【新入社員の皆さんへ】Q. EC企業の主要KPIは?
【新入社員の皆さんへ】Q. EC企業の主要KPIは?
A. EC企業は、
売上 = 取扱高 * テイクレート
で売上が決まります。
まず最初に用語のおさらいです。
*KPI(ケーピーアイ)=Key Performance Indicator:業績を評価するための主要な指標のことです。
*テイクレート=取扱高が100あった場合に、いくらの売上になるのかを表す割合のことです。決算書ではマネタイゼーションレート(Monetization Rate)と表記されている場合もあるので覚えておきましょう。
EC(Eコマース)の企業では、ユーザーがネット上で売り買いした金額を「取扱高」や「流通総額」、「GMS」(Gross Merchandize Sales)、「GMV」(Gross Merchandize Volume)などと記します。
大規模なECサイトを運営している企業のほとんどが自社製品以外も取り扱っているので、取扱高と売上が同じになることはありません。
取扱高のうち何パーセントを売上にできているのかを示すテイクレートは、割合が高いほど企業が運営しているECサイトに付加価値をつけられていると評価されます。
今回もこれまでの復習編のような形で、新入社員であっても理解しておくべき「ビジネスの型」を書いてみたいと思います。
前回も書きましたが、私が会社員だった頃によく新入社員の人に言っていたことはこのような内容です。
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新入社員の皆さんは研修が終わるとビジネスの現場に配属されます。そうするとしばらくの間は、日々、目の前の仕事をこなすことが一番のプライオリティになると思います。
そのような状況では、会社全体のビジネスモデルや、自分たちの業界のトレンドなどは自分の仕事と直接関係ないように思えてしまうかもしれません。
皆さんの日々の現場での仕事が「ミクロ」だとすれば、会社全体のビジネスモデルや業界トレンドというのは「マクロ」です。
もし皆さんが本当に優れたビジネスパーソンになりたいのであれば、「ミクロ」と「マクロ」の両方を理解して、それらをつなげることができるようになる必要があります。
日々の仕事は毎日忙しいと思いますが、会社全体のビジネスのことや業界トレンドのこともしっかり勉強する時間を作っていくことが、皆さんのキャリア構築に大きく貢献するはずです。
新入社員向けに書きますが、中途入社の方や人事異動でこれまでと違うビジネスの担当になった方にも役立つ内容なのではないかと思います。
これまでも私の記事を読んでくださっている既存読者の方は、是非皆さんの会社の新入社員の方にこの記事を転送してみてください。
この新入社員向けのシリーズは、有料課金の記事ではないので自由に転送していただけます。
EC企業の型
今回は、「EC企業のビジネスの型」をおさらいしたいと思います。
これは私の本からの抜粋ですが、ECビジネスで押さえておくべきKPIはここに書いてある三つになります。
決算を読むときは、このように三つのKPIに因数分解をして、それぞれの指標が
・過去と比べてどのように推移していているのか
・競合他社と比べてどのように優れているのか
というのを読み解けば、大まかな構造が分かります。
理屈は非常にシンプルなのですが、実際に決算資料を見たことがない、という方も多いかと思います。
そういった方のために、入門編ではありますが、実際の決算資料のどこをどのように見ているのか、というのを実例で示してみたいと思います。
今回はECビジネスの中でも、ヤフーショッピング、ZOZO、メルカリの3社のビジネスに関して、実際に最新の決算資料を用いて、どこをどのように読めばいいのかというのを簡単に解説したいと思います 。
ヤフーショッピング
直近のヤフーの決算資料は、詳細なKPIが全く開示されていないものだったので、一つ前の四半期の資料を参照しながら読み解いていきます。
ヤフー株式会社 2018年度第2四半期決算発表(2018年10月31日)
はじめに、一つ目のKPIである「取扱高」を見てみると、ヤフーショッピングの取扱高は四半期あたり1,735億円となっています。
ヤフーショッピングは出店者の出店料や取扱高に応じた手数料を無料にしているため、売上は広告が主になります。ショッピングの広告売上は四半期あたり71億円に増加し、前年同期比+28%と高い成長率を誇っています。
この二つの数字から計算すると、ヤフーショッピングのテイクレートは4.1%になります。
テイクレート(4.1%) =売上(71億円)/ 取扱高(1,735億円)
ヤフーショッピングは、ポイント還元など多くのマーケティング費用を投じている印象があるかもしれません。
そこで疑問になるのは、「これだけポイントを配っていて、収益がプラスになっているのか?」という点です。
このスライドを見ると、ショッピング広告のテイクレートがポイント費用を上回っていることがわかります。つまり固定費を除けば、ヤフーショッピング事業は収益がプラスになっているという意味です。
まとめると、ヤフーショッピングのビジネスは、
・取扱高が四半期あたり1,735億円
・ネット売上が四半期あたり71億円
・テイクレートが4.1%
というビジネスだと言えます。
ヤフーショッピングのビジネスは、中国の「アリババ:阿里巴巴」や「タオバオ:淘宝網」のモデルをベースに作られており、アリババとタオバオのテイクレートも4%程度ですので、同じ水準まで達していると考えてよいでしょう。
ZOZO
次にZOZOの決算を見てみましょう。
株式会社ZOZO 2019年3月期第3四半期 決算説明会資料(2019/02/14)
取扱高は四半期あたり938億円でYoY+21.3%で伸びています。
直近の四半期の売上は360億円で、YoY+27.6%で伸びています。
先ほどと同様に計算すると、テイクレートはなんと38.4%にもなります
テイクレート(38.4%) =売上(360億円)/ 取扱高(938億円)
ZOZOのビジネスをまとめると、
・取扱高が四半期あたり938億円
・ネット売上が四半期あたり360億円
・テイクレートが38.4%
というビジネスだと言えます。
勘の良い読者の方は既にお気づきかと思いますが、ZOZOは、ヤフーショッピングのテイクレート(4.1%)の約10倍近いテイクレートになっています。
ヤフーショッピングもZOZOも同じようなECのマーケットプレイスモデル(様々な企業のアイテムを集めて販売するモデル。楽天やamazonも同じモデル)でありながら、ここまでテイクレートに違いが出るのは、マーケットプレイスとして担っている役割が若干異なるからです。
ヤフーショッピングは、「集客と決済」が主な提供サービスです。
それに対してZOZOは、「集客と決済」に加えて、「在庫管理や配送業務」なども行なっているため、より幅広い範囲の業務を出店者から請け負っているため、テイクレートが非常に高くなっていると言えます。
メルカリ
最後にメルカリの決算も見ておきましょう。
メルカリは、ECの中でも前述の二社のマーケットプレイスとは異なるビジネスモデルになっています。前述の2社は、B2B2Cと呼ばれるモデルであるのに対して、メルカリはC2Cです。
株式会社メルカリ 2019年6月期 第2四半期 決算説明会資料(2019/2/7)
メルカリの四半期あたりの取扱高は1,289億円と、ヤフーショッピングの1,735億円に迫る規模まで大きくなっています。成長率はYoY+48.7%と、いまだに早い成長スピードで成長しています。
売上は四半期あたり122億円で、YoY+43.6%で成長しています。
先ほどと同様に計算すると、テイクレートは9.5%になります。
テイクレート(9.5%) =売上(122億円)/ 取扱高(1,289億円)
まとめると、メルカリのビジネスというのは、
・取扱高が四半期あたり1289億円
・ネット売上が四半期あたり122億円
・テイクレートが9.5%
というビジネスだと言えます。
海外の事例を見ると、例えば「eBay」などでもC2C(Customer to Customer:一般消費者同士の取引)のフリマ型のモデルは、テイクレートが10%程度が一般的なので、メルカリもその水準に達していると言えるでしょう。
以上、今回はECビジネスを展開している代表的な3社を取り上げてみました。
ECビジネスを展開している会社はこの3社以外にも他にたくさんありますので、他の会社のテイクレートも計算して比較してみると、勉強になると思います。
もっと詳細が知りたいという方は「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」をご覧ください。
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