Q.新規上場のオープンワーク、ワンキャリア・ビジョナルを凌ぐ経営指標とは?
新着記事をTwitterでお届けします。下記URLからご登録ください。
Twitter: https://twitter.com/irnote
この記事は沼幹太さんとの共同制作です。
2022年も終わりに近づいますが、新規上場が活発化しています。『決算が読めるようになるノート』の発信媒体としても利用している、メディアプラットフォームを提供するnote株式会社、EC等向けに様々なビジネス支援サービスを提供しており上場を延期していたAnymind Groupなど、注目の企業が2022年内の上場を控えています。
その中でも今回は、2022年12月16日に東証グロース市場に新規上場予定のオープンワーク株式会社を取り上げていきます。
オープンワークは就職・転職版の食べログのようなサービスで、「働く」に関するあらゆる情報を網羅した「ワーキングデータプラットフォーム」事業を運営しており、利用したことがある方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、上場目論見書をもとにオープンワークの企業概要やビジネスモデル、競合他社と比較して優れている経営指標について解説していきます。
オープンワークは就職・転職版の食べログ
まず、オープンワークの企業概要を解説します。
オープンワークは、社員の口コミデータを基盤とした転職・就職のための企業情報プラットフォーム「OpenWork」を運営しています。口コミサービスといえば、食べログやぐるなび、ホットペッパーなどの「飲食店の口コミサービス」が一般的にはイメージしやすいと思いますが、オープンワークは口コミの対象が飲食店ではなく、(従業員から見た)企業になります。
食べログのスコアが店選びに影響するように、オープンワークが企業の組織状態をオープンにすることで、キャッチコピーや広告予算だけではなく、組織の状態によって採用力が決定される社会を目指しています。
2007年から事業をスタートし、2020年よりリンクアンドモチベーションの連結子会社となりましたが、2022年12月に東証グロース市場に上場予定となっています。
オープンワークのビジネスモデル
オープンワークは、主には以下3つの事業を運営しています。
1つずつ解説していきます。
(1)口コミメディア「OpenWork」事業
前述した口コミメディア閲覧事業です。求職者による有料会員登録(月額税込1,100円)と、提携企業への求職者の紹介料の2つを収益源としています。求職者は口コミ掲載、もしくはWeb履歴書を登録することで月額課金費用が免除され、口コミが閲覧できる仕組みになっています。
(2)企業向け採用支援「OpenWorkリクルーティング」事業
企業がOpenWork内に求人を掲載し、求職者にスカウトメールを送信することができるサービスで、採用代行会社や人材紹介エージェントも利用できます。求人企業、および人材紹介エージェントからの成功報酬・掲載料が収益源となっています。
(3)社員口コミを用いたデータ関連事業
OpenWorkで蓄積された社員口コミをオルタナティブデータ(一般的に公開されていない投資判断のために用いられる情報)として提供する事業で、情報提供料を収益源としています。
ちなみに、口コミに関するデータは以下のような内容になっています。
データを無料で閲覧したいユーザー(求職者)は口コミを登録する必要があり、利用者が増えれば増えるほどOpenWorkの価値が高まるため、ネットワーク効果が働きやすいサービスであると言えるでしょう。
売上はコロナ禍で停滞も、復活の兆し
オープンワークの業績は、2021年度が15.4億円、前年同期比(YoY)+5.1%となっています。2018年度、2019年度はYoYが+30%を超える成長をしていましたが、コロナ禍の影響もあり2020年度、2021年度は成長にブレーキがかかっています。
一方、直近は成長率は回復しており、2022年度第3四半期(Q3)では売上5.3億円、YoY+34%の成長となっています。現在のペースでいくと、2022年度の通期では売上19.5億、YoY+26%程度で着地する見込みです。
続いて、類似サービスとの直近の四半期売上の比較を見てみましょう。オープンワーク、リブセンス(転職会議)、ワンキャリア(ONE CAREER)は2022年7-9月期、ビジョナル(ビズリーチ)は2022年5-7月期の四半期売上を用いています。
転職会議は転職・就職向け口コミサービスという観点で直接的な競合であり、ONE CAREERは新卒領域中心で中途向けは開始したばかりですが、こちらも口コミを元に集客をしている点で、似ているサービスであると言えます。
四半期売上が5.3億円のオープンワークに対して、リブセンスは約54%程度の2.9億円、ワンキャリアはほぼ同規模の5.6億円となっています。
一方、売上成長率はYoY+34%のオープンワークに対し、リブセンスはYoY+82%、ワンキャリアはYoY+75%と、成長率が2倍以上上回っていることがわかります。
また、ビズリーチは売上が120億円、成長率はYoY+49%となっており、他3サービスと比較すると、規模が圧倒的に大きい上に成長スピードも速いことがわかります。
オープンワークのセグメント別売上を見てみると、2022年度Q3の売上は、OpenWork事業が2.8億円(YoY+10.2%)、OpenWorkリクルーティング事業が2.4億円(YoY+86.5%)となっています。
売上推移を見ると、メディア事業であるOpenWork事業は四半期売上2.8億円前後を推移していますが、OpenWorkリクルーティングの売上は2021年度の1億円前後から2022Q3の2.4億円へと急成長していることがわかります。
OpenWork事業の売上成長率は、OpenWorkリクルーティングに比べ低いですが、登録ユーザー数は順調に増加しており、2022年7月時点で500万人を突破しています。
増加したユーザーや口コミ情報をOpenWorkリクルーティング事業で上手く活用し、企業全体での売上成長に繋げられていると考えられます。
OpenWork事業での求職者の紹介先は、リクルートとビズリーチが多くの割合を占めており、売上比率は2社合わせて25%〜30%前後という大きな割合を占めています。
OpenWork経由で他の転職サービスに登録すると全ての口コミが無料で閲覧できる「転職サービス登録プログラム」を提携先紹介の導線としており、転職者自らがビズリーチやリクルートの転職サービスを選択する割合が多いため、2社の売上比率が高いのではないかと考えれます。
このような状況は、柱となる収益源を確保できていると言える一方で、リスクが高いとも捉えらます。上場目論見書内でも依存度の解消について触れられており、両社への販売割合は年々減少傾向にあります。
ここまで記事の前半では、オープンワークの会社概要やビジネスモデル、業績について解説していきました。
記事の後半では、競合他社と比較して優れているオープンワークの経営指標とその理由、今後の成長戦略について解説していきます。
この記事は、リクルート業界に携わる方や興味がある方、新規上場企業の成長要因に興味関心がある方、情報を活用したビジネスに関心がある方に最適な内容になっています。
ここから先は、有料コンテンツになります。このノート単品を500円、あるいは、初月無料の有料マガジンをご購入ください。
有料マガジンは、無料期間終了後、月額1,000円となりますが、1ヶ月あたり4〜8本程度の有料ノートが追加されるため、月に2本以上の記事を読む場合には、マガジン購読がお得です。
月末までに解約すれば費用はかかりませんので、お気軽に試してみてください。
有料版をご購入いただくと、以下のコンテンツをご覧いただけます。
ここから先は
¥ 500