Amazonプライムデーについて知っておくべき3つの事実とAmazonの真の狙い
Amazonは年に一度「プライムデー」という名前でセールイベントを行っています。今年は7月11日に30時間のセールイベントとして行われました。
(前年までは24時間のイベントでした。)
そのプライムデーの結果とAmazonの真の狙いを、公表されている数字などから考察してみたいと思います。
Amazonだけではなくて、日本の場合で言うと楽天やヤフーショッピングなどがセールイベントを実施することがありますが、セールイベントを実施する際には必ず狙いがあります。
例えば、「具体的にこのKPIを改善したい」、あるいは「こういったカテゴリーの商品を売りたい」といったような運営側の狙いがあるわけですが、今回のプライムデーではAmazonはいったい何を狙っていたのでしょうか?
端的に数字に現れた3つのポイントを紹介したいと思います。
#1 : 取扱高はYoY+60%
Amazonのプレスリリースによると、プライムデーの取扱高は以下のように増加したという数字が発表されています。
・前年のプライムデーと比べて取扱高がYoY+60%
・プライムデーに購入したプライムメンバーはYoY+50%
・サードパーティーの店舗による売上は取扱高ベースでYoY+60%、商品数ベースでYoY+50%
ここで注目すべきは全体の取扱高が増えただけではなくて、サードパーティーの出店店舗による取扱高も大きく伸びているという点です。
特にアメリカでは、Amazonはもはやファーストパーティーの直販だけではなく、サードパーティーの出店店舗まで含めた日本で言うところの楽天やヤフーショッピングの様なマーケットプレイスとしても経済圏が大きく成立しているという事実です。
そしてこのサードパーティーの出店店舗の在庫をAmazonのフルフィルメントセンター(Amazon独自の配送センター)に預けて、プライムでの配送対象にすることもできるという点が最も重要な戦略的な狙いです。
#2 : プライム会員数は8,500万人へ(1年間で2,000万人増)
Business Insiderによると、プライムメンバーの一日での加入者数が過去最大となったという報道もありました。
・プライムデーにプライムメンバーに加入したユーザー数は過去最大
・現時点での推計プライムメンバー数は8,500万人
推計ではありますが、現時点でのプライムメンバー数は8,500万にも上ると言われています。
*Amazon has around 80 million reasons to be excited for Prime Day(Business Insider 2017/7/17)
そして今回のセールイベントの名前が「プライムデー」となっているように、プライムメンバーは通常メンバーより、さらにお得になるセールイベントでした。
Amazonにとってプライムメンバーは非常に重要な位置付けです。図の左上にあるようにプライムメンバーは年間平均1,300ドルの買い物をします。これは非プライムメンバーの年間購入額の700ドルの約2倍となっています。
つまりプライムメンバーを増やすことは、1ユーザーあたりの取扱高を増やすことに他なりません。
#3 : Amazon Echoは前年同日比7倍も売れる
前述のプレスリリースで公表されている数字をさらに見てみたいと思います。
> Amazon Echoの売上は前年のプライムデーに比べて7倍
> スマホアプリからの注文は前年同期比で2倍以上
今回のプライムデーでの最大のプロモーションはおそらくAmazon Echoだったでしょう。通常180ドルするAmazon Echoが、なんと90ドルで販売されていました。つまり90ドルオフ!あるいは50%オフ!という驚異的なディスカウントです。
*The Amazon Echo is only $90 for the next 15 hours — get it before it sells out(Business Insider 2017/7/11)
しかし、いくら半額にしたとはいえ、前年比で7倍の売上になるというのは驚異的としか言いようがありません。
この驚異的なディスカウントをしてまでAmazonがAmazon Echoを売りたかった理由は明白です。
まだ日本では販売されていないようなので、Amazon Echoについて簡単に説明します。
Amazon EchoはAmazonが所有する人口知能Alexaを搭載した対話型の音声アシスタント端末です。
どんなことができるかというと、話しかけるだけでニュースや天気予報を音声で回答してくれたり、好みの音楽を流してくれたり、自分のAmazonの注文履歴から再注文をすることができたり、Kindleの書籍を音読してくれたりもします。
さらに、話しかけるだけでピザを注文したり、スターバックスのテイクアウトの予約をしたり、緊急時にあらかじめ登録しておいた人に連絡してくれるという機能もついています。
既存の家電と組み合わせることができるので、エアコンやテレビが接続できる機種である場合は、「エアコン(電気)を消して」と話しかけるだけでエアコンや電気をコントロールできます。
スマホのように活用範囲が広く、スマホと違って話しかけるだけで使えるため、多くの場合リビングルームに置かれ、毎日のようにユーザーが話しかける対話型のデバイスであるため、Amazon Echoを購入したユーザーはAmazonとの接触頻度が劇的に高まり、接触時間も増加します。
ユーザーの接触時間が長いスマートフォンに、EC各社が自社のスマートフォンアプリをインストールしてもらうことで注文機会を増やそうとするというのと似たロジックです。
まだ数字としては公開されていませんが、「Amazon Echoのユーザーになると、買い物をする頻度がこの位高まる」というようなデータがAmazon内部で既に十分取れているのだと思われます。
つまり、今回のようにAmazon Echoの端末そのものを赤字覚悟の値段で販売したとしても、後々十分元が取れるという計算ができている上での今回のセールだと思われます。
まとめ
取扱高がYoY+60%という数字も凄いですが、何と言っても、プライムデーの目的は以下の2つだったのではないかと思います。
・プライム会員数を増やすこと。
・音声アシスタント端末であるAmazon Echoユーザーを増やすこと。
この2つの施策は、「Amazonへの接触頻度、接触時間」を増やし、ひいては「購買頻度」を高めることにつながります。このぶれない戦略を徹底しているAmazonは改めて凄いなぁと思った次第です。
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