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Q. 認可保育所1施設あたりの補助金・売上言えますか?

ヒント. 新規開設1施設あたりの補助金は億単位です。1施設あたりの月間売上は、百万円単位です。

コロナウィルスの影響で4月に上場する予定が延期になっていた、許認可保育園の運営を手掛ける「株式会社さくらさくプラス」の東証マザーズへの上場が10月28日に決定しました。

今回の記事では、初めて許認可保育園の運営事業とは一体どのような仕組みになっているのか?を上場申請のための有価証券報告書を元に分析していきたいと思います。

株式会社さくらさくプラス 新規上場申請のための有価証券報告書(2020年9月24日 )


認可保育所と認証保育所の違い

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まず最初に、「保育所」と一口に言っても、補助金や利用料の支払いに大きな違いがあるので、その点を説明します。保育所には、「認可保育所」と「認証保育所」、「認可外保育所」の3つがあります。

ちなみに、保育所は0歳の子供から預かることができる施設で、幼稚園は3歳〜6歳の子供を預かる施設です。保育所は児童福祉施設であり厚生労働省の管轄、幼稚園は就学前教育が目的の文部科学省の管轄となっています。

「認可保育所」は国が定めた広さや施設の設備、保育士の人数などの基準を満たしている必要があります。利用者は入園手続きを各自治体に申請し、利用料は自治体に支払います。

支払われた利用料は補助金と合わせて、自治体が許認可保育所に委託料として支払う仕組みになっています。認可保育園は保育料が安価なため、待機児童が多い状況です。

今回紹介する「さくらさくプラス」はこの認可保育所を中心とした事業をしています。

次に「認証保育所」ですが、これは東京都独自の制度です。東京では国の定める広い土地の確保が難しいため、東京の状況に合った認証制度が作られました。認証保育所事業には多くの企業が参入していて、駅ナカの便利な場所や夜中まで子供を預かる保育所もあります。

認可保育所と認証保育所の大きな違いは、認証保育所は利用者が自治体を通さずに、直接、保育所に利用料を支払う仕組みとなっている点です。認可保育園より利用料が高額になりますが、利用状況によって自治体から利用者に補助金が給付されます。また認証保育所に対しても、自治体から補助金が交付されています。

3つ目の「認可外保育所」には、基本的に自治体の補助がありません。預かり時間や提供するサービスを柔軟に設定することができ、ベビーホテルなどを運営している企業もこの括りに入ります。補助金がないために利用料は高額になりますが、その分、利用者のニーズにあったユニークなサービスを選択することができます。

上場している保育所関連の企業の多くが、この3つの保育所の事業を掛け持つか、認証・認可外保育所の2つの事業に特化し、サービスの違いを打ち出しています。


認可保育所の運営というユニークなビジネスで上場

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それでは、さくらさくプラスの決算を連結決算で見ていきましょう。2019年7月期の通期の売上高は、51.5億円で、前年同期比(YoY)+59%と大きく成長しています。

経常利益は約14億円で、YoY+86.4%と売上より高い成長率となっています。

有価証券報告書の14ページに売上に関する記載があります。

当社グループの売上高は、主に各認可保育所における在園児数等に応じた自治体からの補助金等で構成されているため、新型コロナウイルス感染症の業績への影響は本書提出日現在においては軽微であると考えております。

ということで、売上は主に自治体からの補助金で構成されています。

在園児数に応じた補助金以外の、開設時の補助金は、損益計算書の営業外収入に「補助金収入」として計上されています。

売上高が大きく成長しているのは、運営している保育所数が増加しているためです。運営拠点数の推移については後述します。

他の企業が認証保育所や認可外保育所を中心に運営することで、保育時間の延長や英語教育などの独自のサービスを付加して売上を成長させていることと比べ、さくらさくプラスは、認可保育所の運営が事業のほとんどを占めている点が他の企業と異なるユニークな点です。

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今回上場申請の書類に2期分しか決算データが開示されていないのは、2017年にホールディングス化した、親会社である「さくらさくプラス」が上場するためです。

前身の企業が2009年に事業譲渡により認可外保育施設事業を開始。その後多くの保育所を開設し、2017年7月期に21拠点、2019年7月期に46拠点、上場申請時点で60の施設を運営しています。さらに、さくらさくプラスは、ベトナムで保育所を営む持分法適用の会社と、不動産業を営む子会社も有しています。

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連結では1,000人を超える従業員を抱えて保育事業を展開していますが、今回上場するホールディングスの従業員数は、上図の通り16名となっています。

ここでも業容拡大によって、最近1年間において従業員数が増加していると記載されています。

さて、ここまでは保育所の区分と、利用料金のお金の流れの違い、さくらさくプラスが売上、利益ともに成長している状況を見てきました。

記事の後半では、保育事業のユニットエコノミクスを計算し、保育所1箇所あたりの売上や利益率、人件費、補助金について詳細に解説したいと思います。

この記事は、保育所の事業や育児関連の事業に興味がある方、育児に対する国の補助金がどの程度になっているのか知りたい方におすすめです。

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・Q. 認可保育所1施設あたりの補助金・売上言えますか?の答え
・認可保育所の大きな収益源: 補助金収入が●億円!
・ユニットエコノミクスその1: 保育所1箇所あたりの売上・営業利益
・ユニットエコノミクスその2: 保育士1人あたりの人件費(概算)
・ユニットエコノミクスその3: 保育所1箇所あたりの補助金収入
・まとめ

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