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2,000万人のオタクのための国家・通貨を作るオタクコイン。あえてICOをしない理由とは?(前編)

シバタ: 行きます。今日は、トーキョー・オタク・モード(Tokyo Otaku Mode)の安宅さんをゲストにお迎えをしています。まず、トーキョー・オタク・モード(Tokyo Otaku Mode)は知っている方も多いと思いますが、どんなサービスなのか簡単に説明していただいてもいいですか?

安宅基さん(以下、敬称略): はい。トーキョー・オタク・モード(Tokyo Otaku Mode)の創業から事業全般手がけています安宅と申します。よろしくお願いします。

立ち上げは、平日の夜や週末に集まるサークル活動的なノリから始まっていて、一番最初に作ったのは、フェイスブック上のファンページだけだったんですよ。東日本大震災があった2週間後の2011年の3月24日にスタートしました。当時はミクシィ全盛期でアクティブユーザーが2,000万人を超えていて、フェイスブックは日本ではまだ会員が300万人くらいだった時代です。世界では5億人のアクティブユーザーがいたんですけど、そのタイミングで、日本のアニメ、漫画、ゲームの最新情報を海外に英語で配信するというメディアから始まりました。

シバタ: すごいですよね。フェイスブックがそんなにまだあるかないかわからないかの頃に始めて。しかも、フェイスブックページから始めて、今みたいに大きくなっているっていうのはすごいですよね。本当に。

安宅: 日本では実名文化は流行らないと言われていましたよね。いまはファン数が2,000万人を超えています。

シバタ: 2,000万人って、フェイスブックの中でも相当大きいんじゃないんですか?

安宅: 多分、日本人が運営している中では、一番ファン数は多いと思います。逆に、日本人のファンは1パーセントもいないこともあり、日本ではあまり知名度がないかもしれないという特殊なメディアです。最初からすべて英語で発信してきています。

(その当時のオフィスの様子。数多くのベンチャーを生み出している小澤総研の地下室にて)


2,000万人のファンページが今のTokyo Otaku Modeに至るまでの過程

(2019年1月現在のオフィス in 渋谷)

安宅: そのあと、シリコンバレーの500 Startupsにお呼ばれしてバッチプログラムに参加し、そこでシバタさんとも知り合ったんですよね。出資も受けました。フェイスブックでファンは集まったけど、フェイスブック上ではバナー広告とかは貼れないので、何か独自のビジネスモデルを作って行かないと運営成り立たないよねっていうことで、自社サイト、自社アプリとか作って、トライしていくというのが数年続きました。

シバタ: 自社サイトっていうのは、今やってらっしゃるeコマースですか?

安宅: そうです。そこで、いろいろなサービスを立ち上げました。デヴィアントアート(deviantART)的なイラスト投稿型のCGMだったり、写真画像が漫画風になるオタクカメラというものも立ち上げました。

シバタ: オタクカメラ覚えています。

安宅: 世界では500万ダウンロードくらいいっているんです。一瞬、いけるかなと思いつつ、一発アプリだったみたいな(笑)

シバタ: マネタイズが難しそうですけどね。

安宅: でしたね。そんな中、フェイスブック上のファンからすごく多かったのが、日本の秋葉原などで売っているフィギュアやぬいぐるみ、アニメ系のグッズを買いたいという声でした。だったらということで、秋葉原でひとつずつ商品を仕入れてきて実際売ってみるのを繰り返して。これがサクサク売れていき、リピーターもついてきたんですね。

そこで本格的にサイトを作っていって、しっかり越境eコマースをやっていこうと決めるんです。そうしたら、ちょうど日本のアニメ、漫画、ゲームを世界に発信する会社を支援するための官民ファンド、クールジャパンファンドができました。600億円くらいのファンドが急にできて、これはもしかして僕らのためにできたんじゃないかって(笑)

シバタ: その通りだと思いますよ。

安宅: 当時としては大型の15億円を調達することになりました。eコマースサイトの開発や倉庫を持ち、物流システムを自社で開発したりとか。営業、マーケ、商品開発、翻訳、撮影や商品開発、カスタマーサポートもすべて自前で持ち、一気通貫で行える越境eコマースの体制を整えてきました。

シバタ: すごいですね。今はこのeコマースがメインなんですか?

安宅: そうですね。売上でいうと、越境eコマースがメインで9割くらい。ほぼ海外の売上です。

シバタ: すごいですね。じゃあ今実際にその商品を仕入れて売るところまで、実際にオペレーションされているっていうことですよね?

安宅: はい。日々、千葉の舞浜や市川と、あとは北米に購入者さんが多いので、アメリカでも倉庫運用しています。

(千葉県舞浜にある倉庫・通称factoryの様子)

シバタ: すごいですね。物送るのって大変ですよね。

安宅: そうですね。僕、これまでウェブサービスを複数やってきてデジタル中心だったんですけど、気づいたらこんなことに。フィジカルな物を実際、届ける、動かすっていうのは本当に大変です。

シバタ: すごいですね。在庫も自分たちで持っているんですか?

安宅: はい。ここに映っているのはぬいぐるみが多いですけど、どちらかというと、フィギュアの売上の割合が高くて。フィギュアって実は、予約販売なんですよ。

シバタ: ははは。予約販売とはすごいですね。

(自社で商品開発したフィギュア:キズナアイ 1/7スケールフィギュア、強力なアニメIPに匹敵する販売を記録)

安宅: フィギュアの予約販売ってけっこう面白いので、細かく話しちゃうと、例えばゲームソフトって予約で受け付けるじゃないですか。1ヶ月前くらいから予約して、発売日当日にソフトと引き換えでお金を払うと思うんですけど、フィギュアって発売の9ヶ月前とかに予約で販売するんですよ。しかも、9ヶ月前の段階からお金をいただけます。

シバタ: その時点で先にもらっておくんですね。わあ、すごいな。

安宅: そうです。メーカーさんがそういう文化を作り出したと思うんですけど。フィギュアは量産するのに、先に原型や金型が必要で初期コストが高い商材なんですね。先にファンからお金をいただいて、需要予測をした上で大量生産するっていう流れです。

シバタ: クラウドファンディングみたいな感じですね。

安宅: 近いですね。なので、予約数ピッタリで発注すれば在庫はなくてもビジネスできますし、発売後も一定数売れるので在庫を積もうと思えば、予約段階で売れた数以上に持つと。そこはバランスで、発売後にどれだけ持つかみたいなところを調整しながらほぼほぼ売り切るみたいなモデルになっています。こうした越境eコマースのビジネスを5年間くらいやっています。

(自社で商品開発したフィギュア:[狼と香辛料10周年企画] ホロ ウエディングドレス ver.)
© 支倉凍砂/アスキー・メディアワークス/「狼と香辛料II」製作委員会、イラスト/文倉十


世界中2,000万人のオタクのための「仮想国家」を作るというビジョン

シバタ: それで、最近新しいブロックチェーンのサービスを出されて。オタクコイン(Otaku Coin)っていう名前ですよね。これは、どんなことを狙って始められているのか簡単にお話いただいてもいいですか。

安宅: 簡単にいうと、オタク国家内で使われるコミュニティ通貨を作りたいと思ってやっています。最初に起案したのは、トーキョー・オタク・モード(Tokyo Otaku Mode)なんですけど、オタクコインというのは、ファンや業界やコミュニティのための通貨にしていきたいので、いろんなパートナーさんや会社さんに入ってきてもらっています。

こんな感じのパートナーさんです。例えば、博報堂さんや、楽天コレクションさんとかですね。アニメ!アニメ!さんは、この業界では、一番権威があるニュースメディアです。それらの一社として、トーキョー・オタク・モード(Tokyo Otaku Mode)がいるっていう位置づけです。

ちょっと大きな話になりますけど、人間って今までは、フィジカルな体という存在があるから、国境は地域に縛られていたと思うんですけど、インターネットの時代って、全部クラウド上でつながるとしたら、そもそも「国境」の分け方が趣味嗜好で分かれてもいいんじゃないって。

日本って高齢化社会じゃないですか。なので、税金を日本政府が集めてどう使うかっていうと、どちらかというと、福祉とか介護とかそっち方面にお金を使うと思うんですけど、それがアニメ、漫画、ゲーム好きがたくさん集まる国家だとしたら、次の楽しい作品づくりに使ってほしいだったりとか、今クリエイターさんがもし低賃金とかで困っているなら、税金でそういうところをサポートしたほうがいいよねとなると思うんです。

価値観が同じ人たちで国家を作るというイメージです。価値観ごとに、クラウド上の国家ができて、そのオタク国家に流通する通貨を作れたらいいなっていう、わりと無謀で壮大な計画を立てています。

(2018年5月に秋葉原で行われた構想発表会の様子)

シバタ: これは何もない人がいうと壮大な計画ってなっちゃうと思うんですけど。御社の場合、すでにフェイスブックに2,000万人以上のファンがいて、しかも海外で、さっきのeコマースでフィギュアやグッズを購入してくれている人がかなりいるという状況で始めるとだいぶ説得力が違うというか、最初のスタートが違うと思うんですよね。

安宅: 規模的にも、ファン数で2,000万人いるので、人口でもルーマニアなどに匹敵する規模です。

シバタ: 2,000万人というのは、オタクモードのフェイスブックの。

安宅: そうです。さらに言うと、毎年発行される、「アニメ産業レポート」というアニメ業界の白書があって、そこでは日本のアニメだけでも2兆円の市場規模なんです。漫画やゲームを入れるともっと規模が増えます。

安宅: GDPや人口でいうと、オタクコミュニティは世界中で一定の規模がある。なので、ここに新しい国家ができて、ひとつのコミュニティ通貨があっても不自然じゃないっていう。

シバタ: 本当にそうですね。すごいですね。

安宅: それをブロックチェーンだったら実現できるよねっていうことなのですが、ご存じの通り、去年いろんな事件があって、そもそも仮想通貨的なものやブロックチェーンも含めて、本当に大丈夫なのとか、リスクあるんじゃないのという感じになってしまいました。

業界的にもファン的にも信用がマイナスの状態なんですよ(笑)信用がマイナスだとそもそも通貨として機能しない。そういう意味で、今何をやっているかというと、業界やファンへの啓蒙活動なんです。例えば、アニメ作品を生み出すスタジオさんってすごく歴史がある会社さんが多くて。インターネットとかITとかそこまで強い会社さんは多くないので、そういう会社さんからすると、インターネットよりさらに、さらにその奥にあるブロックチェーンや仮想通貨ってよくわからない、怖いと思われやすいんですよ。

韓国に覇権を取られてしまった液晶テレビじゃないですが、世界中で人気がある日本のソフトやハードってそんなに多くないじゃないですか。僕らは日本人なので、日本が誇るこういったソフトは大事にしたい。ここまで世界に人気のあるアニメ、漫画、ゲームを世界にもっと広げていけたらいいなと思っていて、ブロックチェーンの真価は国境を超えていく熱狂があるコミュニティでこそ発揮されると信じているんです。

インターネットが情報の移転をスムーズにするものだとしたら、ブロックチェーンは価値の移転がスムーズになるということなので、世界中で価値の移転をもっと滑らかにする、このコミュニティや業界でそういうことをやっていくためのひとつの手段がオタクコインということです。

シバタ: なるほど。面白いですね。説得力がすごくありますね。

安宅: この構想の実現に共感してくれたみんなで毎週土曜日に集まってこういう話をディスカッションしていたんです(笑)

ちなみに、国家になぞらえると、国民を募集しないと始まりません。さらに、今どきの国家の国民募集はスマホアプリでいいよね、ということで昨年末にオタクコインのスマホアプリを出しました。

最初は信用もまだまだないので、シンプルに「オタクコインあげるので国民になってもらえませんか」ということをやりまして、先着1万人で募集したのですが、初日で1万人集まってしまいました。

シバタ: コインはどのくらいあげたんですか?

安宅: 一人3,000枚です。

シバタ: 3,000枚を1万人?

安宅: はい、全体の発行枚数は1,000億枚で、今回あげたのは合計3,000万枚ですね。1万人の内訳は、国内が6割、海外4割でした。アプリ内の企画で、日々作品を作っているアニメスタジオに応援メッセージを届けようという施策を行いましたが、海外ユーザーのほうがメッセージが多くて熱量もすごかったですね。

以上が前編です。来週公開予定の後編は以下の内容が掲載されますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

・あえてICOを行わずにコミュニティ用通貨を発行
・Otaku Coinでクリエイターに富が還元できる仕組みを
・インターネットは情報の移転を滑らかに、ブロックチェーンは価値の移転を滑らかにする

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