Q. 創業者からプロ経営者へのバトンタッチが進むシリコンバレー。最近の最も注目すべきCEO人事とは?
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Q. 創業者からプロ経営者へのバトンタッチが進むシリコンバレー。最近の最も注目すべきCEO人事とは?

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A. AppleやAlphabet(Google)、Microsoft、Amazon、Twitter、Salesforceと多くの企業のCEOが交代しきましたが、個人的に今一番注目しているのは、2021年11月末にTwitterの取締役会長と、SalesforceのCo-CEO(共同CEO)兼取締役副会長に就任した元Facebook CTOのブレット・テイラー氏です。

この記事はゆべしさんとの共同制作です。

本日は、ネット企業の決算分析ではなく、少しテイストを変えて、「創業者からプロ経営者(複数の企業を「経営者」という立場で渡り歩く人物)へのバトンタッチ」というCEOの人事情報に注目し、CEOと株価や業績との関連なども見ていきます。

企業の代表と言える経営者の交代は、良くも悪くも、事業やサービスだけでなく、社員や取引先など多くのステークホルダーに影響を与えるため、非常に重要かつ慎重なテーマとして扱われます。

記事の前半では、重要かつ慎重なテーマであるプロ経営者へのバトンタッチが成功している米国大手ネット企業を紹介し、後半では2021年11月末に発表された注目人事を紹介します。

また、この記事はAppleやAlphabet(Google)、Microsoft、Amazon、Twitter、Salesforceといった世界的に有名な企業の経営者の変遷も整理できる内容となっています。無料で公開しているので、ぜひ最後までご覧ください。

創業者からプロ経営者へのバトンタッチが進むシリコンバレー

日本に目を向けると、2002年にファーストリテイリングでは、代表取締役を創業者である柳井氏から玉塚氏へバトンタッチしましたが、2005年に同氏は退任し、再び柳井氏が代表取締役に就任しています。

また、ソフトバンクグループの孫正義氏は、以前から後継者を探しており、2014年には元Googleのニケシュ・アローラ氏を後継者に指名したかに思えましたが、2016年に同氏は任期満了で退任しています。

このように、日本では「プロ経営者へのバトンタッチ」が進んでいるとは言えないようですが、反対にGAFAMを中心としたシリコンバレーでは、創業者からプロ経営者へのバトンタッチが進んでいます。

次章からは、Apple・Alphabet(Google)・Microsoft・Amazon・TwitterのCEOに関する人事を順番に紹介します。


Apple:スティーブ・ジョブズ氏からティム・クック氏へ(2011年より)

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ティム・クック氏は、1998年にオペレーション担当上級副社長としてAppleに入社し、全世界向けの販売責任者や最高業務責任者(COO)を担当後、共同創業者であるスティーブ・ジョブズ氏が同社のCEOを辞任したことで、2011年にAppleのCEOに就任しました。

ジョブズ氏は、2004年に膵臓がんの手術、2009年に肝臓移植手術といった病気療養による休職を繰り返していました。ジョブズ氏の休職期間中は、クック氏がCEOの日常業務を代行し、実績も伴っていたことから、2011年にクック氏がジョブズ氏の後継者に任命されました。

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ビジョナリーなジョブズ氏から、実務のプロフェッショナルであるクック氏にバトンタッチされたことで、カリスマCEOのジョブズ氏の不在を嘆く声や、クック氏の経営者としての手腕を疑問視する声が多く、Wall Street Journalによると、ジョブズ氏辞任の報道を受けてAppleの株価は5.13%値下がりしました。

一方で、長期的に見ると、上図のようにAppleの株価は急成長を続け、2021年8月には時価総額が2.5兆ドルを突破しました。クック氏がCEOに就任した2011年8月の時価総額は3,300億ドルであったため、10年間で約7.6倍に成長したことから、クック氏へのバトンタッチは見事に成功していると言えるでしょう。


Alphabet(Google):ラリー・ペイジ氏からサンダー・ピチャイ氏へ(2015年より)

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サンダー・ピチャイ氏は、2004年にGoogleへ入社し、Google ChromeやGmail、Google Mapsといったサービスの開発を主導し、2015年にGoogleのCEOに就任、2019年にはGoogleの親会社であるAlphabetのCEOを兼任しています。

Googleの共同創業者であり、同社の元CEOのラリー・ペイジ氏は、2015年の組織再編に伴い、GoogleのCEOをピチャイ氏に譲り、自身は新設されたAlphabetのCEOに就任しました。その後、2019年には経営が安定したことを理由に、AlphabetのCEOもピチャイ氏に譲りました。

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ピチャイ氏がAlphabetのCEOに就任して1ヶ月後の2020年1月時点で、Alphabetの時価総額は初めて1兆ドルを突破しました。その後も株価は成長を続け、2021年12月の時価総額は1.97兆ドルとなり、約2年間で2倍ほど成長しました。


Microsoft:ビル・ゲイツ氏からスティーブ・バルマー氏へ、バルマー氏からサティア・ナデラ氏へ(2014年より)

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サティア・ナデラ氏は、1992年にMicrosoftに入社し、サーバー部門、ビジネスソリューション部門などを経て、2008年にはオンラインサービス部門の上級副社長に就任、2014年にはMicrosoftの三代目CEOに就任しました。

創業者で初代CEOのビル・ゲイツ氏の時代のMicrosoftは、Windows+Officeと盤石な体制でしたが、二代目CEOのスティーブ・バルマー氏の時代には、業績自体は拡大したものの、OSのシェア低下や検索・スマホ・クラウド等の重要事業領域で優位に立てませんでした。

このような状況から脱却するために、ナデラ氏にMicrosoftのCEOをバトンタッチしました。少し古いですが、こちらの記事でより詳細に、Microsoftの歴代CEOと業績推移をまとめていますので、もしよろしければご覧ください。

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ナデラ氏がCEOに就任した2014年のMicrosoftの時価総額は約3,000億ドルで、2021年12月の時価総額は2.5兆ドルを突破しています。そのため、約8年間で8倍以上成長させていることから、ナデラ氏へのバトンタッチも成功していると言えるでしょう。


Amazon:ジェフ・ベゾス氏からアンディー・ジャシー氏へ(2021年より)

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アンディー・ジャシー氏は、1997年にAmazonに入社し、AWS(Amazon Web Service)をゼロから立ち上げ、2016年にはAWSのCEOに就任、2021年7月に創業者のジェフ・ベゾス氏がAmazonのCEOを退任したことを受けて、AmazonのCEOに就任しました。

ベゾス氏は、自身が立ち上げた他のベンチャー企業に集中する時間とエネルギーを確保することを目的に、AWSを主力事業まで成長させた実績があり、信頼を寄せていたジャシー氏にCEOをバトンタッチしました。

TechCrunchの記事によると、今回の報道を受けて、立会時間前の取引ベースで、Amazonの株価は0.42%上昇していることから、投資家からの期待が伺えます。


Twitter:ジャック・ドーシー氏からパラグ・アグラワル氏へ(2021年より)

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パラグ・アグラワル氏は、MicrosoftやAT&Tを経て、2011年にエンジニアとしてTwitterに入社し、2017年からは最高技術責任者(CTO)を務め、2021年11月に創業者であるジャック・ドーシー氏がCEOを退任することを受けて、同社のCEOに就任しました。

ドーシー氏はTwitterのCEO辞任にあたり、「これまで創業者から脱却できるよう努力してきて、ようやく次に移る用意ができた」「創業者が会社をリードするのが重要とされているが、会社は創業者に厳しく縛られてしまう」と述べています。

実は、ドーシー氏はモバイル決済サービスのSquareのCEOも兼任しており、一部の投資家から「Twitterの経営に集中できていない」という批判がありました。そのため、今回のドーシー氏の退任報道を受けて、報道直後のTwitterの株価は序盤の取引で約7%上昇しました。
(※まだCEO交代から日が浅いため、CEO交代の影響は十分に株価に反映されていないと思われます)

これまで見てきたように、GAFAMを中心にシリコンバレーでは、創業者からプロ経営者へのバトンタッチが進んでおり、バトンタッチ後も株価は好調に推移していることから、各社のプロ経営者へのバトンタッチは成功していると言えそうです。

次章からは、プロ経営者へのバトンタッチの中でも、2021年11月末に発表された、特に注目しておきたい人事をご紹介します。


Twitterの新取締役会長 ブレット・テイラー氏

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In addition to Agrawal's appointment to the Board, the Company announced that Bret Taylor, a member of the Twitter Board since 2016, has been named Independent Chair of the Board, effective immediately.

引用:Jack Dorsey Steps Down as Twitter CEO, Board Unanimously Appoints CTO Parag Agrawal as Successor(2021年11月20日)

Twitterの創業者のドーシー氏は、同社のCEO退任に伴い2022年の株主総会にて、任期満了で取締役も辞任することになっています。これを受けて、同社のCEOにはアグラワル氏が、取締役会長には2016年から社外取締役を務めていたブレット・テイラー氏が就任します。

The second is Bret Taylor agreeing to become our board chair. I asked Bret to join our board when I became CEO, and he’s been excellent in every way. He understands entrepreneurship, taking risks, companies at massive scale, technology, product, and he’s an engineer. All of the things the board and the company deserve right now. Having Bret in this leadership role gives me a lot of confidence in the strength of our board going forward. You have no idea how happy this makes me!

参考:ドーシー氏のツイートより、一部を引用しています。

ドーシー氏は自身のツイートで、CEO辞任を決意できた理由の1つに、テイラー氏の取締役会長への就任を挙げています。テイラー氏は起業家精神やリスクの取り方、大規模な企業、技術や製品等を理解しているとして、テイラー氏に絶大の信頼を寄せていることが伺えます。

このドーシー氏のツイートは2021年11月29日に投稿されましたが、翌日の11月30日にテイラー氏に関するもう一つの人事が発表されています。


Salesforceの新Co-CEOも兼任するブレット・テイラー氏

Salesforce (NYSE: CRM), the global leader in CRM, today announced that Bret Taylor has been promoted to Vice Chair of the Board and Co-CEO of Salesforce, effective immediately. Taylor has served as Salesforce’s President and Chief Operating Officer since 2019, and previously served as the company’s President and Chief Product Officer.

引用:Bret Taylor Promoted to Vice Chair and Co-CEO of Salesforce(2021年11月30日)

テイラー氏は、2021年11月30日付けでSalesforceのCOOから、Co-CEO(共同CEO)兼取締役副会長に昇進しました。

Salesforceの創業者であるマーク・ベニオフ氏は、今後もCo-CEOとして残りつつ、テイラー氏を迎え入れる形となるため、正確にはCEOのバトンタッチではありませんが、テイラー氏はTwitterの取締役会長就任も含めて、注目の人物であることは間違いないでしょう。

Bret is a phenomenal industry leader who has been instrumental in creating incredible success for our customers and driving innovation throughout our company. He has been my trusted friend for years, and I couldn’t be happier to welcome him as Co-CEO,

引用:Bret Taylor Promoted to Vice Chair and Co-CEO of Salesforce(2021年11月30日)

ベニオフ氏は、「テイラー氏は驚異的な業界のリーダーであり、Salesforceの顧客に成功をもたらし、革新を推進してきた」として、テイラー氏を同社のCo-CEOに歓迎しています。


注目の経営者 ブレット・テイラー氏とは何者?

TwitterやSalesforceといった超有名企業の重要ポジションに、ほぼ同時に就任を果たし、創業者であるドーシー氏やベニオフ氏から絶大の信頼を得ているテイラー氏とは、一体どのような人物なのでしょうか。以下にテイラー氏の経歴を簡単にまとめました。

●テイラー氏の略歴
2003年:Googleに入社し、Google Mapsの開発を担当
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2007年:SNSサービスを運営するFriendFeedを創業
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2009年:FriendFeedをFacebookに売却し、FacebookのCTOに就任
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2012年:コラボレーションプラットフォームを運営するQuipを創業
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2016年:QuipをSalesforceに売却し、Salesforceに入社、Twitterの社外取締役に就任
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2017年:SalesforceのCPO(最高製品責任者)に就任
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2019年:SalesforceのCOOに就任
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2021年:Twitterの取締役会長及びSalesforceのCo-CEO兼取締役副会長に就任

参考:LinkedIn米国セールスフォース・ドットコム役員

テイラー氏の経歴を見ると、2社の創業と売却の経験に加え、GoogleやSalesforceといった大企業でのマネジメント経験やエンジニアとしての知見・スキルといったすべてを備え持つ人材と言えるのではないでしょうか。

シリコンバレーの強さの1つに、テイラー氏のような経験豊富な人材が溢れていることが挙げられるかもしれません。今後、TwitterやSalesforceで、テイラー氏がどのような経営手腕を振るうのか、今後が非常に楽しみですね。


まとめ

この記事では、「創業者からプロ経営者へのバトンタッチ」について、前半では米国ネット企業大手各社のCEO人事を整理し、後半ではTwitterやSalesforceの注目の人事と、テイラー氏の略歴を紹介しました。

企業には、シード、アーリー、ミドル、レイター等の成長ステージがあり、各ステージや外部・内部環境等に応じて、経営者に求められる要件は異なります。そのため、適切なタイミングでの創業者からプロ経営者へのバトンタッチは理に適っており、企業の持続や成長には必要だと言えるでしょう。

一方で、冒頭で述べた通り、日本ではまだ創業者からプロ経営者へのバトンタッチが進んでいるとは言えませんが、シリアルアントレプレナー(連続起業家)が増加していることも踏まえて、中長期的にこのような動きが日本でも進む可能性は十分にあると思います。

企業は人(特に経営者)によって大きく変わります。テイラー氏の経営手腕によって、SalesforceやTwitterがどのような成長を遂げるのか、今後創業者からプロ経営者へのバトンタッチが日本でも進むのか、引き続き注視していきたいと思います。


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アメリカ・日本のネット企業(上場企業)を中心に、決算情報から読みとれることを書きます。経営者の方はもちろん、出世したいサラリーマンの方、就職活動・転職活動中の方になるべく分かりやすく書きます。