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Q. 森永製菓で最も成長率が高く、市場の追い風が強い事業とは?

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A. 森永製菓で最も成長率が高い事業は、前年同期比+26.1%で成長しているinゼリーや手軽にタンパク質が摂取できるバータイプのプロテインバーを扱う「in事業」です。

in事業*1は、同社による新しい飲用シーンやターゲット拡大の取り組みによって、今後も成長が期待できます。タンパク質(プロテイン)市場は、昨今の健康意識の高まりを受けて、グローバルで見ても急成長市場でもあります。

※inゼリーやプロテインバーは、決算資料上での事業開示区分は「健康」事業セグメントに含まれますが、本記事では2021年に発表された中期経営計画で重点事業として定められた4事業のうちの1つ「in事業」にフォーカスを当てるため、記事中では「in事業」と表記します。

今日の記事では、森永製菓の2021年4月-9月の半期決算説明会の資料を詳しく見ていき、世界中で急成長しているプロテイン市場の調査についても触れてみたいと思います。

この記事は、日興フロッギーへの寄稿記事(2021/11/30公開)の転載です。

森永製菓株式会社 2022年3月期 第2四半期 決算説明会資料(2021年11月11日)

森永製菓の2021年4-9月決算

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2021年の4月-9月の半期決算を見てみると、売上は934億円で前年同期比+10%、営業利益は約132億円で営業利益率14.1%、前年同期比+14.2%と二桁成長を実現しています。

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934億円の売上のうち、897億円(売上の96%)を食料品製造事業が占めており、まさにフードテック企業であるのが森永製菓という会社です。海外売上高比率は8.3%ですが、成長率で見ると+44.7%と海外で急成長しています。


事業別成長率比較

前出の表から、食料品製造事業の中でも「健康」関連の商品が前年同期比+26.1%と大きく伸びていることが読み取れますので、ここを詳しく見ていきましょう。

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上図は、森永製菓が2021年5月20日に発表した「2030経営計画」で重点領域に位置付けられている4事業です。

この中期計画では、2030ビジョンとして、「森永製菓グループは、2030年にウェルネスカンパニーへ生まれ変わります。」と明言しており、「心の健康」と「体の健康」の観点から森永製菓の成長と市場創造が期待できる事業へ経営資源を集中すると発表しています。

2018年中期計画時にこの4事業が売上に占める割合は40%でしたが、2030年には売上比率60%まで高める計画をしています。

4つの重点事業のうち、「in事業」の半期売上が約165億円、前年同期比+27%と最も売上が高く、「米国事業」の売上は約47億円で前年同期比+41.4%と最も成長率が高くなっています。

in事業の主力商品は、1994年に森永製菓が独自開発した「inゼリー」です。

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in事業に関連する「健康」事業セグメントの半期売上は209億円で前年同期比+26.1%。営業利益は53億円で営業利益率25.4%と高収益な事業です。

このスライドにある通り、需要の回復と新しい飲料シーンの創出、またタンパク質ニーズの高まりなどを背景に、その追い風を受けていると言えるのではないでしょうか。


in事業が今後も最も成長が期待できる事業である理由

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inゼリーは、コロナで購入率(インテージの消費者パネル調査により計測した購入ユーザーの割合)が落ち込んだものの、現在ではコロナ前の水準を大きく超えており、今後スポーツなどの社会活動が正常化するとさらなる伸びが期待できます。

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in事業のバー製品の売上に関してはコロナの影響が多少あったものの、高タンパク・糖質オフなど健康に良い商品をリリースすることで安定した成長を見せています。

このスライドにある通り、ゼリーやバーだけではなく高タンパクな健康に良い商品を他の形で今後もリリースしていくことで、さらに大きな成長が期待できると言えるのではないでしょうか。

特に先進国においては健康意識が高まるにつれ、数ある栄養素の中でも、良質なタンパク質(プロテイン)をしっかり摂取したいというニーズが強まっています。

少し前まではプロテインといえばジムに行って筋トレをする人が摂取するものだと思っていた方も多いかもしれませんが、今では少し事情が変わってきているようです。

以下では、今後もこのプロテイン需要が伸び続けていくであろうと思われる世界的な調査の結果を紹介してみたいと思います。

急成長するプロテイン市場という「追い風」

Global Protein Ingredients Market Size Report, 2021-2028

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上のグラフは、グローバル市場調査会社のGrand View Research社が発表した「アメリカにおけるプロテイン製品の原料別の市場成長予測」です。原料別では水色の「Plant Protein=植物由来」が大きく成長しており、主に大豆を原料としたプロテイン市場の拡大が予測されています。

この調査によると、2020年の世界のプロテイン市場は、$38.5B(約3.85兆円)で、2021年から2028年まで年平均10.5%で成長すると予測されています。

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アメリカでは植物由来のプロテインで作られた代替肉(プラントベース食品)を販売する「インポッシブル・フーズ」、「ビヨンドミート」などの企業が急成長しています。

矢野経済研究所が2020年5月に発表した代替肉市場に関する調査によると、世界の市場規模は2020年の2,570億円から2030年までの10年間で約7倍の約1兆9,000億円まで成長すると予測されています。

代替肉を含むプロテイン市場の拡大は、単なる健康志向だけではなく、人口増加や新興国の経済成長に伴う肉食需要の高まりによって、世界的にタンパク質の供給が不足することが予測されているためです。よってこの市場トレンドはしばらくの間続くものと考えて間違いないでしょう。

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この円グラフは、2020年の世界のプロテイン市場の製品別シェアです。グラフ右側の濃い紫色部分の「食べ物と飲み物」のシェアが最も大きくなっています。

調査によると、液体サプリメントを作るためにプロテインが非常に多く使用されていおり、すぐに飲めるタンパク質が豊富な飲料は、フィットネスブームと共に非常に人気が高まっており、2028年までの予測期間中に食品や飲料の消費量が急増すると予測されています。

このような消費者の嗜好の変化も森永製菓にとっては大きな追い風だと言えるでしょう。

次にシェアが大きい薄い紫色の部分は動物の飼料、続いて水色の乳児用の粉ミルクとなっています。 タンパク質は乳児にとって重要な栄養素であるため、人口増加と経済発展に比例して世界規模では今後数年間で粉ミルク市場の大幅な成長が見込まれています。

Protein Supplements Market Size | Industry Report, 2021-2028

まとめ

この記事では、森永製菓の2021年4月−9月の半期決算とグローバルのプロテイン市場を見てきました。森永製菓の直近の決算は、売上は934億円で前年同期比+10%、営業利益は約132億円で営業利益率は14.1%、前年同期比+14.2%と、売上も営業利益も2ケタ成長を実現しており、コロナ禍のダメージを完全に払拭した強い決算が発表されたと言えるでしょう。

中でも成長率が特に高いのがinゼリーや手軽にタンパク質が摂取できるバータイプのプロテインバーをなどを販売する健康事業セグメントで、売上成長は前年同期比+26.1%と他の事業を上回る成長率を見せています。

グローバルのプロテイン市場の調査では、プロテイン市場は2028年まで年平均10.5%で拡大していき、中でも飲料がその成長を牽引すると予測されています。このような世界的なトレンドからもin事業はこれからも大きな成長が期待できると考えられます。

森永製菓の重要事業であるin事業と、米国事業の成長にこれからも注目していきたいと思います。

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