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Q. 急成長メディア企業8社の分析から分かる、3つの成長ドライバーとは?

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A. 3つの成長ドライバー
・DX化による既存サービスの売上拡大(メドピア、エムスリー、カラダノート、ZUU)
・収益形態の多様化(ミンカブ・ジ・インフォノイド、エネチェンジ)
・新規事業の収益化(ロコガイド、うるる)

この記事はゆべしさんとの共同制作です。

多くの業界や産業に影響を与えているコロナウイルスですが、メディア企業には引き続き、どのような影響を及ぼしているのでしょうか。

メディア企業のビジネスモデルは、広告を中心に、提携企業への送客やマッチング、課金など多岐に渡ります。そのため、業種やビジネスモデルに応じてコロナウイルスの影響は大きく異なっており、中には、このコロナ禍において、過去最高売上の好調な決算を発表している企業もあります。

コロナウイルスのような大きな外部環境変化は、一般的に事業への影響が大きく、その影響を完全に回避することが難しい中で、急成長しているメディア企業はどのように外部環境変化に対応しているのでしょうか。

今回の記事では、KPIデータベースの情報を元に、メディア企業のコロナ禍の業績を俯瞰し、業界全体の傾向を掴んでいきます。さらに、業績が好調であった企業の決算説明資料を読み込んでいくことで、好調な企業の共通点について分析していきたいと思います。

この記事はメディア事業に従事する方や、コロナウイルスのような大きな外部環境変化に適切に対応する戦略に興味がある方に特におすすめとなっています。

『KPIデータベース』は、日米のネット企業の業績・各種KPIをまとめて提供しているサービスです。法人向けのサービスとなりますが、興味のある方は、以下の記事をご覧ください。

メディア系企業の売上成長率比較

まずは、業績推移を見ていきます。

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上図は、2018年1-3月〜2021年1-3月までの四半期毎に、売上の前年同期比を表しており、2021年1-3月の前年同期比で降順に並べています。

コロナウイルスによる影響は、2020年1-3月以降(特に2020年4-6月以降)に色濃く出ており、2021年1-3月にかけて、3期または4期連続で売上成長率がマイナスとなった企業が複数あることが分かります(上図右下)。

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上図は2021年1-3月の売上の前年同期比を抜粋したものです。同じメディア企業の中でも、大きく売上を伸ばした企業と、大幅な減収となった企業に明暗が分かれています。

トラベルコ運営のオープンドアや食べログ運営のカカクコム、ぐるなびなど、コロナウイルスで強く影響を受けた旅行系や飲食系のメディア企業は、前年同期比でマイナスが続いている傾向があります。また、コロナの影響で売上成長率上位の企業の顔ぶれも一部入れ替わっています。

このように、同じメディア企業の中でも、成長率の差が生まれる要因は何なのでしょうか。コロナ禍においても特に成長著しい企業に共通する戦略や背景を探るために、売上前年同期比成長率の上位8社(2021年1-3月時点)に注目して、決算資料を読み込んでいきます。

・ロコガイド
・ENECHANGE
・うるる
・メドピア
・カラダノート
・ミンカブ・ジ・インフォノイド
・エムスリー
・ZUU

なお、2021年1-3月の売上成長率が第6位の弁護士ドットコムは、電子契約サービスである「クラウドサイン」の成長が寄与した結果であり、メディア事業の成長ではないことから、今回は対象から外して分析していきます。


DX化による既存サービスの売上拡大(メドピア、エムスリー、カラダノート、ZUU)

メドピア 2021年9月期第2四半期 決算説明資料(2021年5月13日)

エムスリー 2021年3月期 決算説明資料(2021年4月23日)

カラダノート 2021年7月期第2四半期 決算説明資料(2021年3月12日)

ZUU 2021年3月期 決算説明資料(2021年5月14日)

急成長しているメディア企業の1つ目の共通点は、「DX化による既存サービスの売上拡大」です。これは、メドピア、エムスリー、カラダノート、ZUUに見られる共通点です。順番に決算情報を見ていきましょう。

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メドピアは、医師専用コミュニティサイト「MedPeer」の運営を中核に、医師求人情報サービスなどを展開している企業です。

コロナの影響で製薬企業全体のDX化が進み、「MedPeer」のコンテンツ拡大や既存サービスの拡販、機能拡充に注力したことで、メドピアの主力事業であるドクタープラットフォーム事業の売上は13.8億円(YoY+34.2%)と、大きく成長しました。

しかしながら、一時的に広告需要の拡大があった前四半期(2020年10-12月)の全社売上が19.3億円(YoY+106%)であり、今四半期(2021年1-3月)は売上18.7億円(YoY+36.2%)だったことから、売上成長率は鈍化しているようにも見えます。

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続いて、エムスリーの決算情報を見ていきます。エムスリーは医療従事者向け専門サイト「m3.com」を中心に、国内だけでなく海外でも多様な事業展開を行うインターネット企業です。

上図は、エムスリーの2021年3月期のセグメント別連結業績の推移であり、主力事業であるメディカルプラットフォーム事業の売上は770.76億円(YoY+50.3%)、株式売却の一時的要因を除いた売上前年比はYoY+107%と、大きく成長しています。

従来は、製薬企業のMRが医療機関に直接訪問して、医師に対して医薬品の説明を行っていましたが、コロナウイルスの影響で多くの製薬企業や医療機関で、オンラインによるコミュニケーションニーズが拡大しました。

そのような中で、MRと医療機関をオンラインで結ぶ場としてエムスリーの提供するプラットフォームの利用が急増していることから、同サービスが分類されているメディカルプラットフォーム事業の売上が急成長しているわけです。

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次にカラダノートの決算情報を見ていきます。カラダノートは主に妊娠・育児領域で、家族の健康を支えるためのアプリやメディアを運営しており、生活周辺領域のDX化を推進しています。

カラダノートのビジネスモデルは、自社のアプリやメディアの会員を、保険・教育・食材宅配等の提携企業に送客することで収益をあげるというものです。

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2021年7月期2Qの売上は、保険・住宅領域への送客件数が堅調に推移したことで、全社売上は1.8億円(YoY+35%)と、大きく成長しました。

保険・教育・食材宅配等の提携企業では、これまでオフラインで行われていたリード獲得がコロナ禍で機能しなくなったことで、オンラインでリード獲得するニーズが急速に高まっています。このようなニーズに対応することで、カラダノートは提携企業のリード獲得のDX化に貢献しています。

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最後にZUUの決算情報を見ていきます。ZUUは、「ZUU Online」で知られる金融×IT領域に特化したメディア事業を中心に、法人向けのフィンテック化支援や組織コンサルティング、クラウドファンディング事業を展開しています。

前四半期(2020年10-12月期)は、フィンテックサービスの広告売上拡大と、新たにスタートしたクラウドファンディングサービスの開始により、売上は6.36億円(YoY+73.5%)という高い成長率を見せました。

今四半期(2021年1-3月期)は売上9.32億円(YoY+30.8%)と、成長率はクラウドファンディングサービスの伸び悩みから鈍化傾向にはあるものの、過去最高の四半期売上を更新しています。

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この背景には、フィンテックサービス事業の成長があります。Googleコアアルゴリズムアップデートの影響で送客売上がV字回復し、売上は5.64億円(YoY+50.7%)と、大きく成長しました。

コロナの影響で、顧客との接触機会が減っている金融機関や不動産会社に対して、ZUU運営のメディアから送客を行うことで、顧客企業の営業や販促活動のDX化に貢献しています。


収益形態の多様化(エネチェンジ、ミンカブ・ジ・インフォノイド)

エネチェンジ 2021年12月期第1四半期 決算説明資料(2021年5月14日)

ミンカブ・ジ・インフォノイド 2021年3月期 決算説明資料(2021年5月14日)

急成長メディア企業の共通点の2つ目は、「収益形態の多様化」であり、これはエネチェンジおよびミンカブ・ジ・インフォノイドに見られる共通点です。まず、エネチェンジから見ていきましょう。

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エネチェンジは電力・ガスの比較メディア「エネチェンジ」の運営を行うプラットフォーム事業を中心に、電力・ガス会社向けにSaaS型サービスを提供するデータ事業を行っています。

エネルギー事業は業界全体の制度改革が進んでおり、2016年の電力自由化から2024年までの9年間に及ぶ大変革の過渡期です。現在、プラットフォーム事業は制度改革が完了しているため売上拡大フェーズ、データ事業は先行投資フェーズとなっています。

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エネチェンジの成長背景には、電力切替需要の増加、電力・ガス切替時の提携企業からの一時報酬単価の上昇があります。これにより、主力事業であるプラットフォーム事業の売上は4.69億円(YoY+133.3%)と、大きく成長しました。

このプラットフォーム事業の売上成長は、非ストック型収益の成長によるものが大きく、今後報酬単価の低下に伴い売上が減少する可能性もあるため、基本的にはストック型収益の成長率に着目していくのが良いでしょう。

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エネチェンジの2020年12月期時点のNRR(売上継続率)は129%です。これは電力・ガス会社等の提携企業に対してクロスセルを行っているため、既存顧客からのストック収益が前年比で増加し続けていることを表しています。

エネチェンジはプラットフォーム事業における非ストック収益の増加で大きく成長しているものの、既存顧客へのクロスセルにより、プラットフォーム事業およびデータ事業共にストック型の売上は堅調に推移しており、安定的な収益を積み上げています。

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次にミンカブ・ジ・インフォノイドを見ていきます。ミンカブ・ジ・インフォノイドは資産形成情報メディア「MINKABU(みんかぶ)」等のメディアを運営するメディア事業のほか、メディア事業で培った知見をBtoBやBtoCに応用するソリューション事業を展開しています。

現在のミンカブ・ジ・インフォノイドの主力事業はソリューション事業であり、2021年3月期の売上は26.35億円(YoY+81%)と、大きく成長しています。これは、2020年1月より連結対象となったProp Tech Plusの通年寄与や、ストック収入の増加によるものです。

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メディア事業では、ユニークユーザー数や訪問数は順調に増加しており、2021年3月期の平均ユニークユーザー数は922万人です。また、「株探プレミアム」は、計画を上回る成長をしており、広告中心モデルからサブスク中心モデルへの移行を加速させています。

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また、これまで株式情報やFX情報などの投資分野に応じて個別のメディアを運営していましたが、2021年4月に統合とリブランディングを実施しました。これにより、資産形成アプリとしてのデファクトツールを目指し、個人課金を進めています。


新規事業の収益化(ロコガイド、うるる)

ロコガイド 2021年3月期 決算説明資料(2021年5月14日)

うるる 2021年3月期 決算説明資料(2021年5月14日)

急成長メディア企業の最後の共通点は、「新規事業の収益化」です。これはロコガイドとうるるに見られる共通点です。まず、ロコガイドから見ていきます。

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ロコガイドは国内最大級のチラシ・買い物情報サービス「トクバイ」を中心に、地域情報事業や投資事業を展開する企業です。

ロコガイドの2021年3月期の売上は20.23億円(YoY+42.1%)であり、2021年3月期3Qから開始した投資事業が、全社売上の成長を牽引しています。

しかしながら、この投資事業の売上はアイスタイルの株式売却による一時的な売上です。そのため、今後も投資事業は一時的なフロー売上となる可能性が高いと思われます。

引用:第三者割当により割り当てられた株式の譲渡に関するお知らせ

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最後にうるるを見ていきます。うるるは官公庁等の入札情報速報サービス「NJSS」の運営を中心としたCGS事業のほか、BPO事業やクラウドソーシング事業を展開する会社です。

うるるの2021年3月期4Qの全社売上は9.66億円(YoY+39.6%)と、過去最高業績を達成しました。

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この成長の背景には、「NJSS」等を中心としたSaaS売上の成長が大きく、特に2019年2月からリリースした電話受付の代行サービス「fondesk」の収益化が進み、2021年3月期4Qでは売上0.87億円(YoY+314.3%)と、急成長しています。

これは、コロナウイルスの影響によるテレワーク業務の浸透で、電話代行業務を委託するニーズが拡大したことによるもので、朝日新聞への広告出稿などの積極的な広告投資を行っています。


まとめ

今回の記事では、コロナ禍でも高い売上成長率を誇っている企業の共通点を見てきました。その共通点は以下の3つです。

・DX化による既存サービスの売上拡大(メドピア、エムスリー、カラダノート、ZUU)
・収益形態の多様化(エネチェンジ、ミンカブ・ジ・インフォノイド)
・新規事業の収益化(ロコガイド、うるる)

1つ目の共通点である「DX化による既存サービスの売上拡大」は、DXという、コロナウイルスによる追い風を受けている領域に関わることで、外部環境変化のプラスの影響を上手くに取り入れた共通点と言えるでしょう。

2つ目と3つ目の共通点である「収益形態の多様化」「新規事業の収益化」は、ビジネスモデルの多角化によって業績の安定性が高められるため、コロナウイルスのような外部環境変化にも対応しやすくなる戦術だと言えるでしょう。

このような大きな外部環境変化は、一般的に業績に与えるインパクトが大きく、予知することは難しいため完全に回避することができない中で、今回の記事で分析をしてきた急成長を続けるメディア企業の共通点は、良い参考になるでしょう。

いまだコロナウイルスの影響が続いている状況ですが、本日見てきた急成長メディア企業8社の今後の業績や、新しく上位にランクインする企業の戦略など、外部環境変化に適切に対応している企業の共通点や戦略について、今後も引き続き、確認していきたいと思います。


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