Q. ロボアド投資No.1のウェルスナビが赤字転落でも深刻なわけではない理由とは?
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この記事はゲストライターとの共同制作です。
2023年5月12日にウェルスナビ株式会社の2023年12月期1Q(2023年1月〜3月)の決算が発表されました。
ウェルスナビは、直近の2023年7月4日に預かり資産が9,000億円に到達するなどプラスのニュースもありましたが、今回の決算では、1年ぶりの赤字転落となりました。
一見すると、直近の業績は順調のように見えたウェルスナビですが、なぜ赤字に陥ったのでしょうか?また今期の赤字はどのように考えられるのでしょうか?
今回の記事は、前半でウェルスナビの業績を解説、後半でウェルスナビの赤字転落の背景や今後の動向を考察していきます。
ロボアドバイザー投資国内No.1のWealthNavi
WealthNaviは、AIを使った「ロボアドバイザー」を利用し、世界約50カ国、1.2万銘柄の株式、国債、債券や不動産などに自動で分散投資をしてくれる2016年7月にスタートしたサービスです。
利用者は、スマホやパソコンから5つの質問に答えるだけで、ロボアドバイザーが一人ひとりに合った運用プランを提案してくれ、利用者の目標にあった資産運用を自動で行ってくれます。
全自動で、金融の専門知識がなく資産運用ができる点等が支持され、WealthNaviで取り扱っている預かり資産は、2023年7月時点で9,000億円を突破し、預かり資産・運用者数が国内No.1のロボアドバイザーサービスとなっています。
ウェルスナビの事業は、利用者が直接ウェルスナビで口座開設する「ダイレクト事業」と利用者が提携している銀行や証券会社経由で申し込みする「提携パートナー事業」の2つがあります。
ダイレクト事業の方が預かり資産割合は大きいですが、提携パートナー事業では、ダイレクト事業だと接点を持てない利用者の獲得等のため、ウェルスナビは三菱UFJ銀行やソニー銀行等の18もの金融機関等のパートナーと提携しています(2023年3月時点)
ウェルスナビのビジネスモデル
ウェルスナビの事業は、顧客の預かり資産の1%(税込1.1%)を運用手数料として徴収するシンプルなビジネスモデルです。
運用手数料の中には、WealthNaviの資産運用に含まれるETF(上場投資信託)の保有コストも含まれており、顧客からみると、割高ではあるが細かな点を気にせずに自らのリスク許容度に応じた分散投資が気軽にできる利点があります。
ウェルスナビの収益モデルを考えると、ウェルスナビは顧客の預かり資産が増えるほど、収益となる手数料が増えていきます。
そのため、「既存顧客から継続的に資産を預かること(積立投資)」「新規ユーザーの獲得」「運用資産の運用による時価の向上」が事業上、重要なKPIとなります。
ウェルスナビはSaaS指標を公開
上図は、ウェルスナビの重要指標をまとめたものです。
ウェルスナビの決算説明資料でユニークな点は、ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益=毎年継続して発生する売上)や解約率等の主にSaaSで使われる指標を公開している点です。
加えて、10年以上の利用意向をもった顧客が59%と過半数を超えている点や平均月次解約率が1%未満であること等によって、SaaSと同様に「積み上げ型」であることを投資家にも強く印象づけていると考えられます。
注目すべき指標としては、ARRが73.1億円、Net AuM Retention(新規運用者の預かり資産が年間何%で増加したのかを表す指標)が120%を超えているという点です。
ARRが73.1億円という点は、後半で詳しく述べたいと思いますが、主要なSaaS企業の中でも上位の規模感です。
Net Aum Retentionは、SaaSでいうNRR(Net Revenue Retention:売上維持率)に相当します。
NRRとは、既存顧客からの売上がどのように変化したかを表す指標で、100%超の場合は既存顧客からの売上が増加したことを意味しており、一般的に120%を超えている場合は優秀と評価されるため、ウェルスナビは高い水準と言えるでしょう。
ここまでは、ウェルスナビの事業や事業上の重要指標について見てきました。記事の後半では、ウェルスナビの赤字転落の背景や今後の動向を考察していきます。
この記事は、SaaS事業に携わる方や興味がある方はもちろん、事業戦略に関心がある方に最適な内容になっています。
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