【web3マガジン】Q. web3がアメリカでこんなにも盛り上がっている理由とは?日本のweb3の最大の足かせとは?
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A. アメリカは暗号資産を成長産業にするという明確な意志が垣間見れる。日本のweb3に関しては税制が最大のネックとなっている。
今回の記事では、web3の事例紹介からは離れて、
・なぜアメリカでweb3が大きく盛り上がっているのか
・日本でweb3関連の産業が発展するには何が必要なのか
という点について、個人的な見解を述べていきます。
アメリカでweb3が盛り上がっている背景
これまでwebマガジンを読んでくださっている方は、アメリカを中心にweb3が大きく盛り上がっていることが良く分かると思いますが、一体なぜそのようなことになっているのでしょうか。
An Engineer's Hype-Free Observations on Web3 (and its Possibilities)
その背景として、いくつかシグナルが発生しています。
1つ目として、資産としての暗号資産(Crypto)への投資で見ると、機関投資家からの投資が大幅に増えています。
機関投資家のお金が入るということは、投資商品として「まとも」だとプロがみなしていることを意味しており、そうでなければ、今よりも厳しい規制が入っているはずです。
2つ目に、web3関連のスタートアップへの投資実績で見ても、大手のVC(ベンチャーキャピタル)が急に、派手に惜しみなく投資を始めました。
目利きのあるシリコンバレーのVCも含めて、これだけ多くの投資が入っているということは、成長産業になる(を作る)という確信があるからに他なりません。
3つ目に、GAFAのエグゼクティブたちの多くが退職し、web3関連のスタートアップを創業し始めています。
「まっとうな」キャリアを歩んできた人たちが、web3関連のスタートアップに移り始めたこともポジティブなシグナルといえるでしょう。
どの程度の資金が暗号資産に流れているのか?
では、実際に、どの程度の資金が暗号資産に流れているのでしょうか。
How Much Money is Flowing into Crypto?
イーサリアムベースのステーブルコイン(※)の合計発行金額を見ると、2022年の2月時点で$114Billion(約11兆円)もの金額に達しています。
このグラフは2020年からの推移を表していますが、2021年の1年間で、3倍から4倍に大きく増えていることが読み取れます。
このグラフは、イーサリアムベースのステーブルコインの合計発行額の月次の成長率を表したものです。
2020年の初めには月間32%という驚異的な成長率を誇っており、直近の四半期でも月間5%という成長率になっています。毎月5%ずつ成長すると、1年間で80%成長することになります。
この成長水準はどれほどの規模感なのでしょうか。
The total US money supply, which includes physical cash, traveler’s checks, deposits, and all other forms of money has surged to about $20.5T.
米ドルのマネーサプライ(通貨供給量)は、総額で$20.5T(約2,000兆円)程度です。
If stablecoins continue their 5% monthly growth for the next 12 months, they would comprise 1% of the total US dollar money supply.
ステーブルコインが月次5%で増え続けると、1年以内に米ドルのマネーサプライの1%を占める水準になります。
米ドルのマネーサプライの1%に達すれば、かなりの規模感だといえるでしょう。
※本記事とは逸れますが、ステーブルコインについておさらいしたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。
アメリカ vs 中国の暗号資産に対する考え方の違い
さて、ここ1年くらいのアメリカを見ていると、誰も明言はしていませんが、(厳格に管理はしつつも)暗号資産を国の成長ドライバーとして活用していく、という方針が明確になってきているような気がします。
暗号資産がマネーロンダリングなど犯罪に利用されることは当然あってはなりません。むしろ、本人確認や納税義務などを含めてしっかり管理するという姿勢は崩すどころか強まる一方で、暗号資産そのものの存在を否定するということは無いのがアメリカです。
これと正反対なのが中国で、暗号資産に対しては否定的です。恐らく中国では、web3のような動きは難しいでしょう。
もしかしたら、政府が100%管理する通貨で似たようなことができるかもしれませんが、共産主義という考え方と非常に相性が悪い気がします。
日本の暗号資産に対する姿勢は?
では、日本はどうかというと、暗号資産に対する国としての姿勢がはっきりしていない気がします。どちらかというとネガティブで、暗号資産 = 危なっかしいもの、という印象のままのように見えます。
日本でweb3関連が盛り上がるかどうかは、他の業界に比べて、国の政策に依存する印象を個人的に持っています。
平議員は岸田文雄政権の「成長と分配」戦略の1つの柱として「Web3」を位置付けるべきだと主張。そのためには現行の暗号資産(仮想通貨)をめぐる税制に改革が必要なこと、また成長戦略としてNFTの規制の枠組みを整備していくべきだとした。
ここで議論されていることが本当に実現するのであれば、日本でもweb3の波を国としての成長戦略として取り込めるかもしれません。
日本の暗号資産・web3の最大の足かせとは?
一方で、日本の暗号資産やweb3が成長産業になっていくにあたり、大きな足かせになっている点が一つあります。
平:一番の問題は、ブロックチェーン周りの課税の問題なんです。
暗号資産のベンチャーがトークンを発行したときに、ガバナンストークン(※)という一定量のトークンを手元に持っていないとその先で主導権が握れず、色々な事業が進められない。
今日本では(トークンが)時価評価で課税される。
しかもキャッシュになってないにも関わらず課税されますから、ブロックチェーン界隈のスタートアップや技術者は日本で創業できず、シンガポールに行かざるを得ないという状況。
ものすごい勢いで優秀な人材、将来有望なスタートアップが日本から流出している。このガバナンストークンに対する課税は皆見直すべきだと思います。
それは何かというと、上記の通り、暗号資産そのものが時価評価で課税されてしまうという点です。
これは、暗号資産を保有する個人や法人からすると非常に厳しいルールです。
暗号資産の価格のボラティリティは非常に大きいので、たまたま12月31日の時点で価格が上がっていたり、下がっていただけでも、その時点での時価評価で納税義務が発生してしまいます。
暗号資産を普及させたいのであれば最適な税制とは言えないでしょう。
【参考】アメリカにおける暗号資産の税制上の考え方とは?
ちなみにアメリカでは、暗号資産は税制上はプロパティという扱いになっています。プロパティとは、不動産と同じようなものだと考えていただければと思います。
すなわち、皆さんが不動産を買って保有している限り、売却するまでの間は、当然売却益に対しての税金はかかりません。
アメリカではこのようにプロパティという既存の法律上の枠組みにマッチさせることで、厳格に管理はしつつも、必要以上に納税が煩雑にならないように配慮していると個人的には見ています。
今後日本は、暗号資産関連の税制をどのように扱っていくのかに着目していきたいと思います。
今回の記事はいかがでしたでしょうか。
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