見出し画像

乳がん対策で知っておくべきことについて、慶応病院のブレストセンター長に解説してもらったよ!

今回は医療系のお話、注目のゲストは?

シバタ: 皆さん、こんにちは。私のnoteで「シバ談」というのをやっています。いつもソフトウェア系の話が多いのですが、今回は少し変わって医療系の話をしたいと思います。YouTube「シバタナオキの決算実況」のMCをしてくれている伊佐山真里さんと、2名のスペシャルゲストが来ていただいています。

シバタ: 1人目は「乳がんのファーストオピニオン」という乳がんの情報サイトを運営している株式会社Smart Opinion 代表取締役社長の山並 憲司さんです。

山並さんは僕の楽天時代の先輩で、今もベイエリアで色々とお世話になっています。ある時乳がんの会社をやると言っていましたので、どんなことをやっているのか聞きたいというのが1つです。

もう1つは、乳がんのことは僕も全然分からないので色々聞いてみたいということで、山並さんが運営する「乳がんのファーストオピニオン」という情報サイトと、乳がんのAIを共同研究しているという慶應義塾大学病院の林田 哲先生にも来ていただいています。

まずはお2人に自己紹介をお願いしたいと思います。

山並: 山並です。シバタさんとは楽天時代に一緒でして、なんと最初に入った時に隣の席にいたのがシバタさんでした。(笑)それ以来のご縁になります。実は、私は大学や大学院で医療×画像×AIをしていました。それ以降、経済産業省、マッキンゼー、楽天というかたちでヘルスケアにはそんなに携わっていませんでした。

数年前に母親が乳がんになり、林田先生と話している中で乳がんの早期発見対策は非常に重要と知り、もう1回学生の頃からのヘルスケア系のところに戻ってきました。今はSmart Opinionという乳がんAI診断技術の会社をしております。よろしくお願いします。

林田: よろしくお願いします。私は、慶應義塾大学病院ブレストセンターでセンター長をしております林田と言います。山並さんとは中学・高校時代からなので、もう本当に12歳の子どもの時からの付き合いです。

私の経歴ですが、慶應義塾大学医学部を卒業して外科の修練を積みました。一時期、Harvard Medical Schoolに3年間留学をし、帰国後に色々な研究を始めました。当初は分子生物的な乳がんの難しいメカニズムの研究をしていましたが、ここ数年はかなり臨床寄りな研究になってきまして、診断、薬、治療法などに関わる研究をしています。

シバタ: 林田先生のご経歴は本当にすごくて、今日はそんな最先端のトップの方に何でも聞けるということです。

真里さんはYouTubeを一緒に行っているのでご存じの方も多いと思いますが、自己紹介をお願いします。

伊佐山: いつもシバタさんのYouTubeでMCをさせていただいている伊佐山真里と言います。今日は、女性+素人目線で色々なお話をお伺いできたらと思っています。よろしくお願いします。

「乳がんのファーストオピニオン」って何?なぜ始めたの?

シバタ: 早速、質問していきます。「乳がんのファーストオピニオン」はどんなサイトなのか、そして、そもそもなぜこんなことを始めたのか、その辺りについてお2人からお話いただきたいと思います。

画像1

山並: 一緒に始めた事業は、超音波(エコー)を使った乳がんのAI診断です。これは薬事承認を進めております。

一方、AI診断の話をすると、周りにいる乳がんになった人からぽろぽろと質問が出てきます。私は医師ではありませんが、「こういうことが分からない」「この場合どうなのか?」という質問をされることがよくあります。そういった中で患者さん目線だが一線級の医師の声が聞ける乳がんの情報サイトを作ってみようかという話を林田先生としました。

シバタ: 林田先生は当然本業が大変お忙しいと思いますが、そんな中で「乳がんのファーストオピニオン」で情報発信をしていくところに関して、どのような思いで始めたのですか?

林田: 私の仕事は乳がんを診断して手術することですが、「あなたは乳がんですよ」と言われて動揺しない女性はいません。多くの人が頭の中が真っ白になります。乳がんは40代50代の女性が多く罹患する病気ですが、その年代の方々は全力でネットを調べに行きます。そうすると、本当に様々な情報があって玉石混淆ですので、素人の方は何が正しくて何が誤りかというのは全く分からないです。

そんな中、しっかりとした医師が基本的に正しいと思われる事を情報発信しているサイト、例えば、何々病院の先生が書いた通り一遍の乳がんの解説はあります。ところが、もう少し突っ込んだ、患者さんが知りたい素朴な疑問については書いていません。例えば、どうやって病院を選べば良いの?とか、セカンドオピニオンをどうすれば良いの?とか、そういう素朴な疑問ですね。

画像2

林田: 乳がんは、evidence-based medicineといっていわゆる科学的な根拠に基づいた治療を行っています。そうした治療を行っても、患者さんの疑問に対しては専門医の意見にもばらつきがあり、いわゆる医師の裁量で判断しなければならない部分が結構あります。本当は画一的な最善の治療が日本全国で受けられれば良いと思いますが、医師の中でも答えが出ていない部分があります。

複数の医師のオピニオンを見て自分に合致している意見はどれか、各医師の間でもこの部分は一致している等を検討していただき、本質的な乳がんの治療に重要だと思われることを読み取っていただけるようなサイトをつくりたいと思いました。

乳がんは超音波(エコー)でチェックするのが正しい?

シバタ: すごいですね!僕も乳がんのことは本当に全然分からないので、今日はぜひ勉強したいです。まず、乳がんはエコーでチェックするのが正しいのですか?

画像3

林田: まず、検診と専門医が行う精密検査に大きく分けなければいけないと思います。

検診の特徴は、何の症状もない人が対象です。何にも症状がない人を人間ドックなり自治体の検診なりで検査します。その検診の現場で行われる検査はマンモグラフィーと超音波(エコー)です。

一方、検診でマンモグラフィーと超音波を受けて「精密検査をしたほうが良いですよ」と言われた人が初めて私のような専門医のところに来ます。その場合に行う精密検査はそのほかにも色々な検査法があります。

マンモグラフィーや超音波を再検査することもありますし、MRIや針生検など様々な検査を駆使して、その人が乳がんか乳がんじゃないかというのを調べていきます。その中で超音波(エコー)は痛みがなく簡便であるため、非常に重要な位置付けを持つものですから、検診でも重要ですし、精密検査でも重要です。

しこりなど兆候がなくても乳がんの可能性はある?

伊佐山: しこりなど兆候がなくても、乳がんである可能性というのはあるのでしょうか?

林田: これは十分あります。触らない、触れない乳がんはごまんと世の中にありますので、やはり画像検査でしか分からないことがたくさんあります。

乳がんは意識し始める年齢は?

伊佐山: なるほど。兆候が特になくても乳がんの可能性があるのですね。何歳頃から意識し始めると良いでしょうか?

林田: 一般的には40歳から乳がんというのは罹患する率が大きく跳ね上がります。そのため、40歳を超えたところが重要な境目だと思います。

画像4

林田: あとはご家族やご親族、例えばお母さまやお姉さまが乳がんにかかったという人は、もう少し早く35歳ぐらいから症状がなくても毎年検診を受けるべきだと思います。

そういった家族歴がない人は40歳を超えたところで、症状がなくても毎年検診を受けるべきです。症状がある人はその症状を自覚した際に、そのまま専門医のいる病院に行ってください。

シバタ: なるほど。検診は普通に年に1回人間ドックを受けていれば良いですか?それとももう少し別のことをしたほうが良いですか?

林田: 人間ドックを年に1回で良いと思います。いわゆる乳がん検診をやるべきです。ただ、自治体が主催する検診は予算が限られていますので、例えばマンモグラフィーは2年に1回など、といった自治体が多いです。心配な方は、やはり年に1回エクストラでお金を払ってでも超音波とマンモグラフィーの両方を受けるべきです。

検診と精密検査の大きな違いは自費か保険医療かという点です。検診は自費になりますが、症状のない方は自費でしか検査できません。一方、症状のある方は病名がつきます。例えば乳房痛や乳房腫瘤といった病名がつきますので保険医療になります。

人間ドックは全部有料で高額ですが、意識が高い人・心配な人は、年に1度、自分でお金を払ってでも超音波とマンモグラフィーを受けるべきです。

シバタ: なるほど。では、マンモグラフィーだけではなくて超音波(エコー)をきちんと受けたほうが良いのですね。逆に症状がない人の場合、年に1回以上受ける必要はあまりないですか?

林田: ありません。

シバタ: それは安心しました。では、きちんと年に1回人間ドックをして超音波(エコー)を必ず受けることが、症状がない人の場合はそれが重要だということで、これだけでも結構安心している人はいると思います。

林田: 「乳がんのファーストオピニオン」では、そういったところがしっかりと書いてあります。

男性も乳がんを心配した方が良い?

シバタ: ちなみに、僕は男性ですが、乳がんって男性も心配した方が良いのですか?

林田: そうですね。全乳がんの1%以下ですが、男性の乳がんがあります。慶應義塾大学病院では年間300例近くの乳がんの手術を行っていますが、1%ですから年間2~3人ぐらいは必ず私は手術をしています。

ただ、男性の場合はいわゆる遺伝の部分が大きいです。つまりお母さんも乳がん、おばあさまも乳がん、といった家族歴をもつ方で男性乳がんになってしまうというのが非常に頻度が高いです。このケースは遺伝性乳がん卵巣がん症候群の可能性があります。そういった意味で、男性の乳がんは特殊なケースが多いかもしれません。

シバタ: 昨年はコロナで検診ができなかったため記憶にありませんが、男性の人間ドックに乳がんのオプションはあるのですか?山並さんは覚えていますか?

山並: 記憶にないです。男性の場合はどういう症状があって病院に来るケースが多いんですか?

林田: 男性は女性ほど乳房が大きくないので、触るとすぐ分かります。男性の場合は真っ平ですから皮膚の真裏に腫瘍を触れますので、診断は比較的容易です。

シバタ: 男性が検診するにはどうしたら良いですか?人間ドックになりますか?

林田: 男性が検診する場合は、人間ドックでお金を払って「マンモグラフィーと超音波をやらせてください」と言うしかないと思います。

シバタ: それは全員やったほうが良いものですか?それとも、遺伝で自分の家族、親族にそういう人がいる人は特に気を付けたほうが良いというレベルで大丈夫ですか?

林田: 男性は頻度が非常に少ないため、乳がんに対して特別な検診を行う必要はありません。何万人に1人という病気を毎年検査していくことはしないですよね。

シバタ: それを聞いただけでもすごく安心しました。

他のサイトとの違いは?

伊佐山: 今回されている「乳がんのファーストオピニオン」というサイトは他のサイトとはどこが違いますか?

山並: まず、先程も林田先生の話にあった通り、しっかりしたものを作っていこうというのがありますので、もちろん他のサイトを見ますと医師の先生が書いているのもありますが、まさに一線級の病院の医師の先生、特に上の方が書いていらっしゃる、経験を踏まえて一番今の医療としてベストのところを書いているという点が1つ違います。慶應病院だけでなく、聖路加国際病院、国立がんセンター、虎の門病院の先生が本気で書いてくれていますからね。

あとは、普通の解説書ではない点が違います。例えば、温存手術や全摘、検診で言うとエコーを受けたほうが良いのかどうか等、右に行くべきか左に行くべきかみたいな分岐点のような場面がありますが、こうした時の疑問へのオピニオン掲載されている点が他のサイトと違うところだと思っています。

画像5

伊佐山: 医師によって意見が違うことがあるという点について、かかりつけの医師以外の先生の意見を聞くことは大事でしょうか?

林田: そういうのをセカンドオピニオンと言います。今は、非常に自然にセカンドオピニオンを受ける時代になってきています。ただ、皆さん勘違いされているのが、セカンドオピニオンというのは医師を変えることではありません。あくまで主治医のもとで治療を受けますが、他の先生の意見も聞いてみて、その意見がもっともだと思ったらその意見を取り入れて、今の主治医のところで治療をするというのがセカンドオピニオンです。

ですので、今回のサイトはそういった素朴な疑問を様々な医師の意見が聞ける、もしくはその主治医と比較してどうだとか、そういったところも検討できるのが良いところだと思います。

山並: ちょっとしこりがあって気になって、どこに行けば良いのかという時にこのサイトを見てもらうと、この先生良さそうだなという形で、病院を選ぶ時の参考にもなるのではないかと思っています。

ローンチ後の反応は?

シバタ: ちなみにこのサイトがローンチされたのはいつですか?結構最近ですよね。

山並: そうですね。3月10日です。

シバタ: どんな反応ですか?

山並: 反応はよかったですよ。Facebookでローンチして、私と林田先生の投稿だけでも62件もシェアしてもらえました。普通、シェアしてくださいと言ってもあまりシェアしてくれないですよね。(笑)

シェアしてもらってそこから広がってというのもあって。今、女性誌で有名な雑誌の編集長に記事にしてもらえないかと相談しています。乳がんになった友達がFBの投稿を見てダイレクトメールをもらったり、もう少し早く見たかったという反応や、あるいは比べて見るところが新しいという反応も結構あり、極めて好意的です。

また、ある会社の役員の人が、ピンクリボン的な活動をされている方で、ぜひ会社の中でもシェアして広めていきたいと、そんな反応もいただいています。

よく読まれている記事は?

シバタ: いいですね!ちなみに、よく読まれている記事はどういうのが多いですか?傾向はありますか?

山並: そうですね。やはり検診関係が結構多いですね。もちろん乳がんになった方もいらっしゃるんですが、健康な方が多いので、検診の時に、それこそエコーを受けたほうが良いのか、どういうところで受けたほうが良いのか、そういったところがすごく読まれています。

シバタ: 先程の話をまとめると、検診は年に1回人間ドックで良い、できればマンモグラフィーだけではなくて超音波(エコー)も受けたほうが良い、もし問題が見つかれば検診ではなくてすぐに専門医のところに行きましょう、そういう理解で合っていますか?

山並: そうですね。

シバタ: これだけでもかなり有用な情報だと思います!

超音波(エコー)が重要な理由

山並: エコーで乳がんをチェックするのは重要です。日本の先程の話ではありませんが、罹患率のピークは40代に来ます。40代の6割がデンスプレストという、下図の右側がデンスブレストですね。要は真っ白に乳腺が発達します。

画像6

山並: この中に左のようながんがあっても見つからないことがあります。これはエコーなら見えるということです。それから、マンモで見えるのは、この白いのは石灰化と言って、あまり転移しない可能性の高い非浸潤がんというものです。

一方でエコーは転移する浸潤がんを見るのが得意な機器です。そういった意味でも若い人にはエコーを受けることがより重要だと思っています。林田先生、浸潤がんは1年経つと、進行の速いものはどの位大きくなりますか?

林田: 乳がんごとの性質によりますが、速いと本当に1年も放っておいたらもうとんでもないことになりますね。3~4カ月でみるみる大きくなってきましたというケースもあるし、1年かけてゆっくりゆっくり大きくなってくるものもあります。

乳がんにはサブタイプと呼ばれる性質の異なるグループが4つぐらいあって、そのサブタイプが異なると胃がんと大腸がんぐらい違います。共通点は乳房にできるということだけです。そういった増殖能力もサブタイプに依存していますので、なかなか一概に言うのは難しいです。

ただ、早期発見すると根治するケースが多いため、山並さんが言うように、浸潤がんであっても早期に見つけることが大事だと思います。

山並: 必ずエコーは受けたほうが良いということですよね?

林田: そうですね。最も重要なところは、エコーだけで見えてマンモグラフィーで見えない、逆にマンモグラフィーだけで見えてエコーでは見えない、そういうがんがざらにあるということです。そのため、マンモグラフィーだけでは見落とされてしまう可能性が出てきます。

シバタ: もしも検診で何か見つかったり、あるいは自分でしこりを感じたりした場合は、とにかくすぐに専門医の先生のところに行くのが正しいと理解しておけば良いですか?

林田: 間違いないと思います。

シバタ: 皆さんがもしそういうことになったら、この「乳がんのファーストオピニオン」に記事を投稿されている先生方は林田先生を含めて4名の先生方がいらっしゃるので、こちらの病院に行きましょう。

今後も一線級の医師のオピニオンを続々掲載!

シバタ: ちなみに、今いらっしゃる4名の先生の他にも新たな先生が加わってオピニオン記事が増えていく予定ですか?

林田: そうですね。今お願いしているのが国立がん研究センターの先生、それから虎の門病院の先生ですね。また、大阪大学に遺伝子発現を用いた診断ですごい先生がいて、その先生にもお願いしています。

シバタ: すごいですね!林田先生を含めてトップの医師の先生方がこういうかたちでインターネットの記事で情報を出してくることは今まであまりなかった気がしますが、そんなことはないですか?

林田: 署名記事はないかもしれません。

シバタ: すごいですね!

今後はどういう記事が増えていく?

伊佐山: 今後はどういう内容の記事が増えていきそうですか?

林田: できれば治療関連の記事を充実させていきたいと思っています。先程お話したように乳がんにはサブタイプというのがあり、サブタイプにかなり異なる、いわゆる個別化治療を行う必要があります。

患者さんは乳がんになるとすぐブログ、体験談を読みに行きます。体験談というのは、乳がんだけど、自分とは全然違うサブタイプの治療が書いてあったりします。自分の乳がんには全く参考にならない体験談を読んできて、「先生、私はこうじゃないですか?ブログではこう書いてありました」とおっしゃられることが多いです。

僕はいつもそうした患者さんには「他人の意見、他人の経験はあなたの乳がん治療には全然あてはまらないんだよ」と言います。先程も言ったようにサブタイプが異なると胃がんと大腸がんぐらいの違いがあります。自分が大腸がんになったのに胃がんの人の記事を見にいかないですよね。

シバタ: そうですね。

林田: それと同じことが乳がんだと起こってしまいます。そういった治療の役割や意味、こういった時はどうすれば良いとか、患者さんから聞かれるような素朴な疑問、ここを充実していきたいなと思っています。

山並: こういう疑問に対してオピニオンが欲しいというものがあれば、サイトにサイドバーに題材募集がありますので、記入してもらえると助かります。

ニュースレターで配信される内容は?

伊佐山: ニュースレターも配信されていると思いますが、ニュースレターではどのような情報を配信されているのでしょうか?

山並: 新しく先生が参加したり、あと、実はYouTubeもやろうという話もあります。そういった新しいコンテンツ、それからエコーのAI診断が始まりましたらそういったご案内もニュースレターで配信していこうと思っています。ぜひ、サイトの右下の青いボタンから登録ください!

伊佐山: 楽しみにしています!

乳がん対策の今後について

シバタ: 今、AI診断という話がありましたが、乳がん対策というか、検診も治療も含めてですが、当然僕も元々AIをやっていたので、画像認識はここ数年ものすごくよくなりました。当然、医療用途もかなり出てきていると思います。乳がんの予防と治療は今後どのように変わっていきますか?

林田: 先程お話したように、乳がんは早期で発見すると非常に根治率が高くなりますので、やはり早期発見が大切です。早期発見というのは、先程からお話があった検診ですね。日本人の女性の検診の受診率はだいたい40%強ですが、欧米ではすでに70%を超えています。また、欧米では乳がんの死亡率は下がってきていますが、日本ではどんどん上がっているのです。

検診の受診率だけで死亡率の差を説明できるかと言うとなかなか難しいですが、やはり客観的に見て、乳がんは早期発見が非常に重要な疾患ですので、原因の一つにはなっていると思います。そのため、検診率を上げていく必要があります。

あとは、これは厚労省やわれわれが配慮していくことだと思っていますが、乳がんは世界的に見ても女性がかかるがんのNo.1ですから、いわゆるドラッグラグ、欧米では使えるが日本では使えないといった治療法が限定されるようなことがないように、われわれ医師と行政がしっかりと検討していく必要があると思います。

山並: Smart Opinionを始めてから色々な話を医師の先生とさせてもらっていますが、ITは使っていますが比較的昔ながらの使い方をしています。。

よく言われるのがAIが医師に置き換わるという話がありますが、そういうことではなく、医師の先生や看護師の方がどれだけ効率的に仕事ができるか、ここがかなり変わってくる部分だと思います。

例えば、ITを使うことで医師の先生が説明する時間をもう少し短くできるというのもあると思いますし、また、患者さんの様子や医師の先生が考えていることも見える化することによって色々と医師と患者さんのコミュニケーションは効率化できると思っています。Smart Opinionでもこのような取り組みを多数開発中ですので、楽しみにしていてください。

シバタ: ちなみに、今はエコーの画像を人工知能が見て、ここにがんがあるかどうかというのは分かるんですか?

山並: 具体的には言えませんが、かなり精度高く分かります。

画像7

シバタ: すごいですね。そこまでいっていれば、最後はもちろん人間のきちんと専門医の先生に診て頂くのだと思いますが、明らかにないとか明らかにあるというのが分かるだけでも、だいぶいいと思います。

山並: そうですね。やはり地方で乳腺専門医の先生がいない病院は数多くあります。そういったところでこういう技術を活用することによって、医療の質の標準化、これを均てん化と言いますが、そういったことに非常に貢献できるのではないかと思います。

シバタ: 素晴らしいですね!
伊佐山: 良性と悪性があると思いますが、それは医師の方は写真を見たら見分けがつくのでしょうか?

林田: 知識と経験があればかなりの精度で分かります。ただ、パッと写真を見ただけでは判別が難しい症例は数多くあるため、特に検診の現場では見落とさないことを目的にしているので、少しでも変なことがあれば「あなたは精密検査に行きなさい」という要精密検査にされてしまいます。

画像8

林田: 結果、乳がんではないけれども、精密検査を指示される女性が沢山います。

そういう人を減らすことで、無駄な検査が減りますよね。あなたは乳がんかもしれませんと言われた時にちょっとドキっとしませんか?

伊佐山: かなりします。

林田: かなりしますよね。そういった驚きや不安を抱えることも検診の弊害なんですね。ですから、そういうのを減らすためにこういうAIを使っていく。特にこのAIは特異度と言って、良性を良性と診断する能力がかなり高いと考えていますので、良性の人をしっかり良性と診断して、本当に必要な人だけ精密検査をするような、そういうものになっていけば良いなと思っています。

シバタ: 今日は、林田先生と山並さんと伊佐山真里さんと3人お越しいただき、乳がんに関して、今まで何となくうやむやに思っていたことがだいぶはっきり答えをいただきました。実際に症状がない時にどうしたら良いのか、しこりなどの症状があったり、乳がんで要検査だと言われた時にどういう対策や行動を取れば良いのか、はっきり教えていただいたので、私自身、家族も含めて今後はそのような行動を取っていきたいと思います。

皆さん、今日はお忙しい中ありがとうございました。


ツイッターで決算に関する情報を発信しています。ぜひフォローしてください!