マイクロソフトをダメにした前CEOと復活させつつある現CEO
(表示画像: http://cdn.ndtv.com/tech/images/gadgets/bill_gates_steve_ballmer_satya_nadella_microsft_reuters.jpg)
若い人はあまり記憶にないかもしれませんが、90年代のマイクロソフトは本当に無敵でした。今のAppleとGoogleを足したような強さのイメージです。
PC時代に、OSのシェアを90%超取り、B2BでもB2Cでも、ウィンドウズ+オフィスという盤石の体制でした。
それを築き上げたのが、創業者ビル・ゲイツ氏です。2000年に会長になり、2008年にはフルタイムでの仕事から退きました。
マイクロソフトをダメにした前CEOスティーブ・バルマー
ビル・ゲイツが去った後のマイクロソフトは苦境の時代を迎えます。
ウィンドウズのOSのシェアは↑の図のように減少を続けています。
この苦境の時代にCEOを担っていたのが、スティーブ・バルマー氏です。
ハーバード卒、スタンフォード大学MBA中退、ゲイツが初めて採用したビジネスマネージャー(事業担当管理職)としてマイクロソフトへ入社、マイクロソフトの30人目の従業員です。
1998年7月には空席となっていた社長に昇進し、2000年1月にはゲイツの辞任に伴い最高経営責任者に就任しました。
このバルマー氏ですが、(個人的にはそこまで悪いCEOだとは思いませんが)酷評されることが非常に多いです。
例えば、Steve Blankさんという人のブログで、以下のように酷評されています。
How to Miss the Boat – Five Times
Despite Microsoft’s remarkable financial performance, as Microsoft CEO Ballmer failed to understand and execute on the five most important technology trends of the 21st century:
in search – losing to Google;
in smartphones – losing to Apple;
in mobile operating systems – losing to Google/Apple;
in media – losing to Apple/Netflix; and
in the cloud – losing to Amazon.
翻訳すると、こんな感じになります。
大事なトレンドを5回も逃した!
マイクロソフトは当時、とても強固な財務基盤を持っていたにも関わらず、スティーブ・バルマーCEOは以下の5つの21世紀における最も重要なトレンドを逃した:
検索 - グーグルに完敗
スマホ - アップルに完敗
モバイルOS - グーグル・アップルに完敗
メディア - アップル・ネットフリックスに完敗
クラウド - アマゾンに完敗
Steve Blankの酷評は更に続きます。
Microsoft left the 20th century owning over 95% of the operating systems that ran on computers (almost all on desktops). Fifteen years and 2 billion smartphones shipped in the 21st century and Microsoft’s mobile OS share is 1%. These misses weren’t in some tangential markets – missing search, mobile and the cloud were directly where Microsoft users were heading. Yet a very smart CEO missed all of these. Why?
マイクロソフトは20世紀の終わりに、世界中のコンピューターの95%以上のOSシェアがあった。15年後、20億台のスマホが出荷され、マイクロソフトのOSシェアはたった1%だ。検索、スマホ、モバイルOS、メディア、クラウドという5つの市場は、無視できるほど小さい市場ではないし、マイクロソフトが喉から手が出るほど欲しい市場だったはずだ。懸命なCEOならこれら全てで失敗するなんてことは無いはずだよね?
全てをスティーブ・バルマー氏のせいにして良いかどうかは別にして、これら5つの重要ドメインで、マイクロソフトが完敗したのは事実でしょう。
マイクロソフトを復活させつつある現CEO
そんなスティーブ・バルマー氏の後任CEOがマイクロソフトを復活させつつあります。
現CEOはサティア・ナデラ氏です。Wikipediaによると
サーバ部門、ビジネスソリューション部門などを経て、2008年、オンラインサービス部門の上級副社長に就任していた。2011年、サーバ&ツール部門社長に就任していた。2013年、同社のリストラを契機にして、クラウドやエンタープライズエンジニアリング部門の上級副社長に就任していた。2014年2月4日、スティーブ・バルマーの退任後、最高経営責任者に就任し、ビル・ゲイツ、スティーブ・バルマーに次ぎ、歴代三代目のCEOになる。
という経歴です。
彼がマイクロソフトのCEOに就任してからというもの、業績好調です。
直近の決算での業績を見てみます。
セグメントしては3つあります。
一つ目は、Productivity & Business Processesで、「Microsoft Office」のラインナップが増えています。以前は売り切りモデルだったOffice製品をSubscriptionベースのOffice 365に切り替えたのが功を奏しています。Office 365の課金ユーザー数は2400万人もいるとのことです。
二つ目は、Intelligent Cloudです。Amazon AWS、Google Cloudという2強との戦いになりますが、まだまだ伸びています。
三つ目が、More Personal Computingです。今でもここが一番売上が大きいですが、セグメント売上が減少しています。
このセグメントには、Windows、スマホ、Surface、ゲーム(Xbox)、検索という4つが含まれます。
良いニュースとしては、Surfaceの売上がYoY +38%で、$926m(926億円)に達しています。主な売れ筋商品はSurface Pro 4です。また、(トラフィック獲得コストを除いた)検索広告売上がYoY +9%増えています。
悪いニュースとしては、スマホの売上がYoY -72%も落ちていることです。Windows Phone使っている人を見たことがありません...また、ゲームも売上がYoY -5%と落ちています。
マイクロソフト復活の2つのポイント
前CEO時代からの「負の遺産」がまだ残っている気がしますが、マイクロソフトがこれからどこで勝負していくのか、というのを少し考えてみたいと思います。
一つ目は間違いなくクラウド事業でしょう。
パブリッククラウドAzureからの売上はYoY +16%も伸びているとの言及もあり、成長率が速くなっています。
年換算売上(↑のグラフのRun Rate)も$13b(1.3兆円)を越え、かねてから公言している「2018年のクラウド売上$20b(2兆円)」に到達しそうな勢いです。
二つ目は、Surface事業(タブレット)でしょう。
Surfaceの売上はiPadに比べるとまだまだ小さいですが、非常に伸びてきています。
最近もSurface Studioという新しい商品(写真の左)が出ましたが、Surfaceは(スマホでの大失敗を感じさせないくらい)好評です。
最大の課題は、アメリカでのタブレット買い替えサイクルは「6年」と非常に長く、持続的な成長が可能なのかどうか、という点でしょう。
以上、マイクロソフトの歴史の話でした。
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