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Q. クラウドソーシング・スキルシェア4社比較、テイクレートが圧倒的に高いのは?

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A. テイクレートを比較すると、クラウドワークスが22.3%、ランサーズが20.2%、ココナラが28.8%、ビザスクが63.1%となっており、ビザスクが圧倒的に高い水準です。

スキルシェアプラットフォームを提供するココナラは、今月3月19日(金)にマザーズに上場する予定です。

また、同領域では、ビザスクが2020年3月、ランサーズが2019年の12月にそれぞれ上場を果たしています。

このように、クラウドソーシング・スキルシェア系サービス提供企業の上場は増えてきており、今後もリモートワークや流動的なワークスタイルの広まりによって、さらなる成長が期待できるでしょう。

今回の記事では、そのような今注目のクラウドソーシング・スキルシェア企業のKPIを横軸で比較し、各社の特徴を分析していきたいと思います。

上述の「ココナラ・ビザスク・ランサーズ」の3社に加えて、同領域の代名詞とも言える企業「クラウドワークス」も入れた4社を対象としていきます。

それでは、早速見ていきましょう。

各企業個別の分析については、以下の記事(動画)も参考にしてみてください。

流通総額の比較

まずは、各サービスプラットフォーム上の取引金額を示す「流通総額」を見ていきましょう。

以下では、2021年3月8日時点で発表されている最新決算より、各企業の直近の四半期実績を対象に比較していきます(クラウドワークス・ランサーズは2020年10-12月、ビザスク・ココナラは2020年9-11月が対象)。

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・クラウドワークス:36.6億円(YoY-4.5%)
・ランサーズ:24.1億円(YoY+13.9%)
・ココナラ:21.3億円(YoY+59.9%)
・ビザスク:6.9億円(YoY+65.0%)

流通総額で見ると、クラウドワークスが頭1つ抜けており、次いでランサーズとココナラ、最後にビザスクが追いかける状況です。一方、前年同月比成長率では、下位のココナラとビザスクがYoY+60%前後と非常に高い水準になっています。

クラウドワークスの成長率がマイナスとなっている点について補足をすると、これは受託事業売却による一時的なものです。

クラウドワークスのマッチング事業単体で見ると、前年同期3,045百万円から今四半期で3,656百万円(YoY+20.1%)の成長となっており、規模・成長率共にランサーズを上回っていることになります。

新規上場のココナラは、この高い成長率を維持できると、近い内にランサーズを超え、クラウドワークスの背中も見えてくるかもしれない、という規模感です。

ビザスクは、ややニッチな「スポットコンサルティング」の領域に限定しているため、現状の流通総額は相対的に低めとなっていますが、成長率は非常に高い水準となっています。

では、次にこの「流通総額」をさらに分解して見ていきましょう。

流通総額は、以下の2つの式に因数分解することができます。

・流通総額=発注単価×発注者数
・流通総額=受注単価×受注者数

以下では、このそれぞれの式に沿って各社の数字を分析していきます。

発注単価 × 発注者数

まずは、発注単価と発注者数を図示すると、以下のようになります(n/aは公開数字から算出できない数字)。

ここでいう「発注単価」は、「四半期あたりの顧客当たりの発注額」という定義です。

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発注単価を見ると、クラウドワークスがランサーズよりやや高い水準です。

そして、ビザスクが非常に特徴的で、桁が1つ異なっています。発注単価が四半期あたり270万円なので、1社あたり月間90万円ということで、かなり高額な単価となっている印象です。

ビザスクの発注単価について、もう少し深堀りしてみましょう。

株式会社ビザスク 2021年2月期 第3四半期決算説明資料

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ビザスクでは、新規顧客が増えている中でも、顧客単価を安定的に維持あるいは上昇させることができています。

「顧客における利用頻度の上昇」や「新商材の追加」により上昇しているという記載がありますが、こちらは、「ビザスクproject」というプロジェクト形式で継続的な支援を行う商品等により、より高品質なサポートで高単価を獲得出来ているものと考えられます。

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さらに注目すべきは、獲得年度毎の顧客の売上を見ると、時間が経過する毎に売上が増えていく構造になっている点です。例えば、2015/2期の一番下の純色の黒のグラフエリアは毎年ほぼ倍増するような形で成長しています。

各セグメントのCAGR(年平均成長率)は55%〜99%となっており、毎年既存顧客からの売上が1.5〜2倍ほど増えています。

このデータから、ビザスクがいかに既存顧客にとって欠かせないサービスとなっているかが分かるでしょう。

受注単価 × 受注・購入者数

続いて、受注者・購入者の視点で見ていきましょう。

以下の数字は、クラウドワークスとココナラは四半期あたりの受注者・購入者のUUあたりの単価、ビザスクはマッチングあたりの単価を示しています。

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ビザスクがマッチングあたりの単価にも関わらず約6.9万円で最も高い水準、ココナラが約1.9万円で最も低い水準です。

ココナラは、「1回500円」のスキルシェアから始まったサービスですが、それと比べると、かなり高くなっており、利用頻度が大幅に伸びてきている、あるいはサービス構造が変化してきていることが分かります。

実際に、ココナラの有価証券報告書を見ると、四半期毎にARPPU(課金ユーザーあたりの平均収益)が順調に成長してきていることが分かります。

株式会社ココナラ 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)

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2017年8月期の第1四半期の10,268円から、2021年8月期第1四半期の18,865円まで、4年間で+83%と大きく伸びています。

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当社では各カテゴリを制作・ビジネス系カテゴリと相談系カテゴリの大きく2つに分類しております。過去 より「占い」関連サービスに関する取引が活発に行われてきた結果、相談系カテゴリの取引割合が多数を占め ておりました。2018年以降、「PRO認定制度」、「見積り・カスタマイズ相談」、「法人アカウント」、 「出品者検索」の導入や、「プロフィールページ」、「仕事・相談の公開依頼」のリニューアル等の施策によ り、制作・ビジネス系カテゴリが拡大しており、現在ではその流通高が半数を超えております。 

単価上昇の背景には、上記引用のように、占いなどの相談系カテゴリから、制作・ビジネス系カテゴリへのシフトが効いてきていると考えられます。

この領域においては、クラウドワークスやランサーズとも完全に競合してくるため、今後どのように差別化を図っていくのかがポイントです。

テイクレート

つづいて、テイクレートを見ていきましょう。

テイクレートは、流通総額に対して、各サービスプラットフォームがどれだけマージンを得ているかを示す数字です。この数字は、プラットフォームとしての価値の大きさを示しているとも言えます。

各社の流通総額に対する営業収益あるいは売上総利益の割合を算出すると、以下のようになります。

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・クラウドワークス:22.4%
・ランサーズ:20.3%
・ココナラ:28.8%
・ビザスク:63.1%

図を見ると分かるように、各社サービス間でテイクレートには顕著な差が出ています。

クラウドワークスとランサーズはほぼ同水準で20%前後となっています。これは、お互いのサービスのユーザー重複率が高く、牽制しあっている状況であり、これ以上引き上げることはなかなか難しい状況でしょう。

実際に、クラウドワークスとランサーズの決算資料を見てみると、テイクレートは「競争領域ではない」という前提を読み取ることができます。

株式会社クラウドワークス 2021年9月期 第一四半期決算説明資料

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まず、上記のクラウドワークスの決算スライドを見ると、テイクレートは20%前後を維持していることが分かります。「テイクレートは前年同期比で0.4%改善」という記載がありますが、この数字を伸ばそうという意図は読み取れません。

ランサーズ株式会社 2021年3月期第3四半期決算説明資料

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一方、ランサーズは、売上総利益を最大化するドライバーの1つにもなる、テイクレートは「現状維持」と明確に宣言し、KPIにも組み込んでいません。テイクレートではなく、「クライアントの利用社数」と「クライアントあたり利用額」を伸ばしていくことに注力しています。

このように、クラウドワークスとランサーズの2大クラウドソーシングプラットフォームでは、「テイクレートは20%前後」という事実上の前提のもとで、いかに流通総額を拡大できるかの勝負になってきていることが分かるでしょう。

一方、ココナラとビザスクのテイクレートは、ココナラが28%、ビザスクが63%ということで、クラウドワークスやランサーズの20%前後を大きく上回っています。

これは何故なのでしょうか?

これは、簡単に言うと、両社ともには特定の領域において「独占的地位」を築いているためです。

具体的には、ココナラでは、クラウドワークスやランサーズとはやや領域の異なる「スキルシェア」の領域においてマーケットリーダーとなることで、高い手数料率を実現しています。

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1円〜5万円以下の少額サービスについては、25%(税別)と高い手数料をとっています。

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特に、電話相談サービスでは、独自の地位を築いており、上図のようにテイクレートは50%を超えています。例えば、100円/分の場合には、41円が出品者報酬、59円がプラットフォーム側に入る仕組みとなっています。

今後は、ビジネス系領域の比率上昇や、クラウドワークスやランサーズと競合する領域の増加によりテイクレートは下がってくるかもしれませんが、流通総額を伸ばすという目的であればテイクレートの低下は必ずしも悪いわけではありません。今後の推移にも注目していきましょう。

また、ビザスクについては、より顕著に「スポットコンサル」という領域で独占的地位を築いていることが、60%超という高い手数料率に繋がっていると言えるでしょう。

クラウドワークスやランサーズとは毛色の異なる、各産業のビジネス経験が豊富なプロフェッショナル人材を揃え、信頼性のある情報を短時間でインプットできるという価値は、プロフェッショナルファームや事業会社の新規事業検討部署などにおいて、重宝されています。

この領域については、海外系のサービスでは競合がいますが、日本国内では大きな競合はいません。

今後は、競合サービスが台頭してきた際にどのように対応するのかに注目です。これだけ高いテイクレートを実現できているということは、他社からすれば大きなビジネス機会があるということなので、競合他社の台頭はありうるシナリオでしょう。

PSR/PER

最後に、PSR/PERについても見ていきましょう。

ココナラは明日3月19日にマザーズ上場となるわけですが、どのような時価総額になるのでしょうか。

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成長企業ということでPSRに注目すると、クラウドワークスとランサーズが3〜4倍であるのに対して、ビザスクは23倍と高い水準になっています。一般的には、PSRが10倍で割高とこれまでは言われていましたが、現在のマーケットと同社の成長率からすると、不自然ではない水準です。

ココナラについては、ビザスクと比較して、収益は同程度で、流通総額は上回っており、流通総額の成長率は同程度ということで、ビザスクと同程度かそれ以上の時価総額が付く可能性もあると考えられます。

時価総額については、明確な予測はできないので、考える上での1つのヒント程度に捉えて頂ければと思います。

まとめ

今回の記事では、クラウドソーシング・スキルシェア系サービスを運営する4社のKPIを横軸で比較して、分析してきました。

テイクレートに着目をすると、次のようなことが言えるでしょう。

・独自のポジショニングの構築ができれば高いテイクレートを正当化できる
・競合サービスがある場合には、テイクレートは均一化し、その他の領域の勝負となる

1点目については、ビザスクの60%超という高いテイクレートが最たる例です。独自の圧倒的なポジショニングがあってこその水準です。

2点目については、クラウドワークスとランサーズがテイクレートで横並びになっており、それ以外の領域における勝負となっていることを見てきました。

囲い込みの要素が強いサービスであれば高いテイクレートを維持することはできますが、そうでない場合、中長期的には、同じようなサービスであればテイクレートは一定水準に収斂していくことになります。

今後、ビザスクやココナラのテイクレートがどのように推移していくのかに注目していきたいと思います。

最後になりますが、記事内で利用している数字については、昨年末にリリースさせて頂いた『KPIデータベース』の数字から取得しています。法人向けのサービスとなりますが、興味のある方は、以下の記事をご覧ください。


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