebookにとっては一石二鳥となるかもしれない、大きなチャンスであるとも言えます。

一つ目のベネフィットは、原点回帰です。

We built Facebook to help people stay connected and bring us closer together with the people that matter to us. That's why we've always put friends and family at the core of the experience. Research shows that strengthening our relationships improves our well-being and happiness.

マーク・ザッカーバーグのポストにこのように書いてありますが、Facebookの本来のミッションである「人々をより近くに繋がりやすくする」という原点に戻って、サービスを再設計できるように見直すことが出来るチャンスであることは間違いありません。

二つ目は、ビジネス的なベネフィットです。

タイムラインにおける企業ポストの割合が減れば減るほど、広告売上が増える可能性が高くなります。

企業から見た場合、いくら減少傾向とはいえFacebookはGoogleに次ぐ巨大なトラフィックソースであることは変わりありません。

Facebookからのオーガニックな流入が減れば減るほど、企業側としてはFacebookに広告を出稿してでもトラフィックを確保しようとするに違いありません。

そういった意味では、Facebookの売上増大に、今回のアルゴリズム変更が大きく寄与する可能性もあると言えるでしょう。

いずれにしても、CEOが自らアルゴリズム変更に詳細まで言及しているというのは異例のケースだと言えると思いますので、今後も注視していきたいと思います。


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