Q. iOS14のプライバシー強化下で最も広告事業を伸ばしている会社は?
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Q. iOS14のプライバシー強化下で最も広告事業を伸ばしている会社は?

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A.iOS14のプライバシー保護の強化で多くの広告企業が影響を受ける中、最も広告事業を伸ばしているのは Apple(Apple Search Ads)

この記事はゆべしさんとの共同制作です。

Appleが2021年4月から提供を始めたiOS14.5のプライバシー保護の強化により、IDFA(Identifier for Advertisers:広告出稿等に用いられるiOS端末に割り振られているユニークなID)の利用に、ユーザーの許諾が必要になりました。

このアップデートにより、アプリを利用する際、「○○が他社のAppやWebサイトを横断してあなたのアクティビティを追跡することを許可しますか?」といったユーザーへの確認が行われるようになり、2021年8月時点の許可率は、全世界で47%と言われています。

そのため、広告主はこれまでユーザーの行動データを利用した適切なターゲティングによる広告出稿が可能でしたが、IDFAの利用を許可しないユーザーの行動データは利用できないため、適切なターゲティングによる広告出稿が難しくなり、広告効率の悪化、ひいては広告単価の低下や広告主の予算縮小に繋がっています。

このような環境変化を踏まえて、本日は世界的に主要な広告プラットフォーム企業であるGoogle、Meta(旧Facebook)、Snapの広告事業への影響、そしてこの環境変化の中で最も広告事業を伸ばしているAppleについて解説していきます。

広告ビジネスに従事されている方やアプリマーケティングに関心がある方には、特におすすめの内容となっています。この記事は無料で公開しているので、ぜひ最後までご覧ください。

この記事では、1ドル=100円($1 = 100円)として、日本円も併せて記載しています。


Google (Alphabet)の決算

Alphabet Announces Third Quarter 2021 Results(2021年10月26日)

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Googleの親会社であるAlphabetの2021年7-9月の四半期売上は$65B(約6.5兆円)でYoY+41%、四半期営業利益は$21B(約2.1兆円)でYoY+32%で、大幅な増収増益を達成しました。

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2021年7-9月のAlphabetの実績とアナリストの業績予想を比較すると、EPS(Earnings Per Share:1株あたりの当期純利益)と全体売上は、アナリストの業績予想を超えており、売上・利益ともに好調に推移していることが分かります。

一方、セグメント別で見ると、YouTube売上とGoogle Cloud売上は、アナリストの業績予想を若干下回っています。

CFO Ruth Porat said Apple’s privacy changes had a “modest impact on YouTube revenues.”

引用:Alphabet reports better-than-expected quarterly profit and revenue(2021年10月26日)

AlphabetのCFOは、「Appleのプライバシーに関する変更が、YouTubeの収益に僅かな影響を与えた」と発言しており、Appleのプライバシー保護の強化による影響は、特にYouTubeに表れているようです。

しかしながら、Googleの主要事業である検索連動型広告は、ユーザーの検索意図にマッチする広告出稿が可能なため、Appleのプライバシー保護の強化による影響が少なく、全体の業績でみると影響が小さかったようです。


Meta(旧Facebook)の決算

Facebook Reports Third Quarter 2021 Results(2021年10月25日)

FB Earnings Presentation Q3 2021

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Metaの2021年7-9月の四半期売上は$29B(約2.9兆円)でYoY+35%、四半期営業利益は$10B(約1兆円)でYoY+30%で、MetaもAlphabetと同様に、増収増益を達成しました。

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一方、四半期別の売上推移を見ると、通常2Qから3Qにかけて売上が増加していますが、FY21の今期は、2Q(4-6月)から3Q(7-9月)にかけて、Appleのプライバシー保護の強化による影響を受けたことで、売上が微減しています。

As expected, we did experience revenue headwinds this quarter, including from Apple's changes that are not only negatively affecting our business, but millions of small businesses in what is already a difficult time for them in the economy

引用:Facebook, Inc. (FB) Third Quarter 2021 Results Conference Call(2021年10月25日)

マーク・ザッカーバーグは、「Appleのプライバシー保護の強化の影響で売上に影響が生じ、何百万もの中小企業へ悪影響を与えている」と発言しています。

Metaの売上の大半は広告収益のため、Appleのプライバシー保護の強化により、一部のiOSユーザーの行動データを取得できず、ターゲティング広告の精度が低下したことで、全体の業績に影響が出たようです。


Snapの決算

Snap Inc. Q3 2021 Earnings Slides(2021年10月21日)

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Snapは米国の若者に人気のコミュニケーションサービス「Snapchat」を運営する企業です。

Snapの2021年7-9月の四半期の売上は$1.07B(約1,070億円)でYoY+57%です。前年比では大きく成長しているものの、前四半期(2021年4-6月)対比ではQoQ+9%と、微増にとどまっています。

Our advertising business was disrupted by changes to iOS ad tracking that were broadly rolled out by Apple in June and July. While we anticipated some degree of business disruption, the new Appleprovided measurement solution did not scale as we had expected, making it more difficult for our advertising partners to measure and manage their ad campaigns for iOS.

引用:SNAP INC. Q3 2021 TRANSCRIPT

SnapのCEOであるエヴァン・スピーゲルは、Appleのプライバシー保護の強化により、Snapの広告事業に打撃を受けたうえに、Appleの新しい効果測定ツールは予想通りの拡張ができず、広告パートナーの効果測定に影響を与えていることを明らかにしました。


Appleのプライバシー変更が広告業界に与える影響 = 半年で$10B(約1兆円)

The almost $10 billion loss translates into 12% of third- and fourth-quarter revenue for top social media companies, ad tech company Lotame told the FT. Facebook’s large size led to the most total revenue loss.

引用:Apple’s recent privacy tweak cost social media giants $10 billion(2021年11月2日)

アドテクノロジー企業のLotameによると、「Appleのプライバシー保護の強化により、SNS企業の2021年3Qから2021年4Qの半年間の売上のうち、12%に相当する$10B(約1兆円)もの広告売上が失われた」としています。

But it was smartphone-focused platform Snap that was impacted the most by Apple's change, losing 13.2% of the revenue it would have collected otherwise.

引用:Apple’s recent privacy tweak cost social media giants $10 billion(2021年11月2日)

また、Appleのプライバシー保護の強化で最も影響を受けた企業はSnapであり、推定で売上の13.2%が失われました。

Mark Zuckerberg openly criticized Apple's new ad-tracking policy in a third-quarter earnings call last week, saying that Apple’s changes negatively impact not only Facebook but also “millions of small businesses in what is already a difficult time for them in the economy.”

引用:Apple’s recent privacy tweak cost social media giants $10 billion(2021年11月2日)

マーク・ザッカーバーグは、2021年7-9月の決算発表の場で、Appleのプライバシー保護の強化はMetaだけでなく、数百万の中小企業に悪影響を与えるとして、Appleを厳しく批判しました。


Appleのプライバシー変更で最も得をしている広告会社 = Apple

Apple’s privacy changes create windfall for its own advertising business(2021年10月17日)

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上図は、iOSの広告経由の新規アプリインストール数について、経路別の割合をFinancial Timesがまとめたものです。

2021年4月以降、水色で示されたFacebookや濃い水色のSnap経由のインストール割合は大きく低下していますが、Google Adsは2021年8月以降は回復して一定のインストール割合を維持しています。

一方、上図下の濃い青色のApple Search Ads経由のインストール割合は、2021年4月から急成長しており、シェアは2021年9月時点で約60%と、半年間で約3倍になりました。

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Apple Search Adsとは、Apple Store内の検索連動型広告です。

広告主はApple Search Adsを利用することで、上図のように、ユーザーの検索結果に広告主のアプリを表示することができ、新規インストールを促すことが可能です。

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上図は、2020年11月時点のApple Search Ads経由の新規アプリインストール数を基準に、各期間のインストール数を指数で表したものです。2021年9月のApple Search Ads経由での新規インストール数は、2020年11月時点から約2倍に成長しました。

このように、Appleはプライバシー保護の強化で、IDFAの利用を許可しないユーザーの行動データを利用できなくさせたことで、ターゲティング広告ではなく、ユーザーの検索意図にマッチする広告出稿が可能な検索連動型広告の需要を高めて、一人勝ちの状況を作ることに成功しました。


まとめ

ここまで、主要広告企業であるGoogleやMeta、Snapの2021年7-9月の決算内容から、Appleのプライバシー保護の強化による影響を整理し、Appleのプライバシー保護の強化下で最も広告事業を伸ばしているAppleについて解説しました。ここで、この記事の要点を以下にまとめます。

・Googleは検索連動型広告が中心のため、大きなダメージはない(※YouTubeは影響を受けている)

・FacebookやSnapなど、SNS系サービスは大打撃を受けており、半年で$10B(約1兆円)の売上損失と推計されている

・Apple Search Ads経由のアプリの新規インストール割合は半年で約3倍に成長、Apple Search Ads経由のアプリの新規インストール数は1年間で約2倍に成長

このような個人情報保護の取り組みはAppleだけではなく、Googleでも行われており、ユーザーの行動データを管理するサードパーティのCookieについて、2023年半ばから段階的に廃止する見込みであることを明かしています。

こうしたトレンドを踏まえて、企業のマーケティングを始めとした顧客データを活用する広告ビジネスがどのように変化するのか、引き続き確認していきたいと思います。


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