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しばQ: マーケットプレイスで先に集めるべきは「売り手」「買い手」のどちら?ポイントバックはイケてる?HR Techの今後、F5Netrowksの決算と今後

このnoteは「何でも質問できますコーナー = しばQ」への回答です。

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お陰様で大変好評をいただいており、質問数が非常に多くなっています。

今回も、いくつかまとめて回答させて頂きますので、ご了承下さい。


Q: マーケットプレイス型のビジネスで最初に集めるべきは「売り手」or「買い手」?

ランサーズが最近出したサービス「pook」に関するの記事なのですが、「家事代行や英会話、パーソナルトレーニングと行った分野に特化したC2Cサービスはこれまでにもあったが、そうしたサービスは依頼に対してサービス提供者の登録が追いついてなく、マッチングが起きづらいこともある」と書いてあります。
一方、サイタというサービスの開発者の方が書いた記事では、「教える人が『売り手』、習いたい人が『買い手』」であり、「買い手を集める方が断然難しい」と書いてあります。

両者は真逆のことを言っているように感じるのですが、なぜこのような現象が起きているのでしょうか。

A: 2パターンありえると思います。

ご質問は、マーケットプレイス型のビジネスで、買い手と売り手のどちらを先に集めるべきか、という質問だと理解しました。

これはケースバイケースではあるのですが、2つの事例を詳しく見てみたいと思います。

ランサーズのケースは、提供するサービスが、家事代行やパーソナルトレーニングなど、既存のサービスが明確に存在するものです。つまり買い手が明らかにいることが分かっているわけです。

この場合、売り手を見つけることが出来れば、高い確率で買い手とマッチングさせることができる、という状況にあります。

このような場合は、「まずは買い手を先に集めてしまい、そのパワーを利用して、売り手を集める」という作戦が良いのかもしれません。つまり売り手に対して、「既にサービスを買いたい人がたくさんいるので、サービスを提供する売り手になって下さい」と宣伝することになります。

一方でサイタの場合は、提供しているサービスが少し異なります。どちらかと言うと習い事系なので、ダンサーズのケースと比べると、ニーズが顕在化しにくいものです。

一方でこの場合、お金を稼ぎたいと思っている売り手、つまり習い事を教える人達はそれなりに多数いるわけですから、まずは売り手を先に集めて、その売り手の実績を持って、買い手を集めるという作戦が良さそうに見えます。

つまりまとめると、売り手と買い手の内、先に集めるべきは、「より強いニーズがあって簡単に集めやすい方」と言うことが言えるのではないでしょうか。


Q: ポイントバックビジネスはイケてるのか?

ポイントサイト/モール業界について質問させて下さい。
この業界は十数年前からあり、ここ数年で、voyage group、ceres、realworldなどの事業者が上場しました。
注目度の低い業界ではありますが、どの会社もキャッシュカウ事業にしているくらい、安定した事業にも見えます。
この業界、実はイケてるのか、それともただのスモールビジネスなのか、取り上げていただけると幸いです。

A: 収益性は高いけど、スケールするのに工夫が必要だと思います。

ポイントバックビジネスは元手が不要で、一般的に継続率の非常に高いサービスであるため、一度獲得したユーザーから長期にわたって収益が得られるビジネスになるケースが多くなっています。

そういった意味で、おっしゃる様に、キャッシュカウになりやすいビジネスではあります。

一番の難点は、スケールさせるのが難しい点にあります。ポイントバックサービスを利用するには、ユーザーがわざわざポイントバックサービスを経由して買い物をする必要があるため、ユーザーから見るとひと手間かかります。その手間をかけてまでポイントバックが欲しい、と思うユーザーが、どのくらいいるかというのが最大のポイントです。

例えば、楽天が買収したアメリカのEbatesという会社はeコマースのポイントバックサイトですが、買収金額が約1,000億円と非常に大きかったにも関わらず、今でも成長を続けています。

Ebatesの場合、主要なeコマースサイトほぼ全てと接続しており、ネットワーク外部性が働くレベルまでビジネスが大きくなっている点が、強みだと考えられます。

単なるポイントバック機能だけではなく、Ebatesのように、何らかの形でネットワーク外部性が働くレベルまでビジネスを積み上げることができれば、スケールするビジネスになると考えられます。


Q: HR Techの今後

HR Techについて、米国等の海外のトレンドから、国内企業・HRスタートアップへの影響などを教えて欲しいです。

A: SaaS系はタイムマシーン型で日本へ展開できると思います。

HRテックと一言で言っても色々なビジネスがありますが、アメリカではいくつかのモデルが出てきています。

1つ目は採用に関連するところです。Applicant Tracking System (ATS) の分野で、ソフトウェアを用いて効率化していくというサービスは、今後も十分大きくなると考えられます。

2つ目は、人事や福利厚生などのプロセスを自動化するものです。こちらは会計とも関係していて、相手が役所だったり税務署だったりするので、非常にアナログな場合が多く、こういった分野をソフトウェアで効率化していくというビジネスも、これからどんどん大きくなるとは思います。

3つ目は、リクルートが買収したIndeedなどのように、採用そのものをオンラインにしていくという流れもあります。但しこの分野は、GoogleがIndeedと直接競合するサービスを始めてしまったので、Googleといかに差別化していくか、という点が問われていくと考えられます。

個人的には、SaaS系のビジネスは、日本にローカライズして持っていけば、うまくいくものが多いのではないかと思います。


Q: F5Networksの財務面での分析

F5Networksについて、財務諸表上はHealthyですが、今後競争相手がクラウド事業者になるため、新たな競合と比較しての財務面からの分析をお願いします。

A: 成長率がクラウド市場の成長率よりも低いので厳しくなると思います。

初めに同社の決算を少し詳しく見てみたいと思います。

過去数年間、非常に良いペースで成長してきており、2016年は売上が$2B(約2,000億円)と、とても大きくなっています。

フリーキャッシュフローも、年間で$648M(約648億円)と、こちらもとても収益性が高いビジネスに見えます。

最大の懸念は、直近の四半期で見ると売上が横ばいになりつつあるという点です。クラウド市場という意味では、現時点においてでも非常に高い成長率を見せている市場ですが、その市場成長率と比べると、四半期の売上の成長率は決して高いとは言えないのが現状です。

売上の内訳を見てみると、グラフの青い部分であるプロダクトの売り上げよりも、オレンジのサービス売上の方が伸びが大きいことがよく分かります。

ご質問にもあるように、プロダクト単体での成長を目指せば目指すほど、AmazonやGoogle、Microsoftといった巨大クラウドプラットフォームとの戦いになります。彼らは非常に大きな額の投資を、ハードウェアとソフトウェアの両方に対してこれからも行っていくことがほぼ確定していますので、それだけ収益性が高いとは言え、巨大な3つのプラットホームと競合するプロダクトを販売し続けるのは、それなりに困難であると予測できます。

従って今後の戦略としては、恐らくサービス売上を向上させていくような方向に舵を切るのが正しいのではないでしょうか。実際に大企業がクラウドのプロダクトを導入しようとしても、第三者のプロフェッショナルのサポートが必要な場合が多く、そういったケースにおいては十分入り込む余地があるのではないでしょうか。


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