見出し画像

SaaSビジネスの決算の読み方〜Slackを例に


新着記事を(無料で)Facebookメッセンジャー・LINEへお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookメッセンジャー: https://m.me/irnote
LINE: https://line.me/R/ti/p/%40pap3801g

---------------------------


先日YouTubeチャンネルで「Googleの決算の読み方」という動画を撮影したところ思いのほか好評だったので、これから数回に分けてビジネスの種類ごとに決算の読み方を書いていきたいと思います。

Googleの決算でYouTubeともう1つ成長率が高い事業は?(2020年2月5日)

今回のシリーズでは、アメリカの会社の英語の決算資料を取り上げていきますが、ニーズがあれば日本の会社を取り上げることも検討します。「この会社の決算の読み方」、あるいは「この業界の決算の読み方」を解説して欲しい!というご要望のある方はぜひコメント欄にご記入ください。

英語であるがゆえに苦手意識をお持ちの方も多いかと思いますが、ポイントさえ押さえれば全文を読まなくても概要を掴むことができます。

今回のシリーズでは、それぞれのビジネスにおいて注目すべきKPIを明確にした上で、なぜそのKPIに注目するべきなのか?ということを詳しく書いてみたいと思います。

分かっている方にとっては当たり前かもしれませんが、「どのKPIを探せば良いのか?」ということを事前に分かっているだけで、決算資料を読むのがとても速くなりますし、全く苦痛でなくなりますので、是非皆さんもこの記事を読んだ後で決算資料を再度ご自身で見返してみることをオススメします。

よく、一つの決算資料を何分ぐらいで読んでいるのですか?という質問を受けるのですが、私の場合だいたい5分から長くても15分程度で一つの決算資料を読みます。慣れないうちは15分では読めないかもしれませんが、ポイントを押さえておくことで資料の全体をざっと眺めて、どこを詳しく読めばいいかというのは分かるようになるので、大きな時間の節約になると思っています。


----------- * -----------

第2回目は、「SaaSビジネス」を取り上げます。その中でも特に成長率が高い「Slack」を例にとって注目すべきKPIをご説明します。

Slack 3rd Quarter Fiscal Year 2020 Results(2019/12/4)


SaaSビジネスのKPI #1: MRR

SaaSビジネスで一番最初に注目すべきKPIは、継続課金売上を示す「MRR=Monthly Recurring Revenue」です。

画像1

Slackは継続課金以外のビジネスを展開していないので、毎月の売上がそのままMRRとなります。四半期の売上は前年同期比+60%増の$169M(約169億円)、MRRにすると約$56.3M(約56.3億円)になります。

一番左のグラフの緑の部分が以前発表された予想売上です。第3四半期の売上は予想より$14M(約14億円)上振れ、紫色が示す$169M(約169億円)になったという説明がなされています。


SaaSビジネスのKPI #2: 顧客数・単価

二つ目に注目すべきは、「顧客数と顧客単価」です。

画像2

今回の四半期では新規の有料顧客数が5,000社増加し、有料顧客総数は前年同期の81万社から+30%増えた10.5万社となっています。

顧客単価 = MRR/ 顧客数

上記の式でSlackの顧客単価を計算すると5,365ドル(約53.6万円)となります。これが一社あたりの月間売上(顧客単価)です。


SaaSビジネスのKPI #3: Net Dollar Retention (NDR・売上継続率)

三つ目に注目すべきは、「売上継続率」と呼ばれる指標です。この指標はビジネスがどの程度安定しているのかを表しています。

画像3

一度獲得した顧客から継続的に売上が増えているのか、それとも途中で解約してしまう顧客が多く、同じ顧客群からの売上が減っているのかを表す指標です。

Slackの売上継続率は134%となっています。これは一度顧客を獲得すると、同じ顧客からの売上が毎年34%ずつ増えているということを表しています。つまり獲得した顧客からの売上が減らないだけではなく、増え続けることを意味しています。

売上継続率は100を超えている場合、ネガティブチャーン(解約率がマイナスという意味)と呼んだりします。


SaaSビジネスのKPI #4: 売上(MRR)成長の要因

次に注目すべきは、「MRRがなぜ伸びているのか?」という説明です。この説明はビジネスモデルや会社によって違いますが、ここではSlackの例を詳しく見ていきましょう。

画像4

このグラフは年間売上が10万ドル(約1千万円)を超える大口顧客の客数を表しています。現在Slackには年間売上が10万ドルを超える顧客が821社あり、前年同期の491社から+67%増加しています。

画像5

それらの大口顧客の売上が全体に占める割合は、前年同期の37%から47%に増加しています。この割合の増加から、Slackの急成長は年間売上が10万ドルを超える大口顧客の売上によって支えられているということがよく理解できると思います。

繰り返しになりますが売上成長の要因は会社によって当然異なります。それぞれの会社の戦略によって異なるからこそ、売上成長の要因は今後の成長や他社との比較をする上でも非常に大事な点です。売上の成長要因については決算資料に何かしら理由が書かれている場合が多いので、しっかり読み取っていただければと思います。


SaaSビジネスのKPI #5: キャッシュフロー(関連)

SaaSビジネスは一般的に、営業マーケティング費用が売上に対して先行するビジネスモデルになる場合が多いので、キャッシュフローが厳しくなるケースが多々あります。

そこでSaaSビジネスの決算書を見る場合には、「キャッシュフロー関連の指標」も詳しく見ておく必要があります。

画像6

このグラフは「まだ売上計上できていない入金済みの金額」を表しています。

Slackの場合、特に大企業相手になると月額ではなく年契約などもあることから、その四半期に売上計上はできていないけれども既に入金されている金額が多くなりがちです。

具体的には、第3四半期終了時点で$279M(約279億円)もの金額が既に入金されているにも関わらず、まだ売上として計上されていません。

この金額は将来売上計上されるわけですが、四半期の売上が$169M(約169億円)ですので、それよりも大きな金額が既に入金されて売上計上待ちという状態になっているというわけです。

四半期の売上の2倍近い金額が売上計上を待っている状態ですので、少なくとも短期的に売上が急に落ち込むという可能性は低く、営業マーケティングなどに投資を使したとしても、すぐにキャッシュ不足になるような状態ではないことが、このグラフから推測できるでしょう。


他にも注目すべきSaaSのKPI

Slkackの決算資料はSaaSビジネスの基本となる大事なKPIがいくつも開示されています。他に注目すべきKPIには例えば以下のようなものがあります。

・顧客獲得コスト(CAC=Customer Acquisition Cost)
・解約率
・ライフタイムバリュー(LTV)
・顧客獲得コスト回収期間(Payback Period) = 顧客単価 / CAC
・投資回収率(ROI) = LTV / CAC

これらのうちいくつかは開示されている数字から計算することができます。

例えば顧客獲得コストは、「セールスマーケティング費用 / 新規顧客数」で計算できます。

これらのKPIを他のSaaS企業と比較すると、その企業ごとの強み弱みや、戦略、今後の成長可能性などが見えてくると思います。

今回の記事ではSlackを例にとって、SaaSビジネスの決算の読み方を詳しく見てみましたがいかがでしたでしょうか?もし興味がある方はぜひこの決算資料を詳しくご覧ください。

Slack 3rd Quarter Fiscal Year 2020 Results(2019/12/4)


----------------------------

新着記事を(無料で)Facebookメッセンジャー・LINEへお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookメッセンジャー: https://m.me/irnote
LINE: https://line.me/R/ti/p/%40pap3801g

「テクノロジーの地政学」好評発売中!

「決算資料からビジネスの仕組みが見えてくる」好評発売中!

「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」好評発売中!

1ヶ月あたり4〜8本の有料ノートが追加される予定の「有料マガジン」もあります。是非ご覧ください。

気に入ってくださった方は、↓から「スキ」「フォロー」してください!


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

サポートいただくよりも、Amazonで本のレビューを書いていただける方が助かります。↑のリンクより是非レビューをお願いします!

嬉しいです!(文末にある)LINEの友達申請もお願いします!
114
アメリカ・日本のネット企業(上場企業)を中心に、決算情報から読みとれることを書きます。経営者の方はもちろん、出世したいサラリーマンの方、就職活動・転職活動中の方になるべく分かりやすく書きます。