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WeChatの提供元Tencentの爆発力とWeChat Payの主要な4つのユースケース

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今日の記事では中国のテンセントを取り上げたいと思います。

テンセントというのは、日本で言うところのLINEに相当するメッセンジャーを中心としたコングロマリット企業です。アリババ、バイドゥと並ぶ中国の3大ネット企業の一つとされています。

日本で今注目が集まっている「QRコード決済」もテンセントが提供するWeChatと呼ばれるメッセンジャーアプリでは既に広く活用されています。テンセントのこれまでの実績やこれからの戦略を詳しく理解することは、QRコード決済関連のビジネスをこれから日本で展開する方にも必ず役に立つと思います。

*Tencent 2018 Second Quarter and Interim Results Presentation

*Tencent 2018 Second Quarter Corporate Overview

なお、同社の決算は中国元の単位で公開されているため、1元=16円として日本円での表記も併記します。


テンセントのビジネスモデル

決算の詳細を見る前に、テンセントのビジネスモデルを簡単におさらいしておきましょう。

テンセントのビジネスの根源にあるのは、このスライドにある通り「コネクションを作る」という考え方です。Facebookに非常に似たミッションステートメントになっているとも言えるでしょう。

「コネクション」というのは、ユーザー同士のコネクションであったり、ユーザーと店舗の間のコネクションであったりしますが、ビジネスとしてはCtoC型のビジネスや、マーケットプレイス型のビジネスが多くなっています。

こちらはテンセントがビジネスを展開している各分野での主要サービスと、市場シェアを記載した図になります。

ご覧いただければ分かる通り、コミュニケーション分野ではWeChatがMAU(月間アクティブユーザー数)10億人を超え、オンラインゲームではグローバルで売上1位を誇るゲームアプリ会社を傘下に収めています。FinTechではスマホ決済において圧倒的な位置を占めており、メディア事業においてはビデオ、ニュース、音楽といったそれぞれの分野で非常に強力なメディアを有しています。さらにそれ以外にも自社でApp Storeやブラウザなども提供しています。という具合に、主要なサービスの多くが市場でNo.1のポジションを獲得しており、中国で圧倒的な存在感を見せています。

そして、テンセントが「WeChat Pay」や「QQ Wallet」といった決済部分をPCでもスマホでも押さえているということが、ビジネスとして何よりも強力なわけです。

ネットビジネスにおいても、お金が動く瞬間に介在するプレーヤーが最強である点はリアルビジネスと同じです。

(スライドに記載されている「Weixin Pay」=「WeChat Pay」です。WeChatの中国語表記は「微信」(=Weixin)です。)

テンセントのビジネスモデルは大きく四つあります。

一つ目は、ソーシャルネットワークにおけるVAS (Value Added Service)、つまりコンテンツの課金モデルやサブスクリプション(定額制)モデルのビジネスです。

二つ目のゲームにおけるVASは、皆さんご存知のゲーム内課金が主な収入源になります。

三つ目は、膨大なトラフィックを広告でマネタイズするというモデルです。

四つ目は、その他というセグメントになります。これはWeChat Payなどにおける決済手数料やクラウドサービスの売上が含まれます。


規模・成長力が衰えない売上・営業利益

ビジネスモデルを理解した上で決算を見ていきましょう。

2018年の4月から6月期の決算において四半期の売上は737億元(約1兆1,792億円)で、YoY+30%の成長となっています。

内訳を見ると、サブスクリプションやゲームなどの課金事業であるVAS(コンテンツ)セグメントが426億元(約6,816億円)、広告セグメントが141億元(2,256億円)、決済を中心としたその他のセグメントが175億元(約2,800億円)となっています。

営業利益はYoY-3%と落ち込んでいるように見えますが、Non-GAAP(会計基準=GAAPに準拠しない、為替変動や一時的コストを除外した利益)で見るとYoY+11%の223億元(約3,568億円)と順調に成長しているようにも見えます。

今回GAAPベースでの営業利益が前年同期比でマイナスになっている理由は、投資先の評価損を計上しているためなので、「本業からの利益」という意味では順調に成長していると言って問題ないと言えるでしょう。

さらに驚くべきことは、Non-GAAPベースの営業利益率が30%を超えているという点です。このことから非常に収益率の高いビジネスを複数保有していることがよくご理解いただけると思います。


Value Added Services(コンテンツ)セグメント

Value Added Services(コンテンツ)セグメント詳しく見てみましょう。

テンセントの今回の決算で最も成長率が低いセグメントがこのセグメントです。
ソーシャルネットワーク事業はYoY+30%。ゲーム事業はYoY+6%の成長となっています。

両事業とも前年同期比ではプラスにはなっていますが、前四半期(1Q)との比較で見るとマイナス成長となっており、コンテンツビジネスの浮き沈みが出ているとも言えます。


広告セグメント

次は広告セグメントを見てみましょう。

広告セグメントは絶好調とも言える内容です。メディア事業、ソーシャル事業ともに大きく成長しており、前年同期比、前四半期比でもプラスで成長しています。

スライドにも記載されている通り、WeChatにおける広告が大きな伸びを見せています。日本でLINEの主要な売上が広告に移ってきているのと同じトレンドだと理解すれば良いかと思います。


WeChatを中心とした成長戦略

テンセントといえばWeChatについて語らない訳にはいきません。テンセントのWeChatを中心とした成長戦略を詳しく見ていきましょう。

このスライドにある通り、メッセンジャーである「WeChat」、そして「テンセントビデオ」と「それ以外のメディア」の全てにおいて、ユーザーの継続率やエンゲージメントが大きく向上しているということが、テンセントを語る上で最も重要なポイントになります。

そしてテンセントはWeChatをプラットフォームとして捉えて、開発者にプラットフォームを解放し始めています。このプログラムを「Weixin Mini Programs」と呼びます。

以前、Facebookが「Facebookデベロッパープログラム」を開発者に開放したのと同じようなことをしているわけですが、WeChatの場合、WeChat Payとスムーズに連携できるだけではなく、広告やクラウドといった機能も提供してくれます。

現時点で、1日あたり2億人のユーザーがWeixin Mini Programsを利用して開発されたアプリを利用しているということで、開発者から見ても非常に魅力的な集客装置になっているのではないでしょうか。


WeChat上でのMini Programsにおける主要な4つの利用ケース

このようにWeChatはオープン化し、自社だけでは開発しきれない細かいニーズを捉えていく戦略を取っているわけですが、今回の決算資料では主要な四つの事例が公開されていますので一つずつ見ていきたいと思います。

一つ目は公共交通機関によるQRコード決済の利用です。現時点で90を超える都市の公共交通機関で、WeChat Payが利用できるようになっています。
日本で言うところの「Suica」や「PASMO」のようなものをQRコード決済で簡単に作れるようにしてしまったと考えればよいでしょう。

二つ目はレストランにおける集客と決済です。WeChat上で簡単にクーポンやポイントプログラム、ポイントカードを発行することができるので、レストランは集客や顧客ロイヤリティを高めることができます。

三つ目は、オフラインの店舗における利用です。特に小額決済店舗においてはQRコードで支払うというのが当たり前のようになってきているだけではなく、店舗がオンラインで注文を受け付けたり、WeChatの公式アカウント上でプロモーションをするといったことが簡単に出来るようになります。

四つ目はWeChat上にミニゲームを提供するというパターンです。ちょっとした隙間時間にWeChat上でゲームができることが受けていて、これらのゲームでの広告売上が前四半期と比べて5倍にも成長しています。

日本でもQRコード決済が普及してくると、ここにあるような四つの巨大なセグメント(公共交通機関、レストラン、店舗、ゲーム)にバーティカルに最適化した(業種に特化した)ソリューションが求められてくると考えられますので、QRコード決済事業を担当されている方は今から計画を立ててみてはいかがでしょうか。

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