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AmazonCEOから株主へのレター(2018年度版)

これまで私の記事で何度か紹介したことがあるAmazonのCEOであるジェフ・ベゾスから株主へのレターは毎年示唆に富み、多くの名言が含まれています。

今日の記事では、2018年度の株主総会の際に発行されたレターの内容を詳しく見ていきたいと思います。今年は彼はどんな名言を残したのでしょうか。

2018 LETTER TO SHAREHOLDERS

参考までに、Amazonの2019年Q1の決算概要を見ておきましょう。

Amazonの2019年Q1の決算概要

まず最初にAmazonが2019年4月25日に発表した第1四半期の決算を簡単に見ておきましょう。

売上高は前年同期比+17%の$59.7B(約5.97兆円)、純利益は前年同期比2.2倍の$3.56B(約3,560億円)でした。

直営のネット通販事業の売上高は10%にとどまっていますが、利幅が大きいクラウドサービスのAWSが前年同期比+41%成長したことで、4四半期連続で最高益を更新しています。


この数字は何でしょう?

はじめにレターの冒頭にこの数字が記載されています。皆さんはこの数字が何の数字だか分かりますか?

この数字は、Amazonのサードパーティーの出店店舗によるマーケットプレイスでの取扱高の割合です。

Amazonといえば直販ビジネスがを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、特にアメリカではサードパーティー店舗によるマーケットプレイスでの取扱高が全体の58%を占めるまでになっています。

マーケットプレイスを開始した1999年には、たった3%しかなかったわけですから、とてつもないスピードでサードパーティーの出店店舗のビジネスが大きくなっていることがお分かりいただけると思います。この数字を年間平均成長率にすると25%という驚異的な成長率になります。


Amazon内のマーケットプレイス取扱高が直販取扱高を超えた2つの要因

では何故マーケットプレイスの取扱高が直販よりも大きく伸びたのか?、そしてAmazonのマーケットプレイスは、eBayなどの競合よりうまくいっているのでしょうか?

There isn’t one answer, but we do know one extremely important part of the answer: We helped independent sellers compete against our first-party business by investing in and offering them the very best selling tools we could imagine and build. There are many such tools, including tools that help sellers manage inventory, process payments, track shipments, create reports, and sell across borders – and we’re inventing more every year.

「マーケットプレイスの取扱高が増えた要因を特定するのは非常に難しい」と述べつつも、大きな要因の一つとして、Amazonが出店店舗に対して考えうる限り最高のツールを開発し、提供したことだとが挙げられています。

ここで言うツールというのは、在庫管理や支払い、配送管理、レポート、国際発送などなど様々なものが含まれます。

マーケットプレイスの取扱高が直販取扱高を超えた理由として、ツールの開発と提供以上に大きな意味を持っている二つの要因が記載されているので詳しく見てみましょう。

But of great importance are Fulfillment by Amazon and the Prime membership program. In combination, these two programs meaningfully improved the customer experience of buying from independent sellers. With the success of these two programs now so well established, it’s difficult for most people to fully appreciate today just how radical those two offerings were at the time we launched them. We invested in both of these programs at significant financial risk and after much internal debate.

強いて挙げるとすれば、Amazonによる「フルフィルメント」と「プライムメンバー会員制度」の影響が大きいと書かれています。

つまり、店舗から見た場合の在庫管理や配送代行(フルフィルメント)、そしてユーザーから見た場合の迅速な配送が大きな勝因だということになります。

Amazonはどの会社よりこの二つに大きな投資をしてきており、他の会社が追いつくのが困難になっているともいえるでしょう。


失敗の規模もスケールする必要がある(Failure needs to scale too)

もう一つ今回のレターの中で興味深い記載がありました。

As a company grows, everything needs to scale, including the size of your failed experiments. If the size of your failures isn’t growing, you’re not going to be inventing at a size that can actually move the needle.Amazonwill be experimenting at the right scale for a company of our size if we occasionally have multibillion-dollar failures.

それは、「会社の規模が大きくなるにつれて失敗の規模も大きくなる必要がある」という表現です。

会社の規模が大きくなっているにもかかわらず、失敗の規模が大きくなっていないのであれば、会社にとって意味のある発明などできるわけがないと書いてあります。

Amazonは、失敗したら数十億円規模の損失を出すかもしれないような大きなチャレンジを常に行っていると書かれています。

Development of the Fire phone and Echo was started around the same time. While the Fire phone was a failure, we were able to take our learnings (as well as the developers) and accelerate our efforts building Echo and Alexa. The vision for Echo and Alexa was inspired by the Star Trek computer.

具体的な事例としては、Amazonが以前発売した「Fire Phone」(Amazonが開発したスマホ)の事例が挙げられています。

実はFire PhoneとAmazon Echoは同じ時期に開発が始まりました。皆さんご存知の通り、Fire Phoneは大きな失敗となってしまいましたが、その失敗から学習したことをAmazonEchoやAlexaに生かすことができていると書かれています。


顧客が欲しいと言えないものを「発明する」方法

最後に今回特に印象的だったのが、「Amazonは顧客が欲しいとは言えないようなものも発明してきた」という話です。

スティーブ・ジョブスも、「顧客に何が欲しいか聞いても顧客は目の前に無いものが欲しいかどうか判断することさえもできない」とよく言っていましたが、それと似た話です。

AWS itself – as a whole – is an example. No one asked for AWS. No one. Turns out the world was in fact ready and hungry for an offering like AWS but didn’t know it. We had a hunch, followed our curiosity, took the necessary financial risks, and began building – reworking, experimenting, and iterating countless times as we proceeded.

今となってはクラウドの代表格であるAWS(Amazon Web Service)ですが、AWSが発表される前は、誰も仮想化されたクラウド上のサーバーが欲しいとは言いませんでした。

実際にAWSが発表されると多くのユーザーが飛びついたわけですが、発表前にAWSのようなものが欲しいと言った人は一人もいませんでした。

AWSのようなものが必要になるはずだ、という「勘」に基づいて、好奇心旺盛に大きなファイナンシャルリスクを取って開発を始め、その後も何度も改善を続けてリリースされた経緯があります。

No customer was asking for Echo. This was definitely us wandering. Market research doesn’t help. If you had gone to a customer in 2013 and said “Would you like a black, always-on cylinder in your kitchen about the size of a Pringles can that you can talk to and ask questions, that also turns on your lights and plays music?” I guarantee you they’d have looked at you strangely and said “No, thank you.”

Amazon Echoが欲しいと言った人も一人もいませんでした。AmazonEchoは、Amazonのエンジニア達が妄想していたのに近い感覚で生まれたともいえるでしょう。

2013年時点でどのマーケットリサーチを見ても、スマートスピーカーが今後ヒットするとは書かれていませんでした。

顧客に「キッチンにプリングスサイズの黒いシリンダーのようなものがあって、それに対して何でも質問ができて、電気をつけたり消したり音楽を再生したりできるものがあったら欲しいですか?」というようなことをどのように説明して質問しても、「いりません」と言われたに違いないでしょう。

このようにAmazonが、AWSやAmazonEchoのように、顧客が必要かどうかも全くわからないものを常に発明し続けてきたという事実から、非常に学ぶべきことが多いのではないでしょうか。

連続的に予測できる将来だけではなく、好奇心や「勘」に基づいて大きな実験をし続けていくことも重要、というとても興味深い話だと思いました。



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アメリカ・日本のネット企業(上場企業)を中心に、決算情報から読みとれることを書きます。経営者の方はもちろん、出世したいサラリーマンの方、就職活動・転職活動中の方になるべく分かりやすく書きます。
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