Uber投資家からの警告「バブルからの更生への道のり」(3) 問題をより大きくしないために

Uberに最初に投資したVCであるBill Gurleyからの警告文「On the Road to Recap(バブルからの更生への道のり)」の翻訳(3部作のうちの第3部)です。予告編第1部第2部をご覧になっていない方はまず先にそちらをご覧ください。

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前述で触れられてこなかった投資家 (ファミリーオフィス、政府系ファンド等 )

もしあなたが大量の資金を有しており、誰かにユニコーン企業への出資を勧められていないのであれば、単にそれは彼らがあなたにアクセスする方法を見つけられずにいるだけだ。

1. SPV プロモーター - LPの部分で取り上げたが、投資家達は彼らのSPVの範囲を広げつつあり、今ではファミリーオフィスやその他の資金源にまで手を伸ばしつつある。そのキャッチフレーズには大抵の場合、「あなたを〜へご招待する」や「あなたに限られた投資機会へのアクセスをご提供とする」と言った、いかにも聞こえの良い言い回しが使われる。「あなたはこのチャンスに巡り会えて幸運だ」と言ったセリフは得体のしれない危険なものと考えるべきだ。覚えておいて欲しいのは、こういった勧誘をしているのは、自らの資金を市場に投じすぎ、資金不足になりつつある投資家達自身だと言うことである。

2. ブローカーや準大手以下の投資銀行はユニコーン企業株式の売却を促進している。 - 大手のファミリーオフィスに問い合わせてみると良い。今彼らのもとにはユニコーン企業株式の買取に関するメールや電話の問い合わせが殺到しているという。大抵の場合、これらの株式はティーザーにより直近の評価額から20%-40%のディスカウントで売買される。

3. ユニコーン企業への更なる増資 - ユニコーン企業へ追加資本を注ぎ込むために、あなたもあなたの資本を必要としている投資家から声をかけられることがあるかもしれない。歴史的に見ても、前例のないユニコーンによる巨額の資金調達額は、投資家達がすでに投資可能額の限界近くまで資本を市場に投じ、次の資本形成のために血眼になって新たな資本源を探し求めているという事実を物語っている。

悲しいことに、こういったたくさんの投資機会において、適切な財務情報の提供が欠落している。ある人達は市場でよく「IPO前」として売られている株式の情報を得るために、S-1(訳者注: 企業がその普通株式を新規公開する際にSECに提出する登録届出書のこと)に記載されている内容を参考にする。しかし、これらに記載されている財務情報も非常に限られている。もし詳細な財務情報が記載されていたとしても、そのほとんどがGAAP基準に反していることが多い。その例として、ほとんどのユニコーン起業家はディスカウントやクーポン、政府補助金が売上高に対して相殺勘定であることを知らない。

もしその情報が監査済のものであれば、その監査調書にはよく、彼らの財務情報がGAAP基準に基づいて作成されていないことを記す無数の理由が綴られてある。これらの理由を深堀りしていくと、重大な虚偽表示になりうるものが見つかることも多い。投資家達はいい加減これらの株式が本当はIPOに向けたものではないと気付くべきた。彼らが提示する情報は必ずしもその正当性に関するチェックを受けている訳ではない。投資家達が見ているパワーポイント上の数字が間違っていることも多いにありうる。あなたが今もしユニコーン企業への投資のため、数百万ドルものチェックを書こうとしているのなら、まず監査官のところへ行くことをお勧めする。監査官があなたの投資先にどの程度の詳細な調査を行ったかを把握するべきだ。

ほとんどのユニコーン企業の重役達がこういった経済事情の本質を正確に把握していないという事実に、新しい投資家達も驚くかもしれない。これらの偽善者にスポットを当てるにはまず彼らの特徴を把握すべきである。彼らは「流通総額」や「数年先の予約額」と言ったところにに必要以上に固執したり、あるいは過去の収益や粗利、営業利益を今日のことのように話したりする。他には単に粗利のマイナスを回避できただけの状況に対して、「このビジネスはユニット単位での収益性が非常に高い」と言い張る連中もいる。こう言った会社は将来いずれ本物の利益が求められる時期がやってくる。もし企業側がこういった本質的な側面を説明できないというのであれば、あなたはレイターステージのファイナンスにおいて何百万ドルもの小切手を切るべきではない。

おそらく、これまで触れられることのなかった投資家達の最も大きな間違いの一つは、彼らの高い地位故の奢りからか、彼らが得る投資機会は常に質の高いものであるという勝手な憶測を自ら立ててしまうことだ。会社の状況を把握するために周到な調査を行う代わりに、他の投資家からの評判を参考にしてしまう。こういったショートカットにはたくさんの問題が潜んでいる。まず一つにはこれらの投資家達は「ポットコミット」(訳者注: プレーヤーがすでに多くのチップをポットに投資しすぎたため、彼に対して相手がオールインでレイズしてきてももはやフォールドすることができない状態になっていることを「ポット コミット」または「コミット」と表現する。)されているということ。つまり、彼らは大分前に投資を行い、あなたの追加資本がなければ、自分の投資した資金がリスクにさらされてしまうということである。彼らは理由もなしにあなたに声をかけたりはしない。まず何故彼らが手のひらを返したようにフレンドリーになったのかを疑うべきである。

今声をかけられている投資家達へ伝えたいことがある。今の状況を野球の試合に例えるならばそれは、私達は1回でも6回でもなく、5時間以上にも及ぶ延長ゲームの14回にいるということだ。ダンスの相手に誘われている訳ではない。あなたが声をかけられているのは、彼らにとってあなたが最後の頼りだからである。投資家達があてもなく彷徨い続けたせいで、あなたの資金を今手元から遠ざけることが非常に危険になってしまったのである。


SEC(米国証券取引委員会)がシリコンバレーを訪れる

数週間前の2016年3月31日、SEC米国証券取引委員会の委員長がスタンフォード大学ロースクールで開かれたイベントでスピーチをするためシリコンバレーを訪れた。ユニコーン企業への投資に参加している人、もしくはこれからユニコーン企業への投資を考えている人は、彼女のプレゼンテーションが伝えようとしていることを汲み取って欲しい (ここでその内容をご紹介する) 。Bloomberg社は彼女のメッセージを「シリコンバレーはユニコーン達を檻に入れておく必要がある」と報じている。

White委員長も既に今の歪んだユニコーン企業による資金調達プロセスの問題を懸念しているようであった。

現代のほとんどのユニコーン企業の評価額は著しく主観的なものであると言える。市場からの圧力と期待に応えるために、財務報告の問題が深刻化し参加者がリスクにさらされているこの現状に誰かが声をあげなければならない。

そして彼女は今までの投資家と将来の投資家達に、相当な注意を促すためこうメッセージを送った:

歪みと不正確性に伴うリスクはスタートアップ企業によって深刻化された。成熟したスタートアップの内部統制やガバナンスでさえ、他の公開企業と比べれば健全とは遠く離れている。未公開企業の財務情報や他の開示事項に関する正確性への意識の低さは今や致命的なものになっている。

ユニコーンの群れによる身勝手な資金調達への振舞いがために、今SECが未公開企業の規制を増やさざるをえない状況となっているのであれば、それは本当に悲しい事実である。もしまだ今のスタートアップが「未公開だから責任は問われない」と考えているのであれば、私達は彼らを正し、監視するためしかるべき処置を施すであろう。


更なる資本は更なる問題を呼ぶ

この一連の事態を巻き起こした全ての人々の最大の過ちは、「もうワンラウンド資金調達をすれば全て上手くいく」という勝手な憶測を立てたことにある。資本は大きければ大きい程良いと創業者達は考えるようになった。そんな風潮もあってか、市場では巨額の資本を調達することこそが競争の優位性につながると信じられ、皆がそれを英雄視し始めた。皮肉にも、真実は正反対なのである。真に優れた起業家というのは、市場に資本が不足している中でも優位性を発揮できる人間の事である。彼らはどういった環境においても資金調達ができる。見境いなく資本を投じることは、それにふさわしくない者達をも市場に招き入れる。この「ふさわしくない者達」は資質のある優れた起業家達をも泥沼へ引きずり降ろしてしまう。この状態は私達を含む全ての利害関係者の利益を脅かすものとなる。

私達が今いるこの泥沼を作り出してしまったのは、VCを通じてスタートアップ市場に流入された過剰な資本である。この過度な資本投入は (1) 1999年代に比べ、5-10倍にもおよぼうかという過激なバーンレートを生み、(2) ほとんどの会社が「利益」とは程遠い経営を行うようになった。(3) 巨額な資本へのアクセスによる壮絶な競争は (4) 株式の流動性の長期化(現金化の先延ばし)と実体のない企業価値を生み出し、(5)前述の投資家達による資本形成のための勧誘行為が蔓延した。追加資本は今の現状の解決策にはなり得ない。健全性をもたらすのは実質資本コストの上昇と本来の事業活動による利益の還元である。


(以上で3部作分を全て翻訳済)

Uber投資家からの警告「バブルからの更生への道のり」を翻訳します
「バブルからの更生への道のり」(1) なぜバブルが起こっているのか
「バブルからの更生への道のり」(2) 起業家・投資家・従業員が今すべきこと
・「バブルからの更生への道のり」(3) 問題をより大きくしないために

※今回の翻訳は、私が監修の下で、ワシントン州米国公認会計士 玉井和佐さんに翻訳にご協力いただいています。

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決算が読めるようになるノート

アメリカ・日本のネット企業(上場企業)を中心に、決算情報から読みとれることを書きます。経営者の方はもちろん、出世したいサラリーマンの方、就職活動・転職活動中の方になるべく分かりやすく書きます。
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