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【新入社員の皆さんへ】Q. メディア企業(広告モデル)の主要KPIは?

【新入社員の皆さんへ】Q. メディア企業(広告モデル)の主要KPIは?

A. 広告モデルの場合、
  売上 = ユーザー数 * ARPU
で売上が決まります。

新入社員の皆様、社会人生活へようこそ。

今回から数回に分けて、これまでの復習編のような形で、新入社員であっても理解しておくべき「ビジネスの型」を書いてみたいと思います。

私が会社員だった頃によく新入社員の人に言っていたことは、このような内容です:

新入社員の皆さんは研修が終わるとビジネスの現場に配属されます。そうするとしばらくの間は、日々、目の前の仕事をこなすことが一番のプライオリティになると思います。
そのような状況では、会社全体のビジネスモデルや、自分たちの業界のトレンドなどは自分の仕事と直接関係ないように思えてしまうかもしれません。皆さんの日々の現場での仕事が「ミクロ」だとすれば、会社全体のビジネスモデルや業界トレンドというのは「マクロ」です。
もし皆さんが本当に優れたビジネスパーソンになりたいのであれば、「ミクロ」と「マクロ」の両方を理解して、それらをつなげることができるようになる必要があります。
日々の仕事は毎日忙しいと思いますが、会社全体のビジネスのことや業界トレンドのこともしっかり勉強する時間を作っていくことが、皆さんのキャリア構築に大きく貢献するはずです。

新入社員向けに書きますが、中途入社の方や人事異動でこれまでと違うビジネスの担当になった方にも、役立つ内容なのではないかと思います。

これまでも私の記事を読んでくださっている既存読者の方は、是非皆さんの会社の新入社員の方に、この記事を転送してみてください 。


メディア企業(広告モデル)の型

今回は、メディア企業の中でも、広告モデルのビジネスの型をおさらいしたいと思います。

これは私の本からの抜粋ですが、広告ビジネスで押さえておくべきKPIは、ここに書いてある三つです。

*KPI=Key Performance Indicator(主要業績評価指標)

広告ビジネスの「型」とは、つまりこの公式

売上=ユーザー数×ユーザー当たりの売上(ARPU)

がキモとなるビジネスモデルです。

広告ビジネスでは、この公式を構成するKPIが大きくなっていれば、すなわちビジネスが成長していると言えます。

決算を読むときは、このように三つのKPIに因数分解をして、それぞれの指標が

・過去と比べてどのように推移していているのか
・競合他社と比べてどのように優れているのか

というのを読み解けば、大まかな構造が分かります。

理屈は非常にシンプルなのですが、実際に決算資料を見たことないという方も多いかと思います。

そういった方のために、入門編ではありますが、実際の決算資料のどこをどのように見ているのか、というのを実例で示してみたいと思います。

今回は広告モデルのビジネスの中でも、ヤフー、LINE、Abema TVの三つのビジネスに関して、実際に最新の決算資料を用いて、簡単に解説したいと思います。


ヤフー

ヤフーは日本の中でも最も歴史があり、最も規模が大きい広告モデルを採用しているメディア企業です。

直近のヤフーの決算資料は詳細のKPIが全く開示されていないものだったので、その一つ前の四半期決算の資料を参照しながら、読み解いていきます。

ヤフー株式会社 2018年度第2四半期決算発表

初めに、一つ目のKPIであるユーザー数を見てみると、月間のログインユーザーID数は4,500万人を超えています。このKPIは、YoY+10%で成長しています。

*YoY=前年同期比

こちらはユーザー数ではありませんが、ユーザーの利用頻度や利用時間です。ログインユーザーの利用時間は、ユーザー数よりも早いペースで伸びていることが分かります。

広告関連の売上は、四半期あたり793億円まで伸びています。

一か月あたりのログインユーザー数は4,500万人で、1ヶ月あたりの広告売上が264億円になるので、1ヶ月あたりのログインユーザーあたりの広告売上は576円という計算になります。

つまりヤフーの広告ビジネスというのは、

・ログインユーザーが1ヶ月に4,500万人いて
・1ユーザーあたり月に576円ずつ広告売上が上がるので
・月間の広告売上が206億円になる

というビジネスだと言えます。


LINE

次に、LINEも見てみましょう。

LINE Corporation 2018年12月期決算説明会 プレゼンテーション資料

日本の月間アクティブユーザー数は7,900万人、YoY+7.7%、グローバルで見ると1.6億人を超えています。

さらにLINEが圧倒的にすごいのは、「DAU / MAU」という、エンゲージメントを表す指標が77%と非常に高い点です。この数字が高いということは、多くのユーザーがほぼ毎日LINEを起動して、利用しているということになります。

*DAU=デイリーアクティブユーザー数
*MAU=月間アクティブユーザー数
*「DAU/MAU比率」が例えば50%なら、平均的なユーザーは月に15日間はそのアプリを利用している事になります。

広告事業を見てみると、四半期あたり290億円の売上で、YoY+21.8%と、ユーザー数の伸びよりも圧倒的に速いスピードで成長していることがわかります。

1ヶ月あたりの売上に換算すると、96.7億円ということになりますので、仮に広告売上の全てが日本で発生していたとすると、1アクティブユーザーあたりの月間売上は122円という計算になります。

つまりLINEの広告ビジネスというのは、

・月間アクティブユーザーが1ヶ月に7,900万人いて
・1ユーザーあたり月に122円ずつ広告売上が上がるので
・月間の広告売上が96.7億円になる

というビジネスだと言えます。

ヤフーと比べると1ユーザーあたりの月間広告売上が小さく見えますが、LINEの広告ビジネスの成長率を見る限りにおいては、まだまだマネタイズの余力が残っており、1ユーザーあたりの売上が今後も上がっていくのではないかと考えるのが正しいでしょう。


Abema TV

最後に今最も注目されているメディアの一つである Abema TV も見てみましょう。

株式会社サイバーエージェント 2019年9月期第1四半期 決算説明会資料

初めにユーザー数に関連する指標として、ダウンロード数が公開されており、累計で3,700万ダウンロードになっています。ただし、ダウンロードをしてくれたからといってアクティブなユーザーになるとは限らないので、Abema TVの指標においては、週あたりのアクティブユーザー数(WAU)を公開しています。

直近の数字でWAUは790万人となっています。グラフを見れば分かる通り、右肩上がりで増えていってると言って間違いないでしょう。

サイバーエージェントのメディア事業の売上はこのように開示されていますが、ここには Abema TV以外のメディアの売上も、さらにAbema TVの課金売上も含まれているので、Abema TVの広告ビジネス部分の売上を特定するのは困難です。

今後はAbema TVの詳細なKPIが公開されてくるものと思われますが、現時点では最も注目すべき KPIはWAUだと言って良いでしょう。

以上、今回はメディア企業の中でも広告ビジネスを展開している、代表的な三社を取り上げてみました。

もっと詳細が知りたいという方は「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」をご覧ください。


新入社員の皆さん、ぜひ、社会人生活を大いに楽しんで下さい。私からのエールとして、この記事やこれから読んで頂ける記事が、皆さんの前途に役立つことを心から願っています。


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