Q.決済インフラの覇権はどちらの手に?StripeとAdyenを比較してみた
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Q.決済インフラの覇権はどちらの手に?StripeとAdyenを比較してみた

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A.
比較#1:【売上・総決済額】コロナ禍の成長率に明暗。StripeがAdyenのを逆転
比較#2:【従業員一人あたり売上】Adyenが大手企業の獲得で大きくリード
比較#3:【地域別売上】相手のシェアが大きい地域へ進出、今後ますます競争が激化

この記事は沼幹太さん(企画・リサーチ担当)と masm さん(ライティング担当)との共同制作です。

2022年4月8日、決済インフラを主事業とする未上場企業で全米でトップの評価額となっているStripe(ストライプ)社の2021年業績発表がありました。

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上の表は、未上場のスタートアップ企業を評価額の高い順に並べたものです。

こちらの表から分かるように、Stripeは、TikTokを運営する「ByteDance」、Twitter社の買収で話題になっているイーロン・マスク氏率いる「SpaceX」に次ぐ世界第3位の評価額であり、いわゆるデカコーン(未上場で評価額が$10B(約1兆円)を超える)企業です。

また、StripeはAmazonやGoogle、Meta、Shopifyなど名だたる有名企業が採用していることでも有名であり、今回の業績発表も非常に注目されていました。

一方、Stripeと似た特徴を持つ企業として、オランダ発の決済インフラ大手のAdyen(アデェィン)社があります。

Adyenも、日本ではStripeよりも知名度が低いかもしれませんが、UberやAlibaba、Microsoftなどが採用する新興決済インフラ企業として注目されている企業です。

今回の記事では、決済企業大手のStripeとAdyenを年次報告書などの資料を元に比較していき、決済インフラ市場の動向を分析していきます。

この記事では、1ドル=100円($1 = 100円)として、日本円も併せて記載しています。
また、レートを考慮し1ユーロ=1.1ドル(€1 =$1.1)と換算して掲載しています。


Stripeの会社概要

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まず、Stripeの企業概要について解説していきます。

2011年9月に設立された企業で、カリフォルニア州(サンフランシスコ)とアイルランド(ダブリン)に本社を置いており、ベルリン、ロンドン、シンガポール、メキシコシティ、東京などにも事業拠点を有しているグローバル企業です。

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サービスとしては、オンライン決済プラットフォームの提供や、オンライン請求書、対面型(オフライン)での決済プラットフォームなどを提供しています。

近年では金融系スタートアップへの出資や、暗号通貨での決済にも対応したことが話題になりました。

Stripeのビジネスモデルは非常にシンプルで、初期費用はかからず、一律3.6%(2022年4月28日現在)の決済手数料で、決済成立ごとに手数料売上が発生するというモデルになっています。


Adyenの会社概要

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次に、Adyenの企業概要を見ていきましょう。

2006年オランダで設立され、2018年6月にアムステルダム証券取引所に上場しています。

社名のAdyenはスリナム語で「またゼロから始める」という意味を持っており、設立当時は旧式のインフラ上に決済システムがつぎはぎで埋め込まれていたような状況で、その状況を再構築したいという思いも込められているのでしょう。

現在ではヨーロッパのみならず、アジア、北米などにも進出しており、世界に27の事業拠点を有しています。

Stripeと同様にオンライン決済や対面決済サービスを提供しており、2018年にeBayが元子会社のPayPalの利用を廃止し、Adyenを採用したことも有名です。

2018年にAdyenが上場する際に、ビジネスモデル等を解説した記事を公開しておりますので、こちらも参考にしてみてください。


マーケット

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次に、両社のサービスの普及状況を見ていきます。

上図はセールス情報プラットフォームを提供するSlintelが公表している、StripeとAdyenの地域ごとの顧客数を比較したものです。「青色はAdyen、黄色はStripe」の顧客が多い地域を表しています。

北米やオセアニアではStripeが優勢であるものの、ヨーロッパやアジアではAdyenのシェアが大きいことが見て取れます。また、ほぼ世界全体に少なくとも片方の企業が進出していることもわかります。

両社の世界的な拡大の主な要因は、決済における中間プレイヤーを減らして決済フローをシンプルにしたことで、実装の簡略化・利便性の向上・低い手数料を実現したことが大きかったと言えるでしょう。


比較#1:【売上・総決済額】コロナ禍の成長率に明暗。StripeがAdyenのを逆転

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ここから、3つの軸で両社の比較分析を行っていきます。

まずは業績での比較を見ていきましょう。

GPV(決済総額)の比較から見てみると、Stripeの2021年のGPVは$640B(約64兆円)、YoY+60%と大きく成長しています。また、コロナ禍の影響がで始めた2020年にはYoY+167%の急成長を遂げており、このGPVの急成長が後ほど解説する売上急成長の大きな要因となりました。

StripeのGPVの急成長の要因としては、顧客の中にAmazon、Shopifyなどコロナ禍で大きく取引量を伸ばしたEC企業がいたことが大きいと考えられます。

一方Adyenは、2021年はGPVが$568B(約56.8兆円)、YoY+70%とStripeを上回る成長率でしたが、2020年はGPV成長率がYoY+25%と、Stripeの1/6程度の成長率となっており、決済総額で追い越された形となっています。

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次に売上比較を見ていきますが、Stripeは公式にRevenue(売上)を公開していないため、下記の記事から売上推移データ(上の表)を引用しています。

2020年の売上は$7.4B(約7400億円)、YoY+270%と急成長していることがわかります。

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Stripeの2021年の売上は今のところ引用できるデータがありませんが、2020年のテイクレート(取引手数料=売上÷GPV)と同じだと仮定して計算してみましょう。

2020年のテイクレート=2020年の売上÷2020年のGPV
=$7.4B(約7,400億円)÷$400B(約40兆円)
=1.85%

2021年GPVは$640B(約64兆円)なので、2020年のテイクレート1.85%を用いると、2021年の売上は$11.8B(約1.18兆円)となり、$10B(約1兆円)の大台を突破していることになります。

一方、Adyenの2021年の売上は$6.6B(約6,600億円)、YoY+65%の成長率となっています。
Adyenの成長率も決して低くはありませんが、2020年のStripeの売上が2021年のAdyenの売上を既に上回っており、Stripeの売上が下がるということは考えづらいため、売上での比較は、GPV同様Stripeに軍配が上がっています。


比較#2:【従業員一人あたり売上】Adyenが大手企業の獲得で大きくリード

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次に、従業員数と売上を元に、同じFintech領域のビジネスを行っているPayPal、Squareも交えて比較していきます。

従業員数と2020年の売上を用いて従業員1人あたりの売上を比較してみると、Adyenは$18M(約18億円)となっており、Stripeの$11M(約11億円)を大きく上回っていることがわかります。

また、PayPalやSquareと比較してもAdyenの1人あたり売上は際立って高く、効率的に売上を生む仕組みができていることがわかります。

Historically, we built the Adyen platform focused on the needs of Enterprise merchants. We have since seen that a broader range of merchants is finding value in our offering.

https://t.co/op7YpUeYav

Adyenがこれだけ効率的に売上を上げることができているのは、上記のAdyenのAnnual-Report-2021の記載にもあるように、Stripeと比較し大手企業の獲得を狙ったプロダクトづくりや拡大戦略をとってきたことが大きな要因と考えられます。


比較#3:【地域別売上】相手のシェアが大きい地域に進出、今後ますます競争が激化

最後に、地域別の売上を比較してみましょう。

It’s not widely known that the majority of new businesses joining Stripe last year came from outside the United States. Back home, 85 European companies passed the milestone of a $1 billion valuation in 2021, registering a unicorn growth rate that’s more than twice that of the US. The number of businesses on Stripe in Latin America and APAC grew 518% and 106%, respectively, over the course of the pandemic. We expect that a very large fraction of the important tech companies of the next decade will be built outside of the traditional US tech hubs.

https://stripe.com/files/stripe-2021-update.pdf

Stripeの2021年度の業績発表の中に上記の内容が記載されています。

要点をまとめると、ラテンアメリカ(中南米)地域とアジアパシフィック地域のStripeの顧客数が、北米市場以上に急成長しているようです。具体的には、コロナ禍前に比べ、ラテンアメリカ地域で+518%、アジアパシフィック地域で+106%と大幅に成長をしています。

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一方で、Adyenも北米・アジアへ積極的に進出しています。

上のグラフではAdyenの地域別売上の推移を示しています。こちらを元にAdyenの地域別の状況についても解説していきましょう。

Adyenはオランダ発の企業であることもあり、元々EMEA(ヨーロッパ、アフリカ)地域(グラフ青色)が最大のセグメントでしたが、2021年のセグメント別売上は北アメリカ(同赤色)が$3,190M(約3,190億円)と最大になっています。

2021年の成長率で比較すると、北米YoY+91.9%、EMEAがYoY+43.8%、アジアがYoY+65.4%となっており、グローバル展開がより進んでいることがわかります。

Stripe、Adyenともに互いのシェア最大の地域への進出を強化しており、今後ますます競争が激化していくと考えられます。


まとめ

今回は、決済インフラの大手であるStirpeとAdyenの事業内容や業績を比較し、決済インフラ業界の勢力図について分析していきました。
ポイントをまとめます。

・主要顧客
Stripe:Amazon、Google、Meta、Shopifyなど
Adyen:Uber、Alibaba、Microsoft、Ebayなど

・業績
売上、GPV共にStripeがAdyenを上回っている
地域別売上では、Stripeは中南米とアジア、Adyenは北米とアジアでの事業を拡大しており、両社グローバルに事業を拡大中

・従業員一人あたりの売上
大手企業獲得戦略により、AdyenがStripeを上回っている

決済インフラ業界はコロナ禍が追い風となった業界の1つであると思いますが、その中でも成長率に明暗が分かれていることがわかりました。

コロナウイルスの感染拡大が世界的に収まりを見せる中で、StripeとAdyenは今後も業績を伸ばしていけるのか、引き続き注目していきたいと思います。

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