Facebookの実効税率が恐ろしく低い件(日本企業に勝ち目がない理由)
Facebookの決算を見ていて、1つ驚いたことがあったので、今日はその話を書きたい思います。
何に驚いたかと言うと、Facebookが納めている法人税の少なさです。
まずは決算の概要を見てみましょう。
売上・営業利益とも過去最高
初めに売上を見てみたいと思います。
2017年の7月〜9月の四半期において、Facebookの売上は$10B(約1兆1,000億円)を超える規模まで到達しました。YoY+47%成長という、成長率も非常に高い水準を保っています。
Facebookの売上の大半は広告売上になるわけですが、1ユーザーあたりの広告売上を見ても、全ての地域で右肩上がりで上がっていることがよくお分かりいただけると思います。
そして、売上が大きく伸びているにも関わらず、マーケティング営業費用(左下)、一般管理費(右下)は右肩下がりで下がっています。
さらにグラフの右上にあるように、売上の20%もの大きな割合を、研究開発に投じ続けているというのも、Facebookの競争優位性を高めている要因の一つでしょう。
結果として、営業利益は$5.1B(約5,100億円)を超え、営業利益率は50%と、こちらもとても高い数字を保っています。
異常に低い法人税
冒頭で申し上げた法人税の低さを、少し詳しく見てみたいと思います。
このスライドにあるように、税引前純利益が$5.2B(約5,200億円)あるのに対し、法人税として支払っているのが$529M(約529億円)で、実効税率が10%となっています。
日本で会社を経営されている方からすると、営業利益が5,000億円もあるのに、実効税率が10%で済んでいるというのは、信じられないという感覚になると思います。
これだけ実効税率が低くなっている理由は、Facebookのアメリカ以外の売上は、ヨーロッパやシンガポールなどの法人税がほぼ掛からない(かとても低い)国に法人を設立し、各地域での売上をその税率の低い国法人の売上として計上しているからです。
アメリカの現在の税ルールでは、アメリカの外で発生した利益に関しては、アメリカの国税局が直接課税できないルールになっているため、例えばFacebookのシンガポール法人での売上利益は、シンガポールで納税している限りにおいては、アメリカで再度課税されることがない、ということになります。
現在アメリカではトランプ政権の下で、このように多くの売上や利益が海外に逃げていってしまい課税出来ない状況を、好ましく思ってはいません。従って今後、アメリカ法人の海外子会社に関しても課税対象になる可能性も否定はできませんが、現在は少なくてもそのようになっていません。
Facebookだけではなく、他のシリコンバレーやアメリカのネット起業も同じように、海外のアメリカ以外の売上利益に関してはかなり大胆な節税を行っており、結果として全体で見た場合の実効税率が非常に低くなる、ということが起こっています。
Google (Alphabet) ・Appleの場合
Facebookだけが異常かもしれない、と思う方もいらっしゃるかもしれませんので 、Googleのケースも見てみましょう。
Google の場合、
売上が$27.8B(約2兆7,800億円)
営業利益が$7.8B(約7,800億円)
税引き前の純利益が$8B(約8,000億円)
法人税が$1.2B(約1,200億円)
実効税率は16%
となっています。Facebookの10%に比べると若干高い水準ではありますが、こちらも非常に低い実効税率になっています。
Appleのケースも見てみたいと思います。
Appleの場合、
売上が$229B(約22兆9,000億円)
営業利益が$61B(約6兆1,000億円)
税引前の純利益が$64B(6兆4,000億円)
法人税が$15.7B(約1兆5,700億円)
実効税率は24.6%
となっています。Appleの場合はハードウェアの売り上げが多いため、実効税率が高くなっている可能性がありますが、それでも日本のケースに比べると大分低いのではないでしょうか。
日本のヤフー・サイバーエージェントの実効税率
まずはYahoo Japanを見てみたいと思います。[8]
Yahoo Japan の場合、
売上が4,096億円
営業利益が1,004億円
税引前の純利益が1,002億円
法人税が316億円
実効税率が31%
となっています。
次にサイバーエージェントも見ていきます。
サイバーエージェントの場合、1年間の数字で
売上が3,714億円
営業利益が307億円
税引前の純利益が346億円
法人税が166億円
実効税率が46%
となっています。
少し古いですが、楽天の2016年10月〜12月期の決算の資料を見ると、こんなスライドもありました。
日本国内の法定実効税率は、36%から31%へと徐々に下がりつつありますが、のれん代の減損や、ソフトウェアの資産計上を強制されるなど、実効税率で見るとソフトウェア企業が支払っている税金は必ずしも小さいとは言えないのが現状です。
まとめ
以上を簡単にまとめると以下のようになります
実効税率
【米】Facebook: 10%
【米】Google/Alphabet: 16%
【米】Apple: 24.6%
【日】ヤフー: 31%
【日】サイバーエージェント: 46%
必ずしもアメリカの企業のやり方が正しいと言うつもりはありませんし、例えばサイバーエージェントのように、利益の約半分を税金として納めるというのは非常に模範的な納税者であるとも言えるのも事実ですが、国家としてのソフトウェア産業の競争力を考える上においては、日本に本社を置くというのは極めて不利な状況である、と言わざるを得ないでしょう。
FacebookやGoogleのように、非常に大きな売上利益をあげても、税金が総体的に小さい為、手元に残るキャッシュが多く、それらをフルにレバレッジして大きなM&Aや投資などを行うことが出来ています。
一方で、日本においては株主からの利益を出せというプレッシャーもあり、利益を出してもアメリカの企業に比べて相対的に非常に大きなパーセンテージを法人税として納める必要があります。従って手元に残るキャッシュは小さくなり、FacebookやGoogleのような企業と、M&Aや投資などで競合した場合に、競り負けるケースが多く出てこざるを得ない、と言えるでしょう。
繰り返しになりますが、税金が低ければいいという単純な問題ではありませんが、きちんと税収を得つつも、産業として国際競争力を維持していく方法を、少し考えるべきタイミングなのかもしれません。
皆さんはどう思われましたか?
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