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Q. マザーズから東証一部へ市場変更するのに最も必要なのは何か?


Q. マザーズから東証一部へ市場変更するのに最も必要なのは何か?

A. (創業者の売出などを)買い支えてくれる機関投資家

今日の記事ではいつもと少し違って、財務戦略の話を書いてみたいと思います。

なぜこの記事を書こうと思ったかと言うと、じげんの決算資料を見ていて、このスライドが気になったからです。

株式会社じげん 2019年3月期 第4四半期決算説明

何が気になったかと言うと、下で整理したように、機関投資家の持分が大きく上がっているという点です。

2015年度末 => 2019年度末
経営陣 71.4% => 51%
機関投資家: 5.1% => 33.9%

じげんは2018年に、マザーズから東証一部に市場変更をしていますが、このタイミングで経営陣の株式が大きく売り出されて、機関投資家の持分が大きく増えていることになります。

私の記事の読者の方には、マザーズに上場して、いずれは東証一部に市場変更をしたいと思っていらっしゃる方も多いかと思いますが、実際に東証一部へ市場変更するために必要な要件を、きちんと理解している方はもしかすると少ないのかもしれません。

今日の記事では、東証一部に市場変更するためにどのようなことが必要なのかというのを、簡単におさらいしていきたいと思います。


東証一部へ市場変更するための要件

一部指定・指定替え・市場変更基準

この表が、東証一部に市場変更するために必要な要件の一部です。

いくつかポイントがあるので、おさらいしておきたいと思います。

次のa又はbに適合すること
a. 最近2年間の利益の額の総額が5億円以上であること
b. 時価総額が500億円以上 (最近1 年間における売上高が100 億円未満である場合を除く)

初めに目に付くのがこの二つの要件です。実際にはこれらの一つを満たせばいいわけですが、どちらもそんなに簡単な条件ではないことはご理解頂けるかと思います。

一つ目は、東証一部に上場するためには、直近2年間の利益の合計が、5億円以上あることが条件になっています。つまり大赤字のままの会社は、東証一部に上がれないことになります。

二つ目は、時価総額が500億円以上という要件です。時価総額があまりにも小さい会社は、東証一部にふさわしくないと考えられています。

この時価総額500億円以上というのは、一般的に、機関投資家が投資対象として見ることが出来るかどうかの閾値とも言われています。

機関投資家は、非常に大きな金額を投資運用しているため、一社当たりの投資額もそれなりに大きくある必要があります。というのは、機関投資家が調査できる会社の数は限られていますので、例えば1,000億円を運用している機関投資家が、一社あたり1億円ずつ投資をする、というようなことは決して出来ません。

時価総額が小さい会社に機関投資家が投資できない理由は、自分達の持分が大きくなりすぎると、売却時に、自分たちの売却行為によって株価が大きく下がってしまい、売却益を取りにくくなるからだと考えられます。

いずれにしても、機関投資家の投資対象になるためには、時価総額が最低でも500億円ぐらいは必要だと覚えておいて損はないと思います。

流通株式数(比率) 上場株券等の35%以上

二つ目に目につくのが、発行している株式の35%以上は市場で流通している必要がある、という点です。

じげんの場合もそうでしたが、日本では創業者が6割あるいは7割以上のシェアを持って上場することがよくありましたが、そのままの条件では東証一部に登場することはできません。

創業者のシェアが高すぎる場合は、東証一部に上場する際に創業者が株式を売り出す必要があります。

目安としては、今回のじげんのように、創業者の持分が約50%を下回るレベルまで売却する必要がある、と覚えておけば良いのではないでしょうか。


東証一部に上場するには、なぜ機関投資家を魅了することが必要なのか

今回のじげんの例に近い(仮想的な)例で考えてみましょう。

時価総額 1,000億円
創業者持ち分 70%

仮に時価総額が1,000億円で、創業者の持分が70%という会社が、マザーズに上場していて、東証一部に市場変更したいとします。

この場合、少なくても20%が、つまり200億円分の株式を売り出す必要があるわけですが、突然200億円もの株式を市場に放出してしまうとどうなるでしょうか。

もちろんケースバイケースではありますが、東証マザーズのように個人投資家が多い市場であれば、突然200億円もの売り圧力がかかると、買い圧力よりも売り圧力の方が強くなるため、株価が大きく下がることが容易に想像できます。

東証一部に市場変更しするために株価を大きく下げるというのは、会社から見れば絶対に避けたいことであることは間違いありません。そこでこのような場合は、創業者の売り出し分を買い支えてくれる、機関投資家が必要だということになるわけです。

ネット系ソフトウェア系で大きくなっている会社は、実はどの会社も、機関投資家の持分がそれなりに大きくなっています。正確に言うと、創業者の持分と機関投資家の持分を合計した安定株主の比率が非常に高くなっている、と言うべきかもしれません。

以下では、日本を代表するネット系ソフトウエア系企業の、株主の種類別持分を、簡単に整理しておきたいと思います。


ソフトバンクグループ

ソフトバンクグループ 株主の状況

創業者: 21.21%
機関投資家: 約70%

はじめにソフトバンクグループですが、創業者は20%以上の株式を保有しており、それ以外に、外国法人・金融機関等を合計すると、約70%は機関投資家の持分といえます。

ソフトバンクグループといえば個人株主が多いと思われる方も多いかもしれませんが、金額ベースで見ると、このように機関投資家に買い支えられている銘柄だとも言えるのではないでしょうか。


楽天

楽天 株主の状況

創業者一家: 約37%
機関投資家: 約44%

次に楽天ですが、創業者一家で約37%の株式を保有しており、その他の法人などを合計すると約44%、つまり合計で約81%が 創業者もしくは機関投資家による持分となっています。

楽天は未だに創業者一家の持分が大きな会社ではありますが、それ以上に機関投資家の持分が大きな会社でもあります。


Gree

Gree 株主の状況

創業者: 47.24%
機関投資家: 約31%
(KDDI: 3.37%)

次にGreeを見てみると、創業者は47%を保有しており、機関投資家が約31%、それ以外に上場前からの株主であるKDDI が3.37%を保有しています。

こちらも創業者の持分が非常に大きいだけではなく、機関投資家の持分も大きいので、株主構成としては安定していると言えるのではないでしょうか。


DeNA

DeNA 株主の状況

創業者: 約16%
機関投資家: 約55%
(任天堂: 10.38%)

最後にDeNAを見ると、創業者二人の持分が約16%、機関投資家が約55%、それ以外に任天堂が約10%を保有しています。

DeNAは創業者の持分が相対的に小さい会社ではありますが、機関投資家と任天堂というパートナーが65%を保有しており、同じく機関投資家に買い支えられている銘柄だと言えるでしょう。

今回の記事では、マザーズに上場している会社が東証一部に市場変更するには、機関投資家からの買い支えが必要だという話を書きました。

マザーズに上場してするだけではなく、東証一部にまでいつか上場したいと考えている方は、是非この記事の内容を覚えておいて頂けると嬉しく思います。


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