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「守るドコモ、攻めるKDDI、見守るソフトバンク」均衡する携帯キャリアの戦略

携帯キャリアの2016年7-9月の決算が出揃いました。全社増収増益で、携帯料金を安くしたい総務省の担当者の血管がピクピクしてるのがよーく見えます。嘘

それはさておき、この「全社増収増益」の背景にあるカラクリを少し見てみたいと思います。その上で、各社がどういった戦略で闘っているのかというのを考えてみます。


急成長市場ではない携帯キャリアビジネス

日本のように既に成人がほぼ1人1台携帯電話を持っている国では、これ以上、携帯人口を増やすのは困難であるため、大きな成長が見込めるということはありません。

従って、ガラケーからスマホへの置き換えに際してのデータ通信量増加につけこんで、ARPU(1ユーザーあたりの売上)を増やすということはできるものの、スマホ普及率も急上昇はしないでしょうから、成長戦略を作るのが非常に困難ではあります。

こういった市場環境の中で、各社共通の戦略とそれぞれ異なる戦略というのを分けて考えてみたいと思います。

一番分かりやすいのがこのソフトバンクのスライドなので、このスライドを元に、まずは3つの共通戦略を見た上で、各社ごとの「重点領域」を取り上げます。


共通戦略1: 格安ブランド戦略

端末の値引きが少なくなったことで、割高感を抱いた利用者が格安SIM業者に乗り換える動きも広がっている。総務省によると、格安SIM業者の契約数は1346万件(6月末時点)で前年同期より3割増え、携帯電話契約の8・2%を占めている。

とあるように、「格安SIM」が増え続けていることは事実です。実際、日本の携帯料金は、あまり利用しない人には高価であると思いますし、それだけでなく「対面でのサービスが不要」などといった上級ユーザーにとっては、サービスが不要なので少しでも安くしたいという人も多いでしょう。

市場が伸び続けている局面であれば「安いプランしか買わないユーザーよりも、高いプランを買ってくれるユーザーにフォーカスする」という戦略も取れますが、今はそういう時代ではありません。

ましてや、パイが増えない以上、自社が1ユーザーを失うと、競合にそのユーザーが取られるケースが多いため、事実上マイナス2になるので、この「格安ユーザー層」は無視できません。

UQ、月額1980円で通話し放題&高速通信!「格安」で出遅れたKDDIが怒涛の攻勢」という記事にもある通り、ここは避けては通れません。

各社それぞれ、この「格安ユーザー」を、競合に取られないための手をしっかり打っています。

ドコモ: MVNO
KDDI: UQ
ソフトバンク: Y mobile

簡単にまとめると↑のような形です。KDDIとソフトバンクは、自社もしくは(連結)子会社で格安ブランドを持ち、ブランドを分けつつ、競合への流出を防いでいる状態です。

ドコモは、総務省からの要請もあり、MVNO網をリーズナブルな価格で開放せざるをえませんから、それを逆手に取って、徹底的なオープン戦略で闘っています。要は、

(ドコモの)MVNOに流れると、ARPUは落ちるけど、競合に取られるよりはマシ

という感覚かと思います。


共通戦略2: 主ブランドで売上向上を狙う

(別ブランドとはいえ)「格安ユーザー」を許容し、増え続けると、利用者数は増えませんから、売上が減りかねません。

そこで各社揃って、主ブランドユーザーのARPUを上げる努力をしています。

一番分かりやすいのが「大容量データプラン」で、月間20GBなどの大容量プランを(GB単価は下げつつも)高い価格で販売し始めたというのはこの戦略の一貫です。

プラン内容に多少の差こそあれ、3キャリアとも似たようなプラン構成になっているかと思います。


共通戦略3: 解約率低下を狙うための囲い込み

3つ目は、解約率を下げるための取組です。

上述のように、解約するということは(携帯を持たずに生活する人は非常に少ないかと思いますので)、自社のユーザーが1減り、競合他社のユーザーが1増えます。つまり、トータルでマイナス2になるので、パイが増えない市場では非常に苦しいです。

そこで↑のソフトバンクのスライドにあるように「長期ユーザーを優遇する」や「固定回線とのセット販売」などを行って、解約しにくくなるような施策を打っています。


以上が、3社に共通する部分で、市場環境を考えれば、どれも合理的な打ち手だと思いますが、以下では、3社ごとの違いを詳しく見ていきたいと思います。


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