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Q. コロナ禍でも大幅成長を見せたメディア企業7社に見られる3つの特徴とは?

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A. コロナ禍において急成長するメディア企業に見られた特徴は、以下の3点
・オフラインからのリプレイス(メドピア、カラダノート、オークファン、エムスリー)
・収益形態の多様化(ZUU)
・メディアを活かしたBtoB事業への展開(エネチェンジ、ミンカブ)

新型コロナウイルスは、メディア事業にどのような影響を及ぼしたのでしょうか?

一般的に思い浮かべるのは、「広告主の広告出稿予算縮小により減収」イメージでしょう。実際に、GoogleやFacebookの広告事業が、20〜30%の減収となる四半期もありました。

一方、このような厳しい状況下において、好調な決算を発表しているメディア企業もあります。

今回の記事では、KPIデータベースの情報を元に、メディア系企業のコロナ禍の業績を俯瞰し、業界全体の傾向を掴んでいきます。さらに、業績が好調であった企業の決算説明資料を読み込んでいくことで、好調企業の共通点について分析していきたいと思います。

『KPIデータベース』は、日米のネット企業の業績・各種KPIをまとめて提供しているサービスです。法人向けのサービスとなりますが、興味のある方は、以下の記事をご覧ください。


メディア系企業の売上成長率比較

まずは、全体を俯瞰してみましょう。

下図は、2017年7-9月〜2020年7-9月までの四半期毎の「売上高前年同期比成長率」を表しています。2020年7-9月の売上高前年同期比成長率の数値で降順に並べています。

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2020年1-3月以降(特に4-6月以降)は、コロナによる影響を受けている決算です。少し細かくて分かりにくいかもしれませんが、右下の方を見ると、コロナ禍で前年同期比成長率が大きくマイナスに振れている企業も増えています。

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直近の2020年7-9月の数字を抜粋すると、上図のようになります。

同じメディア企業の中でも、大きく売上を伸ばした企業と大幅な減収となった企業に明暗が分かれています。

このような違いは何によってもたらされているのでしょうか?旅行系や飲食系のメディアを運営している企業の業績が悪化するのは一目瞭然ですが、一方で高成長企業の要因は深掘っていく価値がありそうです。

そこで、以降では、売上高前年同期比成長率の上位7社である下記の企業を対象として、決算説明資料を読み込んでいきます。

メドピア
ZUU
ミンカブ・ジ・インフォノイド
カラダノート
オークファン
ENECHANGE
エムスリー

第8位の弁護士ドットコムについては、メディア事業とは別軸となる電子契約SaaSの「クラウドサイン」の成長が寄与した結果であるため、今回の対象からは外しました。


MRによる営業からオンラインでのアプローチへ(メドピア・エムスリー)

まずはメドピアとエムスリーです。メドピアとエムスリーは事業領域が類似しているため、合わせて見ていきます。

メドピア株式会社 2020年9月期 決算説明資料

エムスリー株式会社 2020年度第2四半期 会社説明資料

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メドピアには、ドクタープラットフォーム事業とヘルスケアソリューション事業がありますが、ドクタープラットフォームが収益の大半を占めており、かつ高い成長率を誇っています。

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四半期ベースで見ると、ドクタープラットフォーム事業の売上高は、YoYで2.2倍と急速に成長しています。

メドピアのドクタープラットフォーム事業では、「薬剤評価掲示板」等のコンテンツを提供することで約12万人に及ぶ医師ネットワークを構築し、そのデータベースを製薬企業のマーケティングとして活用しています。

「製薬企業の需要が拡大傾向が継続」とありますが、この理由は、これまでMR(製薬企業の営業)により医師向けに医薬品を販売していたところ、コロナで対面営業が難しくなった結果、オンラインでの販売の重要性が増してきているためです。

これに関連して、エムスリーの決算説明資料も見てみましょう。

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新型コロナウイルスに対する院内対応として、「製薬企業のMRの訪問自粛要請」を80%以上の病院が行っているようです。

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これにより、エムスリーの製薬企業のマーケティング支援の受注金額は、前年比で2.5倍以上に伸びています。

「製薬会社のDX」という言葉もありますが、「対面営業からオンライン営業へ」という流れが一気に加速したと言えるでしょう。


メディアからの多用な収益手法を展開しているZUU

続いて、ビジネスマン向け金融系メディア『ZUU online』を提供するZUUについて見てきましょう。

株式会社ZUU 2021年3月期第2四半期 決算説明資料

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ZUUの特徴は、こちらのスライドに集約されています。

「ZUU online」や「NET MONEY」などのメディア(プラットフォーム)でユーザーを集め、そのID・データ基盤を元に、「トランザクション」と記載のある各種サービスにユーザーを送客することで、収益化に成功しています。

メディアの収益化手法としては、金融機関からのアフィリエイト(証券口座開設、クレジットカード発行等による一定の報酬を受け取る形態)が主に行われていますが、ZUUの場合には、それだけに留まらず、多様な収益チャネルを持っていることが特徴的です。

例えば、株式投資型クラウドファンディングの「Unicorn」、融資型クラウドファンディングの「COOL」、M&A・事業承継領域で日本M&Aセンターとの合弁事業である「ZUUM-A」などが挙げられます。

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このように収益チャネルを拡充することによって、会員数は微増に留まっているの対して、メディア訪問者数と売上は大きく成長しています。これらより、メディアの有料会員フィー以外の収益化がうまく行っていることが見て取れるでしょう。


メディア事業からBtoBへの展開(ミンカブ・ジ・インフォノイド、エネチェンジ)

続いて、「ミンカブ・ジ・インフォノイド」と「エネチェンジ」の2社について見ていきましょう。

両社は、BtoCのメディア事業を祖業とし、そのアセットを元にBtoBの事業を成功させている特徴があります。

ミンカブ・ジ・インフォノイドは、株式投資をしている人にはお馴染みの「みんかぶ」の運営元ですが、実はB向けソリューション事業が大きく伸びており、売上の比率としても大きくなっています。

ミンカブ・ジ・インフォノイド 2021年3月期 第3四半期 決算説明会資料

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2021年3月期Q3の売上を見ると、メディア事業がYoY+4.5%で9.8億円、ソリューション事業はYoY+127%で17.8億円となっています。

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ソリューション事業の売上比率が高まったことによって、サブスクの売上比率は50%超まで上昇しており、かなり安定性の高いビジネスモデルに移行してきていることが分かります。

エネチェンジについても同様です。別のnoteに詳しい分析は載せているので詳細は割愛しますが、電力比較メディアで得たコネクションやデータを元に、エネルギー企業向けにSaaSを提供することで安定的な収益を創出しています。

このように、メディア事業から入り、B向けのサービス展開で収益の幅を広げていくというのは、1つの事業展開のパターンと言えるでしょう。


リアルイベントのDX化を可能にしたカラダノート

続いて、昨年上場したカラダノートについて見ていきましょう。

カラダノートは、「妊娠〜1歳未満の子を持つ親」を対象に複数のアプリを提供しており、そのデータベースを保険・教育・食材宅配等の提携先企業に提供することで、収益を上げています。

カラダノート 2021年7⽉期第1四半期 決算説明資料

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カラダノートがコロナ禍で成長している理由は、「⼤型商業施設のリアルイベントをDX化したビジネスモデル」という表現に集約されています。

つまり、これまでオフラインで行われていたリード獲得がコロナ禍で機能しなくなり、その結果オンラインでアプローチできる手法のニーズが急速に高まったということです。

この傾向はコロナの収束までは続くと思いますし、収束後についても、「実はリアルイベントよりもオンラインの方が効率が良い」という数字が出てくると、カラダノートのビジネスは継続的に成長していくことになるでしょう。


ECトレンドで成長のオークファン

最後に、オークファンについて見ていきましょう。

オークファンと言うと、「各EC・オークションの価格相場を調べるサイト」という認識の方も多いと思いますが、実はそれだけではなく、「商流」を支援するサービスも展開しています。

2020年9月期(第14期) 第3四半期決算 補足説明資料

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具体的には、廃棄が迫っている商品を安価に消費者に届けるプラットフォーム「Otameshi」や、国内最大級のBtoB卸売プラットフォーム「NETSEA」、個人の副業による物販を支援する「good sellers」等を行っています。

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業績を見ると、価格相場チェックの「在庫価値ソリューション」よりも、Otameshi等の「商品流通プラットフォーム事業」が大きく成長しています。

FY20 Q3の売上前年同期比
・在庫価値ソリューション:YoY-20%(▲9,000万円)
・商品流通プラットフォーム:YoY+140%(+3億5,000万円)

オークファンでは、在庫価値ソリューションで得たデータや知見を元に、18年度頃より「商品流通プラットフォーム」に特に注力すると掲げていましたが、その結果として、ECの需要拡大トレンドの恩恵を預かることができました。


まとめ

今回の記事では、国内メディア企業の売上高成長率を概観し、成長率が上位の企業について深堀りしました。

各社の成長要因をまとめると、次のようになります。

・オフラインからのリプレイス(メドピア、カラダノート、オークファン、エムスリー)
・収益形態の多様化(ZUU)
・メディアを活かしたBtoB事業への展開(エネチェンジ、ミンカブ・ジ・インフォノイド、オークファン)

「オフラインからのリプレイス」は、まさにコロナ禍ならではの分かりやすい共通項でした。オフラインでの活動ができなくなる分、オンラインでその代替となるマーケティングやリード獲得等へのニーズが高まります。

2つ目と3つ目の「収益形態の多様化」と「メディアを活かしたBtoB事業への展開」については、コロナ禍に関わらず、ビジネスモデルの多角化により収益の安定性を上げることができています。

このように、一口に「メディアビジネス」と言っても、メディアというプラットフォームを軸に、様々な事業展開が考えられます。「メディア」をオンライン領域の入り口として、今後各社がどのようなビジネスを展開していくのか、引き続き注目していきましょう。

また、今回のように、1社のみを分析するのではなく、複数社を横軸で深堀りしていくことで、各社の共通項を見つけることができ、学びが深まります。是非皆さんもご自身で企業の決算を見ていく際に、実践してみてください。


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