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なぜ携帯料金は安くならないのか?3極化する携帯ユーザー。

(ちょっといつも違ってボヤキ系です。)

ソフトバンクとKDDIが最高益=携帯3社、増収増益-4~6月期」という記事に

携帯電話大手3社の2016年4~6月期連結決算が2日、出そろった。国内通信事業が好調だったため、ソフトバンクグループとKDDIは過去最高の純利益を計上。NTTドコモを含む3社とも増収増益だった。

とあるように、携帯キャリアは増収増益の決算が続いています。

役所からの要請で「携帯料金を安くするように」という意図がありつつも、全く安くなっていく気配がありません。

今日は、なぜ携帯料金は安くならないのか、というのを考えてみたいと思います。


携帯キャリアの利益率(復習)

以前、「携帯キャリアの1ユーザーあたりの売上・利益いえますか?」で

EBITDAマージン: 30%以上
営業利益率: 20%程度

という分析をしました。ほぼ全ての成人が対象で、これだけの利益率が出るビジネスは恐らく他にない、というレベルで儲かるビジネスです。

なぜこれだけ儲かるか、というと、一言で言えば規制産業だからです。

規制緩和をしようにも、ゼロにすることは出来ません。携帯電話の周波数帯で、誰もが自由に電波を飛ばし始めると、干渉しまくってサービスにならなくなります。従って、特定の周波数帯ごとに、国が認可を与えた事業者だけが電波を飛ばせるようにする、という規制の構造だけは変えようがありません。


現在の携帯キャリア市場の市場環境

現在の携帯キャリア市場を冷静に見てみると、以下のようになると思います。

第一に、大きなパイの増加が見込めません。日本は人口減少に向かうため、携帯電話を持つ人の数は大きく増えることはもうないでしょう。

第二に、スマホ化によって、より多くのデータ通信が起こるため(そして、通信量の増加がこれまでのペースを凌駕するため)多くの設備投資が必要になることも間違いありません。

つまり、マーケットは大きくなりそうにない、コスト(設備投資)は増えそうだ、という状況です。新規参入が起こりえない市場で、こんな状況であれば「値下げは絶対にしない」という戦略を立てるのは、非常に合理的です。

また、ガラケーからスマホへという大きなシフトがあるので、その端末変更の際に、他社のユーザーを奪うために、マーケティングコストを投下する、というも非常に合理的です。強いて言えば、スマホ化するタイミングで「値上げ」するというのが合理的で、各社ガラケーの料金プランよりもスマホの料金プランを上げていると思います。

これらは、政府が「お前ら料金高いから何とかせよ」と言ったところで、携帯キャリアも上場会社ですから、それに「ハイハイ分かりました」と言うわけにいかないことくらいは、高校生でも分かると思います。


周波数オークションにすれば、携帯料金は安くなるのか?

日本ではこれまで、携帯電話の電波免許は、総務省が(勝手に)定めた事業者にのみ付与されてきました。

他方、アメリカなどでは、各周波数帯ごとにオークションが行われ、一番高い値段でビッドした事業者にその周波数帯免許が付与されます。

周波数を「密室」で決めるのではなく、オークションにすれば、新規参入が増えて競争が起こり、料金が安くなるのでしょうか?

周波数オークションを行えば、新規参入が増え、サービス面での競争は起こるかもしれませんが、携帯料金が安くなるかどうかは、個人的には非常に微妙だと思っています。

携帯キャリアから見れば、周波数取得にかかるコストが増えるので、料金を上げるインセンティブが働きます。他方、新規参入者はサービス面での差別化や料金の差別化をして、料金を下げる圧力をかけてくるようになるかと想定されます。

他方、このビジネスの肝は、全国でつながるネットワークを作ることが重要なので、新規参入者が、高額を払って周波数オークションに勝ち、その上で全国にアンテナを立て巡らせて、更に、既存のキャリアよりも安い値段でサービスを提供する、というのは相当難しい気がします。一体、どれだけの時間とお金を投資しなければならないのか、と気が遠くなるレベルです。

アメリカでは周波数オークションが実施されていますが、結局のところ、主要な携帯キャリアは4社固定で、それ以外にある小さいキャリアは、多くの場合、主要4社のどこかに買収されていきます。実際、上述ような超高額、超長期に渡る投資に耐えうるだけの会社なんてないんだと思います。

(もちろん違う考え方もあると思います。例えば、池田先生のこちらのご意見をご覧ください。)


MVNOの普及で携帯料金は下がるのか?

周波数オークションで新規参入を増やして競争を増やす以外にも、もう少しマイルドなやり方があります。それがMVNOです。

MVNOとは、既存の携帯キャリアが設備投資した回線をOEM的に、別の会社に貸し出して提供されるサービスです。

周波数オークションで新規参入する場合、「サービス」と「料金」の両方で競争が起こりますが、MVNOの場合は、「サービス」は既存の携帯キャリアが定めたものでしか提供できないため、差別化要素は実質上「料金」のみになります。

日本では、政府がドコモに対してMVNOでの回線開放、料金値下げをプッシュしているためか、最近非常に活性化していると言えます。


MVNOで解決しない問題

MVNOで回線を開放すれば、MVNO業者が増えて、MVNO業者は(価格しか差別化要素がないので)低料金で参入するため、携帯料金が下がりそうなものですが、現実にはそうはなっていません。

一番大きな要因は、多くのMVNO業者が、携帯端末の分割払いに対応していないからでしょう。

スマホが高度化するにつれて、携帯(スマホ)端末の値段は高騰しています。iPhoneなどは10万円近くする超高級機種で、見方によってはノートPCよりも高価だとも言えます。

この10万円近い高級品を一括払いで買える人は非常に少ないでしょう。ましてや、既存の携帯キャリアが、分割払いでの支払いに対応している中、わざわざ一括払いで買うユーザーは限られると思われます。

この「端末の分割払い」が解決しない限り、MVNO業者がシェアを取ることは難しいのではないかと思います。個人的には、楽天モバイルがMVNOでシェアを増やしているのは、いち早く、端末の分割払いに対応したからだと思っています。金融ビジネス持っている楽天であれば、携帯端末の料金を分割払いにするのはさほど難しくなかったはずです。

楽天モバイル以外にも、多くのMVNOが端末の分割払い対応を始めていますが、楽天モバイルが最もアグレッシブに「端末込み」プランを全面に出している気がしていて、そしてそれが一番正しいと思うのです。


既存携帯キャリアの戦略

以上を踏まえて、既存携帯キャリアの戦略を見てみましょう。

まずはNTTドコモ。ドコモは、MVNOへの回線開放をある意味義務付けられています。親会社の株主が政府であることもあり、「税金で作り上げたインフラを他社にも開放せよ」と言われると開放せざるを得ません。

現在のドコモを見ていると、この一見不利な状況を上手く利用しているように思えます。詳細は下に書きますが、他の2社がMVNOで回線を広く開放することにあまり積極的でないため、ドコモの考え方としては、

競合2社にユーザーを取られるくらいなら、(ドコモ回線の)MVNOに流れてもいいや

と考えているような気がしています。つまり、既存のドコモユーザーが(例えば)KDDIに移ると、ドコモはマイナス1、KDDIはプラス1なので、パイが増えない市場ではダメージが非常に大きいです。他方、既存のドコモユーザーが、IIJモバイルに移れば、少なくても競合2社のユーザーは増えないので「まぁ仕方ないか」と言うこともできそうです。

この(自社回線を利用する)MVNOへの流出をある意味許容することで、自社の料金を下げないようにしているとも言えるでしょう。

うちは高級サービスを提供しているので、安かろう悪かろうでいい人はMVNOへどうぞ

というようなイメージです。


次にソフトバンク。ソフトバンクは、MVNOでの回線開放を積極的に行っているイメージが全くありません。他方、ワイモバイルという「廉価版ブランド」で廉価版サービスを提供しています。ワイモバイルはソフトバンク本体に比べると、ショップ等でのサービスは限定的、端末もシンプルな低価格帯主体、その代わり、価格も安いという体系です。

ソフトバンクからすると、自社ユーザーが、(ドコモ回線の)MVNOへの流出を食い止めるために、ワイモバイルを「MVNO潰し」として使っているのでしょう。

実際、「KDDIとNTTドコモ、手放しで喜べぬ好決算 4~6月 」という記事では、

 両社の代わりに個人顧客を増やしているのは楽天モバイルのようなMVNOだ。ソフトバンクも別ブランド「ワイモバイル」で月々の通信料は1980円という低価格で攻勢をかけた。4~6月期のソフトバンクの契約回線純増数(ワイモバイル含む)は前年同期の5倍超の11万件だった。
 「ソフトバンクのワイモバイルへの顧客流出がみられる」(KDDIの田中孝司社長)、「ドコモの従来型携帯電話からワイモバイルに移行するお客様がいる」(ドコモの吉沢和弘社長)。両トップの発言には将来の収益を生む顧客基盤の侵食への危機感がにじむ。

とあります。


最後にKDDI。KDDIは、実はMVNO関連の話題では一番分が悪いです。電波が、国際標準のGSMではなくCDMAであるため、多くのSIMフリー端末がKDDIネットワークにつながりません。従って、MVNOを提供しようにも、MVNO業者がKDDIネットワークに対応する端末を仕入れるのが非常に大変であるため、困難を極めます。

KDDIもMVNOにあまり積極的ではないようです。mineoがKDDI回線でMVNO事業を提供しています。mineoは、KDDI回線だけだと、端末調達が難しいと判断したためか、ドコモ回線にも対応するなど、この「CDMA対応端末問題」が大きな頭痛の種であることには変わりがありません。


3極化する携帯ユーザー

本題に入ります。タイトルで「3極化する携帯ユーザー」と書きました。

以上を読んでいただければ、携帯電話の料金は、以下の3つのパラメーターで決まっていると言える気がします。

・ショップ等での対面サービス
・端末の分割払い
・通話・データ品質

その上で、「3極化」の詳細を書いてみます。

一層目は、これまで通り、既存の携帯キャリアを使い続けるユーザーです。この人達は、携帯キャリアのショップで対面でのサービス、端末の分割払い、最高級の通話・データ品質を望むユーザーです。この層が一番高い料金を払い続けることになります。

二層目は、端末の分割払いは望むものの、対面でのサービスや通話・データ品質は多少犠牲にしても良いと考える人達です。この層は、ワイモバイルやmineo、楽天モバイルなどの「準キャリア」のユーザーになるでしょう。

この層での差別化要因は、料金以外にも、「端末の豊富さ」になると思われます。この点では、ワイモバイルに一日の長があります。iPhone 5sを扱っているからです。mineoや楽天モバイルなどMVNO勢が対抗するには、「最新版のiPhone」も分割払いで売れるようにする、というのが一番の近道でしょう。(普通に、AppleからSIMフリーiPhoneを仕入れて、債権化して売ればいいだけのような気がしますが、これは出来ないのでしょうかね...)

三層目は、携帯キャリアのショップで対面でのサービス、端末の分割払い、最高級の通話・データ品質の全てを犠牲にしても低料金を好むユーザー層で、これらのユーザーはMVNOを利用することになるでしょう。端末はSIMフリー端末を自分で入手でき、対面でのサービスは不要で、多少データ品質が落ちてでも低料金を好むユーザーです。

以上、ボヤキでした。


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決算が読めるようになるノート

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