Q. ドコモの完全子会社化が完了したNTT。明らかになったNTTの5G戦略とは?
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Q. ドコモの完全子会社化が完了したNTT。明らかになったNTTの5G戦略とは?

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A. 5Gの2つの特性を活かしたC向けとB向けの両張りで競争優位性を構築する戦略
・戦略その1: コンシューマー向け携帯回線はARPUを下げてでも純増を続ける
・戦略その2: グループ企業の再編を通して、B向け5G携帯回線にフォーカスする

2020年末にNTTドコモを完全子会社化するという発表をしてTOBが成立したNTTグループが、初めて決算を発表しました。

今日の記事では、ドコモの完全子会社の狙いを改めておさらいするとともに、今後どのようにNTTグループが競争戦略を実行しようとしているのか、発表から読み解いていきたいと思います。

日本電信電話株式会社 2020年度 第3四半期決算について

NTTドコモ 2020年度 第3四半期決算について

⽇本電信電話株式会社 会社説明会 2020年12⽉


NTTグループの決算概要

初めに、改めてNTTグループの2020年10月から12月期の決算をおさらいしておきましょう。

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2020年4-12月の9ヶ月間で、営業収益は8.7兆円でYoY▲1.4%、営業利益は1.5兆円でYoY+3.6%となっています。

連結の決算書を見ると、これまでの NTTグループの決算と大きく変わっていないようにも見えますが、もう少し詳しく内訳を見ていきましょう。


NTTのグループのセグメントのおさらい

NTTグループのセグメントをおさらいしておきましょう。

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NTT グループの体制は、この図にあるように一番上から、

・移動通信事業
・地域通信事業
・長距離・国際通信事業
・データ通信事業

という風に分かれています。

この図では NTTドコモの議決権比率が66.2%となっていますが、TOBが完了したのでドコモが100%になったという点が大きな変更点です。少し古い数値ではありますが、売上・営業利益共に移動通信事業が稼ぎ頭になっていることが読み取れるのではないかと思います。

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今回の決算における、NTTグループ全体としての営業収益と営業利益の比較を見てみると、営業収益に関しては長距離・国際通信事業で大きな減少が目立つ一方で、営業利益に関しては移動通信事業と長距離・国際通信事業、そしてデータ通信事業で大きく増加しています。

では、この度TOBが完了した移動通信事業であるNTTドコモの決算もおさらいしておきましょう。


NTTドコモの「最後」の決算から読み解く同社のこれまでの戦略

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NTTドコモの決算資料の最初にこのスライドが出ていましたが、2020年の12月25日をもってNTTドコモは上場廃止となりました。

今回公開されている決算資料はいつもに比べると簡素なものですが、決算の概要と主要なKPI が開示されていました。

今後もNTTドコモが単体でこのような決算やKPIを公開していくかどうかはまだ分かりませんが、消費者的には是非データを開示し続けて欲しいと思います。

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今回発表された最後のドコモの決算ですが、2020年の4月から12月の9ヶ月間の累計で、営業収益が3.5兆円、営業利益が8,218億円と、これまで通り安定して高収益な体制が維持されていると言えるでしょう。

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内訳を見てみると、通信事業が▲707億円と減少しており、その分スマートライフ領域で752億円分営業収益が増えているという形になっています。

これまでの NTTドコモの過去数年間の取り組みを見ていると、通信事業における成長ということ自体、競争激化に伴ってだんだん困難になってきている環境の中で、スマートライフ領域と呼ばれるサービス売上に注力をして、通信事業の売上減少を補う形で全体の営業収益や営業利益を維持してきた、というのがこれまでのドコモの戦略だったと言えるのではないでしょうか。


最新のNTTグループ決算から読み解く今後の5G戦略

では、今回 NTTグループがドコモの完全子会社化をするという発表の中で、これまでの固定回線を中心とした体制ではなく、移動通信事業をNTTグループ全体の本丸に据える、という意図が垣間見れたわけですが、実際にNTTグループ全体として、ドコモを中心に添えてどのような戦略を構築していくのでしょうか。

まだ全ての詳細が明らかにされたわけではありませんが、今回の決算発表の中からNTTグループの移動通信事業、そして5Gを中心とした今後の戦略が一部読み取れますので、少し詳しく書いていこうと思います。


戦略その1: コンシューマー向け携帯回線はARPUを下げてでも純増を続ける

移動通信事業の中での一つ目の戦略は、ahamoのリリースだと言えるでしょう。

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これまでの分かり難かった料金体系から、ひとつの非常にシンプルな、そして月2,980円という低価格なプランを切り出して、オンラインのみで申し込み受付やカスタマーサポートの提供を行うというプランを発表しました。

楽天モバイルが新規参入し低価格化が進むことが予想される中で、3大キャリアの中で最も最初にこのようなシンプルな料金プランを提供したのはドコモでした。

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実際にドコモのARPUを見てみると、モバイル事業のARPUは年々減少を続けてきており、楽天モバイルの新規参入があったことを考えるとこのトレンドは逆らい難いということは間違いないと言えるのではないでしょうか。

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今回の決算発表の中の質疑応答の中では、ahamoは既に申し込み数が100万人を超えているという発表がありました。

3大キャリアの中で先駆けて手を打ったドコモとしては、スタート時点で他のキャリアに一歩差をつけることができたという事ではないでしょうか。

まとめると、コンシューマー向けの携帯電話回線はARPUが下がり続けることは逆らえないトレンドだと理解した上で、いかに純増数を大きくしていくかということをフォーカスしていると言えるのではないでしょうか。

実際には、5Gが普及してくると、ahamoを利用しているユーザーでも月間のデータ使用量が20GBを超えてくる人もいるかと思います。そうなると2,980円以上のARPUを獲得できることにもなりますので、5Gのインフラ構築が完全に終わるまでは、一時的なARPUの減少は仕方ないと諦めて、それよりも契約回線数の維持、そして増加に努めるという戦略だということが、はっきりと読み取れます。


戦略その2: グループ企業の再編を通して、B向け5G携帯回線にフォーカスする

5G戦略の二つ目は、BtoBの営業力強化だと言えます。

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こちらはドコモの完全子会社化発表の際に利用されたスライドの一部ですが、ドコモを完全子会社化することで取り組む内容の一つ目に、法人営業力の強化というのが挙げられています。

具体的には、5Gの一つの特徴である低遅延という点がIoTと非常に相性が良いので、これまでNTTグループは法人向けに提供しているクラウド型のサービスや、システムインテグレーションなどのサービスと連動することで、法人向けと、IoT用の携帯回線の販売というのが、これから大きくなると見ていると考えて間違い無いのではないでしょうか。

「IoT向けの携帯回線」というのは想像しにくい方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば皆さんが持っている自動車や家電などが全てインターネットに繋がるようになる、という世界を考えてみてください。

それぞれのデバイスがインターネットにつながるためには、それぞれのデバイスにSIMカードが入っている必要があるわけです。

それらのSIMカードがどのくらいの量必要になるかというのを考えて頂くと、このビジネスのスケールの大きさが御理解頂けるのではないかと思います。(単純に考えても、世の中にある自動車や家電のなどのデバイスの台数を出せば、人間の数より多いことは明らかなのではないかと思います。)

今回の決算の質疑応答の中で、この点に関してかなり踏み込んだ発言がありました。

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2021年の夏頃を目処に、NTT コミュニケーションズとNTTコムウェアを、 NTTドコモの子会社にするというものです。

法人営業に強いこの2社をドコモの子会社にすることで、クラウド型のサービスや、システムインテグレーションのサービスと一緒に、 BtoB向けの携帯回線の販売を強化していくことができるというのが、NTTグループが描いている戦略なのではないでしょうか。


まとめ

今回のNTTグループの決算発表からは、二つの大きな5G関連の戦略が読み取れます。これらの二つの戦略は、5Gの二つの特徴である「大容量」と「低遅延」という特性をうまくレバレッジした戦略だと、個人的には感じました。

一つ目は、コンシューマ向けの戦略として、ARPUの下落のトレンドは止めようがないので、今は回線数の維持増加にフォーカスして、5Gが普及した後に、大容量という特徴を生かしてより多くのデータ利用を促し、ARPUを上げていく戦略なのではないかと思います。

二つ目の戦略は、グループ内企業の再編を通じて、B向けの携帯回線販売を強化していくというものだと読み取れます。こちらは5Gの低遅延という特性がIoTと非常に相性が良いので、そういったサービスを売りやすくするために、法人営業が強いグループ会社をドコモの子会社にするという方向で動いているとの発表がありました。

最後にNTTグループの IR資料の中で、一つ面白いスライドを見つけたので、紹介しておきます。

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こちらのスライドは、NTT グループの事業構造の転換を表しています。1985年においては営業収入が5.1兆円で、音声が83%を占めていました。

2000年頃になると営業収益が倍増し、10.8兆円になったわけですが、それでもまだ音声が67%を占めていました。携帯電話が多くの人に行き渡ったのが、このタイミングなのではないでしょうか。

その後、18年経った現在を見てみると、音声売上は全体の17%に止まっており、緑の部分の IPデータが30%、システムインテグレーションは31%という風に、事業構造は大きく変わっていることが読み取れます。

今回のNTTドコモの完全子会社化というのは、これから5年10年の事業構造を大きく転換していくための最初の打ち手とも言えるのではないでしょうか。

上でも書きましたが、オレンジ部分のシステムインテグレーションと緑の通信部分を5Gというキーワードを中心に連携させていく、そしてIoT向けの5G関連サービスを大量に販売していくというのが、今後のNTTグループの最大の成長戦略なのではないかと個人的には思いました。

現在を中期的な事業構造の転換期と据え、大きな戦略を2つも打ち出したNTTグループの今後に、注目していきたいと思います。

記事提供「日興フロッギー」


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