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Netflix、Prime Video、国内主要テレビ局で、視聴者1人当たりの制作費が最も少ないのは?

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A. 視聴者1人当たりの制作費が最も少ないのは、AmazonのPrime Video(以下、Prime Video)。
Prime Videoは、日本のテレビ制作費合計の約2倍の制作費を掛けていますが、視聴者数が多いので、1人当たり制作費は最も低い結果となりました。

この記事はhikoさん(企画・リサーチ担当)とmasmさん(ライティング担当)との共同制作です。

「テレビ離れ」が話題になって久しくなっていますが、今回の記事では、そのテレビ業界と動画配信サービスを比較していきたいと思います。

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上のグラフは、総務省が公表している主なメディアの1日の平均利用時間です。
テレビ視聴(棒グラフ:赤)のデータを見ると、2020年はコロナ禍の影響で視聴率が若干は回復してますが、全年代の平均で見ても減少傾向で、特に10代~20代は5年間で約20%も視聴率が減少してます。

一方でネット利用時間(棒グラフ:青)は大幅に増え続け、全年代で見ると5年間で+69%も増加しています。
2020年にはネット利用時間が全年代平均で168分となり、テレビ視聴時間(163分)を初めて上回りました。

令和3年版情報通信白書(総務省)

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ネット利用時間には、動画配信サービスの利用時間も多分に含まれていると推察されます。
上のグラフは、インプレス総合研究所が発表した「有料動画配信サービスの利用率の推移」で、2021年には30%以上の人が動画配信サービスを利用した経験があるという調査結果が出ています。

動画配信ビジネス調査報告書2021(インプレス総合研究所)

このような傾向の裏側には、Netflix、Prime Videoなど、グローバル巨大企業が巨額の制作費を投じて、質の高いコンテンツを提供していることが一因になっていると考えられます。

例えば、Netflixの「ストレンジャー・シングス」や「梨泰院クラス」、Amazon Primeのバチェラーシリーズ等は、日本でも話題になっているでしょう。

では、実際にテレビ局と動画配信大手とでは、制作費にどの程度の差があるのでしょうか?
また、その巨額な制作費投資は、どのくらい効率的なのでしょうか?

実際の数字を元に、横軸で比較しながら見ていきましょう。

この記事では、1ドル=100円($1 = 100円)として、日本円も併せて記載しています。


制作費の比較

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まず、民放キー局5社(日本テレビ、TBS、テレビ朝日、テレビ東京、フジテレビ)、NHKと、グローバルに展開している動画配信サービスのPrime Video、Netflixとの年間の制作費を比較していきます。

※民放キー局5社とNHKの会社名と参照した決算年度は以下の通り。

NHK:日本放送協会(2021年3月期)
日本テレビ:日本テレビホールディングス株式会社(2022年3月期)
TBS:株式会社TBSホールディングス(2022年3月期)
テレビ朝日:株式会社テレビ朝日ホールディングス(2022年3月期)
テレビ東京:株式会社テレビ東京ホールディングス(2022年3月期)
フジテレビ:株式会社フジ・メディア・ホールディングス(2022年3月期)

1年当たりにかける制作費はNetflixが$17.3B(約1.73兆円)と圧倒的に多く、Prime Videoが$13B(約1.3兆円)と続いています。

国内ではNHKが約3,111億円でトップとなっており、2番目に多いTBSの961億円の3倍以上の制作費をかけています。

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年間の制作費をNetflixと国内テレビ各社の合計で比較すると、Netflixの約1.73兆円に対して、国内民放5社とNHKを合わせても6,732億円にしかならず、2.5倍もの差があります。
Netflixの制作費がいかに圧倒的な規模を誇っているかがわかります。


動画配信サービスの市場シェア

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動画配信サービス市場の成長についても見ていきましょう。

上のグラフは、GEM Partnersが調査した定額動画配信サービス別の市場シェアの推移です。Netflixの占めるシェアが最大であり、2021年は前年と比較して+3%以上シェアを拡大しています。
同じくDisney+はシェアを拡大していますが、その他のサービスは激しい競争が繰り広げられいます。

競争は激しいですが、国内定額動画配信サービス市場全体は2021年に3,862億円となり、YoY+19.8%もの成長をしています。このような市場の背景から、今後もグローバル、国内の各社への制作費に対する投資は伸びていくと考えられるでしょう。
そうなると、国内のテレビCMの広告投資の資金が、ネットCM等に移行する流れが加速すると推察されます。


視聴者1人当たりの制作費の比較

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続いて、視聴者1人当たりの制作費を分析していきます。
まず、視聴者数の比較を見ていきましょう。

NetflixとPrime Videoは会員数を用いて、国内各社は、「日本人口(1.258億人)× FY2021平均視聴率」から算出しています。
※Prime Videoの視聴者数は、Amazon Primeの会員と同数と仮定

Netflixは現在世界190以上の国で視聴可能で、2022年3月末時点で会員数が約2.2億人、Prime Video(Amazon Prime)の会員数は2021年3月末時点で2億人となっており、日本のテレビ局の推定視聴者数(176万人〜855万人)と2桁もの差があります。

国内で最も視聴者数が多いのが855万人のNHKですが、Netflixとは26倍もの差があります。

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1視聴者当たりの年間制作費は、国内各社は「年間制作費 ÷ 視聴者数」、NetflixとPrime Videoは「年間制作費÷会員数」で算出しています。

Netflixの年間制作費は1.73兆円と膨大ですが、会員数も2.2億人とかなり多いため、1ユーザーに対する制作費は9,384円と日本のテレビ局よりも効率が良い結果となっています。

日本のテレビ局で最も効率が良いのがテレビ朝日の1視聴者当たり15,729円で、Netflixよりも1視聴者当たりで約1.7倍の制作コストがかかっています。

最も制作効率が良いのはPrime Videoで、1ユーザー(Prime会員)当たり6,500円となっています。


広告費・制作費の変化

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最後に、広告費、制作費の変化を時系列で見ていきましょう。

上のグラフは冒頭でもご紹介した主なメディアの平均利用時間です。このグラフから分かるように、テレビの視聴時間が減少し、ネットや動画サービスを利用する人、時間が増えています。

このような可処分時間の使い方の変化が、広告費、制作費に大きな変化を与えています。

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電通が毎年公表しているメディアごとの広告市場の推移を見てみると、テレビ広告市場は2021年で1.84兆円、2016年から6%(1,264億円)減少しています。

一方、インターネット広告市場は右肩上がりに成長しており、2019年にテレビを追い抜き、2021年は2.71兆円、YoY+21%も成長しています。2016年の1.31兆円から5年間で倍以上の市場規模に成長しています。

日本の広告費(電通)
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2022/0224-010496.html(2019~2021)
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2019/0228-009767.html(2018)
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2018/0222-009476.html(2017)
https://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017027-0223.pdf(2016)

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テレビ広告市場の縮小に伴い、テレビCMを主な収入源とするテレビ局の制作費は大きく変化しています。

10年前の制作費と比較すると、フジテレビが▲30%以上と最も大きくコストカットしており、日本テレビが▲11%、テレビ朝日が▲4%と続いています。

広告収入がテレビCMからネットCMに流れていることが、制作費に影響を与えていると推測できるでしょう。


まとめ

今回は、動画配信サービスのNetflix、Prime Videoと、NHKなどの国内主要テレビ局の制作費を比較し、最も視聴者1人当たりの制作費が低い企業はどこなのか分析していきました。

ポイントをまとめます。

・視聴者がテレビからネット(動画)に流れ、広告費も比例してネット媒体に流れている
・制作コスト自体は動画配信サービスのNetflixやPrime Videoが圧倒的に大きい
・ただし、会員数も桁違いに大きいため、視聴者1人当たりの制作費は動画配信サービスの方が少ない
・中でもPrime Videoが視聴者1人当たりの制作費が最も少く、NHKの約5分の1

単純に制作費で比較すると、NetflixやPrime Videoが潤沢な資本を大量に制作費につぎ込んでいるように見えますが、「視聴者1人当たり」という要素を加えることで、巨額の制作費に見合った視聴者を確保していることがわかりました。

今後も動画配信サービスを含めたネット広告市場は拡大していくと思われますが、国内テレビ各局はどのようにこの状況を打開していくのか、注目していきたいと思います。

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